✍ 古家あきら | 2026-10-13 更新

求人の勤務地が本社の住所と違うとき — 支店・現場・派遣先の見分け方(会社サイトの募集4,947件で、本社と別の都道府県が書かれていたのは4.6%、都道府県の記載がないのは29.7%)

先に結論です。求人の勤務地が本社の住所と違うのは、ほとんどの場合ふつうのことです。 支店・営業所・工場・店舗・工事現場・派遣先など、働く場所が本社とは別にあるだけ、というケースが大半です。確かめたいのは「違うかどうか」ではなく、①その勤務地が誰の、どういう場所なのか、②本社と勤務地の関係が会社の説明と合っているか、③労働条件の書面に同じ就業場所が書かれるか、の3つです。

うちの台帳で数えてみると、会社サイトの募集要項4,947件のうち、勤務地に本社と別の都道府県が書かれていたのは229件(4.6%)でした。むしろ目立ったのは、都道府県の名前がどこにも書かれていない募集が1,468件(29.7%)あったことのほうです。「本社と違う」よりも「どこで働くのか書いていない」ほうが、応募前に確かめる手間がかかります。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「求人に書いてある勤務地を地図で見たら、会社の住所と全然違う場所だった。大丈夫ですか」という相談を受けることがあります。気持ちはよく分かります。ただ、登記上の本店は「会社の住所」であって「働く場所」ではありません。この2つがずれるのは、会社の仕組みとしてはむしろ自然です。この記事では、ずれが出る典型と、それぞれの確かめ方を順に見ていきます。

本社の住所と勤務地は、そもそも別のもの

まず言葉を整理しておきます。

求人を出す側には、働く場所を示す義務があります。職業安定法第5条の3で、求人を出す会社は仕事の内容や賃金と並んで就業の場所を明示することになっています。また、労働基準法第15条と同法施行規則第5条で、雇い入れるときに書面で示す労働条件に「就業の場所」が入っています。2024年4月からは、雇い入れ直後の就業場所だけでなく「変更の範囲」(将来どこまで勤務地が変わりうるか)も書くことになりました。

つまり、求人票に書かれるべきなのは本社の住所ではなく「あなたが働く場所」です。本社と違っていて当然、という前提から入ると、見るべき点がはっきりします。

勤務地が本社と違う典型は5つ

本社と違う勤務地が書かれている求人は、だいたい次の5つのどれかに当てはまります。

1. 支店・営業所・事業所

全国や複数県に拠点を持つ会社の、本社以外の拠点で働くケースです。本社が東京、勤務地が大阪支店、というような形です。

確かめ方:会社の公式サイトの「会社概要」「拠点一覧」に、その支店・営業所が載っているかを見ます。会社法では支店の所在場所も本店の登記事項(会社法第911条第3項)なので、登記事項証明書を取れば支店の住所を確認することもできます。

2. 工場・物流センター・研究所

製造業や物流の会社では、本社は都市部、工場や倉庫は地方、という形がよくあります。

確かめ方:会社サイトの拠点一覧に工場名・所在地があるか。工場は外観や看板が地図サービスの写真で確認できることも多いです。

3. 店舗

飲食・小売・サービス業では、勤務地は「〇〇店」になります。本社の住所に行っても店はありません。

確かめ方:店舗名で検索して、その会社(またはその会社がフランチャイズ契約している本部)の店舗一覧に載っているかを見ます。フランチャイズ店の場合、店を運営している会社は本部とは別の会社であることがふつうです。雇い主がどちらなのかは、求人票の会社名で確かめます。

4. 工事現場・顧客先(常駐)

建設業の現場や、システム開発・設備保守で顧客の事業所に常駐する仕事です。勤務地が「〇〇市内の各現場」「顧客先(首都圏)」のように幅を持って書かれます。

確かめ方:現場や常駐先は案件ごとに変わるので、求人票では書き切れないことが多いです。面接で「直近の現場・常駐先はどのあたりか」「自宅から通えない範囲になることはあるか」「移動時間は労働時間に入るか」を聞くのが確実です。

5. 派遣先

派遣社員の求人では、雇い主は派遣会社、働く場所は派遣先の会社です。勤務地が派遣会社の本社と違うのは当然で、派遣先がまったく別の都道府県ということもあります。

確かめ方:労働者派遣法第34条で、派遣会社は派遣で働く人に対し、就業の場所を含む就業条件を明示することになっています。また、派遣会社は厚生労働大臣の許可を受けて事業をしているので、許可番号を確かめておくと安心です。読み方は派遣会社・人材紹介会社の許可番号を確認する方法にまとめています。

うちのデータから見えること — 「違う」より「書いていない」が多い

しょくばログでは、会社の公式サイトの採用ページから募集要項を保存しています(2026年6月11日〜26日に取得した分)。保存していた募集6,735件のうち、取り込みの際に勤務地の頭に誤った都道府県名が付いてしまった行が1,788件あったため、これを除いた4,947件(1,985社)を、国税庁の法人番号公表サイトにある本店所在地と突き合わせました。

勤務地の欄にどの都道府県が書かれているかで分けると、次のとおりです。

本社と同じ都道府県の3,250件でも、本社のある市区町村の名前が勤務地に入っているのは2,989件(92.0%)で、残りの261件(8.0%)は同じ県内の別の市区町村でした。

