✍ 古家あきら | 2026-10-04 更新

探偵業の届出を調べる方法 — 「許可」ではなく届出。受理番号と標識の見方、社名に「探偵」「興信所」を含む207社のデータ

先に結論です。探偵業は「許可」ではなく「届出」の業種です。 探偵業法(探偵業の業務の適正化に関する法律)4条により、営業所ごとに、その所在地の都道府県公安委員会へ届出書を出せば営めます。届け出ているかどうかは、次の3つで確かめます。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「この会社は何の届出をしているのか」を法人番号から引けないかとよく考えます。探偵業は、警察が届出業者の一覧を公表している業種ではなく、法人データから網羅するのも難しい業種です。全国の届出は7,354営業所ありますが、多くは個人の業者だからです。この記事では、制度の決まりと確かめ方を整理したうえで、法人データと会社のサイトから見えたことを数字で出します。

探偵業の「届出」とは何か

法律でいう探偵業は「特定の人」を調べる営業

探偵業法2条は、探偵業務を次のような業務と定めています。

1. 他人から依頼を受けて 2. 特定の人の所在や行動についての情報を集めるために 3. 聞き込み・尾行・張り込みなどの実地の調査をして 4. その結果を依頼者に報告する

この業務を営業として行うのが探偵業です。浮気の調査、家出した人の所在の調査、結婚前の素行の調査などが典型です。新聞社や放送局などの報道機関から依頼を受けて、報道のために行うものは除かれています。

逆に言えば、「調査」と名のつく仕事がすべて探偵業になるわけではありません。会社の信用調査や市場調査、地質調査は、特定の人の所在や行動を調べるものでなければ、この法律の探偵業務には当たらないと読めます。

届出先は営業所ごとの公安委員会

届出の窓口は、営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会です(法4条1項)。本店だけでなく、営業所ごとに届け出ます。届出書は、営業所の所在地を管轄する警察署長を経由して出す決まりです(施行規則1条の2)。

届出書に書くのは、商号や氏名と住所、営業所の名称と所在地、広告に使う名称(屋号)、法人なら役員の氏名と住所です。法人の場合は定款と登記事項証明書、役員それぞれの住民票の写しや誓約書などを添えます(施行規則2条3項)。

提出の期限は、営業を始める日の前日までです(施行規則2条2項)。届け出た内容が変わったときや廃業したときは、10日以内(登記事項証明書を添える場合は20日以内)に届け出ます(施行規則3条2項)。

「許可」とどう違うのか

許可や認定は、公安委員会が審査して「営んでよい」と決めるものです。届出は、決まった書類を出して営業を始める制度です。探偵業法にも欠格事由はあり(法3条)、次の人は探偵業を営めません。

届け出ずに営業すると、6か月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金です(法18条)。名義貸しも禁じられています(法5条)。

ただし、届出をしていることは「国が質を保証した」という意味ではありません。届け出ている業者が守るべき決まりを守っているかは、別に見る必要があります。

2024年4月に何が変わったか:届出証明書から「標識」へ

以前は、届け出ると公安委員会から「探偵業届出証明書」が交付されていました。この証明書は2024年4月1日に廃止されました(京都府警・福島県警・千葉県警の案内で確認)。代わりに、業者が自分で作る標識を掲げる義務になりました(法12条2項)。あわせて、開始届出の手数料(3,600円)と変更届出の手数料(1,600円)も廃止されています(福島県警の案内)。

標識に書かれていること

標識の様式は施行規則の別記様式第4号で決まっています。書く項目は次のとおりです。

白地に黒の文字と枠線で、営業所に掲げるときはA4の大きさです。2024年3月までに届け出ていた業者は、受理番号の欄に、旧届出証明書の番号を書く決まりになっています(京都府警・福島県警の記載要領)。

注意したいのは、古い届出証明書を掲げていても、標識を掲げたことにはならない点です。京都府警と福島県警の案内は、どちらもそう明記しています。

サイトへの掲載が要らない業者

標識のサイト掲載は、次のどちらかに当たる業者には求められません(施行規則6条)。

福島県警の案内によると、会社の役員や個人事業主本人はこの「従業者」に数えず、探偵業務に就かない事務員は数えます。また、サイトの運営を他社に任せていても、自社のサイトがあれば掲載の義務は外れません。

つまり、小さな探偵事務所のサイトに標識がなくても、それだけで違反とは言えません。一方で、探偵業者でない人が標識やそれに似たものを掲げたりサイトに載せたりするのは禁じられていて、20万円以下の罰金です(法12条3項、20条)。

