✍ 古家あきら | 2026-09-30 更新
防衛省・自衛隊と直接取引する会社は4,628社。いちばん多いのは建設業で31.5%、沖縄の割合は13年で3.1%から5.1%に。会社サイトの「取引先」に防衛省と書いている会社は104社(0.33%)だった(DB実測)
先に結論です。帝国データバンクの調査によると、防衛省や自衛隊と直接取引している会社は全国で4,628社です。業種でいちばん多いのは建設業(31.5%)で、売上1〜10億円未満の会社が約半分(49.8%)を占めます。 「防衛産業」と聞くと大手メーカーを思い浮かべがちですが、実際には基地や施設の工事、物品の納入を担う地域の中小企業がかなりの割合を占めています。
もう一つの特徴は、沖縄県の割合が2013年の調査の3.1%から2.0ポイント上がって5.1%になったことです。九州全体でも1.7ポイント上がっています。帝国データバンクは、南西地域の防衛体制の強化に伴って西日本の重みが増している、と分析しています。
出典:防衛関連産業4628社の実態調査(2026年)(帝国データバンク、2026年9月29日)
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「この会社は官公庁の仕事をしているのか」「防衛関係の取引があるのか」を知りたいという検索がときどき見られます。取引先として付き合う前に安定性を知りたい人、応募先の仕事内容を確かめたい人です。そこで今回は、調査の数字を整理したうえで、しょくばログが保存している会社サイトを使って「防衛省・自衛隊を取引先として書いている会社」がどれくらいあるかを数えてみました。
調査で確認できる数字
帝国データバンクは、自社の信用調査報告書ファイルと企業概要データベース、公開情報から、防衛省・自衛隊などと直接取引のある会社を抽出しています。同じ趣旨の調査は2013年と2023年にも行われています。発表で確認できる主な数字は次のとおりです。
- 対象:防衛省・各地の自衛隊・防衛関連組織と直接取引のある4,628社
- 業種:建設業が31.5%(2013年は29.1%)で最多。卸売業が30.6%で続き、構成比は2013年より下がった。サービス業は3番目で増加傾向。製造業と小売業は構成比が下がった
- 地域:東京都22.8%、北海道10.2%、神奈川県7.5%、沖縄県5.1%(2013年は3.1%)。九州全体は16.8%(同プラス1.7ポイント)
- 売上規模:1億円未満14.4%、1〜10億円未満49.8%(2013年は55.1%)、10〜50億円未満23.0%(同19.7%)
- 従業員規模:50人未満の各層で構成比が下がり、50人以上の各層でわずかに上がった
帝国データバンクは、小さな会社から中規模・中堅の会社へ取引が移る「選択と集中」が進んでいると読んでいます。とはいえ、売上10億円未満の会社がいまも6割超(14.4%+49.8%)を占めている点は見落とせません。
数字から読める3つのこと
1. 防衛関連の取引の中心は「工事」と「納入」
建設業と卸売業を合わせると6割を超えます。基地や庁舎の建設・修繕、設備工事、燃料や食料・日用品の納入など、自衛隊の活動を日々支える仕事です。地方に基地や駐屯地がある地域では、地元の工事会社や卸の会社が取引先になっていることが多いと考えられます。
2. 規模は「中くらいの会社」へ寄りつつある
売上1〜10億円未満の割合が5.3ポイント下がり、10〜50億円未満が3.4ポイント上がりました。入札の条件や求められる品質管理・情報管理の水準が上がると、一定の規模がある会社のほうが対応しやすくなります。小さな会社が撤退したのか、同じ会社が成長して上の層に移ったのかは、この発表だけでは区別できません。
3. 地域の重心が西へ
東京・北海道・神奈川は構成比が下がり、沖縄と九州が上がりました。取引先の所在地が変わることは、地域の雇用や下請けの仕事にも関わります。九州・沖縄で工事や物流の会社を探している人にとっては、官公庁関係の仕事が増えている地域だと読めます。
しょくばログのデータで数えてみた:会社サイトの「取引先」に防衛省
帝国データバンクの4,628社は、信用調査で取引先まで確かめた結果です。一方、応募者や小さな取引先が自分で確かめられるのは、たいてい会社の公式サイトです。そこで、しょくばログが保存している会社サイトの本文で数えました。
- 対象:保存済みの会社サイト32,838社のうち、文字化けが少なく読める31,159社
