✍ 古家あきら | 2026-09-25 更新

指名停止を受けている会社の確認方法 — 全国一括の一覧はない。国交省の2年分67件を数えたら、3分の1は工事中の労災事故だった

先に結論です。指名停止を受けている会社を、全国まとめて一度に調べられる一覧はありません。 指名停止は、国の機関・都道府県・市区町村といった「発注する側」がそれぞれ自分の基準で決め、自分のページで公表するものだからです。調べるときは、その会社が仕事を受けていそうな発注機関を決めて、1つずつ当たることになります。

国の工事については、国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」で、国交省の地方整備局などが行った指名停止を社名で検索できます。載っているのは直近2年分です。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「取引先が指名停止になっていないか確認したい」「応募先の建設会社を調べたら指名停止という言葉が出てきたが、どのくらい重いのか分からない」という声を聞きます。そこで、このサイトに載っている2年分をすべて数えてみました。分かったことは3つです。

以下、仕組みを国交省の措置要領で確かめたうえで、探し方と数えた結果を順に書きます。

指名停止とは:発注者が「一定期間、入札に呼ばない」と決める措置

指名停止は、国や自治体が、公共工事の入札に参加する資格を持つ業者(有資格業者)に対して、一定の期間、入札の相手として指名しないと決める措置です。法律上の罰ではなく、発注者が「契約の相手として今は不適当」と判断して、自分の発注から外す、という性格のものです。

国土交通省の地方整備局が使う基準は「工事請負契約に係る指名停止等の措置要領」(最終改正 令和2年12月25日)に書かれています。指名停止の理由は、大きく2つの表に分かれています。

期間には加重の決まりもあります。指名停止の期間が終わってから1年以内に再び該当したときは、期間の下限が原則2倍になります。極めて悪質・重大な場合は上限の2倍(最長36か月)まで延ばせます。また、共同企業体(JV)が指名停止になると、責任のある構成員の会社も併せて指名停止になります。

大事なのは、これは国交省の地方整備局の基準だという点です。 国の機関向けには「中央公共工事契約制度運用連絡協議会」がモデルとなる要領を示していますが、都道府県や市区町村はそれぞれ自前の要綱で運用しています。同じ出来事でも、発注機関によって「指名停止にするか」「何か月にするか」「どこに公表するか」が違います。

確認の手順:発注機関ごとに当たる

1. 調べたい会社の正式な社名と法人番号を確認する。 同じ社名の会社は珍しくありません。法人番号の調べ方で、所在地とあわせて特定しておきます 2. その会社が仕事を受けていそうな発注機関を決める。 本社のある都道府県・市区町村、よく受注している国の出先機関(地方整備局、農政局、防衛局など)が候補です 3. 国交省の工事なら「ネガティブ情報等検索サイト」で社名を検索する。 事業者名は部分一致で、キーワードは1つだけ入力できます。「株式会社」を外して、社名の固有の部分だけで検索すると漏れにくくなります 4. 自治体は、その自治体の公式サイトで「指名停止」と検索する。 契約課・財務局・契約管財課などのページや、電子入札システムのお知らせ欄に載っていることが多いです。公表の有無や掲載期間は自治体ごとに違います 5. 見つかったら、措置の理由と期間を読む。 「どの号に当たるか」で中身がまったく違います。後で書くとおり、「落札後に技術者が足りず辞退した」も「贈賄で逮捕された」も、同じ「指名停止」として載ります

国交省のサイトの注意書きには、公開期間は2年、更新はおおむね月1回、1つの事案で複数の部局が指名停止をした場合は部局ごとに1件ずつ数えて載せる、とあります。2年より前の指名停止や、最新1か月分は、ここには出てこない可能性があります。 急ぐときは、各地方整備局の「指名停止措置情報」のページ(記者発表の一覧)も直接見てください。

国交省の2年分を数えてみた:171行、実際は72件

2026年9月25日に、ネガティブ情報等検索サイトの指名停止をすべて取得しました。載っていたのは171行、処分日は2024年9月27日から2026年6月26日まででした。

ところが、171行のうち102行は2社だけでした。

どちらも2025年4月11日に、地方整備局・運輸局・気象台・海上保安本部など国交省の50の組織がそれぞれ指名停止をかけたため、50行ずつ並んでいます(残る1行ずつは別の日付の措置です)。概要欄によれば、工事の契約で「新しい骨材だけで作ったアスファルト合材」を使うよう指定されていたのに、再生骨材を含む合材が使われていた、という事案でした。

この「1つの事案が何十行にもなる」仕組みを知らずに行数だけ見ると、実態を読み違えます。そこで、会社と処分日の組み合わせを1件として数え直すと72件、共同企業体(JV)名義の5件を除くと67件・64法人になりました。

67件の理由の内訳:3分の1は工事関係者事故

措置要領の号ごとに分けると、次のとおりです。

贈賄・独占禁止法違反・談合(別表第2第1〜12号)は、この2年間の国交省の指名停止には1件もありませんでした。 「指名停止=談合」というイメージを持っている人は多いと思いますが、少なくとも直近2年の国の工事では、中心は現場の事故と、入札・契約の手続き上のトラブルです。

工事関係者事故の中身は、クレーンのアームが高圧線に近づいて作業員が被災した、移動中の重機が作業員に接触した、といった現場の労災です。なかには、2023年7月に静岡県の国道1号(清水立体)で工事中の橋桁が落下し、作業員ら8人が死傷した事故について、施工した共同企業体の構成員2社が2026年4月に指名停止を受けたものも含まれます。事故の日と指名停止の日は、1年以上離れることがある、ということです。