探偵業の届出を確かめる3つの方法

1. サイトや事務所の標識を見る

標識があれば、届け出た公安委員会と受理番号、主たる営業所かどうかが分かります。見るべき点は次の3つです。

探偵事務所は「○○探偵社」のような屋号で広告を出すことが多く、契約の相手は別の名前の会社ということがあります。屋号から運営会社をたどる手順は店名・サイト名から運営会社を調べる方法にまとめています。

2. 契約前の書面で公安委員会の名前を確かめる

探偵業者は、契約を結ぶ前に、決まった事項を書いた書面を渡して説明しなければなりません(法8条1項)。その書面には、業者の商号や代表者の氏名、届出をした公安委員会の名称、料金の概算額と支払時期、契約の解除、調査で得た資料の処分などを書きます。契約を結んだ後にも、契約内容を書いた書面を渡す義務があります(法8条2項)。

また、依頼者からは「調査の結果を犯罪や違法な差別などに使わない」という書面を受け取る決まりです(法7条)。この書面を求めない業者は、法律の決まりを守っていないことになります。

3. 分からなければ警察署に相談する

今回調べた範囲(警察庁の概況、京都・福島・千葉の各県警の案内)では、届出業者の一覧を公表しているという案内は見つかりませんでした。標識が見当たらず、書面にも公安委員会の名前がないなど、届出が確かめられない場合は、営業所を管轄する警察署に相談するのが確実です。

全国の届出は7,354営業所、4分の3以上が個人

警察庁の「令和7年中における探偵業の概況」によると、2025年末の届出数(営業所数)は7,354件で、前年より256件増えました。

主たる営業所の数で数えると、業者は6,674で、その77%が個人です。法人で営む業者は1,513ほどになります。

2025年中に探偵業法違反で検挙されたのは2件4人。行政処分は、営業の廃止命令と停止命令が0件、指示が19件(前年34件)でした。指示の理由は、変更届出書の虚偽、重要事項の書面の交付違反(各4件)などです。探偵業務に関して他の法律に違反して検挙された例として、軽犯罪法違反、ストーカー規制法違反、建造物侵入が挙げられています。

法人データで見える探偵業の会社(しょくばログの集計)

しょくばログの法人データ(国税庁の法人番号公表データがもとです)で、社名に「探偵」か「興信所」を含む株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社を数えました。

現存は207社、法人の探偵業者の14%ほど

社名に「探偵」を含む会社は126社(閉鎖16社、現存110社)、「興信所」を含む会社は115社(閉鎖18社、現存97社)でした。合わせて現存207社です。警察庁の概況にある法人の主たる営業所1,513に対して、13.7%にあたります。

社名に「探偵」「興信所」と入れない会社のほうがずっと多いということです。後で見るように、探偵業の届出をしているのは探偵事務所だけではありません。法人データの社名から探偵業者を拾い切るのは無理です。

「興信所」の会社は半分が合資会社

法人種別で見ると、「探偵」と「興信所」でまったく違う姿が出ました。

社名に「探偵」を含む現存110社:

社名に「興信所」を含む現存97社:

しょくばログの法人データ全体(現存の会社446万社)では、合資会社は2.0%、合名会社は0.4%しかありません。「興信所」の会社は、合資会社の割合が全体の約25倍、合名会社は約30倍です。合資会社・合名会社は、戦前から昭和の前半に多く作られた古い形の会社です(違いは合資会社・合名会社とはで詳しく書いています)。

「興信所」は、もともと会社や個人の信用を調べる業者を指した言葉です。帝国データバンクも、1902年から「帝国興信所」と名乗っていました(同社サイトの沿革)。社名に「興信所」を含む会社には、こうした古い信用調査の流れをくむ会社も混じっているとみられます。そうした会社が今も探偵業の届出をしているかは、社名だけでは分かりません。

一方の「探偵」は、合同会社が13.6%で、全体(9.2%)より多めでした。新しく作られた会社が「探偵」を社名に入れる傾向がうかがえます。

東京の割合は「探偵」が4割

本店所在地を見ると、社名に「探偵」を含む現存110社のうち、東京都が44社(40.0%)でした。法人データ全体の東京の割合は24.4%です。「興信所」の会社は東京23社(23.7%)で、全体とほぼ同じでした。次いで大阪21社、神奈川12社、福岡11社、愛知10社(両方の合計)です。

