✍ 古家あきら | 2026-10-09 更新
スカウトメールの送り主の会社を調べる方法 — 届いたメールの会社名から実在を確かめる。人材系の社名は36.3%に同名の会社があった
先に結論です。スカウトメールの送り主は、まず「採用したい企業そのもの」なのか「人材紹介会社」なのかを見分け、そのうえで署名の会社名と所在地を、国税庁の法人番号公表サイトで照らし合わせれば確かめられます。 人材紹介会社なら、厚生労働省の人材サービス総合サイトで許可番号も確認できます。
社名だけで調べるのはおすすめしません。しょくばログの会社台帳で、社名に「人材」「キャリア」「エージェント」「スタッフ」「リクルート」「ヒューマン」のどれかを含む活動中の会社を数えると10,517社あり、そのうち36.3%は、法人格(株式会社・合同会社など)を外すと同じ名前の会社が全国のどこかにもう1社以上ありました。似た名前の会社を見て「実在する」と判断してしまう取り違えは、思っているより起きやすいということです。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「スカウトメールが来たが、この会社は本当にあるのか」「何度も同じ会社から来てうっとうしいが、どこの誰なのか」という声をよく見かけます。メールの文面だけでは送り主の正体が分かりにくいので、確かめる順番を整理しておきます。
スカウトメールの送り主は3種類ある
同じ「スカウト」でも、送っている側の立場はおおむね次の3つに分かれます。どれにあたるかで、確かめる場所が変わります。
- 採用したい企業そのもの … 転職サイトのスカウト機能を使って、企業の採用担当者が直接送っているもの。署名に企業名と担当部署が出ます。送信の作業を外部に任せている会社もありますが、届くメールの名義は企業です
- 人材紹介会社(転職エージェント) … 紹介会社のコンサルタントが「こういう求人があります」と送るもの。署名には紹介会社の名前が出て、採用する企業の名前は伏せられていることが多いです
- 転職サイトの運営会社 … サイトからの「おすすめ求人」「あなたに興味がある企業があります」といった自動の通知。送り主はサイトの運営会社です
迷ったら、署名欄と送信元のアドレスを見ます。企業のドメインなのか、紹介会社のドメインなのか、転職サイトのシステムから送られているのかで、だいたい見当がつきます。
法律の上では、立場ごとに必要な手続きが違う
ここは職業安定法の条文で確かめておきます(e-Gov法令検索で確認)。
- 人材紹介(有料の職業紹介) は、厚生労働大臣の許可が必要です(職業安定法30条)。許可を受けた会社には「○○-ユ-○○○○○○」の形の許可番号があります(厚労省の業務取扱要領の例は「01-ユ-300005」)
- 求職者の情報を集めて企業に提供するサービス は、法律では「特定募集情報等提供」と呼ばれ、事業として行うには厚生労働大臣への届出が必要です(同法4条・43条の2)。登録した人の情報を企業に見せる仕組みのサービスは、この定義に照らして扱いが決まります
- 企業・紹介会社・求人メディアのいずれも、求人の情報を出すときは虚偽の表示や誤解を生む表示をしてはならないと定められています(同法5条の4)
つまり、人材紹介会社を名乗るスカウトなら「許可番号があるか」が、まず最初の確認ポイントになります。許可番号の読み方は派遣会社・人材紹介会社の許可番号を確認する方法に詳しく書いています。
手順:届いたスカウトの会社を確かめる
1. 署名から「会社名・所在地・電話番号・送信元アドレス」を書き写す
メールの末尾の署名を、そのまま書き写します。会社名は「株式会社」の位置まで正確に。所在地が書いていなければ、それ自体をメモしておきます。送信元アドレスのドメイン(@の後ろ)も控えます。
2. 国税庁の法人番号公表サイトで社名と所在地を照合する
国税庁法人番号公表サイトで社名を検索し、出てきた候補の所在地が署名の所在地と合うかを見ます。同じ名前の会社が複数出てきたら、所在地で絞ります。ここで候補が1社に決まれば、その会社は登記上は実在しています。手順の細かいところは法人番号の調べ方にまとめています。
3. 人材紹介会社なら、許可番号を人材サービス総合サイトで引く
署名やサイトに「有料職業紹介事業 許可番号 ○○-ユ-○○○○○○」が書いてあれば、厚生労働省の人材サービス総合サイトで番号か社名を検索し、許可の会社名・所在地が署名と合うかを確かめます。番号が書いていなければ、社名で検索してみます。
