✍ 古家あきら | 2026-10-16 更新

業務委託の求人は怪しいのか — 雇用との違いと、募集している会社の確かめ方。採用ページのある会社サイト26,136社で業務委託を募集の文脈で書いていたのは514社(1.97%)、従業員9人以下の会社では5.39%でした

先に結論です。業務委託の求人は、それだけで怪しいわけではありません。ただし雇用ではないので、残業代・有給休暇・社会保険といった「雇われている人の決まり」が原則として当てはまりません。 応募する前に確かめるべきなのは、①本当に業務委託でよい働き方か、②報酬の決め方がはっきりしているか、③募集している会社が実在し、名前と所在地を出しているか、の3つです。

しょくばログという会社データベースを運営していると、会社の採用ページに「正社員・パート・業務委託」と雇用形態が並べて書かれているのをときどき見かけます。保存している会社公式サイトのうち、採用・求人・募集・応募といった言葉が出てくる26,136社で数えると、業務委託を募集の文脈で書いていたのは514社(1.97%)でした。少数派ですが、従業員9人以下の会社に限ると5.39%で、10人以上のどの規模(1.51〜1.80%)より3倍以上多くなります。

一方、しょくばログが集めた求人6,735件のうち、見出し・雇用形態・給与の欄で業務委託・委託・請負・フリーランスに触れていたのは9件(0.13%)だけでした。会社の自社サイトで出している求人は、ほとんどが雇用の募集です。業務委託の募集に出会うのは、求人サイトや副業サイト、SNSのほうが多いはずです。以下、雇用との違い、会社サイトに書かれていた中身、応募前の確かめ方を順にまとめます。

業務委託と雇用は何が違うのか

契約の相手が「働く人」ではなく「事業者」になる

雇用契約は、会社に雇われて、指示を受けて働き、その対価として賃金を受け取る契約です。労働基準法は「労働者」を、事業に使用されて賃金を支払われる者と定めていて(第9条)、雇われている人には労働時間や残業代、有給休暇の決まりが当てはまります。

業務委託は、会社が仕事を外部の事業者に任せ、その成果や作業に対して報酬を払う取引です。受ける側は個人であっても「事業者」として扱われるのが前提で、法律上の言葉としては請負や準委任の契約にあたります。

並べると、次のようになります。

名前が業務委託でも、働き方の実態で判断される

業務委託と書いた契約でも、出勤時間や場所を細かく指示され、仕事を断る自由がなく、時間単位で報酬が決まるような働き方なら、実態としては雇用に近いと判断されることがあります。労働者にあたるかどうかは、契約書の名前ではなく働き方の実態で判断されるとされています。個別のケースがどちらにあたるかは、この記事では扱いません。気になるときは労働基準監督署などの相談窓口に聞くのが確実です。

2024年11月からは、フリーランスとの取引に決まりができた

2024年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(いわゆるフリーランス法)が施行されました。従業員を使っていない個人や一人会社に業務委託をするとき、発注する側は、仕事の内容・報酬の額・支払期日などを書面かメール等ではっきり示さなければなりません(第3条)。

募集のしかたにも決まりがあります。従業員を使っている会社などが、広告などでフリーランスを募集するときは、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確で最新の内容に保たなければならないとされています(第12条)。業務委託の求人も「好きに書いてよい広告」ではない、ということです。

建設の現場で多い「一人親方」の働き方は、一人親方とは — 会社との違いにまとめています。正社員・契約社員など雇用の形の見分け方は求人の正社員・契約社員の見分け方が参考になります。

会社サイトで「業務委託」を数えてみた

しょくばログが保存している会社公式サイトのテキスト31,159社分(文字化けの多いものを除く)から、「業務委託」という言葉を探しました。

「業務委託」は「当社は○○の業務委託を受けています」のように、取引の説明でもよく使われます。そのため、採用に関わる言葉が近くにあるものだけを「業務委託で人を募集している」と数えました。

規模が小さい会社ほど多い

従業員数が分かる会社で、規模ごとに割合を出すと次のとおりです(分母は採用の話が載っている会社)。

小さい会社ほど、正社員を増やす代わりに、仕事ごとに外部の人と組むやり方をとりやすいのだと思います。小さい会社だから怪しい、という意味ではありません。

業種では生活関連サービスと専門サービスが多い

業種(しょくばログでの推定)ごとに、採用の話が載っている会社が300社以上ある業種で比べました。

生活関連サービスには美容・理容やトリミング、整体などが入ります。施術者が店と業務委託で契約する働き方が昔からある業種です。学術研究・専門技術サービスには設計やデザイン、士業などが入り、こちらも仕事単位で外部の専門家と組むことが多い業種です。

会社サイトに書かれていた「業務委託」の中身

募集の文脈で業務委託に触れていた514社について、その前後80字にどんな言葉が出てくるかを数えました。

いちばん多いのは、「正社員・パート・業務委託」のように雇用の形と並べて書く例でした。働き方の選択肢の一つとして業務委託を置いている会社が半分近くある、ということです。

気になるのは、報酬の決め方(報酬・歩合など)に触れていたのが1割に満たないことです。雇用なら月給や時給が書かれるのが普通ですが、業務委託の募集では、何をしたらいくら払われるのかがサイト上では分からないことが多いと言えます。応募の前後で必ず確かめたい点です。

一方、「初期費用」「登録料」など働く側がお金を払う言葉が近くにあったのは2社だけでした。会社の自社サイトで、応募者にお金を求める書き方をしている例はまれです。

求人票の目立つ欄にはほとんど出てこない

しょくばログが会社の自社サイトから集めた求人6,735件のうち、見出し・雇用形態・給与のどこかに業務委託・委託・請負・フリーランスを含むのは9件(8社)でした。雇用形態の欄が埋まっている2,968件に限っても、雇用形態に業務委託などと書いていたのは8件(0.27%)です。

