✍ 古家あきら | 2026-09-14 更新
8月の倒産、業歴10年未満の「新興企業」が252件で構成比30.5%、3年未満は58.3%増 — 設立年が外から分かる6万3,954法人で数えると、10年未満は11.1%しかなく、その39.2%が東京、情報通信業の比率は老舗の3倍だった
2026年8月の企業倒産827件のうち、業歴10年未満の「新興企業」が252件(前年同月209件、20.6%増)で、構成比は30.5%。帝国データバンクの集計で、構成比が30%を超えたのは今年初めてです。内訳は、業歴3年未満が24件→38件(58.3%増)、3年以上5年未満が49件→60件(22.4%増)、5年以上10年未満が136件→154件(13.2%増)。一方で最多は業歴30年以上の251件(前年同月224件、12.1%増)で、3カ月連続で前年を上回っています。
出典:帝国データバンク「倒産集計 2026年 8月報」(2026年9月8日公表)
8月の倒産全体は827件(前年同月751件、10.1%増)、負債総額は1,406億9,200万円。産業別・地区別の中身は8月の倒産830件を産業別に読んだ記事に書いたので、今回は「業歴」だけを取り出します。しょくばログという会社データベースを運営していると、「若い会社は危ないのか」という問いを応募者からも取引先からもよく受けます。統計と登記データで、答えられる範囲を確かめます。
結論:倒産の3割は業歴10年未満。ただし「若い会社が倒産しやすい」と言うには分母が要る
先に結論です。
- 帝国データバンクの倒産統計では、業歴10年未満が全体の30.5%。倒産(負債1,000万円以上の法的整理・私的整理)に限ると、若い会社の比率は高い。
- ただし「30.5%」の分母は倒産827件で、日本の会社全体ではありません。うちのデータで設立年月日が外から分かる6万3,954法人に絞ると、業歴10年未満は11.1%。国のデータに載るような会社の分布と比べれば、倒産に占める若い会社の比率は3倍近く高い、とは言えます。
- 若い会社は東京に集まり、情報通信業が多く、小さい。この3つは倒産統計の「業歴」と重なって動くので、「若いから危ない」のか「小さいから危ない」のかは、統計だけでは切り分けられません。
つまり「若い会社=倒産しやすい」は統計として概ね正しい一方、個社を見るときは業歴より「規模の推移」と「業種」を先に見るべき、というのが今回の結論です。
帝国データバンクの数字:業歴3年未満が58.3%増
8月報の業歴別の記述をそのまま引きます。
> 業歴別にみると、「30年以上」が251件(前年同月224件、12.1%増)で最多となり、3カ月連続で前年を上回った。 > 業歴10年未満の『新興企業』〈「3年未満」(前年同月24件→38件、58.3%増)、「5年未満」(同49件→60件、22.4%増)、「10年未満」(同136件→154件、13.2%増)〉は252件(前年同月209件、20.6%増)となり、構成比は今年初めて30.0%を超えた。
同じ月報の「後継者難倒産」は50件(前年同月34件、47.1%増)で、業歴別では30年以上が23件で最多です。つまり8月は、業歴30年以上の老舗と、業歴10年未満の新興の両端が増えた月で、増え方の勢いは新興のほうが上(20.6%増 vs 12.1%増)でした。
ここで注意点が1つ。「構成比30.5%」の分母は倒産827件です。会社全体に占める業歴10年未満の比率が分からないと、「若い会社が倒産しやすい」とは言えないはずです。その分母を、うちのデータで数えてみます。
しょくばログの数字①:設立年月日が分かる6万3,954法人のうち、業歴10年未満は11.1%
国税庁の法人番号データには設立年月日がありません。うちのDBで設立年月日が分かるのは、gBizINFO(経済産業省)から取り込んだ6万3,954法人だけです(全579万1,529法人の1.1%)。この6万法人に絞って、2026年9月時点の業歴で分けると次のとおりです。
| 業歴 | 法人数 | 構成比 | |---|---|---| | 3年未満 | 1,496 | 2.3% | | 3年以上5年未満 | 1,586 | 2.5% | | 5年以上10年未満 | 4,042 | 6.3% | | 10年未満 小計 | 7,124 | 11.1% | | 10年以上20年未満 | 7,645 | 12.0% | | 20年以上30年未満 | 7,978 | 12.5% | | 30年以上 | 41,207 | 64.4% |
この6万法人は「補助金・許認可・届出などで国のデータに載った会社」なので、日本の会社全体より古い側に偏っています(業歴30年以上が64.4%)。その偏りを承知のうえで並べると、国のデータに載る会社の中で業歴10年未満は11.1%、倒産に占める業歴10年未満は30.5%。倒産統計の「若い会社の比率」は、少なくとも行政データに載るような会社の分布よりはるかに高い、とは言えます。
なお、法人番号データで業歴が確定できる法人種別もあります。有限会社は2006年5月以降つくれないので全社が業歴20年以上、合同会社は同じ2006年5月からの制度なので全社が業歴20年未満です。法人種別ごとの閉鎖率と閉じ方の違いは、今朝のメインバンク調査の記事で実数を出したので、そちらをどうぞ。
しょくばログの数字②:若い会社は「東京・情報通信・小さい」