4. 送信元ドメインと会社サイトを突き合わせる
送信元アドレスのドメインが、その会社の公式サイトのドメインと同じかを見ます。会社サイトのドメインの見方は会社のドメインから実在を確かめる方法が参考になります。転職サイトのシステムから送られている場合は、サイト上でその企業のページを開き、企業名と所在地を手順2の結果と比べます。
5. 採用する企業の名前が伏せられているときは、聞いてよい
紹介会社のスカウトでは、採用する企業名が最初は伏せられていることがよくあります。応募を決める前に「どの会社の求人か」を確認したい、と返信するのは失礼ではありません。企業名が分かったら、その会社についても手順2を繰り返します。会社の実在や倒産の確かめ方は会社が実在するか・倒産していないかを確かめる方法にまとめています。
うちのデータで見た「人材系の社名」と許可番号
ここからは、しょくばログが持っているデータで数えた結果です。
人材系に見える社名は10,517社、重複が多い
国税庁の法人番号データをもとにした会社台帳で、閉鎖していない株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社は4,422,900社ありました。このうち社名に次の語を含む会社を数えた結果です(1社が複数の語を含むことがあるので、語ごとの合計は総数と一致しません)。
- スタッフ … 3,635社
- ヒューマン … 2,553社
- キャリア … 1,873社
- エージェント … 1,863社
- 人材 … 599社
- リクルート … 92社
- いずれかを含む … 10,517社(活動中の会社の0.24%)
この10,517社のうち、全国に完全に同じ商号の会社が他にもあるのは26.6%(2,795社)、法人格を外すと同じ名前の会社が他にもあるのは36.3%(3,815社)、同じ都道府県の中に同じ商号の会社が他にもあるのは9.0%(946社)でした。いちばん多い商号は、全国に56社ありました。
「株式会社〇〇キャリア」と「〇〇キャリア株式会社」は別の会社です。スカウトの署名と、検索で見つけた会社の「株式会社」の位置まで合っているかを必ず見てください。
なお、社名に「スタッフ」「ヒューマン」が入っていても、人材の仕事をしているとは限りません。社名は手がかりの一つでしかなく、何の会社かは事業内容や許可の有無で判断します。
会社サイトで許可番号を載せているのは、「人材紹介」に触れたサイトの48.6%
しょくばログが保存している会社のホームページ(文字として読めた31,159社分)で、語の有無を機械的に数えました。
- 「人材紹介」または「有料職業紹介」という語が出てくるサイト … 1,273社(4.1%)
- そのうち「○○-ユ-○○○○○○」の形の許可番号が載っているサイト … 619社(48.6%)
- そのうち法人番号(13桁)まで載っているサイト … 41社(3.2%)
- 「スカウト」という語が出てくるサイト … 279社(0.9%)
「人材紹介」という語は、紹介会社のサイトだけでなく、紹介会社を使って採用している会社のサイトにも出てきます。それでも、許可番号の形の文字列が載っているのは半分弱でした。サイトに許可番号が見当たらないことだけで「無許可」と決めつけず、人材サービス総合サイトで社名から引いてみるのが確実です。
法人番号まで載せているサイトはわずかでした。署名に法人番号が無いのは普通のことなので、手順2のように社名と所在地から法人番号を引く前提で考えておくのがよいと思います。
気をつけたい「よくある取り違え」
- 紹介会社の名前を、採用する企業の名前と思い込む。署名の会社は紹介会社で、求人を出している会社は別、というのが普通です
- 転職サイトの名前を、会社名と思い込む。サービス名と運営会社の社名が違うことはよくあります。サイトの「運営会社」欄で社名を確かめます。店名やサービス名から会社を探す方法は店名・サイト名から運営会社を調べる方法に書いています
- 似た名前の別会社を「実在する」と判断する。上のデータのとおり、人材系の社名は同じ名前が多い分野です。所在地まで合わせます
- 求人の条件をメールの文面だけで判断する。スカウト文面の「年収○○万円以上」などは、求人票の条件と照らし合わせます。求人票の読み方は架空求人の見分け方も参考になります
よくある質問
スカウトメールが何度も来てうっとうしいです。止められますか?
