✍ 古家あきら | 2026-09-14 更新

不動産開発のHatch Outが負債108億円で破産 — 設立5年で本店を4か所動かし、破産決定の27日前に千葉から大阪へ移していた。登記の変更履歴は誰でも無料で読める

先に結論です。2026年8月31日、不動産開発の株式会社Hatch Outと関連の建築工事業・株式会社八建設が、大阪地裁から破産手続き開始決定を受けました。負債はHatch Outが約107億6,283万円(債権者約138名)、八建設が約1億3,252万円(同約4名)、合計約108億9,535万円で、帝国データバンクは「大阪の不動産会社では過去10年で最大の負債額」としています。 ただし、国税庁の法人番号公表サイトで変更履歴を引くと、この2社が本店を大阪市天王寺区に移したのは破産決定のわずか27日前と25日前で、それまでの本店はどちらも千葉県でした。

出典:株式会社Hatch Outなど2社|倒産速報(帝国データバンク・2026年9月14日) 出典:負債総額「108億9000万円」は大阪の不動産会社で過去10年最大「Hatch Out」など2社が破産(MBSニュース・Yahoo!ニュース)

しょくばログという会社データベースを運営していると、倒産のニュースを見た方から「この会社、うちのデータベースではどこにあることになっていますか」と聞かれることがあります。今回はその答えが「千葉市中央区」でした。倒産速報の見出しにある「大阪」と、6月時点の登記の「千葉」が食い違う理由を、登記の変更履歴という無料で見られる一次情報で追います。

公表された事実

帝国データバンクの倒産速報と、それをもとにした報道の要点です。

売上約15億7,600万円に対して負債が約107億円、つまり年商の約7倍の負債を抱えていたことになります。仕入れた土地の代金が先に出ていき、販売で回収する不動産開発の構造では、販売が止まった瞬間に借入だけが残ります。

しょくばログの登録は「千葉市中央区」だった

しょくばログが持つ全国579万1,529件の法人データ(国税庁の法人番号公表サイトの全件データ・2026年6月取り込み)でHatch Outを引くと、本店は「千葉県千葉市中央区富士見2丁目13番1号 第2山崎ビル7階」、登記の状態は「稼働中」、業種は「T:分類不能の産業」でした。八建設も同じデータでは「千葉県成田市並木町99番地11-2F」です。6月時点では、2社とも大阪府の会社ではありませんでした。

では、なぜ倒産速報は「大阪市天王寺区」なのか。国税庁の法人番号公表サイトには、商号と本店所在地の変更履歴が誰でも無料で見られる形で残っています。Hatch Outの履歴は次のとおりです。

八建設の履歴も同じ形です。

Hatch Outは設立から5年弱で本店を4か所動かし、最初の大阪(福島区・中央区)から千葉へ、そして破産直前に再び大阪へ戻ったことになります。法人番号の頭の「1200」は大阪法務局を示す登記所コードで(番号の構成は法人番号の構成と読み方に書きました)、会社法人等番号は本店を県外に移しても引き継がれるので、番号だけを見れば「大阪の会社」で正しく、6月時点の本店だけを見れば「千葉の会社」で正しい。どちらも嘘ではなく、見ている時点が違うだけです。

移転先の「筆ケ崎町2番10」には、しょくばログの6月時点のデータで15法人が本店を置いており、その多くが「303号」「1605号」「2805号」「3005号」のように号室付きで登記されています。30階建て級の建物の一室が本店になっている法人が集まる住所で、Hatch Outと八建設の「2904号」もその一室です。なお、破産直前に本店を移した理由は公表されていません。

「大阪の不動産会社で過去10年最大」の読み方

帝国データバンクの「大阪の不動産会社では過去10年で最大」という表現は、登記上の本店が大阪府にある会社として集計した結果です。東京新聞の報道では、同社は千葉市中央区を本社とし、千葉・東京・大阪に複数の拠点を持っていたとされています。実態としての営業拠点は首都圏、統計上の所在地は大阪という会社が、大阪の倒産統計の「過去10年最大」を塗り替えたわけです。

地域別の倒産統計や法人統計は、すべてこの「登記面の本店」で数えられます。しょくばログのデータでも、大阪府の法人48万3,822件のうち閉鎖済みは6万95件(12.4%)、大阪市天王寺区の株式会社6,294件のうち閉鎖済みは958件(15.2%)と数えられますが、破産直前に移ってきた会社が破産して閉鎖登記に進めば、その1件は「天王寺区の閉鎖」として数字に入ります。地域統計を読むときは、本店移転で数字が動く可能性を頭に置いておく必要があります。以前NFT会社が破産申し立ての翌月に社名を変え、翌々月に本店を移していた回でも書きましたが、破産の前後に登記が動く例は珍しくありません。

