✍ 古家あきら | 2026-10-07 更新
電気通信事業の届出を確認する方法 — 総務省の届出と登録、IT会社のどこまでが対象か(会社サイト234社のうち番号を載せていたのは115社)
先に結論です。電気通信事業を営むには、総務大臣への「登録」か「届出」のどちらかが必要で、大半の事業者は「届出」のほうです。 届出か登録かは、自社で通信回線の設備をどこまで持っているかで決まります。そして、届出を出した事業者の一覧は、総務省のサイトで誰でも見られます。
- 根拠の条文:電気通信事業法9条(登録)、16条(届出)。どちらの手続きも要らない場合は同法164条に定められています
- 登録になるのは大規模な回線設備を持つ事業者:端末側の回線が1つの市町村(特別区・政令指定都市は区)を超える、または中継側の回線が1つの都道府県を超える場合。それ以下の設備の事業者と、回線設備を持たない事業者は届出です(総務省関東総合通信局の説明)
- IT会社=全部が対象、ではない:他人の通信を取り次ぐサービスは対象になりえますが、通信の媒介でないサービスを、回線設備を持たずに提供する事業は、164条1項3号で法律の適用から外れます(例外あり)
- 無届けには罰則:届出をせず、または虚偽の届出で営業すると、185条1号で6月以下の拘禁刑か50万円以下の罰金。登録を受けずに営業すると、177条で3年以下の拘禁刑か200万円以下の罰金(または併科)です
- 確かめる場所:総務省「分野別データ:通信:事業者」のページに、登録電気通信事業者の一覧と、届出電気通信事業者の一覧があります
- 会社のサイトに番号を載せている会社は少数:しょくばログが保存している会社サイト31,159社のうち、「電気通信事業」の語がある会社は234社(0.8%)。そのうち届出番号か登録番号の形を載せていたのは115社でした
しょくばログという会社データベースを運営していると、「この会社は通信の会社なのか、ただのIT会社なのか」と確かめたくなる場面に出会います。法人番号や業種コードを見ても、電気通信事業の届出をしているかどうかは分かりません。届出は総務省に出すもので、国税庁の法人番号公表サイトには載らないからです。この記事では、届出と登録の区分、法律が適用されない範囲、総務省の一覧の探し方、そして会社のサイトに実際どう書かれているかを整理します。
電気通信事業の「登録」と「届出」:回線設備で分かれる
電気通信事業とは何か
まず、法律が「電気通信事業」をどう定義しているかです。電気通信事業法2条は次のように定めています(同法の2条3号・4号)。
- 電気通信役務:電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供すること
- 電気通信事業:電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業
「他人の通信を媒介する」とは、利用者同士のやりとりを取り次ぐことです。電話や、メール・チャットのようなサービスがこれにあたりえます。ただし、ここから先の線引きは条文だけでは決まらない場面があるので、迷うときは総務省の各地の総合通信局に相談するのが確実です。
2条5号は、電気通信事業者を「9条の登録を受けた者」と「16条1項の届出をした者」と定めています。つまり、登録か届出のどちらかを済ませた会社だけが、法律上の電気通信事業者です。
登録が要るのは大規模な回線設備を持つ場合
9条は、電気通信事業を営もうとする者は総務大臣の登録を受けなければならない、と定めています。ただし書きで、次の場合は登録を要しないとされています(9条1号・2号)。
- 設置する電気通信回線設備の規模と設置する区域の範囲が、総務省令の基準を超えない場合
- 設置する回線設備が、放送のための無線局の設備である場合(電波法7条2項7号に規定する基幹放送に加え、それ以外の無線通信の送信もする場合。前号に該当する場合を除く)
総務省関東総合通信局のページでは、基準を次のように説明しています(電気通信事業法施行規則3条1項)。
- 届出電気通信事業者:回線設備を設置する事業者のうち、端末系伝送路設備が1つの市町村(特別区・政令指定都市は「区」)の区域に留まり、中継系伝送路設備が1つの都道府県の区域に留まる事業者。回線設備を設置しない事業者(旧一般第二種電気通信事業者)もここに含まれる