転職サイト経由のスカウトなら、多くはサイトの設定でスカウトの受け取りを止めたり、特定の企業をブロックしたりできます。紹介会社から直接来ている場合は、その会社に配信停止を伝えるのが早いです。どのサイト・どの会社から来ているかを、まず署名と送信元で確かめてください。
「あなたの経歴を見て」と書いてあるのに、経歴に合わない求人です。嘘のスカウトですか?
嘘とは限りません。条件で絞って多くの人に同じ文面を送る仕組みのスカウトもあります。送り主が実在する会社かどうかと、文面が自分に合っているかは別の問題として分けて考えると、判断しやすくなります。
送り主の会社が法人番号公表サイトで見つかりません。
社名の表記ゆれ(全角・半角、「株式会社」の位置、旧字体)を変えて検索してみてください。最近社名を変えた会社なら、旧社名で出てくることがあります。それでも見つからず、所在地や電話番号も書いていないなら、返信や個人情報の提供は慎重にしたほうがよいと思います。
人材紹介会社の許可番号が書いていないスカウトは、無許可ですか?
それだけでは分かりません。署名に許可番号を書かない会社もあります。人材サービス総合サイトで社名から検索して、許可の記録があるかを確かめてください。しょくばログの集計でも、「人材紹介」に触れた会社サイトで許可番号の形の文字列が載っていたのは48.6%でした。
しょくばログでスカウトの送り主の会社を調べられますか?
社名や法人番号で会社ページを開くと、登記上の所在地や、会社サイトから読み取れた情報を確認できます。スカウトの真偽そのものを判定する機能はありませんが、署名の所在地と登記の所在地を比べる用途には使えます。
まとめ
- スカウトの送り主は「採用したい企業」「人材紹介会社」「転職サイトの運営会社」の3種類。署名と送信元でまず見分ける
- 会社の実在は、署名の 会社名と所在地 を法人番号公表サイトで照合して確かめる
- 人材紹介会社なら、人材サービス総合サイト で許可を確認する(職業安定法30条で許可が必要)
- 人材系の社名は同名が多い。法人格を外すと36.3%に同じ名前の会社があったので、所在地まで合わせる
- 会社サイトに許可番号が無いことだけで判断しない。「人材紹介」に触れたサイトでも、許可番号の形が載っていたのは48.6%
数字について
- 社名の数字は、国税庁の法人番号公表サイトのデータをもとにしたしょくばログの会社台帳で、閉鎖していない株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社(4,422,900社)を、商号の文字列で数えたものです。「法人格を外すと同じ名前」は、商号から「株式会社」「有限会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」と空白を取り除いた文字列が一致するものを数えています。社名に語を含むことは、その会社が人材の事業をしていることを意味しません
- 会社サイトの数字は、しょくばログが保存している会社ホームページ(2026年6月時点で文字として読めた31,159社)から、語や番号の形の有無を機械的に数えたものです。許可番号は「2桁-ユ-6桁」の形の文字列を数えており、その番号が実際に有効な許可かどうかは照合していません
- 許可・届出・表示の定めは、e-Gov法令検索の職業安定法(4条・5条の4・30条・43条の2)によります
- 集計スクリプト:scripts/analyze_scout_mail.py(2026-10-09 実行)