閉鎖率は「探偵」12.7%、「興信所」15.7%で、全体(13.5%)と大きくは違いません。ただ、「興信所」の閉鎖18社のうち14社は「登記官による閉鎖」でした。長く登記の更新がない休眠会社として整理されたものです。全体の閉鎖のうち登記官による閉鎖は27.8%なので、「興信所」の会社は、活動をやめたまま残っていた古い会社の割合が高いと読めます。

会社のサイトでは、探偵業の届出はどう見えるか

しょくばログが保存している会社の公式サイトの文章(31,159社)で、「探偵」か「興信所」に触れていたのは91社でした。ただ、ほとんどはアニメや番組の名前(名探偵が出てくる作品やバラエティ番組など)、取引先一覧に出てくる他社の名前でした。1社ずつ目で確かめて、探偵業を営んでいると読めたのは6社です。

探偵事務所でない会社が5社を占めました。債権回収や警備の会社が、業務の一部として探偵業の届出をしている例です。債権回収では、相手の今の住所を調べる仕事が出てくるためと考えられます。取引先が探偵業の届出をしているかは、こうした業種でも確かめる意味があります。

6社すべてが標識か番号を載せていた

6社はすべて、サイトに標識へのリンクか番号を載せていました。

ただ、書き方には気になる点もありました。1社は「探偵業許可証番号」として番号を書き、別の場所に「探偵業者届出書受理番号」として別の番号を書いていました。探偵業に許可はないので、前者は制度の名前を取り違えています。営業所が複数ある会社なので、番号が営業所ごとに違うのかもしれませんが、サイトからはどちらが何の番号か読み取れませんでした。

探偵事務所の1社は「東京都公安委員会 第○○号」と番号を書いていましたが、「受理番号」とは書いていませんでした。

なお、しょくばログの保存サイトは採用ページを持つ会社に偏っていて、小さな探偵事務所のサイトはほとんど入っていません。この6社から探偵業界全体の傾向は言えません。許認可の名前と番号の確かめ方は、会社の許認可を調べる方法にもまとめています。

探偵に依頼するとき・取引するときに見ておきたいこと

依頼者として

探偵業者は、探偵業務を探偵業者でない人に委託することも禁じられています(法9条2項)。下請けに出すと言われたら、その相手も届け出ている業者かを聞いてください。過去に処分を受けていないかは、会社の行政処分を調べる方法で探し方をまとめています。

会社として調査会社と取引するとき

採用や取引の前に調査会社を使う場合も、その会社が探偵業の届出をしているかを確かめておくと安心です。会社の信用を調べる調査と、特定の人の行動を調べる調査では、関わる法律が違います。企業の信用調査の費用感は信用調査の費用の相場で、取引先の反社会的勢力のチェックは取引先の反社チェックの方法で書いています。

探偵事務所に就職・転職するとき

探偵業者は、営業所ごとに従業者の名簿を備え、写真を貼り、採用日や任せる業務の内容を書く義務があります(法12条1項、施行規則4条)。従業者への教育も義務です(法11条)。業者が法人か個人事業主かは、個人事業主と法人の見分け方で確かめられます。

よくある質問

探偵業は「許可」ですか、「届出」ですか?

「届出」です。探偵業法4条により、営業所ごとに都道府県公安委員会へ届出書を出します。審査を経て与えられる許可ではないので、「探偵業許可番号」という言い方は正しくありません。標識に書くのは「届出書の受理番号」です。

探偵業の届出番号はどこで確認できますか?

業者が掲げる標識(営業所とサイト)と、契約前に渡される重要事項の書面です。標識には届け出た公安委員会と受理番号、書面には届け出た公安委員会の名称が書かれます。2024年3月までに届け出た業者は、旧届出証明書の番号を受理番号として使っています。

探偵事務所のサイトに標識がないのは違反ですか?

常時使用する従業者が5人以下の業者と、自社サイトを持たない業者は、サイトに載せなくてもかまいません。それ以外の業者がサイトに載せていなければ、決まりを守っていないことになります。営業所に掲げる義務は、規模にかかわらずあります。

届出証明書を見せてもらえば大丈夫ですか?

届出証明書は2024年4月1日に廃止されました。以前に交付された証明書は手元に残っていることがありますが、それを掲げても標識を掲げたことにはなりません。今は標識で確かめます。

社名に「興信所」とある会社は探偵ですか?

社名だけでは分かりません。「興信所」はもともと信用調査の業者を指した言葉で、しょくばログの法人データでは、社名に「興信所」を含む会社の半分が古い形の合資会社でした。探偵業の届出をしているかは、標識や書面で確かめてください。

データについて

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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