✍ 古家あきら | 2026-09-22 更新

学校法人の確認方法と財務公開 — 大学を持つ669法人は決算のネット公表が「義務」、残り7,200法人は「努力義務」。閉鎖率4.2%(8,230法人データ)

先に結論から。学校法人の決算書(貸借対照表・収支計算書)と役員名簿を「インターネットで誰でも」見られるかどうかは、その法人が大学・短大・高専を持っているかで決まります。 大学などを設置する法人(文部科学大臣所轄学校法人等)は私立学校法第151条で公表が義務、それ以外の幼稚園・小中高・専門学校だけを持つ法人(都道府県知事所轄)は第137条で「公表するよう努めなければならない」という努力義務です。文部科学省の一覧(令和6年5月1日現在)で大臣所轄の学校法人は669法人。うちのデータベースで数えた現存の学校法人は7,884法人なので、公表が義務なのは全体の8.5%、残りの9割強は法人しだいというのが現状です。

ただし「見られない」わけではありません。寄附行為(会社でいう定款)は第27条で誰でも閲覧を請求でき、計算書類等と財産目録・役員名簿も、在学者や債権者などの利害関係人であれば事務所で閲覧を請求でき、法人は「正当な理由がある場合を除き、これを拒んではならない」と書かれています。会社の決算が原則として上場会社と決算公告を出す会社しか見られないことを考えると、学校法人はそれよりは見えやすく、社会福祉法人や医療法人ほどは制度が一本化されていない、中間の位置にいる法人です。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「学校法人○○学園に内定したが、会社のように調べられない」「取引先が専門学校で、運営母体の経営状態を知りたい」という質問がきます。教育の中身や学校の良し悪しには踏み込みません。どこに何が公開されていて、それをどう読むかに徹します。

学校法人は全国に何法人あるか — うちのDBで現存7,884、うち大臣所轄は669

まず母数です。うちのデータベース(国税庁の法人番号公表データが土台・全国5,791,529法人・2026年9月時点の断面)で、名称が「学校法人」で始まる法人を数えると8,230法人、うち登記記録が閉鎖されていない現存法人が7,884でした。国税庁データには専修学校・各種学校だけを設置する「準学校法人」も名称は「学校法人」で登録されるので、この数は準学校法人を含みます。

一方、文部科学省が公表している「都道府県別文部科学大臣所轄学校法人・私立学校数」(令和6年5月1日現在)では、大臣所轄の学校法人は669法人(大学法人576・短大法人91・高専法人2)。この669が、決算のインターネット公表が「義務」の側です。差し引きの約7,200法人が、幼稚園・小学校・中学校・高校・専修学校・各種学校を設置する知事所轄の法人ということになります。

法人名の付け方も数えてみました。現存7,884法人のうち、名称が「〜学園」で終わる法人が6,642(84.2%)。「〜学院」342(4.3%)、「〜幼稚園」333(4.2%)、「〜大学」161(2.0%)、「〜学校」83、「〜会」62と続きます。名称に「大学」を含む法人は183しかないのに、大臣所轄の大学法人は576あります。つまり大学法人の7割近くは名称に「大学」を含まず、名前だけでは大学法人かどうか分からないということです。「学校法人早稲田大学」のように大学名がそのまま法人名になっている例は少数派で、「学校法人慶應義塾」のように大学名と法人名が違う法人のほうが多いということでもあります。

社会福祉法人の記事では名称の8割が「〜会」でしたが、学校法人はそれ以上に「学園」に寄っています。逆に言えば、「学園」という名前からは幼稚園1園の法人なのか総合大学の法人なのかが読み取れないので、最初にやるべきことは、その法人がどの学校を設置しているかを確かめることです。

都道府県別 — 数は東京・神奈川・埼玉、密度は佐賀・山口・長崎

現存7,884法人の主たる事務所を都道府県別に数えると、上位は東京都876・神奈川県542・埼玉県536・大阪府474・愛知県393・福岡県389・千葉県384・北海道382。最少は徳島県の21で、島根県29・滋賀県32・鳥取県39・香川県41と続きます。

うちのDBの現存法人は全国5,028,697法人で、学校法人は1,000法人あたり1.57です。この「密度」を都道府県別に出すと、上位は佐賀県3.89・山口県3.43・長崎県3.09・栃木県3.02・宮崎県2.89で、下位は大阪府1.12・沖縄県0.97・滋賀県0.82・徳島県0.78、そして東京都は0.75で最下位です。市区町村別の実数でも、最多は鹿児島市59・長崎市52・宇都宮市51・世田谷区51・新宿区48・仙台市青葉区48で、地方の県庁所在地と東京の区が並びます。社会福祉法人ほどではありませんが、学校法人も「地方ほど法人の分母に占める割合が高い」法人です。

