✍ 古家あきら | 2026-09-28 更新
税理士法人・弁護士法人を調べる方法 — 全国1万4,663の士業法人を数えたら、4割近くが税理士法人だった
税理士法人や弁護士法人を調べるときは、「法人として実在するか」と「中の人が資格者か」を別々に確かめます。 前者は国税庁の法人番号公表サイトや登記で、後者は日本税理士会連合会・日本弁護士連合会などの士業団体が公開している検索で確認します。士業法人は、社員(出資者)が全員その資格を持っていなければならない法人なので、2つがそろって初めて「ちゃんとした事務所」だと言えます。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「顧問を頼もうとしている税理士法人が本物か確かめたい」「内定先が『社会保険労務士法人』だった。会社とは何が違うの?」という質問が届きます。そこで、国税庁の法人番号データ(活動中の法人約499万)から、名前に「税理士法人」「弁護士法人」などを含む法人を拾い出して数えました。
先に結論を並べます。
- 活動中の士業法人は 1万4,663。全法人のおよそ0.3%です
- いちばん多いのは 税理士法人 5,496(37.5%)。次が社会保険労務士法人 2,899(19.8%)、弁護士法人 1,900(13.0%)
- 法人番号の「法人種別」には士業の区分がありません。全部「その他の設立登記法人」に入っています。種別欄では見分けられず、名前で見分けるしかありません
- 条文の上で「共同して設立」と書かれているのは 税理士法人だけ。1人では作れず、社員が1人の状態が6か月続くと解散します
- 本店の所在地は東京が31.6%。会社全体(24.1%)より東京に寄っています
士業法人とは — 資格者だけが出資者になれる法人
士業法人は、税理士・弁護士・司法書士などの資格者が、個人事務所ではなく法人として業務を行うための仕組みです。根拠はそれぞれの士業の法律にあり、会社法ではありません。
共通しているのは次の2点です。
- 社員は資格者でなければならない。税理士法48条の4は「税理士法人の社員は、税理士でなければならない」、弁護士法30条の4は「弁護士法人の社員は、弁護士でなければならない」と定めています。司法書士法28条、社会保険労務士法25条の8、行政書士法13条の5、弁理士法39条も同じ形です
- 業務停止などの処分を受けた人は社員になれない。各法の同じ条文の2項に、処分中の人や、処分を受けた法人に直前まで在籍していた人を締め出す規定があります
株式会社なら、お金を出せば誰でも株主になれます。士業法人はそれができません。外部の投資家が入れない、資格者だけの共同体だというのが、会社との一番大きな違いです。法人の種類全体の整理は法人の種類一覧にまとめています。
ここでいう「社員」は、会社法の持分会社と同じく出資して経営に加わる人のことで、雇われて働く従業員のことではありません。持分会社の仕組みは持分会社とはで詳しく書きました。
1人で作れる士業法人、作れない士業法人
各法の「設立」の条文を読み比べると、違いが1つあります。
- 税理士法人:税理士法48条の2は「税理士が共同して設立した法人」と定義しています。さらに48条の18第2項で、社員が1人になり、その状態が6か月続くと解散すると定めています
- 弁護士法人・司法書士法人・社会保険労務士法人・行政書士法人・弁理士法人:設立の条文(弁護士法30条の2、司法書士法26条、社会保険労務士法25条の6、行政書士法13条の3、弁理士法37条)に「共同して」という語はなく、「〇〇は…法人を設立することができる」という形です
- 監査法人:公認会計士法34条の7で、設立には5人以上の公認会計士が社員として加わることが必要です
つまり、税理士法人の名刺を見たら「少なくとも税理士が2人いる(または、1人になってから半年以内)」と読めます。ほかの士業法人は、所長1人だけの法人もありえます。
全国の士業法人を種類別に数えた
名前で分類した結果です(活動中、2026年9月時点のしょくばログのデータ。閉鎖済みを含む総数と閉鎖率も併記)。
- 税理士法人:5,496(37.5%)/閉鎖済みを含め6,223、閉鎖率11.7%
- 社会保険労務士法人:2,899(19.8%)/3,073、閉鎖率5.7%
- 弁護士法人:1,900(13.0%)/2,072、閉鎖率8.3%
- 行政書士法人:1,565(10.7%)/1,691、閉鎖率7.5%
- 司法書士法人:1,381(9.4%)/1,519、閉鎖率9.1%
- 土地家屋調査士法人:637(4.3%)/693、閉鎖率8.1%
- 弁理士法人:461(3.1%)/475、閉鎖率2.9%
