✍ 古家あきら | 2026-09-13 更新
NFT会社が債権者の申し立てで破産 — 申し立ての翌月に社名を変え、翌々月に本店を移していた。社名に「NFT・ブロックチェーン・メタバース」を持つ法人417件も数えた
帝国データバンクの倒産速報によると、東京都港区六本木のNFT・ブロックチェーン関連事業、株式会社FUTURO(旧商号・Xクリエーション株式会社)は、債権者から破産を申し立てられ、2026年9月2日に東京地裁から破産手続き開始決定を受けました。2013年10月設立で、NFTの商業利用に向けたサービス開発支援、NFTゲームの人材教育コミュニティ「Samurai Guild Games」の運営、芸能人のコレクションカードをNFTとして販売する事業などを手がけていました。近年は資金繰りが多忙化するなか取引先とのトラブルが散発して訴訟に発展するケースもあり、取引先への支払いに支障を来し、2026年6月に債権者から破産を申し立てられていた、というのが速報の経緯です。負債は現在調査中で、この記事の時点では金額は公表されていません。破産管財人は森田雄貴弁護士(長島良成法律事務所)、債権届け出期間は10月7日までです。
出典:株式会社FUTURO<旧商号・Xクリエーション(株)>(帝国データバンク 倒産速報、2026年9月9日)
出典:【東京】FUTURO(旧Xクリエーション)が破産 NFT・Web3事業、デジタルカード開発など展開(JC-NET、2026年9月)
出典:国税庁 法人番号公表サイト 株式会社FUTURO(法人番号 2011101068163)の変更履歴情報
先に結論を書きます。この会社は、債権者から破産を申し立てられた翌月に社名を変え、翌々月に本店を移しています。 国税庁の法人番号公表サイトの変更履歴には、2026年7月17日「商号又は名称の変更」(旧情報:Xクリエーション株式会社)、2026年8月5日「本店又は主たる事務所の所在地の変更」(旧情報:東京都港区虎ノ門1丁目17番1号 虎ノ門ヒルズビジネスタワー14F)と記録されています。理由は公表されていないので、この記事では推測しません。書きたいのは、社名と住所が変わっても、法人番号 2011101068163 は1桁も変わらなかった、という事実のほうです。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「取引先の社名が急に変わった」「請求書の住所が前と違う」という相談が来ます。今回の会社は、社名・住所・破産の3つが2か月に収まっているので、外から何がどう見えたのかを順に確かめる材料になります。個別の会社や関係者の是非ではなく、「社名と住所が変わった会社を、どう追いかけるか」という一般的な話として書きます。
変更履歴に残っている5行
国税庁の法人番号公表サイトは、法人番号が指定されて以降の商号と本店の変更を、事由の発生日つきで公表しています。この会社の履歴は次のとおりです。
- 2015年10月5日:法人番号の指定(法人番号制度の開始時。会社の設立は帝国データバンクによると2013年10月)
- 2021年1月20日:本店を移転。旧情報は東京都新宿区新宿1丁目36番12号
- 2022年4月8日:本店を移転。旧情報は東京都千代田区神田神保町1丁目18番1号
- 2026年7月17日:商号を変更。旧情報は「Xクリエーション株式会社」
- 2026年8月5日:本店を移転。旧情報は東京都港区虎ノ門1丁目17番1号 虎ノ門ヒルズビジネスタワー14F
つまり、帝国データバンクの速報にある「2026年6月に債権者より破産を申し立てられていた」の後に、商号変更と本店移転が続いています。この履歴は誰でも無料で見られます。登記簿を取れば役員や資本金の変更まで分かりますが、会社を調べる用途なら、まず法人番号公表サイトの変更履歴で「最近、名前や住所が動いたか」を見るのが早い。登記簿の取り方と、どこまで載るかは会社の登記簿は誰でも見られると履歴事項全部証明書と現在事項全部証明書の違いに書きました。