ここで文科省の669法人と突き合わせると、面白いことが分かります。大臣所轄669法人のうち東京都は166(24.8%)で、東京の学校法人876に対して約19%が大臣所轄です。一方、島根県は大臣所轄が0。うちのDBで島根県の学校法人は29ありますが、全部が知事所轄で、決算公表は努力義務の側です。大学がある県かどうかで、「その県の学校法人がどれだけ外から見えるか」が変わります。

学校法人はどのくらい閉鎖しているか — 8,230法人中346、閉鎖率4.2%

うちのDBで名称「学校法人」始まりの8,230法人のうち、登記記録が閉鎖されているのは346法人(4.2%)です。内訳は清算の結了が212(61.3%)、合併による消滅が92(26.6%)、登記記録の閉鎖が42(12.1%)。閉鎖日が分かるものを年別に見ると、2016年から2025年まで毎年26〜39件で、年30件前後がほぼ一定です。

他の法人種別と並べると、うちのDBでの閉鎖率は社会福祉法人1.9%・学校法人4.2%・医療法人7.8%・株式会社13.9%。学校法人は株式会社の3分の1以下で、非営利系の中では社会福祉法人の次に低い水準です。「少子化で学校がつぶれる」という話はよく聞きますが、法人が登記から消える件数で見れば、年30件前後で急増しているわけではないというのがデータの示すところです。もっとも、学校の募集停止と法人の閉鎖は別物で、募集停止から清算結了まで数年かかる上、他法人との合併で消えるケースが4分の1あります。閉鎖の統計に出てこない終わり方については倒産統計に映らない会社の終わりで書いたことがそのまま当てはまります。

なぜ「大学があるか」で変わるのか — 私立学校法第27条・第106条・第107条・第137条・第151条

学校法人の情報公開は、2023年(令和5年)5月8日に公布された私立学校法の一部を改正する法律(令和5年法律第21号)で組み替えられ、文部科学省の案内によれば2025年(令和7年)4月に施行されました。条文はe-Gov法令検索で現行法を取得して確認しています。制度は「備置き・閲覧」と「公表」の2段に分かれていて、公表の段だけが所轄庁で違います。

第27条(寄附行為の備置き及び閲覧等)。学校法人は寄附行為を主たる事務所に備え置く(第1項)。債権者は業務時間内いつでも閲覧と謄本交付を請求でき(第3項)、債権者以外の者も閲覧を請求でき、法人は「正当な理由がある場合を除き、これを拒んではならない」(第4項)。寄附行為は会社の定款にあたる書類で、法人の目的・設置する学校・役員の定数・評議員会の構成などが書いてあります。誰でも見られるという点では会社の定款より開かれています。

第103条(計算書類等の作成及び保存)。毎会計年度終了後3か月以内に、計算書類(貸借対照表と収支計算書)・事業報告書・附属明細書を作成する(第2項)。計算書類は作成から10年間保存(第4項)。

第106条(計算書類等及び監査報告の備置き及び閲覧等)。計算書類等と監査報告を、定時評議員会の1週間前から5年間、主たる事務所に備え置く(第1項)。債権者は閲覧・謄本交付を請求でき(第3項)、「当該学校法人の設置する私立学校に在学する者その他の債権者以外の利害関係人」も閲覧を請求でき、法人は正当な理由がある場合を除き拒めない(第4項)。

第107条(財産目録等の作成、備置き及び閲覧等)。毎会計年度終了後3か月以内に、①財産目録、②役員及び評議員の氏名と住所を記載した名簿、③報酬等の支給基準を作成し(第1項)、定時評議員会の日から5年間備え置く(第3項)。在学者その他の利害関係人は閲覧を請求でき、法人は正当な理由なく拒めない(第5項)。ただし役員等名簿は個人の住所部分を除外して閲覧させることができる(第6項)。

ここまでは所轄庁を問わず全学校法人に共通です。違うのはこの先です。

第137条(情報の公表)。学校法人は、寄附行為の内容と、計算書類等・監査報告・財産目録等のうち省令で定めるものを「インターネットの利用その他の方法により公表するよう努めなければならない」。努力義務です。

第151条(情報の公表の特例)。「大臣所轄学校法人等」は、第137条にかかわらず、寄附行為の内容と計算書類等・監査報告・会計監査報告・財産目録等のうち省令で定めるものを「遅滞なく……公表しなければならない」。義務です。私立学校法施行規則第55条は、この公表を「インターネットの利用により行うものとする」と定め、対象書類は施行規則第49条の①計算書類等、②監査報告(会計監査人を置く法人は会計監査報告を含む)、③財産目録等(役員等名簿の個人の住所部分を除く)としています。