- 監査法人:310(2.1%)/371、閉鎖率16.4%
- 外国法事務弁護士法人:11
- 特許業務法人(弁理士法人の旧名称のまま残っているもの):3
合計1万4,663。株式会社の閉鎖率(閉鎖済みを含む総数に占める閉鎖済みの割合)13.9%と比べると、監査法人以外はどれも低めです。士業法人は制度ができてから日が浅く(税理士法人・弁護士法人は2002年から)、閉じる機会自体がまだ少ないことも差に効いているはずなので、「士業法人は潰れにくい」とまでは言えません。
弁理士法人は、以前は「特許業務法人」という名前でした。法改正で名称が変わり、今ある法人のほとんどは新しい名前に切り替わっています。昔の資料や登記簿の写しで「特許業務法人」を見かけても、同じ法人番号で今は「弁理士法人」になっていることがあります。名前の変更履歴の追い方は会社の旧社名を調べる方法にまとめています。
法人番号の「種別」では見分けられない
調べてみて一番の発見はここでした。今回拾った1万4,663法人は、法人番号の法人種別がすべて「その他の設立登記法人」でした。株式会社・有限会社・合同会社などには専用の区分がありますが、士業法人には区分がありません。
そのため、法人番号公表サイトで種別を絞り込んで「税理士法人だけを一覧する」ことはできません。名前に「税理士法人」が入っているかどうかが、外から見分ける唯一の手がかりです。法人番号の基本は法人番号とはで解説しています。
名前の付け方にも士業ごとの癖がある
名前の頭に「税理士法人」が来る型(例:税理士法人〇〇)と、後ろに来る型(例:〇〇税理士法人)を数えると、士業によってはっきり差がありました。
- 弁護士法人:前に置く型が 96.8%
- 司法書士法人:83.0%
- 社会保険労務士法人:71.3%
- 税理士法人:70.9%
- 監査法人:23.5%(「〇〇監査法人」のように後ろに置く型が多数派)
弁護士法人は「弁護士法人〇〇法律事務所」の形が定番で、名前に「事務所」を含む割合が75.1%ありました(税理士法人は19.3%)。事務所名をそのまま法人名に入れる文化の違いが、数字に出ています。
名前が似ている別法人もあるので、名刺の表記と法人番号の登録名が一字一句同じかを確かめてください。検索の仕方は法人番号の調べ方が参考になります。
所在地と規模 — 東京に3割、従業員は10人前後が中心
本店の所在地は、東京都4,640(31.6%)、大阪府1,556(10.6%)、愛知県1,074(7.3%)、神奈川県733(5.0%)、福岡県522(3.6%)の順でした。会社全体では東京の比率は24.1%、大阪は8.8%なので、士業法人は大都市、特に東京への集中が強めです。弁護士法人は東京が36.2%で、士業の中でも一番東京に寄っていました。
規模は、経済産業省のgBizINFOで従業員数が分かった法人に限った数字です。判明した法人は士業法人全体の一部にとどまるので、目安として見てください。
- 税理士法人(判明597法人):中央値17人、10人未満26.1%、100人以上5.0%
- 社会保険労務士法人(537法人):中央値8人、10人未満60.9%
- 弁護士法人(121法人):中央値9人、10人未満54.5%
- 司法書士法人(67法人):中央値9人
- 行政書士法人(77法人):中央値5人、10人未満70.1%
- 監査法人(14法人):中央値301人
税理士法人は、2人以上の税理士が必要なぶん、ほかの士業法人より一回り大きい傾向があります。一方、行政書士法人・社会保険労務士法人は10人未満が過半数で、「法人」と名乗っていても実態は小さな事務所であることが多いと分かります。就職や転職で士業法人を検討するなら、法人格より従業員数と有資格者の人数を見るほうが実態に近づけます。
閉じ方 — 9割近くは自分で清算している
閉鎖済みの士業法人について、閉鎖の理由(国税庁の閉鎖事由)を見ました。
- 税理士法人(閉鎖727):清算の結了82.1%、合併10.2%、登記官による閉鎖7.7%
- 弁護士法人(172):清算の結了93.0%、合併5.8%
- 司法書士法人(138):清算の結了89.9%、合併6.5%
- 社会保険労務士法人(174):清算の結了85.6%、登記官による閉鎖8.0%
- 行政書士法人(126):清算の結了86.5%、登記官による閉鎖8.7%
どの士業も、自分たちで手続きをして畳んだケースが大半です。税理士法人は合併が1割あり、事務所どうしの統合が一定数起きていることが読み取れます。税理士法48条の18第1項3号には、解散理由の1つとして「他の税理士法人との合併」が明記されています。
解散・休眠の確かめ方は会社が解散・休眠しているか調べる方法で詳しく説明しています。