- 登録電気通信事業者:上の要件を超える回線設備を設置して営む事業者
大手の通信会社や、全国規模で回線を持つ事業者は登録、地域のインターネット接続会社や、回線を借りて役務を提供する会社は届出、と考えるとイメージしやすいと思います。
届出で書く内容と、変更したとき
16条1項は、届出に書く事項として、氏名または名称・住所・代表者の氏名、業務区域、電気通信設備の概要(事業用電気通信設備を設置する場合)などを挙げています。届け出たあとの変更は次のとおりです。
- 氏名・住所・業務区域など(設備の概要を除く)が変わったら、遅滞なく届出(16条3項)
- 業務区域や電気通信設備の概要を変えようとするときは、あらかじめ届出(16条4項。総務省令で定める軽微な変更を除く)
事業をやめるときの手続きは、この記事では条文を確認していないので触れません。総務省の手続案内で確認してください。
IT会社のどこまでが対象か:164条で外れる範囲
法律の適用が外れる3つのケース
164条1項は、次の電気通信事業には「この法律の規定は、適用しない」と定めています。
- 1号:専ら1の者に電気通信役務を提供する事業(その1の者が電気通信事業者のときは、その者の事業に使う役務を除く)
- 2号:設備が同じ構内や同じ建物内にある場合など、総務省令の基準に満たない規模の設備で役務を提供する事業
- 3号:他人の通信を媒介する役務以外の役務を、電気通信回線設備を設置せずに提供する事業
ホームページ制作やシステム開発のような、通信を取り次ぐのではなく情報や機能を提供するサービスは、3号の範囲に入る場面が多いはずです。ここは、「IT会社だから電気通信事業の届出が要る」わけではないというところです。
ただし3号には例外がある
3号のカッコ書きで、次の役務は適用除外から外されています。ただし、総務大臣が総務省令で指定する者が提供するものに限ります。
- ドメイン名電気通信役務
- 検索情報電気通信役務
- 媒介相当電気通信役務
これらは総務大臣の指定を受けた者に限られるので、指定の有無は総務省に確認してください。サービスの内容によっては届出や登録の対象になりうる、という前提は持っておいてください。
外部送信規律は別の話
2023年の改正で、ウェブサイトなどが利用者の情報を外部へ送るときのルール(外部送信規律)が加わりました。これは、電気通信事業を営む会社が守る規律で、事業の届出とは別の話です。サイトのプライバシーポリシーに外部送信の説明があっても、それは届出をしているという意味にはなりません。後の集計でも、この語が出てくるサイトは分けて数えています。
届出を確認する方法:総務省の一覧を探す
一覧の場所
総務省の統計ページ「分野別データ:通信:事業者」に、次のものが並んでいます(2026年10月7日に確認)。
- 登録電気通信事業者一覧(Excel形式)
- 届出電気通信事業者一覧:「連絡が取れる届出電気通信事業者」の一覧と、「連絡が取れない届出電気通信事業者」の一覧に分かれる
- 電気通信事業者数の推移
「連絡が取れない」届出事業者の一覧が別に出ていることから、届出が載っていることと、いま連絡がつく状態であることは別だと分かります。一覧の件数は確認していません。
販売代理店(他社の電気通信サービスの契約を媒介する業務の受託者)の届出は、別の制度(電気通信事業法73条の2)です。一覧も別のページにあります。
確かめる手順
1. 会社名と所在地を確認する:法人番号公表サイトなどで、会社の正式な名称と所在地を確かめます。やり方は 法人番号の調べ方 にまとめています 2. 会社のサイトで届出番号を探す:会社概要や特定商取引法の表記に、「電気通信事業者届出番号」として載せていることがあります。番号の形は、あとで示すように「A-03-19313」のような、英字1文字・数字2桁・数字の並びです 3. 総務省の一覧で照合する:届出事業者の一覧(連絡が取れる/取れない)と、登録事業者の一覧を、社名と番号で探します。一覧のファイルは、年度や更新の日付も合わせて確認してください 4. 載っていなければ聞く:サイトに番号がなく、一覧にも見当たらない場合は、そもそも対象外の事業かもしれません。会社に「電気通信事業の届出は必要な事業ですか」と聞くのが早道です
届出番号が見つかったからといって、会社の信用が保証されるわけではありません。届出は事業を始めることを国に知らせる手続きで、国が内容を審査して認める「許可」とは違います。許可・認可・届出の違いは 会社の許認可を調べる方法 で整理しています。