- 数えた言葉:「防衛省」「防衛装備庁」「自衛隊」「防衛施設」
- 取引としての言及:上の言葉の前後60字以内に「取引先」「納入」「実績」「受注」「発注」「納品」「官公庁」のいずれかがあるもの
結果は次のとおりです。
- 防衛省・自衛隊などの言葉が出てくる会社:305社(0.98%)
- そのうち取引先や実績として書いている会社:104社(全体の0.33%)。およそ300社に1社
- 取引として書いている104社の業種:製造業33.7%、建設業25.0%で、この2つで約6割
言葉が出てくるだけの305社には、感謝状を受けたお知らせ、社内研修、ニュースの引用なども含まれていました。「自衛隊」という言葉があるから取引がある、とは言えないということです。取引として書いている会社の記載を見ると、「取引先:国土交通省、文部科学省、防衛省」のように、ほかの省庁や自治体と並べて書いている例がほとんどでした。防衛の仕事だけに頼っている会社ばかりではない、という見方もできます。
注意点も書いておきます。しょくばログが本文を保存している会社は、公式サイトがあり、ある程度の情報を載せている会社に偏っています。全国の会社の縮図ではないので、0.33%という割合を「日本の会社の0.33%が防衛関連」と読むことはできません。都道府県別では沖縄県(331社中7社)や広島県(1,002社中20社)で言葉が出てくる割合が高めでしたが、件数が少ないので傾向と言い切れる数字ではありません。
防衛関連の会社を外から確かめる方法
取引先として付き合う前や、応募する前に確かめたいときの手順です。
- 会社サイトの「主要取引先」「納入実績」「施工実績」を見る:防衛省や自衛隊の名前が、他の取引先と並んでいるかを確かめます。海外の取引や拠点の調べ方は会社の海外拠点・海外進出を調べる方法にまとめています
- 建設会社なら経営事項審査(経審)を見る:公共工事の入札に参加する会社は経審を受けています。調べ方は経審の点数の検索方法を見てください
- 指名停止を受けていないか確かめる:官公庁の仕事では、不正や事故があると一定期間入札から外される「指名停止」があります。確かめ方は指名停止を受けた会社の確認方法に書きました
- 表彰や感謝状を見る:自衛隊の地方総監部などからの感謝状は、取引や協力の手がかりになります。ただし取引そのものの証明ではありません。表彰歴の読み方は会社の受賞歴・表彰歴の調べ方で扱っています
- 初めて取引する会社は基本の確認から:法人番号、本店所在地、登記の変更履歴といった基本は新しい取引先を確かめるときのチェック項目を使ってください
よくある質問
防衛省と取引がある会社は安定していると考えてよいですか?
官公庁との取引は代金の回収が確実なことが多く、一つの安心材料にはなります。ただ、官公庁の仕事は入札で決まるため、毎年同じ量の仕事があるとは限りません。売上のうち官公庁関係がどれくらいか、ほかの取引先があるかも合わせて見るのが安全です。
4,628社の社名一覧はどこかで見られますか?
帝国データバンクの発表は集計結果で、個社の一覧は公開されていません。個々の会社について知りたい場合は、防衛省が公表している入札・契約の情報や、会社のサイトの取引先欄で確かめることになります。
自衛隊出身者を採用している会社を探す方法はありますか?
会社サイトや求人に「元自衛官歓迎」「退職自衛官」などと書いている会社があります。しょくばログが保存している会社サイト31,159社では、こうした言葉を書いている会社は22社(0.07%)と少数でした。求人サイトの検索や、自衛隊の就職援護の窓口を使うほうが見つけやすいでしょう。
沖縄や九州で防衛関連の仕事は増えていますか?
帝国データバンクの調査では、防衛省などと直接取引する会社のうち沖縄県の割合が2013年の3.1%から5.1%に、九州全体が16.8%に上がっています。取引する会社の割合が増えているという事実で、個々の会社の仕事量が増えたかどうかまではこの数字からはわかりません。
まとめ
防衛省・自衛隊と直接取引する4,628社のうち、最も多いのは建設業で、売上10億円未満の会社が6割超を占めます。防衛関連の取引は、地域の工事会社や卸の会社にとって身近な仕事です。会社サイトで取引先として防衛省を書いている会社は、しょくばログの保存分では約300社に1社で、多くは他の省庁や自治体と並べて書いていました。取引先や応募先を確かめるときは、取引先欄・経審・指名停止の有無をあわせて見ると、実像に近づけます。