税理士法人・弁護士法人を調べる手順
実際に確認するときは、次の順番がおすすめです。
1. 法人番号で実在を確かめる:国税庁 法人番号公表サイトで名前を検索し、登録名・本店所在地・閉鎖の有無を見る。種別欄は「その他の設立登記法人」になっているのが正常です 2. 士業団体の検索で登録を確かめる:税理士は日本税理士会連合会の「税理士情報検索サイト」、弁護士は日本弁護士連合会の「弁護士情報提供サービス ひまわりサーチ」、弁理士は日本弁理士会の「弁理士ナビ」で調べられます。司法書士・社会保険労務士・行政書士は、それぞれの全国連合会のサイトから会員を探すページをたどってください 3. 担当者個人の資格も確かめる:士業法人の社員は全員資格者ですが、実際に窓口に出てくる従業員が資格者とは限りません。名刺の登録番号を、上の検索で照らし合わせます 4. 登記簿で本店・代表者を確かめる:士業法人も法人として登記されているので、登記事項証明書を取れば本店や代表者を確認できます。登記簿の取り方は登記簿は誰でも見られるを参照してください
税理士法48条の10は、税理士法人が成立したら、税理士会を通じて日本税理士会連合会に届け出ることを義務づけ、連合会が名簿を作って国税庁長官に提出する仕組みにしています。つまり、本物の税理士法人なら、連合会の名簿に必ず載っているはずです。法人番号はあるのに連合会の検索で出てこない場合は、名前の表記ゆれを疑ったうえで、事務所に直接確認しましょう。
取引先としての信用を広く調べたいときは取引先の信用を調べる方法、業種ごとの許認可の確認は会社の許認可を調べる方法もあわせてどうぞ。
よくある質問
税理士法人と「〇〇税理士事務所」は何が違いますか?
税理士事務所は、税理士個人が開く事務所で、法人格はありません。税理士法人は法人として契約の主体になり、2人以上の税理士で設立します。依頼する側から見ると、担当の税理士が辞めても法人として業務が続く点が違います。個人事務所には法人番号がないので、法人番号公表サイトでは出てきません。
税理士法人は税理士1人でも作れますか?
作れません。税理士法48条の2は、税理士法人を「税理士が共同して設立した法人」と定義しています。設立後に社員が1人になった場合も、その状態が6か月続くと解散します(48条の18第2項)。弁護士法人・司法書士法人・社会保険労務士法人・行政書士法人・弁理士法人の設立の条文には「共同して」という語がなく、この点が税理士法人との違いです。
「〇〇会計事務所」「〇〇法律事務所」だけの名前は法人ですか?
名前だけでは判断できません。個人事務所の屋号の場合もあれば、「弁護士法人〇〇法律事務所」のように法人名の一部の場合もあります。今回のデータでも、弁護士法人の75.1%は名前に「事務所」を含んでいました。法人番号公表サイトで検索して、「弁護士法人」「税理士法人」まで含めた登録名が出てくるかで見分けます。
士業法人に就職すると、会社員と何が違いますか?
雇われて働く従業員としての立場は、株式会社の社員と変わりません。労働基準法も社会保険も同じように適用されます。違うのは、出資者(社員)になって経営に加わる道が資格者にしか開かれていないことです。将来、経営側に回りたいなら、その士業の資格取得が前提になります。
監査法人だけ閉鎖率が高いのはなぜですか?
今回の数字では、監査法人の閉鎖率は16.4%で、ほかの士業法人より高めでした。監査法人は1966年から制度があり、ほかの士業法人(2000年代にできたもの)より歴史が長いぶん、閉じた法人がたまりやすいと考えられます。ただ、今回のデータだけでは理由を確かめきれていないので、ここでは数字だけを示しておきます。
まとめ
- 士業法人は、社員が全員その資格者でなければならない法人。活動中は全国に1万4,663あり、税理士法人が37.5%で最多
- 法人番号の種別では見分けられない(全部「その他の設立登記法人」)。名前に「税理士法人」などが入っているかで判断する
- 「共同して設立」が条文にあるのは税理士法人だけ。監査法人は5人以上の公認会計士が必要
- 確認は「法人番号で実在」+「士業団体の検索で登録」の2段階。担当者個人の資格番号も照らし合わせる
しょくばログでは、士業法人も含めて法人番号がある法人をすべて会社ページとして載せています。気になる事務所があれば、名前で検索して所在地や閉鎖の有無を確かめてみてください。
*出典:国税庁 法人番号公表サイトの公開データ(しょくばログ集計・2026年9月)/経済産業省 gBizINFO(従業員数)/e-Gov法令検索 税理士法・弁護士法・司法書士法・社会保険労務士法・行政書士法・弁理士法・公認会計士法*