✍ 古家あきら | 2026-09-28 更新

退職代行、主要52事業者のうち14がこの1年で「サービス停止」。使う前に運営している法人を確かめる方法。社名に「退職代行」を含む法人は台帳に3件だけ

先に結論です。退職代行を使う前に確かめたいのは、サービスの名前ではなく、運営している法人の名前と種類です。 帝国データバンクの調べでは、主要な退職代行52事業者のうち14事業者が、この1年でサービスを続けていることを確認できない状態になりました。しょくばログの台帳で社名に「退職代行」を含む法人は3件しかなく、サービス名から運営会社をたどるのは簡単ではありません。運営が民間の会社か、弁護士法人か、労働組合かで、頼めることの範囲も変わります。

出典:主要な退職代行事業者、1年間で2割超が「サービス停止」 新規参入相次ぎ価格競争が激化 業務の「グレーゾーン」で先行き不透明感も(帝国データバンク/PR TIMES、2026年9月23日)

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「退職代行の会社から連絡が来たが、本当にある会社なのか」「使おうとしているサービスの運営会社はどこか」といった理由で会社を調べる人がいることに気づきます。ここでは、調査で公表された数字と、しょくばログの台帳から数えられる数字だけを並べます。特定の事業者を勧めたり、良し悪しを言ったりする記事ではありません。

何が起きたのか(調査で確認できる事実)

帝国データバンクの発表によると、内容は次のとおりです。

背景として、発表は新しく参入する事業者が相次いで価格競争が激しくなったことに加え、退職条件の交渉や未払い賃金の請求など、弁護士の資格が必要な領域との境目があいまいで、いわゆる非弁行為のリスクへの関心が高まっていることを挙げています。今後は、サービスの内容や信頼性の差で事業者の二極化が進むとみています。

使う前に運営している法人を確かめる理由

サービス名と会社名は一致しないことが多い

しょくばログの台帳(国税庁の法人番号公表データが元)で、名前に「退職代行」を含む法人を探すと、見つかったのは次の3件だけでした。

退職代行のサービスは、覚えやすいブランド名で広告されることがほとんどです。運営している法人の名前は、サイトの下のほうにある「運営会社」や「特定商取引法に基づく表記」を見ないと分かりません。サービスが止まったときに誰に連絡すればいいのか、払ったお金をどこに請求するのかは、この運営法人で決まります。

運営の種類で、頼めることの範囲が変わる

一般に、退職代行の運営は大きく3つに分かれます。

帝国データバンクの発表が「グレーゾーン」と書いているのは、主に民間の会社が交渉にどこまで踏み込めるかという点です。退職と一緒に残業代や有給休暇の話もまとめて片づけたい場合は、最初から交渉できる運営形態かどうかを確かめておくと、あとで「それはできません」と言われずに済みます。

弁護士法人かどうかは名前で分かります。しょくばログの台帳では、名前に「弁護士法人」を含む法人は全国に2,085件あり、そのうち174件(8.3%)はすでに登記が閉じていました。名前に「労働組合」を含む法人は6,145件で、閉鎖は404件(6.6%)です。士業の法人の調べ方は、税理士法人・弁護士法人など士業法人の調べ方の記事に、労働組合の有無の調べ方は、会社に労働組合があるか調べる方法の記事にまとめています。

破産した退職代行会社は、台帳でどう見えるか

帝国データバンクが名前を挙げたスマートヤメマスの運営会社について、東京商工リサーチの速報で確認できる事実は次のとおりです。

出典:(株)スマートヤメマス(東京商工リサーチ TSR速報、2026年4月1日)

しょくばログの台帳で法人番号9011001163875を引くと、2026年9月28日時点で登記はまだ閉鎖になっていません。破産開始決定から6か月たっても、国税庁のデータ上は「営業中の会社」と同じ見え方をしています。

破産しても、登記が閉じるのは手続きが終わってからです。破産決定が出た4社を国税庁のサイトで引いた記事でも、4社とも「閉鎖」の表示にはなっていませんでした。法人番号で会社が見つかることは、その会社が今もサービスを続けていることの証明にはなりません。確かめ方は会社が実在するか・倒産していないか確認する方法の記事に書いています。

設立から1年半ほどでの破産でした。設立して間もない会社との付き合い方は、設立したばかりの会社に転職しても大丈夫かを整理した記事も参考になります。

使う人・受ける会社が確かめておきたいこと

これから退職代行を使う人

退職代行から連絡を受けた会社

よくある質問

使っていた退職代行のサイトが見られなくなりました。どうすればいいですか?

申し込んだときの画面やメール、支払いの記録を手元にそろえ、運営法人の名前と所在地を確かめてください。運営会社が破産していた場合、代金の返還などの請求は、裁判所が選んだ破産管財人を通じて行うことになります。退職そのものは、本人が会社に直接伝えることでも進められます。

社名に「退職代行」が入っていないサービスは怪しいのですか?

そうではありません。多くのサービスはブランド名で営業しており、運営法人の名前は別になっているのが一般的です。大切なのは、運営法人の名前・所在地・法人番号が表示されていて、それが国税庁の公表データと一致するかどうかです。

料金が安いサービスを選んでも大丈夫ですか?

料金だけでは判断できません。帝国データバンクの調査では平均料金は約2.7万円でした。これより大幅に安い場合は、退職の意思を伝える以外に何をしてくれるのか、追加料金がかからないかを確かめてください。

法人番号で会社が見つかれば、今も営業していると考えていいですか?

いいえ。破産開始決定から6か月たっても、国税庁のデータで「閉鎖」になっていない例があります。サービスのサイト、問い合わせ窓口への連絡、報道などをあわせて確かめてください。

まとめ

会社を辞めるときは、気持ちに余裕がないことが多いものです。だからこそ申し込む前に一度だけ、サービスの名前ではなく、運営している法人の名前と法人番号を確かめてください。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

← お役立ち記事一覧へ