しょくばログのページには「旧商号・虎ノ門」のまま載っている
正直に書きます。2026年9月13日時点のしょくばログで法人番号 2011101068163 を引くと、商号は「Xクリエーション株式会社」、本店は「東京都港区虎ノ門1丁目17番1号 虎ノ門ヒルズビジネスタワー14F」のままです。しょくばログのデータは国税庁の公表データを取り込んで作っていますが、7月と8月の変更はまだ反映されていません。閉鎖の記録もありません。破産手続き開始決定が出ても、登記が閉鎖されるのは手続きが終わってからで、数か月から年単位のずれがあります。
これは、しょくばログに限らず、国税庁のデータを元にした会社データベース全般に起きることです。取り込みのタイミングによって、「社名で検索すると出てこない(新しい社名で入れたから)」「住所が違う(古い住所のままだから)」が起きます。社名で見つからないときの対処は会社名で検索しても出てこないときの調べ方に書きましたが、今回の会社がまさにその例で、「FUTURO」で探すと見つからず、法人番号で引くと旧商号で出てくる状態です。
だから、取引先を追いかける鍵は社名でも住所でもなく、法人番号です。合併や買収で社名が変わっても法人番号がどうなるかは合併・買収されたら法人番号はどうなるに書きましたが、商号変更・本店移転では法人番号は動きません。請求書や契約書に法人番号を書いてもらう習慣があると、社名が変わった日にも同じ会社だと確認できます。
「債権者申し立て」の破産とは何か
今回の破産は、会社が自分で申し立てた「自己破産」ではなく、債権者が申し立てたものです。破産法第18条は、債権者も破産手続き開始の申し立てができると定めています(債権の存在と破産の原因となる事実を疎明する必要があります)。実務では、支払いが止まった相手に対して、取引先や貸し手が裁判所に申し立てる形です。
出典:破産法(平成十六年法律第七十五号)第18条(e-Gov法令検索)
外から見て違うのは、時間の流れ方です。自己破産は、会社が弁護士に依頼して申し立て、比較的短い期間で開始決定が出ます。債権者申し立ては、今回の例で言えば6月の申し立てから9月2日の開始決定まで約3か月あり、その間、会社の登記は普通に動きます。今回の商号変更と本店移転は、この「申し立て後・開始決定前」の期間に行われました。 会社が生きているのか、手続きに入っているのか、登記だけ見ても分からない期間があるということです。倒産の統計に出てこない会社の終わり方は倒産統計に映らない会社の終わりに書きましたが、逆に「統計には出るのに登記は生きている」期間もある、というのが今回の話です。
社名に「NFT・ブロックチェーン・メタバース」を持つ法人は417件
ここからはしょくばログのデータです。国税庁の法人番号公表情報 5,791,529件から、社名に「NFT」「ブロックチェーン」「メタバース」「WEB3」「暗号資産」「仮想通貨」「トークン」「クリプト」(英字表記を含む)のいずれかを含む法人を抜き出しました。「INFTY」のように別の単語の一部として一致したもの5件と、「クリプトン」「クリプトメリア(杉の学名)」を含む37件は除いています。
- 417件。うち登記が閉鎖されているのは63件、閉鎖率15.1%
- 内訳は、NFT 65件、ブロックチェーン 60件、メタバース 30件、WEB3 9件、暗号資産・仮想通貨 20件、トークン 63件、クリプト 172件(重複あり)
- 東京都に235件(56.4%)。全法人では東京都の比率は23.5%なので、2.4倍。港区だけで59件(14.1%、全法人では2.8%)
- 法人種別は、株式会社226件(54.2%)、合同会社75件(18.0%、全法人では7.8%)、有限会社28件、その他88件(21.1%、全法人では10.1%)
- 閉じ方は、閉鎖63件のうち「清算の結了等」が54件(85.7%)、「合併による解散等」6件、「登記官による閉鎖」3件(4.8%)。全法人では「登記官による閉鎖」が閉鎖の27.5%を占めます