英字社名の株式会社48万4,719件は閉鎖率7.0%。「低いから安全」ではない

Hatch Outのように社名がアルファベットだけの株式会社は、どのくらいあるのでしょうか。しょくばログの579万件から「株式会社」を除いた部分が英字・スペース・記号だけの株式会社を数えると、全国で48万4,719件、うち閉鎖済みは3万3,730件(7.0%)でした。株式会社全体は292万971件のうち閉鎖済み40万7,175件(13.9%)なので、英字社名の閉鎖率はその半分です。大阪府でも英字社名の株式会社は5万745件、閉鎖済みは3,019件(5.9%)でした。

この数字を「英字社名の会社は潰れにくい」と読むのは誤りです。英字社名は近年設立された会社に多く、業歴10年未満の倒産が3割を超えた回で書いたとおり、若い会社はまだ閉鎖登記に至る時間が経っていないだけです。Hatch Out自身が設立5年目、閉鎖率の分母には入っていても分子にはまだ入っていない会社でした。閉鎖率が低いグループほど、「まだ結果が出ていない会社」が多く混ざっています。

取引前・応募前にできる3つの確認

1. 法人番号公表サイトで「変更履歴」を開く。 会社名で検索して詳細画面に進むと、商号変更と本店移転の履歴が日付付きで並びます。無料で、登録も要りません。直近数か月に本店が動いていれば、その理由を相手に聞く材料になります。会社の登記簿は誰でも見られるので、履歴をさらに深く見たい場合は登記事項証明書に進みます。 2. 求人票や名刺の住所と、登記の本店を突き合わせる。 今回の2社は登記上の本店は大阪市天王寺区の建物の一室で、報道された実態の本社は千葉市でした。両者が違うこと自体は違法でも珍しくもありませんが、応募先や取引先として「どこで仕事をしている会社か」を知るには、登記だけでは足りません。会社が実在するか・倒産していないかの確認方法にまとめた手順のうち、Googleマップと自社サイトの所在地確認をあわせて行うのが現実的です。 3. 登記が「稼働中」でも安心材料にしない。 破産手続き開始決定が出ても、清算が終わって登記官が閉鎖登記を入れるまでは、しょくばログでも国税庁のサイトでも「稼働中」のままです。新規取引先の確認事項で書いたとおり、登記の稼働・閉鎖は最低限の一次確認にすぎません。

よくある質問

Hatch Outは大阪の会社ですか、千葉の会社ですか

登記上の本店は2026年8月4日から大阪市天王寺区、2024年5月から2026年8月までは千葉市中央区、設立時の2021年9月から2024年5月までは大阪市(福島区、のち中央区)でした。帝国データバンクの「大阪の不動産会社」は現在の登記面での分類、東京新聞の「千葉市中央区を本社」は実態の拠点の話で、どちらも事実です。しょくばログの2026年6月取り込みデータでは千葉市中央区のままになっています。

本店を移した直後に破産するのは、よくあることですか

しょくばログでは本店移転と破産の関係を統計で示せるデータを持っていないため、「よくある」とも「珍しい」とも言えません。言えるのは、法人番号公表サイトの変更履歴を見れば、本店移転の日付と破産手続き開始決定の日付を並べて確かめられる、ということだけです。今回はHatch Outが27日前、八建設が25日前に同じ住所へ移っていました。

社名が英字だけの会社は信用できないのですか

そうは言えません。しょくばログの数字では、英字社名の株式会社48万4,719件の閉鎖率は7.0%で、株式会社全体の13.9%より低い水準です。ただしこれは英字社名の会社に若い会社が多く、まだ閉鎖登記に至っていないだけという面が大きく、「安全」の根拠にはなりません。社名の表記で会社の安全性を判断するのではなく、変更履歴・実態の拠点・登記の状態を個別に確かめてください。

破産した会社が、しょくばログで「稼働中」と表示されるのはなぜですか

しょくばログの「稼働中/閉鎖」は国税庁の法人番号公表サイトの閉鎖登記情報をもとにしています。破産手続き開始決定は裁判所の判断で、登記が閉鎖されるのは破産手続きが終結して登記官が職権で閉鎖登記をした後です。そのため、破産手続き中の会社は登記上「生きている」状態が続きます。Hatch Outと八建設も、2026年9月時点では閉鎖登記に至っていません。

数字の出所:帝国データバンク「株式会社Hatch Outなど2社」倒産速報(2026年9月14日)、MBSニュース(Yahoo!ニュース・2026年9月14日)、東京新聞デジタル(2026年9月14日)。本店の変更履歴は国税庁法人番号公表サイトの各法人の変更履歴情報(2026年9月14日閲覧)。法人数・閉鎖率は国税庁法人番号公表サイトの全件データ(2026年6月取り込み・579万1,529法人)をしょくばログで集計したもの。閉鎖率は閉鎖登記済みの法人の比率で、倒産率ではありません。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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