✍ 古家あきら | 2026-09-27 更新

持分会社とは何か — 合同・合資・合名会社をまとめた呼び名。全国48万3,527社を数えたら85%が合同会社だった

持分会社(もちぶんがいしゃ)とは、合同会社・合資会社・合名会社の3種類をまとめて呼ぶ、会社法上の総称です。 会社法575条が「合名会社、合資会社又は合同会社(以下「持分会社」と総称する。)」と定めています。株式会社と並ぶ、もう一つの会社の大きな枠組みだと考えてください。

株式会社との一番の違いは、出資した人(社員)が、そのまま会社の経営もするという点です。株式会社は「株を持つ人(株主)」と「経営する人(取締役)」が分かれていますが、持分会社には取締役も株主総会もありません。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「持分会社って契約書に出てくるけど、結局どの会社のこと?」と聞かれることがあります。そこで、国税庁の法人番号データで活動中の法人を種類別に数え直しました。 結論から言うと、

以下、制度の中身と、データで見えた3種類の違いを順に説明します。

持分会社とは:会社法の条文で見る定義

持分会社は、会社法の第3編(575条以下)にまとめて規定されています。3種類の違いは、社員(出資者)が会社の借金にどこまで責任を負うかだけで決まります。会社法576条2〜4項の定めは次のとおりです。

無限責任とは、会社が借金を返せなくなったとき、社員が個人の財産で返す責任を負うことです。有限責任なら、出資した額を失うところまでで済みます。合名会社・合資会社の無限責任の仕組みは、合資会社・合名会社とはどんな会社かの記事で詳しく書いています。

「持分」とは何のことか

名前の「持分(もちぶん)」は、社員が会社に対して持っている権利の割合のことです。株式会社でいう「株式」にあたります。ただし、株式と違って自由に売れません。 会社法585条1項は「社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない」と定めています(業務を執行しない有限責任社員の特例や、定款で別の定めをすることは認められています)。

つまり持分会社は、仲間うちで出資して、仲間うちで経営する会社として作られた仕組みです。

株式会社との違い(経営・情報公開の面)

持分会社と株式会社の違いを、外から会社を調べる立場で大事な点に絞ると次のとおりです。

外から見ると、持分会社は株式会社より公開される情報が少ない会社です。決算公告がない分、財務の手がかりは登記簿と会社の自己開示に頼ることになります。登記簿で何が分かるかは登記簿は誰でも見られるの記事にまとめています。

契約書に「株式会社又は持分会社」と書かれる理由

契約書や規程で「株式会社又は持分会社」「会社(持分会社を含む)」という言い回しを見かけるのは、会社法上の「会社」が、株式会社と持分会社の2系統しかないからです(特例有限会社は株式会社の一種として扱われます)。「株式会社」とだけ書くと合同会社などが漏れるため、両方を並べて全部の会社を指しているわけです。

データで見る持分会社:48万3,527社のうち85%が合同会社

ここからは、しょくばログの会社データベース(国税庁の法人番号公表データ、活動中の法人4,988,967件)を法人種別で集計した結果です。

種類ごとの社数

比較のために、株式会社は2,513,316社、有限会社(特例有限会社)は1,426,057社です。この5種類を合わせた「会社」442万2,900社で見ると、持分会社は10.93%、およそ9社に1社になります。

持分会社のうち合同会社が85.3%を占めます。合同会社は2006年の会社法施行で新しくできた形態なので、20年ほどで持分会社の大半を占めるまでになったことになります。「持分会社とは何か」という問いに実務的に答えるなら、「ほとんどが合同会社で、少数の古い合資・合名会社が残っている枠組み」です。

閉鎖のされ方が株式会社とまったく違う

いちばん面白かったのが、登記記録が閉鎖された会社の「閉鎖事由」の内訳です。国税庁データには閉鎖の理由がコードで入っています。

株式会社(閉鎖406,842件)

合同会社(閉鎖38,574件)

合資会社(閉鎖5,989件)

合名会社(閉鎖1,354件)

「登記官による閉鎖」は、解散の登記から10年たっても清算結了の登記がされない会社の記録を、登記官が閉じるものです(詳しくは会社が解散・休眠しているか調べる方法)。株式会社では閉鎖の3件に1件がこれですが、合同会社では3.6%しかありません。合同会社の閉鎖は、9割が「清算の結了等」、つまり手続きを最後まで終えて閉じたものです。

理由をデータだけで断定はできませんが、制度から考えられることが2つあります。1つは、合同会社は2006年以降にできた会社なので、「解散から10年放置」という状態になるほど古い会社がまだ少ないこと。もう1つは、前述のとおり12年登記がないと強制的に解散扱いになる「休眠会社のみなし解散」が株式会社だけの制度であることです。合資・合名会社は合同会社と同じく休眠整理の対象外なのに登記官閉鎖が3割前後あるので、合同会社の低さは「若さ」の影響が大きいと私は見ています。

閉鎖済みの割合(閉鎖件数÷登記された全件数)も種類で違います。株式会社13.9%、合名会社10.0%、合資会社9.2%、合同会社8.6%です。ただし合同会社は歴史が短いので、この差をそのまま「つぶれにくさ」と読むのは危険です。