同じ6万3,954法人で、業歴10年未満(7,124法人)と業歴30年以上(41,207法人)を、本店所在地・業種・従業員数で比べます。
本店所在地。 業歴10年未満の7,124法人のうち、東京都に本店を置くのは2,792法人で39.2%。業歴30年以上では41,207法人のうち8,122法人で19.7%、6万法人全体では25.2%です。若い会社は、古い会社の2倍の比率で東京に集まっています。
業種。 gBizINFOの業種分類(日本標準産業分類の大分類)が入っている法人に絞ると、業歴10年未満は945法人、30年以上は12,209法人です。上位を並べます。
| 業種(大分類) | 業歴10年未満 | 業歴30年以上 | |---|---|---| | サービス業(他に分類されないもの) | 24.0% | 20.4% | | 情報通信業 | 23.7% | 7.9% | | 学術研究、専門・技術サービス業 | 11.0% | 6.2% | | 建設業 | 10.2% | 18.1% | | 卸売業、小売業 | 7.7% | 19.7% | | 製造業 | 7.6% | 15.6% |
情報通信業は、若い会社では4社に1社、古い会社では13社に1社。逆に卸売・小売と製造業は、古い会社では合わせて35%を占めるのに、若い会社では15%です。帝国データバンクの8月報で件数が多かったのはサービス業(223件)・建設業(182件)・小売業(178件)ですが、若い会社の倒産と古い会社の倒産は、同じ「サービス業」でも中身が違う可能性が高い、と読んでおくべきです。
従業員数。 従業員数が数字で載っている1万7,057法人で、業歴ごとの中央値を出すと、業歴10年未満が31人、10年以上20年未満が46人、20年以上30年未満が121人、30年以上が157人でした。若い会社は小さい。倒産統計の「業歴」と「規模」は重なって動くので、「若いから危ない」のか「小さいから危ない」のかは、月報の数字だけでは切り分けられません。
若い会社を外から見るとき、何を確認すればいいか
以上を踏まえて、応募先・取引先が業歴の浅い会社だったときの確認点を4つにまとめます。
1. まず業歴を確定させる。法人種別で「有限会社なら20年以上」「合同会社なら20年未満」は登記簿を取らなくても分かります。株式会社は分からないので、会社の設立年を調べる方法のとおり、履歴事項全部証明書の「会社成立の年月日」(600円)か、公式サイト・gBizINFOで確かめます。 2. 業歴3年未満は「統計上、増え方が一番急」と知っておく。8月は58.3%増でした。ただし3年未満で潰れた38件を、3年未満の会社全体(数十万社規模)で割れば比率は小さい。「危ない」ではなく「まだ実績が短い」と読むのが正確です。 3. 業歴より規模の推移を見る。業歴10年未満の従業員数の中央値は31人。規模が小さい会社の見方は社員数が少ない会社は危ないのかで書いたとおり、少ないこと自体より「増えているか減っているか」を見ます。求人票の募集人数と現在の社員数の比も手がかりになります。 4. 業種の「年数感覚」を合わせる。情報通信業で業歴10年は珍しくありませんが、製造業や卸売業で業歴10年は「まだ新しい」側です。会社の設立年から見る老舗・中堅・新興の目安に業種ごとの目安を書いています。法人種別の読み方は法人の種類一覧へ。
よくある質問
業歴10年未満の倒産が「30%超」は過去最高ですか?
帝国データバンクの8月報の表現は「構成比は今年初めて30.0%を超えた」で、2026年の中で初めてという意味です。過去の全期間で最高かどうかは、この月報からは読めません。「過去最高」と書いてある記事があれば、出典を確かめてください。
しょくばログで会社の設立年は見られますか?
法人番号データに設立年月日はないため、全社では出せません。gBizINFOから取り込んだ6万3,954法人については会社ページに設立年を載せています。それ以外の会社は、法人種別(有限会社=20年以上、合同会社=20年未満)で上限・下限だけ分かります。正確な日付は履歴事項全部証明書で確認してください。
若い会社の39.2%が東京というのは、日本の会社全体でもそうですか?
今回の数字はgBizINFOに設立年月日が載る6万3,954法人の中での比率で、全国579万法人の分布ではありません。6万法人全体では東京都の比率は25.2%なので、少なくとも「国のデータに載る会社の中では、若い会社ほど東京に偏る」とは言えます。全法人での比率は、設立年月日が全社分ないため出せません。
「新興企業」の倒産が増えている原因は分かりますか?
8月報の業歴別の記述には原因の分析はありません。同じ月報の主因別では「販売不振」が659件(前年同月606件、8.7%増)で最多、不況型倒産が667件で全体の80%です。業歴別と主因別のクロス集計は公表されていないので、「若い会社の倒産の原因」を月報から特定することはできません。
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数字の出所:帝国データバンク「倒産集計 2026年 8月報」(2026年9月8日)。法人数は国税庁法人番号公表サイトの全件データ(2026年6月取り込み・579万1,529法人)、設立年月日・業種・従業員数はgBizINFO(経済産業省)をしょくばログで突合したもの。業歴は2026年9月時点で計算。