✍ 古家あきら | 2026-09-26 更新

首都圏への本社移転が上半期204社で過去10年最多 — 法人番号の「登記所コード」で数えると、今も残る会社では首都圏から出た会社のほうが多かった(DB実測)

先に結論です。2026年1〜6月に地方から首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)へ本社を移した企業は204社で、過去10年で最も多くなりました。首都圏から出た企業は173社で、入った会社が31社多い「転入超過」です。 帝国データバンクが2026年9月24日に公表した調査によるもので、転入してきたのは売上高1億〜10億円未満の中小企業が88社と最多でした。

一方、しょくばログの台帳で、今も営業している会社を「番号が付いたときの登記所」と「今の本店」で突き合わせると、2012年以降に都県をまたいで首都圏へ入った会社は24,058社、首都圏から出た会社は29,537社でした。半年単位のニュースでは「首都圏回帰」でも、十数年分の積み上げで見ると、出ていった会社のほうが多い。 両方を並べて読むと、今回の数字の意味がはっきりします。

出典:首都圏「本社移転」動向調査(2026年上半期)(帝国データバンク・2026年9月24日)

公表されている事実

帝国データバンクの調査で確認できる数字は次のとおりです。

同社は、一定の事業基盤を持った中小・中堅企業が、取引先や人材の集まる首都圏で成長を目指す動きが広がっていると分析しています。注目したいのは、転入だけでなく転出も前年より23社増えていることです。首都圏への一方通行ではなく、出入りが両方とも活発になっています。

法人番号には「最初に登記した場所」が残る

しょくばログは国税庁の法人番号データをもとにした会社データベースを運営しています。会社の法人番号は13桁で、2〜5桁目は「登記所コード」と呼ばれ、番号が付いたときに本店を管轄していた法務局を表します。番号の仕組みは法人番号とは何かをまとめた記事とチェックデジットの計算方法の記事で詳しく書いています。

ポイントは、法務省の運用変更です。2012年5月21日から、管轄の違う登記所へ本店を移しても、会社法人等番号は変わらずに引き継がれるようになりました。 それより前は、管轄外に本店を移すと新しい番号が付いていました。

出典:会社法人等番号の付番方法の変更について(法務省)

つまり、登記所コードが示す都道府県と、今の本店の都道府県が違う会社は、2012年5月以降に都県をまたいで本店を移した会社だと読めます。

数え方は次のとおりです。株式会社・有限会社・合同会社・合名会社・合資会社のうち、閉鎖されていない4,460,963社を対象にしました。登記所コードは97種類あり、それぞれのコードの会社がどの都道府県に多いかで「そのコードの県」を決めました。どのコードも94%以上の会社が同じ1つの都道府県に集まっていたので、県の割り当てはほぼ迷いません。

首都圏に入った会社・出た会社

結果です。今も営業している会社のうち、登記所の県と今の本店の県が違う会社は156,912社(3.5%)でした。

首都圏に絞ると、次のとおりです。

差し引きすると、首都圏から出た会社が5,479社多い計算です。ただし、これは「今も残っている会社」だけを数えたもので、移ったあとに閉鎖した会社は入っていません。帝国データバンクの調査とは対象も期間も違うので、数字をそのまま比べることはできません。「長い目で見た流れ」の目安として読んでください。

都道府県ごとに、首都圏との出入りを差し引くと次のようになりました。

大阪・愛知という大都市からは首都圏へ移る会社が多く、茨城・静岡・群馬・栃木といった首都圏の隣の県へは首都圏から移る会社が多い。帝国データバンクの半年分の調査で「大阪が転入元・転出先の両方でトップ」「茨城・静岡・群馬が転出先の上位」だった形は、十数年分の登記の積み上げでも同じ向きでした。

入ってきた会社は株式会社が多い

首都圏に入ってきた24,058社を会社の種類で分けると、株式会社が75.5%、合同会社が14.1%、有限会社が10.2%でした。首都圏の会社全体では株式会社58.1%、有限会社28.7%、合同会社11.1%です。

有限会社は2006年から新しく作れなくなった形で、地元に根を張った古い会社に多い形です。本社を動かす会社は株式会社・合同会社に寄っていて、有限会社は動きにくいことが数字に出ています。合同会社については合同会社に就職するのは不利なのかという記事にまとめています。

なお、首都圏の4都県の中での移動は63,086社ありました。いちばん多いのは東京都から神奈川県への13,490社、次が神奈川県から東京都への11,374社です。都県をまたぐ移動の数では、首都圏の中の動きが外との出入りよりずっと大きい、ということになります。

応募先・取引先として見るときの確認ポイント

本社を移すこと自体は、成長や効率化のための普通の経営判断です。そのうえで、外から見る側が確かめておくと安心なことを3つ挙げます。

1. 本店の住所と、実際に働く場所を分けて確かめる。 本社が東京に移っても、工場や営業所は元の県に残ることがよくあります。求人の勤務地欄を見てください。住所の調べ方は会社の住所の調べ方の記事に書いています。 2. 登記の変更履歴を見る。 本店の移転は登記に残ります。短い期間に何度も移っている場合は、理由を聞いてみる価値があります。倒産の直前に本店を移していた実例は破産の27日前に本店を移していた会社の記事で紹介しました。 3. 同じ会社かどうかは法人番号で確かめる。 本店が移っても法人番号は変わりません。社名と住所が変わっていても、番号が同じなら同じ会社です。調べ方は法人番号の調べ方の記事をどうぞ。転勤の可能性が気になる方は転勤があるかどうかの調べ方の記事も参考になります。

よくある質問

本社を首都圏に移す会社は、業績が良い会社なのですか?

帝国データバンクは、一定の事業基盤を持った中小・中堅企業が成長を目指して移る動きが中心だと分析しています。ただ、個々の会社の業績は移転だけでは判断できません。決算や求人の内容など、ほかの情報と合わせて見てください。

法人番号を見れば、その会社がどこから移ってきたかわかりますか?

2012年5月21日以降に管轄外へ本店を移した会社であれば、登記所コードに最初の管轄が残っているので、おおよその見当はつきます。ただし、それより前に移った会社は番号が付け直されているため、わかりません。移転の正確な経緯は、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)で確認するのが確実です。

帝国データバンクの204社と、しょくばログの24,058社はなぜこんなに違うのですか?

対象と期間が違うからです。帝国データバンクの数字は、同社の調査による2026年1〜6月の半年分の移転件数です。しょくばログの数字は2012年5月以降の十数年分の積み上げで、登記のある会社を広く数えています。一方で、移ったあとに閉鎖した会社は含んでいません。

本社が移ったら、働く人も引っ越さないといけないのですか?

必ずしもそうではありません。登記上の本店だけを移して、実際の拠点は変えない会社もあります。勤務地が変わるかどうかは、会社からの説明や労働条件の書面で確認してください。

※この記事の会社数は、国税庁の法人番号公表データをもとにしたしょくばログの台帳(2026年9月時点)を集計したものです。登記所コードの県は、そのコードを持つ会社が最も多い都道府県で割り当てています。移転の時期や回数は区別していません。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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