✍ 古家あきら | 2026-10-10 更新

採用代行に許可は要るのか — 「委託募集」と職業紹介の線引き。採用代行に触れる会社サイト98社で「委託募集」と書いていたのは0社

先に結論です。「採用代行」という名前の業務に、許可が要るか要らないかを一律に決める条文はありません。 職業安定法が見ているのは名前ではなく、その会社が何をしているか(応募を勧誘するのか、求人者と求職者をあっせんするのか)と、報酬を誰がどう払うかです。応募者を探して引き合わせるところまで踏み込めば有料職業紹介の許可(30条)が、依頼企業の募集を社外の会社に任せて報酬を払うなら委託募集の許可(36条)が、それぞれ絡んできます。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「採用代行を頼んだ会社に許可の番号が見当たらない」「そもそも許可は要るのか」という疑問に行き当たります。会社サイトを数えてみると、採用代行やRPOに触れていたのは31,159社のうち98社(0.31%)で、そのうち「委託募集」という言葉を書いていた会社は0社でした。許可の話は、サイトの外で確かめるしかない状況です。

条文と厚生労働省の資料を読んで確認できたことだけを書きます。確認できなかったことは、その都度そう書きます。

「採用代行」は法律の言葉ではない

職業安定法の4条(定義)には「職業紹介」「労働者の募集」「募集情報等提供」といった言葉が並びますが、「採用代行」も「RPO」も出てきません。採用代行は業界の呼び名で、中身は会社によってまちまちです。

同じ「採用代行」でも、どれにあたるかで条文の当てはまり方が変わります。「許可は要りますか」と聞かれて「場合によります」としか言えないのは、このためです。

職業安定法4条5項は、「労働者の募集」を、労働者を雇用しようとする者が自ら、または他人に委託して、労働者になろうとする者に対し、その被用者になることを勧誘することと定めています(e-Gov法令検索で確認。厚生労働省の「募集・求人業務取扱要領」令和7年6月版も同じ4条5項に触れています)。採用代行の会社が「応募を勧誘する」役を担うかどうかが、最初の分かれ目です。

委託募集:許可がいる場合と、届出で足りる場合

36条(委託募集)は3つの項でできています。e-Gov法令検索で条文を読んで確認しました。

「被用者以外の者」には、社外の会社が当たります。依頼企業の従業員が募集をするのは直接募集で、事前の許可や届出はありません。厚生労働省の取扱要領には、民間の労働者募集について「委託募集については許可制又は届出制とし、文書募集及び直接募集については許可制や届出制等による事前の規制を行っていない」とあります。第三者が間に入る委託募集だけを、労働者保護の観点で事前にチェックする仕組みです。

同じ要領から、実務に関わる点がいくつか読み取れました。

最後の点は見落とされがちです。親会社の採用を子会社が担うグループ内の採用代行も、法人が別なら委託募集の枠に入るということです。

もう一つ、39条と40条も押さえておく価値があります。39条は、募集に応じた労働者から、募集に関して報酬を受け取ることを禁じています(いかなる名義でも)。40条は、募集を行う者が、被用者の賃金などを払う場合と、36条2項で認可を受けた報酬を与える場合を除いて、報酬を与えてはならないと定めています。認可を受けない形で報酬を払うこと自体が、40条の制限に触れる構造になっています。

職業紹介:あっせんまで踏み込むと有料職業紹介の許可になる

4条1項は、職業紹介を「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすること」と定めています。4条3項で、手数料や報酬を受けて行う職業紹介を「有料の職業紹介」とし、30条1項は、有料の職業紹介事業を行おうとする者は厚生労働大臣の許可を受けなければならない、と定めています。

先ほどの取扱要領には、委託募集と職業紹介の境目について、次の趣旨の記載がありました。

この3点から、採用代行を頼む側が見るべき分岐がかなりはっきりします。依頼先が有料職業紹介の許可を持っていて、候補者を探して紹介する形なら、委託募集の許可は基本的に要りません。 逆に、許可を持たない会社が、依頼企業の名前で応募を勧誘して月額で報酬を受け取る形なら、委託募集の許可の話になる、というのがこの要領の定義からの素直な読みです。

ここは私たちの読みで、「採用代行」を名指しして許可の要否を述べた厚生労働省の資料は、今回確認した範囲では見つけられませんでした。個別の契約内容によって結論が変わるので、迷う場合は管轄の都道府県労働局か弁護士に契約書を見せて確認してください。

許可がないまま行うとどうなるか

罰則は、e-Gov法令検索で64条・65条を読んで確認しました。

条文は「違反行為をした者」を処罰すると書いています。36条1項の名宛人は労働者を雇用しようとする者(依頼企業側)なので、許可なく報酬を与えて募集に従事させた場合は、依頼企業も違反行為をした側になり得ます。「業者に任せたのだから自社は関係ない」とは言い切れません。ただし、実際に誰がどう処罰されるかは個別の事実で変わるため、ここでは条文の構造だけを書いておきます。

依頼する前に確かめる順番

採用代行を頼む前に、次の順で確かめると取り違えが少なくなります。

1. 何をしてもらうのかを、契約書の言葉で書き出す

「応募者への連絡」「面接調整」「スカウト送信」「候補者の紹介」など、業務を具体的な動詞に直します。応募を勧誘する行為が入っているか、候補者のあっせんが入っているかが、許可の要否を考える材料です。