業種:合資・合名は「商店と製造」、合同は「専門サービスとIT」

社名などから業種が判定できた会社だけで、業種の内訳を比べました(判定できた割合は合名・合資で40.1%、合同会社は9.1%と低いので、参考値として見てください)。

同じ持分会社でも、合資・合名は半分以上が小売・卸です。社名で見ても、合資会社の13.76%(8,108社)は社名に「商店」が入っています。株式会社では0.72%、合同会社では0.34%なので、合資会社は「○○商店」の会社形態だったことがはっきり分かります。酒蔵も目立ち、社名に「酒造」を含む会社は合資会社で0.49%(288社)と、株式会社(0.05%)の約10倍の比率でした。

合同会社は、コンサルや士業周辺の専門サービス、IT、不動産の比率が高くなっています。株式会社より設立の手続きが簡単で、少人数の事業に向いた形態であることが、この業種構成に表れていると考えられます。

地域:沖縄は会社の4社に1社近くが持分会社

会社5種類の中で持分会社が占める割合を都道府県別に出しました(会社数1,000社超の都道府県)。

持分会社の割合が高い

低い

中身を分けると理由が違います。合同会社の割合は沖縄県17.3%、東京都12.0%、熊本県11.0%、千葉県10.8%、神奈川県10.1%が上位。一方、合名・合資会社の割合は秋田県7.7%、沖縄県6.1%、熊本県5.1%が上位で、大阪府0.7%・東京都0.8%が最も低くなりました。東京の持分会社は新しい合同会社、秋田の持分会社は古い合資・合名会社という、まったく別の顔をしています。

東京23区で合同会社の割合がいちばん高いのは港区で、18,658社・15.2%。中央区14.3%、千代田区13.7%が続きます。都心のオフィス街ほど合同会社の比率が高い傾向でした。

持分会社を外から調べるときのポイント

取引や就職で相手が持分会社だったとき、何を確認すればよいかをまとめます。

1. 社名で種類を確認する

持分会社は社名に必ず「合同会社」「合資会社」「合名会社」が入ります。株式会社・有限会社との見分け方は法人の種類一覧を参照してください。

2. 登記簿で「誰が経営しているか」を見る

持分会社の登記事項は種類によって違います。

合同会社の登記簿を見ると、代表社員が法人になっている場合があります。その場合は「職務執行者」の氏名・住所も登記されます。親会社が別にある合同会社(外資系の日本法人など)の実質的な親は、ここで分かることが多いです。

3. 決算は「公告されていない」前提で調べる

持分会社には株式会社のような決算公告の義務がありません。財務を知りたいときは、取引前なら相手に決算書の提示を頼むのが現実的です。取引後に債権者になれば、合同会社に限り計算書類の閲覧を請求できます(会社法625条)。

4. 合資・合名会社は「無限責任社員」がいることを知っておく

合資・合名会社は、会社が払えない借金を無限責任社員が個人で負います。取引相手としては、会社の財産に加えて無限責任社員の信用も背景にある、という見方もできます。

就職先として合同会社を考えている人は合同会社に入社するのは不利なのかも参考にしてください。

よくある質問

持分会社と株式会社はどちらが多いのですか?

株式会社のほうが多いです。活動中の株式会社は2,513,316社、持分会社は3種類合わせて483,527社です。有限会社(特例有限会社)を含む会社全体に対する持分会社の割合は10.93%です。

持分会社から株式会社に変わることはできますか?

できます。会社法ではこれを「組織変更」と呼び、持分会社と株式会社の間で会社の形を変える手続きが定められています。持分会社どうし(合同会社→合資会社など)の変更は「種類の変更」と呼ばれ、定款を変更することで行います(会社法638条)。たとえば合資会社は、社員の全部を有限責任社員とする定款変更をすると合同会社になります。

有限会社は持分会社に入りますか?

入りません。2006年の会社法施行後も残っている有限会社は「特例有限会社」として、株式会社の一種として扱われます。持分会社は合同会社・合資会社・合名会社の3つだけです。有限会社の実態は有限会社に就職するのは不利なのかで書いています。

持分会社には役員がいないのですか?

取締役や監査役はいません。社員(出資者)が原則として業務を執行し、会社を代表する社員を「代表社員」と呼びます。定款で業務を執行する社員を限定することもでき、その場合は「業務執行社員」と呼ばれます。

持分会社の決算書は見られますか?

一般の人が見る手段は基本的にありません。持分会社には決算公告の義務がないためです。合同会社については、その会社の債権者であれば、作成から5年以内の計算書類の閲覧・謄写を請求できます(会社法625条)。

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データの出典と集計方法:国税庁 法人番号公表サイトの全件データをもとに、しょくばログが2026年9月27日に集計。活動中=登記記録の閉鎖日がない法人(重複・対象外データを除く4,988,967件)。閉鎖事由は国税庁データの「登記記録の閉鎖等の事由」コード。業種は社名等からの推定で、判定できた会社のみの割合。条文は e-Gov法令検索の会社法(平成17年法律第86号)で確認。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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