✍ 古家あきら | 2026-09-29 更新
長崎・大村の土木会社マツシタが破産を申請。負債約2億1,700万円、決め手は「大口工事のキャンセル」。社名で業種がわからない会社の確かめ方と、同じ名前の株式会社マツシタが全国に26社ある話(DB実測)
先に結論です。長崎県大村市の土木工事会社、株式会社マツシタが破産を申請しました。報道によれば、資材の値上がりで採算が悪くなっていたところに、大口工事のキャンセルが重なり、資金が続かなくなりました。 小さな工事会社にとって、1件の大きな仕事は売上の大きな割合を占めます。その1件が消えることの重さが、よく見える事例です。
もう一つ、この会社には調べる側にとって大事な特徴があります。社名に「土木」も「建設」も入っていません。 しかも、しょくばログの台帳で数えると、同じ「株式会社マツシタ」という名前の会社は全国で26社が活動中です。社名だけで検索すると、別の会社の情報を見てしまうおそれがあります。
出典:大村市の土木工事業が破産申請…大口工事の受注キャンセル、経営悪化 長崎(長崎新聞)
出典:【長崎】大村市のマツシタが破産申請 大口工事キャンセル響く、負債約2億1700万円(JC-NET)
出典:長崎・大村の土木工事「マツシタ」が破産申請、負債2.1億円(不景気.com)
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、地方の工事会社の破産が報じられたあと、その社名で検索する人が増えます。多いのは、下請けや資材の取引をしている会社の担当者、そこで働いていた人、応募を考えていた人です。今回は「社名で業種がわからない」「同じ名前の会社が多い」という、調べる側がつまずきやすい点を中心に書きます。
何が起きたのか(報道で確認できる事実)
報道で確認できる事実は、次のとおりです。
- 会社:株式会社マツシタ(長崎県大村市竹松町)。法人番号 5310001008915
- 設立:1991年(JC-NETは1991年7月と報道)
- 資本金:4,160万円(JC-NET)
- 事業:大村・諫早地区の宅地造成工事が中心。ほかに測量設計、管工事、解体工事など(長崎新聞)
- 手続き:2026年9月10日、長崎地裁大村支部に破産を申請(長崎新聞、東京商工リサーチ長崎支店の情報として)
- 営業:2026年6月29日に営業を休止(同)
- 負債:約2億1,700万円(同)
- 売上:2021年3月期は約2億円(不景気.com)
経緯として報じられているのは、近年の資材高騰の影響に加え、大口工事の受注がキャンセルになったこと、そして2026年3月期に大幅な赤字を計上したことです。売上規模が年2億円前後の会社で、負債がそれを上回る約2億1,700万円まで積み上がっていました。
なお、報道の中には「破産手続開始決定を受けた」と書くものもあります。申請と開始決定は別の段階なので、今の状態を確かめたい人は、裁判所が選んだ破産管財人からの通知や官報を見てください。手続きの種類と段階の違いは破産・民事再生・会社更生・特別清算の違いにまとめています。
「大口1件のキャンセル」が小さな工事会社に効く理由
宅地造成のような土木工事は、1件の金額が大きく、工期も長くなりがちです。会社は受注を見込んで、人を確保し、重機をそろえ、資材を先に手配します。ところが工事代金が入るのは、多くの場合、出来高や完成のあとです。
ここで大口の工事がキャンセルされると、次のことが同時に起きます。
- 入るはずだったお金が入らない:売上2億円規模の会社にとって、大口1件は年間売上の大きな割合を占めうる
- 出ていくお金は止まらない:人件費、重機のリース、借入れの返済は、工事がなくても毎月続く
- 代わりの仕事がすぐには埋まらない:公共工事の入札や民間の宅地開発は、決まるまでに時間がかかる
今回の報道では、キャンセルされた工事の金額や相手先は明らかにされていません。ですから「どれくらい依存していたか」を外から断定することはできません。ただ、資材高騰で利幅が薄くなっていたところに、見込んでいた大きな仕事がなくなった、という順番は、小さな工事会社が資金繰りに詰まるときの典型的な形の一つです。
似た構図は、茨城県神栖市の大勝建設の破産申請や、福岡市の福遼建設の破産申請でも見られました。原因はそれぞれ違いますが、「売上の柱が1本折れると、固定費を支えきれない」という点は共通しています。
しょくばログの台帳で見えること
ここからは、国税庁の法人番号データをもとにしたしょくばログの台帳(全国約575万法人)で数えた数字です。社名に含まれる言葉で数えているので、業種の実態とは一致しない概数である点に注意してください。
台帳ではまだ「閉鎖」ではない
株式会社マツシタは、2026年9月29日時点の台帳では、大村市竹松町の住所で活動中のままです。破産を申請しても、登記がすぐに閉じるわけではありません。破産の手続きが終わって登記が閉じるまでには、通常、数か月から年単位の時間がかかります。「台帳に載っている=営業している」ではないので、会社が実在するか・倒産していないかの確かめ方の手順で、報道や官報もあわせて見てください。