会社のサイトは何を書いているか:234社のデータ
しょくばログは、法人番号に結びつけて会社の公式サイトを保存しています。そのうち文字化けなく読めた31,159社を対象に、「電気通信事業」という語がある会社と、その中身を数えました。
電気通信事業に触れているのは234社
- 「電気通信事業」の語がある会社:234社(0.8%)
- そのうち「電気通信事業者」の語もある会社:111社(47.4%)
- 届出番号の形(英字1文字-数字2桁-数字4〜6桁)が、「電気通信」の語の近くにある会社:113社(48.3%)
- 登録番号の形(「関第◯号」のように、総合通信局の名前と番号)がある会社:2社
- 番号の形のどちらかがある会社:115社(49.1%)
- 「届出」「登録」のどちらかの語が、電気通信事業の近くにある会社:152社(65.0%)
- 外部送信やクッキーの説明の語もある会社:27社(11.5%)
- 番号も、届出・登録の語も見当たらない会社:70社(29.9%)
届出番号の形の例は、サイトの記載では「A-03-19313」「F-23-00770」のようなものでした。英字の部分はA、E、F、C、D、Bなど複数あり、この記事ではその意味は確認していません。総務省の一覧で、番号の形式の説明を探してください。
最後の70社は、番号を載せていません。 利用規約やプライバシーポリシーで電気通信事業法に触れているだけのサイトや、事業の紹介で語を使っているサイトです。届出番号が見つからなくても、届出をしていないとは言えません。サイトに載せる義務は、確認した範囲では見つかりませんでした。
番号を載せているのは株式会社の東京の会社が中心
番号の形がある115社の内訳です。
- 法人の種類:株式会社112社(97.4%)、残りは3社
- 所在地:東京都68社(59.1%)、大阪府14社(12.2%)、神奈川県8社(7.0%)、愛知県4社
- 業種(日本標準産業分類):分類不能(T)52社(45.2%)、情報通信業(G)47社(40.9%)、不動産業・物品賃貸業(L)7社、電気・ガス・熱供給・水道業(E)4社、金融業・保険業(I)3社
情報通信業のサイトのうち、番号を載せているのは2%
保存しているサイトのうち、業種が情報通信業(G)の会社は2,103社です。このうち「電気通信事業」の語がある会社は93社(4.4%)、番号の形がある会社は47社(2.2%)でした。
つまり、情報通信業のサイトの約98%は、電気通信事業の届出番号を載せていません。 情報通信業は、ソフトウェア開発や情報処理・提供のように、先ほどの164条で適用が外れる事業が大きな部分を占めます。業種が情報通信業だから届出をしているとは、まったく言えません。一方、番号を載せている会社の半分近くは、業種が分類不能(T)です。登記の情報だけでは、本業が通信かどうかを判断しづらいことが分かります。
業種を調べる方法は 会社の業種を調べる方法、情報通信業の中でもSESを営む会社の見分け方は SES企業の見分け方 で数字をまとめています。
社名に「通信」「テレコム」が入る法人
台帳(国税庁の法人番号公表サイトのデータ、約579万法人)で、社名に「通信」か「テレコム」を含む法人を数えると7,827社でした。
- 登記上の閉鎖:1,375社(17.6%)。台帳全体の閉鎖率は13.2%(762,832社÷5,791,529社)、情報通信業(G)全体では15.4%(14,166社÷91,726社)
- 現存6,452社の業種:情報通信業(G)5,454社(84.5%)、建設業(D)576社(8.9%)、分類不能(T)395社(6.1%)
- 現存6,452社の法人の種類:株式会社3,276社(50.8%)、有限会社2,660社(41.2%)、合同会社201社(3.1%)
社名に「通信」が入っていても、通信販売や通信教育、通信工事の会社が含まれるので、社名から電気通信事業者かどうかは分かりません。 建設業が約9%いることが、その表れです。社名だけで判断せず、届出番号と総務省の一覧で確かめてください。有限会社が4割ほど残っているのは、2006年の会社法の施行より前からある会社が多いからと考えられます。
よくある質問
電気通信事業の届出は、誰が出す必要がありますか?
