✍ 古家あきら | 2026-10-02 更新
会津若松の食品スーパー「はすぬま」が事業停止、負債約1億5000万円。売上はピークの7億円超から1億円台へ──しょくばログDBで見る社名に「スーパー」を持つ法人1,865社、18.7%が閉鎖
先に結論です。福島県会津若松市で食品スーパー「フレッシュ会津はすぬま」を営んできた株式会社はすぬまが、2026年10月1日までに事業を止め、事後処理を弁護士に任せました。 福島民友新聞の報道(2026年10月2日配信)で、負債は約1億5000万円とされています。1986年の創業で、1996年3月期に7億円を超えていた年売上は、2015年以降、1億円台まで減っていました。
しょくばログの台帳で社名に「スーパー」を含む法人を数えると、全国で累計1,865社。そのうち18.7%(348社)にはすでに閉鎖の登記があり、全法人の閉鎖率13.2%を上回ります。さらに閉鎖の登記がない1,517社のうち、有限会社が701社(46.2%)、株式会社が659社(43.4%)で、小さな会社形態が多い業種だとわかります。
しょくばログという会社データベースを運営していると、地域の小売店が店を閉めるたびに「仕入れ先や働いていた人は、前もって気づけたのか」という声を聞きます。この記事ははすぬまの経営を評価するものではありません。似た規模の地域小売店と付き合う取引先、そこで働く人が、何を確かめておくとよいかを、台帳の数字と合わせて書きます。
出典:食品スーパー・はすぬま事業停止 負債1.5億円 福島・会津若松(福島民友新聞・2026年10月2日)
報道で確認できる事実
福島民友新聞の報道から、確かめられる内容だけを並べます。
- 会社名は株式会社はすぬま。所在地は福島県会津若松市で、1986年の創業
- 食品スーパー「フレッシュ会津はすぬま」を営み、飲食店「会津野」も併営していた(会津野は2015年に閉店)
- 売上高はピーク時の1996年3月期に7億円を超えていたが、2015年以降は1億円台に減少
- 同業他社の出店や会津野の閉店の影響があり、近年も業績回復のめどが立たず、資金繰りが限界に達した
- 2026年10月1日までに事業を停止し、事後処理を弁護士に一任。負債は約1億5000万円
従業員数や取引先の数は報道に出ていないため、この記事では触れません。
しょくばログの台帳で見ると
台帳ではまだ「活動中」のまま
しょくばログの台帳(国税庁の法人番号の公表データがもと)で会津若松市を引くと、「株式会社はすぬま」が1社あり、閉鎖の登記はありません。
これは珍しいことではありません。事業を止めても、台帳に閉鎖の記録がつくのは、破産などの手続きが進んで登記が閉じられてからです。それまでには数か月から1年以上かかることもあります。つまり、台帳に「活動中」と出ていることは、いま店が動いている証明にはなりません。 倒産したかどうかの確かめ方は会社の実在・倒産の確認方法に、破産や民事再生などの違いは倒産の種類の違いにまとめています。今回のように「事業停止、事後処理は弁護士に一任」の段階は、法的な手続きの申立ての前に当たります。
社名に「スーパー」を持つ法人1,865社
社名に「スーパー」を含む法人は、台帳で累計1,865社です。閉鎖の登記がある割合は18.7%(348社)で、全法人(約579万社のうち約76万社)の13.2%のおよそ1.4倍でした。
閉鎖の登記がない1,517社を種類で分けると、有限会社が701社(46.2%)、株式会社が659社(43.4%)です。有限会社は2006年の会社法の施行で新しく作れなくなったので、有限会社が多いということは、それより前から続く会社が多いということです。ただし社名だけで拾った数なので、スーパー銭湯や「スーパー」を冠した別業種の会社が混じります。食品スーパーの数としてではなく、おおよその姿として見てください。
会津若松市と福島県
会津若松市に本店を置く法人は、台帳で累計4,857社、閉鎖の登記があるのは605社(12.5%)で、全国平均をわずかに下回ります。福島県内で社名に「スーパー」を含む法人は累計25社で、うち5社に閉鎖の登記がありました。母数が小さいので、傾向というより目安にとどめてください。
取引先・働く人が確かめたいこと
1. 売上が長く細っていないか
今回の報道で目を引くのは、ピークから約20年かけて売上がじわじわ減り、立て直しのめどが立たないまま資金繰りが限界に達した、という経過です。急に悪くなったのではなく、同業の出店のような競争環境の変化が、長く効いていたことになります。
食品の小売は、仕入れ価格が上がっても売価に乗せにくい業種です。この構図は価格転嫁できない業種で書いた条件と重なります。仕入れ先として気をつけたいのは、売上がじわじわ減っているのに、支払いの待ってほしいという相談が増えてきた店です。外からは日々営業していて元気に見えても、中ではいくつもの要因が重なっていることがあります。
2. 併営していた事業をたたんだあとを見る
はすぬまは、飲食店の併営をやめた2015年以降に売上が1億円台まで下がったと報じられています。複数の事業で支え合っていた会社は、一方がなくなると、残った事業だけで固定費をまかなう形に変わります。取引先として見るときは、主力以外の事業の撤退や縮小があったかどうかも、ひとつの目安になります。取引先の見方の全体は取引先の信用の調べ方にまとめています。
3. 働く人は、給与と有給の扱いを早めに確認する
事業が止まると、働いていた人にとって先に気になるのは、未払いの給与や、今後の手続きです。会社から説明がない間は不安になりますが、まず雇用契約や給与明細の記録を手元に残しておくと、あとの相談がしやすくなります。個別の権利の判断は、最寄りの労働基準監督署や弁護士などの専門家に確認してください。
4. 名前ではなく法人番号で控える
台帳で「はすぬま」を含む社名は、宮城県と千葉県にも見つかります。取引先として記録するときは、社名ではなく13桁の法人番号で控えるのが確実です。調べ方は法人番号の調べ方に書いています。
よくある質問
Q. 台帳に「活動中」と出ていれば、その会社は営業していますか。
いいえ。台帳の「閉鎖」は、登記が閉じられたあとにつく記録です。事業を止めてから登記が閉じられるまでに数か月から1年以上かかることがあり、その間も台帳上は「活動中」のままです。
Q. 事業停止と倒産は同じ意味ですか。
同じではありません。事業停止は「事業を止めた」という事実で、倒産は破産や民事再生といった法的手続きに入ること、あるいは支払いができなくなった状態を広く指して使われます。今回は事業停止の段階で、報道では事後処理を弁護士に任せたと伝えられています。
Q. 社名に「スーパー」とつく会社の18.7%が閉鎖、というのは多いのですか。
全法人の閉鎖率13.2%より高めですが、社名の拾い方に限界があり、業種ごとの正確な比較ではありません。「小さな会社形態が多く、長く続いてきた会社が多い業種」という全体像をつかむための数字として見てください。
Q. 取引先として、早く気づく方法はありますか。
売上の推移、支払条件の変更の相談、併営事業の撤退や縮小、同業の出店状況は目安になります。ただし、これだけで倒産を見抜けるわけではありません。取引額が大きい場合は、信用調査会社の情報や本人への直接の確認を重ねてください。