9件の中身は、大工・一人親方(日給)、鉄筋工、トリマー、鍼灸師、Webデザイナーなど、もともと個人で仕事を請ける人が多い職種でした。給与欄は、空欄が5件、日給が2件、時給が2件です。

つまり、会社の自社サイトに載る求人で業務委託はごく少なく、職種もはっきりしています。逆に、職種があいまいで「誰でもできる」「スマホだけで」といった業務委託の募集は、会社の自社サイトではなく、SNSや掲示板から来ることが多いはずです。そうした募集の見分け方は架空求人の見分け方にまとめています。

応募前に確かめる順番

1. 募集している会社の名前と所在地が出ているか

最初に見るのは、募集主の会社名と所在地が書かれているかです。書かれていなければ、その時点で応募を急がないほうが安全です。

会社名があれば、国税庁の法人番号公表サイトで、その名前と所在地の法人が登録されているかを確かめます。手順は法人番号の調べ方にまとめています。登録があっても、すでに閉鎖していないか、所在地が求人と大きく違わないかも見てください。会社として活動しているかの確かめ方は会社が実在するか・倒産していないかを確認する方法が参考になります。

2. 業務委託でよい働き方か

次に、募集の中身と契約の形が合っているかを見ます。

時間も場所もやり方も会社に決められるのに業務委託、という募集は、雇用で募集すべきものを業務委託にしている可能性があります。その場合は、雇用で働けないかを聞いてみてもよいと思います。

3. 報酬・支払日・経費の負担を書面で受け取れるか

報酬の額(または計算のしかた)、支払期日、交通費や道具代などの経費をどちらが持つかを、契約の前に書面かメールで受け取ってください。従業員のいない個人として受ける場合、発注側にはこれらを示す義務があります。口頭だけで済ませようとする相手には注意が必要です。

4. 働く前にお金を払う話がないか

登録料、研修費、教材費、保証金など、仕事を始める前にこちらがお金を払う話が出たら、いったん立ち止まってください。会社サイトの集計ではこうした言葉はまれでした。まれなものが出てきたときほど、慎重に確かめる価値があります。

5. 会社の評判と、ほかの求人の出し方を見る

最後に、その会社がほかにどんな求人を出しているか、自社サイトに事業の説明があるかを見ます。雇用の求人も業務委託の求人も出している会社なら、働き方の選択肢として業務委託を置いている可能性が高いと言えます。会社の評判の調べ方はブラック企業の見分け方にもまとめています。

運営者として思うこと

業務委託は、時間や場所を自分で決めたい人には合う働き方です。会社サイトの数字を見ても、半分近くの会社は雇用の形と並べて選択肢として書いていて、業務委託だから怪しいとは言えません。

ただ、報酬の決め方まで書いている会社が1割に満たないのは、読む側にとって不親切だと感じました。業務委託で応募するときは、「何をしたら、いつ、いくら払われるのか」を自分から聞いて、書面で残す。それができる相手かどうかが、いちばんの見分けどころだと思います。

よくある質問

業務委託の求人は詐欺が多いのですか?

業務委託という契約の形そのものは、普通の取引です。しょくばログが保存している会社サイトでは、業務委託で募集している514社の45.1%が正社員やパートと並べて書いていました。ただし、会社名や所在地が出ていない、仕事の内容があいまい、先にお金を払うよう求められる、といった募集は注意が必要です。

業務委託でも社会保険に入れますか?

業務委託は雇用ではないので、会社の健康保険・厚生年金や雇用保険には原則として入りません。自分で国民健康保険と国民年金に入るのが基本です。会社サイトで業務委託の募集の近くに社会保険の言葉があったのは4.7%でした。社会保険の扱いが気になるときは、契約前に必ず確かめてください。雇用で働く場合に会社が社会保険に入っているかを確かめる方法は、会社が社会保険に加入しているか確認する方法にまとめています。

業務委託の報酬はいつ払われるのですか?

契約で決めた支払期日に払われます。従業員のいない個人として受ける場合、発注する側には報酬の額や支払期日を書面などで示す義務があります(フリーランス法第3条)。支払期日が書かれていない契約は、受ける前に確認しましょう。

業務委託と書いてあるのに、毎日決まった時間に出勤するよう言われました。

時間や場所、仕事のやり方まで細かく指示される働き方は、実態として雇用に近いと判断されることがあります。どちらにあたるかは個別の判断になるため、労働基準監督署などの相談窓口に聞くのが確実です。

514社という数字は、どう数えたのですか?

しょくばログが保存した会社公式サイトのテキスト32,838件のうち、文字化けの多いものを除いた31,159社分から、「業務委託」を含み、その前後80字に「採用」「求人」「募集」「応募」のいずれかがある会社を数えました。分母は、サイト全体のどこかにこれらの言葉がある26,136社です。

調べ方のメモ:会社サイトの集計は、しょくばログが保存している会社公式サイトのテキスト32,838件のうち、文字化けの多いもの(置換文字の比率0.5%超)を除いた31,159社分を使いました。規模は経済産業省gBizINFOの従業員数、業種はしょくばログでの推定です。求人の集計は、しょくばログが会社の自社サイトから集めた求人6,735件の見出し・雇用形態・給与の欄が対象です。法律の条文は、e-Gov法令検索で労働基準法第9条、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律第2条・第3条・第12条を確認しました。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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