✍ 古家あきら | 2026-09-24 更新
畳製造業256社の売上は402億7,700万円で3年連続の減収、業歴100年超が58社 — 社名に「畳」が入る会社1,487社のうち、今も残る会社の70.2%が有限会社(DB実測)
先に結論です。畳製造業は「売上は3年続けて減っているが、会社の大半は業歴50年以上の小さな老舗」という業界です。 東京商工リサーチの調べでは、主な256社の2025年度の売上高合計は402億7,700万円で、前年度より1.3%減りました。
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、町の畳店のような小さな会社ほど「代替わりしたのか」「まだ営業しているのか」を確かめに来る人が多いと感じます。今回はこの調査を入口に、社名に「畳」が入る会社を国税庁の登記データで数え、畳の会社がどんな形で残っているのかを書きます。
出典:「畳製造業」 伝統産業に忍び寄る市場変化と後継問題 売上は3年連続で低迷、業歴100年超の老舗が2割超(東京商工リサーチ・2026年9月23日)
調査で公表された数字
東京商工リサーチの企業データベースから、5期連続で業績が取れた畳製造業256社を集計したものです。記事から読める数字だけを並べます。
- 2025年度の売上高合計:402億7,700万円(前年度比1.3%減、3年連続の減収)
- 2021年度と比べた売上高:6.3%減
- 2025年度の当期純利益合計:4億5,700万円(前年度比49.3%増)
- 減収の会社:136社(53.1%)、増収の会社:81社(31.6%)
- 赤字の会社:97社(37.8%)。前年度は85社(33.2%)
- 売上高1億円未満の会社:195社(76.1%)。5億円未満まで含めると243社(94.9%)
- 業歴50年以上:211社(82.4%)。うち100年以上が58社(22.6%)
- 2025年度の休廃業・解散は28社、倒産は3社
- 原料のい草は、2025年度の作付面積が前年度から24%、収穫量が27%減った
- い草・畳表の国内生産は熊本県が9割超
利益の合計は増えていますが、赤字の会社の割合も増えています。「業界全体の利益が増えた」ことと「一社一社が楽になった」ことは別の話で、数字の読み方には注意が要ります。
しょくばログのデータで数えた「畳の会社」
ここからは、国税庁の法人番号公表データをもとに、しょくばログが数えた数字です。社名に「畳」を含む株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社を数えました。
- 社名に「畳」を含む会社:1,487社
- そのうち今も登記が残っている会社:1,215社
- 閉鎖済みの会社:272社(18.3%)
- 全国の会社全体の閉鎖済みの割合:13.6%
今も残る1,215社を会社の形で分けると、次のとおりです。
- 有限会社:853社(70.2%)
- 株式会社:305社(25.1%)
- 合資会社:36社
- 合同会社:15社
- 合名会社:6社
全国の今も残る会社で見ると、有限会社の割合は32.2%です。畳の会社は、全国平均の2倍以上の割合で有限会社が残っています。 有限会社は2006年の会社法施行で新しく作れなくなった形なので、有限会社が多いということは、それ以前からある会社が多いということです。東京商工リサーチの「業歴50年以上が82.4%」という数字と、登記の形からも同じ姿が見えます。
有限会社とはどういう会社なのかは、有限会社への就職を考えるときの記事で詳しく書いています。
都道府県別に見ると
今も残る会社を本店の都道府県で数えると、多い順に東京都132社、千葉県98社、神奈川県84社、埼玉県66社、愛知県58社、北海道56社でした。人が多い地域に畳店が多いという、自然な並びです。
一方、い草・畳表の産地である熊本県は、社名に「畳」を含む会社が31社(うち今も残る会社26社)でした。産地の会社は「畳」ではなく「い草」や「畳表」の問屋・農家として登記されていることも多く、社名だけで業界の全体は数えられません。 社名で業種を数える方法の限界として、ここは書いておきます。
閉鎖した会社の理由
閉鎖済みの272社を、国税庁のデータにある閉鎖の理由で分けると次のとおりです。
- 清算の結了など:199社(73.2%)
- 登記官による閉鎖:68社(25.0%)
- 合併による解散など:5社
「登記官による閉鎖」は、長く登記の変更がない会社を法務局が整理したものが中心です。倒産ではなく、実際には何年も前に営業をやめていた会社が、あとから書類の上でも片づいたという形が多いと考えられます。閉鎖の年ごとの件数は、この一斉整理の年に大きく跳ねるため、ここでは年ごとの推移は出していません。倒産の統計に出てこない会社の終わり方は、倒産統計に映らない会社の終わり方の記事にまとめています。
畳の会社と取引する・働くときに見ておきたいこと
特定の会社を指す話ではなく、小さな老舗が多い業界に共通する見方として書きます。
1. 代表者の年齢と後継ぎを確かめる。 東京商工リサーチの調査では、代表者の年齢が分かった会社のうち60代が67社、70代が35社、80歳以上が13社でした。長く付き合う取引先なら、「次に誰が継ぐのか」は聞いてよい話です。 2. 登記が残っていることと、営業していることは別。 有限会社が多い業界ほど、営業をやめても登記だけが残っていることがあります。確かめ方は会社が解散・休眠しているかの調べ方の記事をどうぞ。 3. 原料の動きを見る。 い草の収穫量が1年で27%減ったという数字は、仕入れ値や納期に響きます。見積もりや納期の変化は、取引先がいちばん早く気づけるサインです。
地方の老舗の話は、最近も続いています。佐渡の老舗スポーツ用品店の2度目の不渡りの記事や、金沢で創業1918年の和菓子店が破産した記事でも、登記の形から同じように有限会社の多さが見えました。信用調査会社の評点の読み方は帝国データバンク・東京商工リサーチの評点の見方の記事で書いています。
よくある質問
畳の会社は減っているのですか?
東京商工リサーチの調査では、2025年度に28社が休廃業・解散し、3社が倒産しました。しょくばログのデータでも、社名に「畳」を含む会社の閉鎖済みの割合は18.3%で、全国の会社全体(13.6%)より高くなっています。ただし閉鎖済みには、合併や休眠会社の整理も含まれます。
利益の合計が増えているのに、業界が厳しいと言われるのはなぜですか?
合計の数字は、一部の会社の利益が大きく増えると押し上げられます。調査では赤字の会社が97社(37.8%)と前年度より増えており、合計の数字と一社ごとの状況は分けて見る必要があります。
有限会社の畳店は、古くて危ない会社ということですか?
そうは言えません。有限会社は2006年以降に新しく作れなくなった形なので、古くからある会社に多いというだけです。形そのものは、経営の良し悪しを表しません。
近所の畳店がまだ営業しているかを調べる方法は?
国税庁の法人番号公表サイトやしょくばログの会社ページで、登記が閉鎖されていないかは無料で確認できます。ただし登記が残っていても営業しているとは限らないため、店舗の地図情報やホームページの更新日も合わせて見るのが確実です。
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※登記データの数値は、国税庁法人番号公表サイトのデータをもとに、しょくばログが2026年9月24日時点で集計したものです。「会社」は株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社の合計で、社名に「畳」を含むものを数えています。組合など会社以外の法人は含みません。