同じ名前の「株式会社マツシタ」は全国に26社
社名がちょうど「株式会社マツシタ」の法人は、台帳上、全国で26社が活動中です。「有限会社マツシタ」など会社の種類違いまで含めると、活動中は45社、19都道府県にわたります。長崎県内にも、諫早市に「株式会社建設機械のマツシタ」、長与町に「株式会社オートサービスマツシタ」と、名前の一部が重なる別の法人があります。これらは今回の破産とは関係のない、別の会社です。
社名で検索して出てきた情報が、本当に同じ会社のものかは、法人番号で確かめるのが確実です。法人番号は1社に1つで、同じ名前の会社でも番号は必ず違います。調べ方は法人番号の調べ方で説明しています。取引先の名前が「マツシタ」「ヤマモト」のように名字だけの場合は、特にこの確認が大事です。
長崎県で社名に「土木・建設」を持つ法人は、活動中1,276社
社名に「土木」または「建設」を含む法人は、長崎県で累計1,498件、そのうち活動中が1,276社でした。長崎県で活動中の会社(株式会社・有限会社・合名・合資・合同会社)は2万9,986社で、そのうち社名に「土木・建設」が入った会社は1,238社、約4%です。
注目したいのは、マツシタ自身はこの1,276社に入っていないことです。社名に業種を示す言葉がないからです。長崎県で実際に土木や建設の仕事をしている会社は、この数字より多いと考えるのが自然です。社名から業種を推し量るのには限界があり、実際の事業は会社のホームページや建設業許可の情報で確かめる必要があります。
市区町村別の活動中は、長崎市373社、佐世保市259社、諫早市126社、対馬市54社、大村市53社の順でした。
- 大村市:累計66件、活動中53社、閉鎖13件(閉鎖率19.7%)
- 諫早市:累計152件、活動中126社、閉鎖26件(閉鎖率17.1%)
- 長崎県全体:閉鎖率14.8%(全国の「土木・建設」名の法人は15.9%、全法人は13.3%)
大村市は件数が少ないので、閉鎖率の数ポイントの差を「大村市の工事会社は危ない」と読むのは行き過ぎです。一方、会社の種類を見ると、長崎県の活動中の「土木・建設」名の法人は有限会社が57.1%で、株式会社の37.9%を上回っていました。全国では株式会社51.7%、有限会社43.8%なので、長崎県は古くからある小さな工事会社の割合が高い地域だと読めます。
取引先・働く人・応募者が確かめておきたいこと
破産を申請した会社とつながりのある人が、うわさより先に確かめたいことを並べます。
- 取引先:未回収の工事代金や資材代は、破産管財人が決まったあと、債権として届け出ることになります。裁判所や管財人からの通知を待ち、請求書や契約書を手元にそろえておきましょう
- 働いていた人:給料や退職金が払われていない場合、国の「未払賃金立替払制度」が使える場合があります。詳しくは給料が遅れる会社と立替払いの話を見てください
- 応募を考えていた人:営業は6月末に休止しています。求人サイトに古い求人が残っていることがあるので、掲載日を確かめてください
- これから取引を始める会社:社名が同じ別の会社と取り違えないよう、法人番号と本店所在地で照合します。確認項目は新しい取引先を確かめるときのチェック項目にまとめています
よくある質問
マツシタはもう倒産したのですか?
2026年9月10日に破産を申請し、6月29日から営業を休止していると報じられています。破産の手続きでは、裁判所が選ぶ破産管財人が会社の財産を調べてお金に換え、債権者に分けます。会社として事業を再開する手続きではありません。
しょくばログの会社ページでは、まだ活動中になっています。なぜですか?
台帳のもとになっている国税庁の法人番号データは、登記が閉じたときに「閉鎖」に変わります。破産を申請しただけでは登記は閉じないので、手続きが終わるまで活動中のまま表示されます。今の状態は報道や官報とあわせて確かめてください。
同じ「マツシタ」という名前の会社と取引があります。関係ありますか?
社名が同じでも、法人番号が違えば別の会社です。今回破産を申請したのは、法人番号 5310001008915、長崎県大村市竹松町の株式会社マツシタです。取引先の法人番号と本店所在地を請求書や登記で照らし合わせれば、同じ会社かどうかはすぐにわかります。
大口の仕事がなくなると会社が危ない、は本当ですか?
売上に占める割合が大きい取引先や案件ほど、なくなったときの影響は大きくなります。ただ、それだけで会社が倒れるかどうかは、手元の資金や借入れの状況で変わります。外から見るときは、1社や1件の仕事に売上が偏っていないかを、会社の説明や求人情報の「主な取引先」から確かめるのが一つの目安になります。
まとめ
長崎県大村市のマツシタの破産申請は、資材高騰で利幅が薄くなったところに大口工事のキャンセルが重なり、年2億円前後の売上の会社が支えきれなくなった例です。社名に業種が入っておらず、同じ名前の会社が全国に26社あるため、調べるときは法人番号と本店所在地で照合するのが確実です。しょくばログでは、今後も法人番号データの更新にあわせて台帳の登録内容を反映していきます。