第149条にはもうひとつ差があります。大臣所轄学校法人等については、第106条第4項と第107条第5項の「在学者その他の利害関係人は」を「何人も」と読み替える。つまり大臣所轄法人なら、在学生でも債権者でもない人が事務所に行って計算書類や財産目録の閲覧を請求できます。知事所轄法人では、閲覧を請求できるのは在学者や債権者などの利害関係人に限られます。

「大臣所轄学校法人等」の範囲 — 大学を持たなくても該当することがある

第143条は「大臣所轄学校法人等」を、文部科学大臣が所轄庁である学校法人(第4条により、大学・高等専門学校を設置する法人)と、それ以外でも「事業の規模又は事業を行う区域が政令で定める基準に該当するもの」と定義しています。私立学校法施行令第3条がその基準で、①最終会計年度の経常的な収益が10億円以上、②負債の合計が20億円以上、③3つ以上の都道府県に学校を設置、④広域の通信制課程を置く高校を設置のいずれかに当てはまれば、大学を持たない法人でも「大臣所轄学校法人等」として公表義務と「何人も」閲覧の対象になります。大規模な高校法人や広域通信制高校の法人がここに入ります。

実際にどう確認するか — 4段階

1. どの学校を設置している法人かを確かめる。 法人名から学校を辿るなら、法人の公式サイトの「法人概要」「設置校」を見るのが早いです。大学・短大・高専を持つかどうかは、文部科学省「文部科学大臣所轄学校法人一覧」に法人名が載っているかで確定します。法人番号から住所・閉鎖の有無を確かめる手順は法人番号の調べ方と同じです。

2. 大臣所轄なら、法人サイトの「情報公開」ページを開く。 第151条と施行規則第55条により、計算書類等・監査報告・財産目録等がインターネットで公表されています。多くの法人は「情報公開」「財務情報」というページにまとめていて、貸借対照表・事業活動収支計算書・資金収支計算書・事業報告書・監査報告書・役員名簿が並びます。会計監査人(公認会計士または監査法人)の設置は第144条で大臣所轄学校法人等に義務づけられているので、会計監査報告も出ています。

3. 知事所轄なら、まず法人サイトを見て、無ければ利害関係人として閲覧を請求する。 第137条は努力義務なので、公表している法人としていない法人があります。公表が無い場合、在学者・保護者・取引先などの利害関係人であれば第106条・第107条に基づいて事務所での閲覧を請求できます。転職希望者や、これから取引を始める段階の相手は「利害関係人」に当たるかが法人の判断になるので、閲覧できないこともあります。その場合は、寄附行為だけは第27条で誰でも閲覧できるので、設置校・役員定数・評議員会の構成といった骨格を確かめるところから始めます。

4. 外からの補助線を重ねる。 学校法人は決算公告の義務が会社と違うため、会社の決算月の調べ方のような手段は使えませんが、学校法人の会計年度は私立学校法第98条で4月1日から翌年3月31日と決まっていて、計算書類は第103条により6月末までに作成されます。したがって最新年度の決算は毎年7月以降に法人サイトに出そろうと考えておけばよいでしょう。

学校法人の決算書は「会社の決算書」とどこが違うか

学校法人の計算書類は学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号・2025年4月1日施行の現行版をe-Gov法令検索で確認)に基づいて作られ、会社の損益計算書にあたるものが「事業活動収支計算書」、キャッシュフロー計算書に近いものが「資金収支計算書」です。会社の売上高にあたるのは学生生徒等納付金・補助金・寄付金などの「事業活動収入」で、利益にあたるのは「基本金組入前当年度収支差額」。学校法人は利益を出すことが目的ではないので、収支差額がマイナスでも直ちに危ないとは言えませんが、何年も続けて赤字で、貸借対照表の純資産が減り続けているかは会社と同じ見方で確かめられます。

役員名簿については、私立学校法第107条第1項第2号の名簿に理事・監事・評議員の氏名が載ります。会社で代表者を調べるときは登記事項証明書が要りますが、学校法人は名簿が財産目録等の一部として備え置かれ、大臣所轄法人ではネットで公表されます。

うちのDBで見た学校法人の「外から見える度」 — 従業員数が出るのは12%

学校法人は法人番号があるので、うちのDBで他の公的データと突き合わせられます。gBizINFO(経済産業省)に登録されている項目の充足率を数えると、現存7,884法人のうち代表者名が入っているのは95(1.2%)、従業員数が入っているのは958(12.2%)、URLが入っているのは300(3.8%)でした。医療法人の代表者0.3%・従業員10.9%と比べると従業員数はわずかに高く、社会福祉法人の従業員21.2%よりは低い。gBizINFOだけで学校法人の実像をつかむのは難しく、やはり法人自身の公表書類に当たるしかありません。