都道府県が書かれていない1,468件には、「本社」「当社工場」「各店舗」のように拠点名だけが書かれているもの、「全国」とだけ書かれているもの、市区町村名から書き始めているものが混ざっています。勤務地の欄に出てくる言葉を数えると、4,947件のうち「本社」が259件、「工場」が87件、「支店」が56件、「営業所」が51件、「事業所」が47件、「センター」が44件、「全国」が29件、「現場」が24件、「店舗」が16件でした。「本社」とだけ書かれていると、本社の住所を別に調べないと場所が分かりません。

会社単位で見ると、1割弱

勤務地に都道府県が書かれている募集を持つ1,406社で見ると、本社と別の都道府県での募集を1件でも出しているのは133社(9.5%)でした。そのうち88社は、都道府県が書かれた募集がすべて本社と別の都道府県でした。

業種別(会社数が40社以上ある業種だけ)では、ずれがよく出るのは次のとおりです。

運輸は営業所・センターが各地にあり、製造は本社と工場が離れていることが多い業種です。医療・福祉は施設が地域に根ざしているので、本社と同じ県で募集していることがほとんどでした。なお運輸は47社と数が少ないので、割合は目安として見てください。

従業員数(gBizINFOに載っている値)で分けると、10人未満では118社中6社(5.1%)、10〜49人では474社中28社(5.9%)、50〜299人では573社中65社(11.3%)、300人以上では240社中33社(13.8%)でした。規模が大きいほど拠点が増え、本社と別の県で募集する会社が増えます。

数字の読み方として、気をつけてほしい点が2つあります。1つは、ここで数えているのは「会社が自社サイトに出している募集」だけで、求人サイトに出ている求人全体ではないことです。もう1つは、社名で会社サイトと法人番号を結び付けているため、同じ社名の別の会社と結び付いてしまった例が少数混ざっている可能性があることです。ずれのある募集のすべてが「本当に本社と別の県で働く求人」とは言い切れません。

確かめる順番

勤務地が本社と違っていて気になったら、次の順番で見ていくと手戻りがありません。

1. 求人票の会社名で、法人番号公表サイトを検索する。本店所在地と、会社が実在していることを確かめます。調べ方は会社の住所を調べる方法に書いています 2. 会社の公式サイトの拠点一覧に、勤務地の拠点が載っているか見る。支店・工場・店舗のどれなのかが分かります 3. 勤務地の住所を地図で見る。そこに会社の看板や建物があるか、住所が実在するかを見ます。住所が実在しない、拠点一覧のどこにも載っていない、という場合は慎重になってください。架空求人を見分ける6つのサインも参考になります 4. 雇い主がどこかを確かめる。派遣・業務委託・フランチャイズでは、求人に出ている社名と、働く場所の会社が違います。雇用契約を結ぶのはどの会社かを確認します 5. 労働条件通知書の「就業の場所」と「変更の範囲」を見る。内定後にもらう書面に、求人票と同じ就業場所が書かれているかを照らし合わせます。転勤の可能性はここに出ます。読み方は転勤があるか応募前に調べる方法にまとめています

勤務地が「本社」とだけ書かれていたり、都道府県が書かれていなかったりする場合は、応募前に「勤務地の住所を教えてください」と聞いて問題ありません。働く場所は、会社が明示すべき労働条件そのものです。

気をつけたいずれ方

ふつうのずれがほとんどとはいえ、次のような場合は一度立ち止まって確かめたほうがいいです。

いずれも「本社と違うから危ない」のではなく、「勤務地の説明が足りない」ことが問題です。求人票全体の読み方は求人票の見方にまとめています。

よくある質問

求人の勤務地が本社の住所と違うのは怪しいですか?

それだけでは怪しくありません。支店・工場・店舗・現場・派遣先など、本社以外の場所で働く仕事はたくさんあります。うちのデータでも、都道府県が書かれた募集を持つ会社の9.5%が、本社と別の都道府県で募集していました。確かめたいのは、その勤務地が会社のどの拠点なのか、会社の説明と合っているかです。

求人票の勤務地に「本社」とだけ書かれています。本社の住所はどこで分かりますか?

国税庁の法人番号公表サイトで会社名を検索すると、登記上の本店所在地が出てきます。ただし登記上の本店と、実際に社員が働いている「本社事務所」が違う会社もあります。会社の公式サイトの会社概要と見比べて、違っていたら面接で確認してください。

勤務地が「全国」と書かれた求人は、どこに配属されるか分かりますか?

求人票だけでは分からないことがほとんどです。2024年4月から、労働条件通知書には就業場所の「変更の範囲」を書くことになったので、内定後の書面で範囲を確かめられます。応募前なら、面接で配属の決め方と直近の配属先の例を聞くのが早いです。

派遣の求人で、勤務地が派遣会社の住所とまったく違う県でした。問題ありますか?

問題ありません。派遣では働く場所は派遣先の会社なので、派遣会社の本社と違うのが当たり前です。派遣会社が厚生労働大臣の許可を受けているか(許可番号「派」で始まる番号)を確かめておくと安心です。

本社が東京で、勤務地が地方の求人です。本社の人と同じ待遇ですか?

求人票と労働条件通知書に書かれた条件がすべてで、本社勤務の人と同じとは限りません。地域手当や給与テーブルが勤務地で分かれている会社もあります。気になる場合は、勤務地ごとに給与や手当が違うかを応募前に聞いてみてください。

まとめ

参照した一次資料

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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