電気通信事業を営もうとする者で、9条の登録を受けるべき者でない人が、16条により届出をします。ただし、164条1項で法律の適用が外れる事業(専ら1の者に提供する場合、小規模の設備の場合、通信の媒介でない役務を回線設備なしで提供する場合)は、届出も要りません。迷ったときは総合通信局に相談してください。
届出と登録は、どう違いますか?
回線設備の規模で分かれます。端末側の回線が1つの市町村(特別区・政令指定都市は区)に留まり、中継側の回線が1つの都道府県に留まるなら届出、それを超えるなら登録です。回線設備を持たない事業者は届出です。登録のほうが規模の大きい事業者向けの手続きです。
届出をしている事業者は、どこで調べられますか?
総務省の統計ページ「分野別データ:通信:事業者」に、届出電気通信事業者の一覧と登録電気通信事業者の一覧があります。届出の一覧は、連絡が取れる事業者と、連絡が取れない事業者に分かれています。
届出をせずに電気通信事業を営むとどうなりますか?
届出をせず、または虚偽の届出で営業すると、185条1号により6月以下の拘禁刑か50万円以下の罰金です。登録を受けるべき事業者が登録を受けずに営業した場合は、177条で3年以下の拘禁刑か200万円以下の罰金、またはその両方になります。
会社のサイトに届出番号がないのは、届出をしていないということですか?
そうとは言えません。しょくばログの集計では、「電気通信事業」に触れるサイト234社のうち、番号の形を載せていたのは115社でした。そもそも電気通信事業の対象でない会社もあり、番号をサイトに載せる義務も確認できませんでした。確かめるなら、総務省の一覧を社名で探すのが確実です。
データについて
- 会社サイトの集計:しょくばログが法人番号に結びつけて保存している会社の公式サイトのうち、文字化けなく読めた31,159社が対象(2026年10月7日集計)。「電気通信事業」の語がある234社を抽出し、届出番号・登録番号の形、「届出」「登録」の語、外部送信やクッキーの語を数えました。番号の形は、「電気通信」の語の前60字から後30字までの範囲にあるものだけを数え、年号のような「英字-2桁-2026」は除いています。保存しているのはトップページなど一部のページで、サイト全体ではありません
- 社名の集計:国税庁の法人番号公表サイトのデータ(約579万法人)から、社名に「通信」か「テレコム」を含む法人を数えました。閉鎖は登記記録の閉鎖の有無で判定しています
- 条文:電気通信事業法(昭和59年法律第86号)を e-Gov 法令検索(法令API)で2026年10月7日に確認しました(2条・9条・16条・164条・177条・185条・187条。令和7年法律第46号による改正の施行後の版)
- 総務省の資料:総務省関東総合通信局「届出電気通信事業者及び登録電気通信事業者とは(電気通信事業法施行規則第3条第1項)」、総務省「分野別データ:通信:事業者」「届出電気通信事業者一覧」(いずれも2026年10月7日に閲覧)。一覧のExcelファイル自体は開いておらず、一覧に載っている事業者数や番号の形式は確認していません
- 個別の会社名は出していません。この記事は制度の仕組みとデータの紹介で、特定の事業者の届出の有無を判断するものではありません