従業員数が入っている958法人の分布は、中央値120人、下位4分の1が40人、上位4分の1が265人。300人以上が212法人、30人未満が167法人です。大学法人と幼稚園1園の法人が同じ「学校法人」という名前で混ざっているので、従業員数を調べるときは法人単位ではなく設置校ごとの教職員数を見たほうが実態に近いです。

もうひとつ、適格請求書発行事業者(インボイス)の登録があるのは2,342法人(29.7%)でした。学校法人の主な収入である授業料は消費税が非課税なので登録率が低いのは自然ですが、登録している3割は課税売上(物品販売・受託研究・施設貸与など)がある法人と読めます。

学校法人と、似た名前の法人を混同しない

「学校」と付く法人がすべて学校法人とは限りません。うちのDBで学校法人の日本標準産業分類を見ると、教育・学習支援業(大分類O)が7,323(92.9%)で、サービス業(他に分類されないもの)が471あります。一方、株式会社が運営する専門学校や学習塾、NPO法人のフリースクール、一般社団法人の各種スクールは学校法人ではなく、私立学校法の公開制度の対象外です。法人格ごとの違いは法人の種類一覧にまとめてあります。

また、大学を設置する学校法人の中には学校法人ではなく国立大学法人・公立大学法人として別の法律で運営されているものがあり、これらは名称も「国立大学法人」「公立大学法人」で始まります。財務情報の公開制度も別です。

非営利法人の「倒産」をどう調べるか、という視点は非営利法人の倒産の調べ方で扱っています。学校法人については、清算結了・合併・登記記録の閉鎖のどれで消えたかが登記に残るので、会社の解散・休眠を調べる方法と同じ手順で確かめられます。

よくある質問

内定先の学校法人の決算を見たいのですが、幼稚園だけの法人でも見られますか

法人サイトに公表されていれば見られます。幼稚園だけを設置する法人は知事所轄なので、私立学校法第137条の努力義務で公表している法人としていない法人があります。公表が無い場合、在学者や債権者などの利害関係人は第106条・第107条で事務所での閲覧を請求できますが、内定者が利害関係人に当たるかは法人の判断です。寄附行為は第27条で誰でも閲覧できるので、まずそこから確かめてください。

「学校法人○○学園」が大学を持っているかどうかはどう調べますか

文部科学省の「文部科学大臣所轄学校法人一覧」に法人名があれば大学・短大・高専を設置する法人です。うちのDBでは名称に「大学」を含む学校法人は183しかなく、大臣所轄の大学法人576の大半は「学園」「学院」という名前なので、名前では判断できません。

学校法人の役員の住所は見られますか

見られないことが多いです。役員等名簿には氏名と住所が載りますが、私立学校法第107条第6項で法人は住所部分を除外して閲覧させることができ、公表対象を定める施行規則第49条も住所部分を除いています。

学校法人はどのくらい閉鎖していますか

うちのDBで名称「学校法人」始まりの8,230法人のうち閉鎖は346(4.2%)で、2016〜2025年は毎年26〜39件です。株式会社の13.9%、医療法人の7.8%より低く、社会福祉法人の1.9%より高い水準です。閉鎖の内訳は清算結了61.3%・合併26.6%・登記記録の閉鎖12.1%です。

会社のように決算公告は出ないのですか

学校法人には会社法の決算公告にあたる制度はなく、私立学校法の備置き・閲覧(第106条・第107条)と公表(第137条・第151条)で代わりになっています。大臣所轄学校法人等は施行規則第55条によりインターネットで公表する義務があり、それ以外は努力義務です。

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出典・確認先:私立学校法(昭和24年法律第270号・e-Gov法令検索で取得した現行法)第2条・第4条・第27条・第98条・第103条・第106条・第107条・第137条・第143条・第144条・第149条・第151条/私立学校法施行令第3条/私立学校法施行規則第49条・第55条/学校法人会計基準(第12条・第23条〜第39条の書類名と「基本金組入前当年度収支差額」の定義)/文部科学省「私立学校法の改正について(令和5年改正)」(令和5年法律第21号・2023年5月8日公布・令和7年4月施行)/文部科学省「都道府県別文部科学大臣所轄学校法人・私立学校数」(令和6年5月1日現在・大臣所轄669法人)/しょくばログDB(国税庁法人番号公表データ・gBizINFO・適格請求書発行事業者公表データを法人番号で突合、2026年9月時点の断面)。個別法人の会計処理は各法人の公表書類で確認してください。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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