2. 報酬の払い方を確かめる

月額固定か、成果(採用決定)に連動するか、応募者側から何か受け取るのか。応募者から報酬を受け取る形は、39条で禁じられています。

3. 有料職業紹介の許可があるか確かめる

厚生労働省の人材サービス総合サイトで社名を検索すると、許可の記録を引けます。番号の読み方は 派遣会社・人材紹介会社の許可番号を確認する方法 にまとめてあります。

4. 許可がない場合は、委託募集に当たらない設計かを確かめる

事務や運用の代行にとどまり、応募の勧誘やあっせんを自社の社員が行う設計なら、許可の問題になりにくい、というのがこの記事の整理です。この線引きが微妙な場合ほど、契約の前に労働局に聞くのが確実です。

5. 会社の実在を確かめる

許可の話とは別に、そもそもその会社が実在し、所在地や代表者が登記と合っているかも確認しておくと安心です。手順は 会社の許認可を調べる方法 と、スカウトメールの送り主の会社を調べる方法 が参考になります。採用代行の会社が出している求人については、ハローワークの求人を出している事業所を調べる方法 や 架空求人の見分け方 も合わせて読んでおくと、取り違えを減らせます。

うちのデータで見た「採用代行」に触れる会社サイト

ここからは、しょくばログが保存している会社ホームページ(文字として読めた31,159社)を機械的に数えた結果です。「採用代行」「RPO」「採用アウトソーシング(採用業務代行を含む)」のいずれかの語に触れていたサイトを、まとめて「採用代行系」と呼びます。

採用代行系は98社、全体の0.31%

会社サイトを持つ会社の中では、採用代行を前面に出している会社はごく一部です。なお、この数は会社サイトの文面に語があった会社の数で、採用代行を事業にしている会社の総数ではありません。

98社のうち「委託募集」に触れていたのは0社

98社の文面で、許可・届出まわりの言葉を数えると次のとおりでした。

参考までに、31,159社全体では「委託募集」の語があったのは5社、「有料職業紹介」は780社、許可番号の形は644社(2.07%)でした。

読み取れることは2つあります。

1つめ。採用代行を名乗る会社の多くは、委託募集ではなく人材紹介(有料職業紹介)の側に軸足があります。「人材紹介」の語があるのが68.4%、許可番号の形が載っているのが29.6%でした。取扱要領の整理にそのまま合う形です。

2つめ。許可番号の形が載っていたのは29社で、98社の約3割でした。「有料職業紹介」または「職業紹介」の語はあるのに許可番号の形が見当たらなかった会社が14社あります。ただし、サイトの別ページに載せている、あるいは番号を書かない会社もあるので、載っていないことは無許可を意味しません。許可の有無は、人材サービス総合サイトで引いてください。

東京に集まり、株式会社が98%

98社はいずれも、データベースで法人種別と所在地が確認できました。

業種は、国税庁のデータから推定できない会社が多く、分類不能が3分の2を占めるため、傾向を断言できるほどの精度はありません。ただ、東京と株式会社への偏りは、他の数字に比べてはっきり出ています。また98社はすべて活動中の会社で、登記上の閉鎖が確認された会社はありませんでした。

商号では見分けられない

商号に「採用」を含む活動中の会社(株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社)は41社、「RPO」を含む会社は0社でした。商号に「人材」を含む会社は599社です。採用代行を扱っている会社かどうかを、社名から見分けることはできません。サイトを確かめるか、依頼先に業務の中身を聞く必要があります。

よくある質問

採用代行を頼むのに、依頼する企業側も許可が要りますか?

一律には要りません。依頼先が有料職業紹介の許可を持ち、候補者を紹介する形であれば、厚生労働省の取扱要領では委託募集の許可は基本的に不要とされています。許可のない会社に報酬を払って自社の募集に従事させる形なら、36条1項で依頼企業側が許可を受けなければならない立場になります。

採用代行の会社に、許可番号の掲載義務はありますか?

今回確認した範囲では、職業安定法の条文から「会社サイトに許可番号を載せる義務」を読み取れる箇所は確認できませんでした。実際、「人材紹介」に触れる会社サイトでも、番号の形が載っていない会社がありました。許可の確認は、人材サービス総合サイトで社名から検索する方法が確実です。

月額固定の採用代行なら、職業紹介ではないのですか?

報酬が月額固定でも、4条3項は手数料や報酬を受けて行う職業紹介を「有料の職業紹介」としているので、名目では区別できません。見るのは、求人者と求職者の雇用関係の成立をあっせんしているかどうかです。月額の中に候補者の紹介が含まれているなら、有料職業紹介の許可の問題になり得ます。

無許可の業者に頼んでしまったら、依頼企業も罰せられますか?

64条は「違反行為をした者」を処罰すると定めており、36条1項は雇用しようとする者を名宛人にしています。許可なく報酬を与えて募集に従事させれば、依頼企業が違反行為をした者にあたる可能性があります。具体的な事案での扱いは確認できませんでしたので、不安な場合は契約前に労働局か弁護士に相談してください。

しょくばログで、採用代行の会社の許可を調べられますか?

許可の有無の判定はできません。許可は厚生労働省の人材サービス総合サイトで確かめます。しょくばログでは、会社ページで登記上の所在地や、会社サイトから読み取れた情報(許可番号の形が載っているかなど)を確認できるので、サイトに書かれた情報と登記を照らし合わせる用途にはお使いいただけます。

まとめ

数字について

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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