閉鎖率15.1%は、東京都の全法人の閉鎖率14.0%とほぼ同じで、「この分野の会社は特別に消えやすい」とはこの数字からは言えません。目立つのはむしろ閉じ方で、放置されて登記官に閉鎖される会社が少なく、8割以上が自分で清算を結了しています。もうひとつ目立つのは「その他」の法人が2割いることで、一般社団法人や協議会の形で作られたものが多く含まれます。
数え方の限界
- 社名に特定の語を含むかで抜き出しているので、社名にその語がなくてもNFT事業をしている会社(今回のFUTUROもXクリエーションも含みません)は入らず、逆に「トークン」や「クリプト」を別の意味で使う会社が混ざっている可能性があります
- 国税庁のデータには設立年月日と従業員数がありません。今回の417件のうち、国のgBizINFOに設立年が載っているのは5件、従業員数が載っているのは11件だけで、設立年ごとの分布は出せませんでした
- 「登記が閉鎖されていない=営業している」ではありません。破産手続き中でも登記は生きています
- 商号変更・本店移転の理由は公表されておらず、この記事は理由に踏み込んでいません
取引先の社名や住所が動いたときに、外からできること
1. 法人番号で引き直す。国税庁の法人番号公表サイトで、変更履歴の「事由発生年月日」と「旧情報」を見る。無料で、相手に通知は行きません 2. 短期間に商号と本店が続けて動いていたら、支払い条件を見直す前に、まず事情を聞く。理由は事業の再編、株主の交代、単なるオフィス移転など、いくらでもあります。動いた事実だけで判断しない 3. 支払いの遅れが先に出ていないかを社内で確認する。今回の速報でも、外に出た兆候は「取引先への支払いに支障」でした。信用調査会社の情報を使わずにどこまで見えるかは取引先の信用を調べる方法にまとめてあります 4. 契約書と請求書に法人番号を書いてもらう。新規取引の最初の確認項目は新規取引先の確認事項に書きました 5. 裁判所の公告や官報を確認する。破産手続き開始決定は官報に公告されます。ただし官報の検索は無料版だと直近分に限られます
よくある質問
社名が変わったら、法人番号も変わりますか?
変わりません。法人番号は法人の設立登記時に1回だけ指定され、商号変更や本店移転では同じ番号のまま、国税庁の公表サイトに「変更履歴」として旧情報が残ります。今回の会社も、Xクリエーション株式会社から株式会社FUTUROへ商号が変わり、虎ノ門から六本木へ本店が移りましたが、法人番号 2011101068163 はそのままです。合併で消滅する場合だけ、消滅した側の番号が使われなくなります。
債権者から破産を申し立てられた会社は、その後も普通に営業できるのですか?
裁判所が破産手続き開始決定を出すまでは、会社の法人格も登記もそのままで、商号変更や本店移転などの登記手続きもできます。ただし、開始決定が出ると会社の財産の管理処分権は破産管財人に移り、経営陣が自由に財産を動かすことはできなくなります。今回の会社は、6月の申し立てから9月2日の開始決定までの間に商号変更と本店移転をしています。
しょくばログで新しい社名を検索しても出てこないのはなぜですか?
しょくばログのデータは国税庁の法人番号公表データを元にしていて、取り込みの時点によっては直近の商号変更・本店移転がまだ反映されていないためです。今回の会社も、2026年9月13日時点では旧商号「Xクリエーション株式会社」、旧本店の虎ノ門で載っています。社名で見つからないときは、国税庁の公表サイトで法人番号を調べてから、番号で引き直すのが確実です。
「NFT」や「ブロックチェーン」を社名に持つ会社は、他の会社より消えやすいのですか?
しょくばログのデータで数えた限りでは、そうは言えません。社名にNFT・ブロックチェーン・メタバース・WEB3・暗号資産・仮想通貨・トークン・クリプトを含む417件の閉鎖率は15.1%で、東京都の全法人の閉鎖率14.0%とほぼ同じです。違いが出るのは閉じ方で、閉鎖したもののうち85.7%が自分で清算を結了しており、全法人で閉鎖の27.5%を占める「登記官による閉鎖」(長期放置)は4.8%しかありません。