✍ 古家あきら | 2026-10-13 更新

RECEPTIONISTが東証グロース上場を承認、資本金1,100万円の会社が上場する──3度の減資と売上8.9億円。目黒区の2万8,613社のうち従業員数が公的データで分かるのは1.8%

先に結論です。クラウド受付システム「RECEPTIONIST」を提供する株式会社RECEPTIONIST(東京都目黒区青葉台、法人番号4011001109271)について、東京証券取引所が2026年10月6日にグロース市場への新規上場を承認しました。上場予定日は11月10日です。 東証に出された資料を読むと、2025年10月期の売上高は8億9,405万円、従業員は55名です。一方で資本金は1,100万円しかなく、2021年から2024年にかけて3度の減資をしていました。

この件から学べるのは、資本金の額は、会社の大きさも勢いも表さないということです。そして、こうした中身が見えるのは上場の手続きで資料が公開されるからで、上場しない会社では同じ数字がほとんど手に入りません。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「資本金はいくらですか」「従業員は何人ですか」という問い合わせをよく受けます。ところが、公的なデータで分かる範囲は思った以上に狭いのが実情です。今回の上場承認を題材に、その差を数字で確かめます。

この記事は株式の売買をすすめるものではありません。公開資料に書かれている事実を並べ、応募者や取引先が会社を見るときの手がかりとして一般化します。

出典:新規上場会社概要 株式会社RECEPTIONIST(東京証券取引所・2026年10月6日) 出典:新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部) 株式会社RECEPTIONIST(東京証券取引所・2026年10月6日提出)

東証の資料で確認できる事実

業績は次のとおりです。

5年で売上は約5倍になりました。赤字が続いた時期を経て、2024年10月期に黒字へ転じています。純資産は2024年10月期までマイナス(債務超過)で、2025年10月期の利益と増資でプラスに転じたと資料に書かれています。

資本金1,100万円の理由は「3度の減資」

資料の「発行済株式総数、資本金等の推移」には、減資が3回記録されています。

いずれも目的は「財務体質の健全化」で、減らした分を過去の赤字の穴埋め(欠損填補)にあてています。ベンチャーキャピタルなどから集めたお金は一度資本金に入りますが、先行投資で赤字が積み上がると、帳簿の上で穴埋めをするために資本金を減らすことがあります。

つまり、資本金が小さいのは「集めたお金が少ない」からではなく、「集めたお金を投資に使い、帳簿を整えた」結果でした。減資そのものの考え方は減資した会社はやばいのかを整理した記事で詳しく扱っています。

しょくばログの台帳で見たRECEPTIONIST

国税庁の法人番号データをもとにした台帳で、この会社は東京都目黒区青葉台3丁目6番28号の株式会社として登録されています。経済産業省のgBizINFOにも載っていますが、分かるのは代表者名と設立日(2016年1月21日)だけで、資本金と従業員数の欄は空欄でした。上場の承認を受けるほどの会社でも、公的なオープンデータからは規模が読み取れないということです。

同じ住所には52の法人が登記されていて、存続しているのは43法人です。そのうちgBizINFOで従業員数が分かるのは9法人でした。オフィスビルやシェアオフィスでは、同じ住所に多くの会社が並ぶのは珍しくありません。

目黒区の2万8,613社、従業員数が分かるのは1.8%

範囲を広げて目黒区全体を見ます。

全国でも同じ傾向です。存続している502万8,697法人のうち、従業員数が分かるのは14万4,768件(2.9%)、資本金が分かるのは4,719件(0.09%)にとどまります。

注意点として、gBizINFOは補助金の採択や届出などで国とやり取りした会社の情報が中心です。登録されていないことは、その会社に問題があることを意味しません。

応募者・取引先が持ち帰りたい3つのこと

1. 資本金だけで会社の規模を判断しない

今回のように、売上が8億円を超える会社でも資本金が1,000万円台ということはあります。逆に資本金が大きくても倒産する会社はあります(資本金が大きいのに倒産する理由)。資本金の調べ方と読み方は会社の資本金の調べ方にまとめています。

2. 赤字や債務超過の時期があっても、それだけで危ないとは言えない

この会社は5期のうち3期が赤字で、債務超過の時期もありました。成長のために先にお金を使う会社では、珍しいことではありません。見るべきは、売上が伸びているか、赤字の幅が縮んでいるかという流れです。スタートアップの見分け方はベンチャー企業の見分け方で触れています。

3. 上場しない会社は、自分で手がかりを集める

上場すると、従業員数・平均年収・業績の推移まで公開されます。上場していない会社では、登記の状態、所在地、代表者、決算公告が主な手がかりです。まず法人番号で会社を特定する方法を押さえ、取引の前には取引先の信用の調べ方を参考にしてください。上場で何が見えるようになるかは、9月に上場したakippaの記事でも扱いました。

運営者として思うこと

会社の情報を見るとき、資本金は目につきやすい数字です。登記簿にも求人票にも載っています。けれども今回の資料を読むと、資本金1,100万円の裏に、何度も資金を集めて投資し、帳簿を整え直してきた10年の経緯がありました。

数字はひとつだけ見ても、会社の姿はつかめません。複数の手がかりを組み合わせて、流れで見る。上場のニュースは、そのことを思い出させてくれる教材だと思います。

よくある質問

RECEPTIONISTはいつ上場しますか?

東京証券取引所の資料によると、上場予定日は2026年11月10日で、市場はグロース市場です。公開価格は10月30日に決まる予定です。

資本金1,100万円で上場できるのですか?

上場審査では資本金の額そのものより、事業の継続性や経営管理の体制などが見られます。この会社は、過去の赤字を穴埋めするために3度の減資をした結果、資本金が小さくなっています。

しょくばログで見ると、この会社の従業員数は分かりますか?

台帳とgBizINFOでは、代表者名と設立日は分かりますが、従業員数と資本金は空欄です。今回の数字は、東証に出された有価証券報告書(Ⅰの部)で初めて公開されたものです。

減資した会社は危ないのですか?

減資だけでは判断できません。今回のように、赤字の穴埋めで帳簿を整え、その後に黒字化する会社もあります。減資の目的と、その前後の業績の流れをあわせて見ることが大切です。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

← お役立ち記事一覧へ