✍ 古家あきら | 2026-09-24 更新
佐渡の老舗スポーツ用品店「太陽堂」が2度目の不渡り — 売上はピークの5億2,176万円から5,512万円へ。佐渡市に今も残る会社1,091社の46.7%が有限会社(DB実測)
先に結論です。太陽堂のニュースは「商圏の人口が減ると、売上が30年かけて約10分の1まで細り、最後は資金繰りが持たなくなる」という話です。 ピーク時に5億円を超えていた売上高は、直近の決算で5,512万円になっていました。
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、地方の会社のページほど「まだやっているのか」を確かめに来る人が多いと感じます。今回はこのニュースを入口に、佐渡市に本店がある会社を登記データで数え、島の会社がどんな形で続いているのか、外から何が分かって何が分からないのかを書きます。
出典:島内の老舗スポーツ用品店『太陽堂』人口減にあらがえず倒産へ 新潟県佐渡市(BSN新潟放送・2026年9月21日)
公表されている事実
報道で確認できる範囲は次のとおりです。推測は混ぜていません。
- 名称:株式会社太陽堂
- 所在地:新潟県佐渡市(国税庁の法人番号公表サイトの登録は佐渡市両津夷)
- 法人番号:7110001027628
- 創業:1946年
- 事業:佐渡島内で、官公庁・学校・一般個人向けにスポーツ用品を販売。事務用品や教材、家庭電気製品も扱っていた
- 売上高:ピークの1993年2月期は5億2,176万円、2026年2月期は5,512万円
- 不渡り:9月3日に2度目の不渡りを出した
- 原因:島内の人口減少などによる市況の低迷と販売不振(東京商工リサーチの調べとして報道)
- 負債:調査中
売上高の変化を計算すると、直近の売上はピーク時の約10.6%です。30年あまりで約9割が消えたことになります。従業員数は報道されていないため、ここでは数字を置きません。
「2度目の不渡り」は何を意味するのか
手形や小切手が期日に落ちないことを「不渡り」といいます。全国銀行協会の電子交換所の決まりでは、最初の不渡りから6か月以内に2回目を出すと「取引停止処分」となり、その後2年間、参加している銀行と当座取引や融資の取引ができなくなります。
銀行と取引ができない会社が事業を続けるのは難しいため、信用調査会社は2回目の不渡りを「倒産」として数えることが多くあります。報道の見出しが「倒産へ」となっているのはこのためです。ただし、この時点では破産や民事再生の申し立ては報じられていません。倒産の種類ごとの違いは破産・民事再生・会社更生・特別清算の違いを整理した記事にまとめています。
佐渡市の会社を登記データで数えてみた
しょくばログの元データである国税庁の法人データから、本店所在地が佐渡市の「会社」(株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社)を数えました。
- 佐渡市の会社(閉鎖済みを含む):1,338社
- そのうち閉鎖済み:247社(18.5%)
- 新潟県全体の閉鎖済みの割合:17.1%(61,552社中10,511社)
- 全国の閉鎖済みの割合:13.5%
閉鎖には、倒産だけでなく合併や休眠会社の整理も含まれます。「佐渡の会社は倒産が多い」とは言えません。言えるのは、登記上の会社が消えていった割合が全国より少し高い、ということまでです。
次に、今も残っている会社1,091社を会社の形で分けると、こうなりました。
- 有限会社:510社(46.7%)
- 株式会社:404社(37.0%)
- 合資会社:89社(8.2%)
- 合同会社:79社(7.2%)
- 合名会社:9社(0.8%)
全国で今も残る会社では、有限会社は32.0%、合資会社は2.0%です。佐渡市では有限会社が株式会社より多く、合資会社の割合は全国の約4倍でした。新潟県全体でも有限会社は40.6%で、全国より高めです。
有限会社は2006年から新しく作れなくなった形で、合資会社は古くから続く家業に多い形です。佐渡の会社は、新しく会社が生まれるより、昔からある会社が続いている割合が高いと、登記の形から読めます。有限会社で働くことについては有限会社に就職するのは不利なのかという記事に、合資会社の仕組みは合資会社・合名会社とはどんな会社かという記事に書いています。
ちなみに、佐渡市に本店があり社名に「スポーツ」を含む法人は5件で、そのうち2件はすでに閉鎖されていました。太陽堂は社名に「スポーツ」を含まないため、この数には入っていません。社名だけで業種を数える方法には限界があります。
不渡りが出ても、登記はすぐには「閉鎖」にならない
太陽堂の法人番号は、この記事を書いている時点で国税庁のデータ上「閉鎖」にはなっていません。不渡りは銀行との取引の話で、会社の登記には直接出てこないからです。破産が決まった場合でも、登記は手続きが終わるまで残ります。
「会社名で検索したら普通に出てきたから大丈夫」とは限りません。実例は破産決定した4社が国税庁データで閉鎖表示になっていなかった記事で詳しく書いています。
地域の老舗と取引する・働くときに見ておきたいこと
特定の会社を責める話ではなく、一般的な見方として書きます。
1. 商圏の人口の動きを見る。 地域の学校や役所が主な取引先の会社は、子どもの数や自治体の予算の影響をそのまま受けます。 2. 扱う商品が増えていく動きに気づく。 本業と関係の薄い商品を足していくのは、売上を保とうとする工夫でもあり、本業が縮んでいるサインでもあります。どちらかは外からは分かりません。 3. 支払い条件の変化に気づく。 手形の期日が延びる、支払いが遅れるといった変化は、取引先がいちばん早く気づけるサインです。借入の状況を外から調べる方法は会社の借金を外から調べる方法の記事にまとめています。
同じ9月には、金沢で創業1918年の和菓子店の破産も報じられ、その記事で登記データを整理しています。信用調査会社の評点の読み方は帝国データバンク・東京商工リサーチの評点の見方の記事をどうぞ。
よくある質問
太陽堂の店はもう閉まっているのですか?
報道では、2度目の不渡りを出したことと、負債が調査中であることが伝えられています。店舗の営業を続けるのか、破産などの手続きに進むのかは、報道の時点では公表されていません。
不渡りを1回出しただけでも倒産なのですか?
1回目の不渡りでは、ただちに取引停止処分にはなりません。6か月以内に2回目を出すと取引停止処分となり、多くの場合ここで「倒産」として扱われます。
佐渡市の会社は危ない会社が多いということですか?
そうは言えません。閉鎖済みの割合18.5%には合併や休眠会社の整理も含まれます。この記事で言えるのは、古い形の会社が多く残っている地域だということです。
取引先や勤め先が心配なときは何を見ればいいですか?
登記簿(履歴事項全部証明書)で役員や本店の変更、官報で決算公告や破産の公告を確認できます。しょくばログの会社ページでも、法人番号・所在地・閉鎖の有無を無料で確認できます。
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※登記データの数値は、国税庁法人番号公表サイトのデータをもとに、しょくばログが2026年9月24日時点で集計したものです。「会社」は株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社の合計で、本店所在地の市区町村で数えています。