「不正又は不誠実な行為」22件のうち17件は、落札後の辞退・解除

「不正又は不誠実」という言葉は強く聞こえますが、概要欄を読むと中身はかなり違いました。22件の内訳は次のとおりです。

つまり、「不誠実」の多くは、人手(とくに主任技術者・監理技術者)が足りずに、落札した工事を引き受けられなかったケースです。建設業の技術者不足が、こういう形でも表に出ていることが分かります。

期間は「1か月以内」が半分

67件の指名停止期間を見ると、次のようになっていました(「6週間と1ヶ月」のように書かれたものは最初の期間で数えています)。

措置要領の上限いっぱい(6か月や9か月)の指名停止は、この2年分にはありませんでした。多くは数週間〜3か月で終わる措置です。「過去に指名停止を受けたことがある」だけで、その会社を危ない会社と決めつけるのは早すぎます。

国税庁の法人データと突き合わせた結果:64法人はすべて存続

ネガティブ情報等検索サイトには、事業者名と一緒に法人番号が載っています。そこで、共同企業体を除く64法人を、国税庁の法人番号データ(しょくばログのデータベースに取り込んでいるもの)と法人番号で照合しました。

従業員数がデータベースに入っている45法人を見ると、少ない順に並べて真ん中の会社(中央値)は161人でした。100人未満が19法人ある一方、1,000人以上の大手も11法人含まれています。指名停止は、地域の中小建設会社だけの話ではありません。 大手ゼネコン・道路舗装の大手・橋梁メーカーも、現場で事故が起きれば同じように指名停止を受けています。

なお、この結果は「指名停止を受けても会社は続いている」ということまでしか言えません。指名停止のあとに業績がどうなったかは、登記データからは分かりません。

ほかの「行政の公表リスト」との違い

会社の問題を外から確かめる公表リストはいくつかありますが、それぞれ性格が違います。

今回のデータにも、茨城県知事から建設業法の「指示」処分を受けたことをきっかけに、国交省の事務所から指名停止を受けた会社がありました。監督処分と指名停止は連動することがありますが、別の制度です。取引先を確認するときは両方を見ておくと安心です。取引先の確認全体の流れは反社チェックのやり方や取引先の信用を調べる3つの層も参考にしてください。建設会社であれば、経審の点数や建設業許可とあわせて見ると、会社の規模感と公共工事への関わり方がつかめます。

よくある質問

指名停止の全国一覧はどこで見られますか?

全国の発注機関をまとめた一覧はありません。国の工事(国土交通省)なら「ネガティブ情報等検索サイト」で直近2年分を社名で検索できますが、都道府県・市区町村・国交省以外の省庁は、それぞれの公式サイトで個別に公表しています。調べたい会社が仕事を受けていそうな発注機関を決めて、1つずつ確認してください。

指名停止になると、会社は仕事ができなくなるのですか?

指名停止をかけた発注機関の入札に、その期間参加できなくなるだけです。ほかの発注機関の入札や民間の工事は続けられます。ただし、1つの事案で国交省の50の組織がそろって指名停止をかけた例もあり、その場合は国の工事から広く外れることになります。営業そのものが止まるのは、建設業法の「営業停止」処分のほうです。

指名停止の期間はどのくらいですか?

国交省の地方整備局の基準では、理由ごとに「2週間以上4か月以内」「1か月以上9か月以内」などの幅が決まっていて、重大な独占禁止法違反等では最長36か月です。実際に直近2年分の67件を数えると、1か月以内が35件(52%)で、3か月を超えたのは1件だけでした。

過去の指名停止の履歴を調べることはできますか?

国交省のネガティブ情報等検索サイトの公開期間は2年です。それより前のものは、各地方整備局の記者発表のページに年度別の資料が残っていることがあります。自治体の公表期間はまちまちで、期間が終わると消えてしまうところもあります。「一覧に載っていない=過去に一度も指名停止がない」とは言えない点に注意してください。

応募しようとしている会社が指名停止を受けていました。応募はやめるべきですか?

まず理由の欄を読んでください。直近2年の国交省の例では、3分の1が工事中の事故、4分の1が技術者不足などによる落札後の辞退や契約解除でした。事故が理由なら「その後どんな安全対策をしたか」、辞退が理由なら「技術者の体制はどうなっているか」を面接で聞いてみると、会社の姿勢が見えてきます。なお、今回照合した64法人は、登記上はすべて存続していました。

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この記事のデータについて:国土交通省「ネガティブ情報等検索サイト」の建設工事(公共事業を含む)・指名停止の全件(171行、処分日2024年9月27日〜2026年6月26日)と、各行の概要ページ(措置理由・期間・違反行為の概要)を2026年9月25日に取得して数えました。件数は、同じ会社(法人番号、法人番号がないものは名称)と同じ処分日の行を1件にまとめた数です。措置理由の号は、国土交通省「工事請負契約に係る指名停止等の措置要領」(最終改正 令和2年12月25日)の別表によります。運輸局・海上保安本部など地方整備局以外の組織は号の番号が異なる要領を使っているため、アスファルト合材の2社は概要欄の内容で分類しました。法人データとの照合は、サイトに載っている法人番号で国税庁 法人番号公表サイトのデータと突き合わせています。業種・従業員数はしょくばログのデータベースの収録値(gBizINFO等)で、従業員数が入っていない法人は除いています。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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