✍ 古家あきら | 2026-09-11 更新
創業114年のかまぼこ店が破産 — 社名に「かまぼこ・蒲鉾」を持つ法人464件を数えたら、閉鎖率は全国平均の1.5倍、半分以上が有限会社だった
東京商工リサーチ(TSR)が2026年9月8日に公表したTSR速報によると、宮城県亘理郡亘理町の(株)馬上かまぼこ店が9月8日、仙台地裁へ破産を申請しました。1912年創業、法人設立は1980年、資本金9,800万円。負債総額は債権者約200名に対して約6億円です。
先に結論を書きます。しょくばログが持つ全国5,791,529件の法人記録から、社名に「かまぼこ」「蒲鉾」「カマボコ」を含む法人を数えると464件。そのうち92件(19.8%)がすでに登記を閉じていました。全法人の閉鎖率は13.2%なので、1.5倍です。 さらに法人種別を見ると、464件の52.2%にあたる242件が有限会社で、合同会社は3件しかありません。有限会社は2006年以降つくれない会社形態ですから、「20年以上前からある会社が大半で、新しく入ってくる会社がほぼない」業種だということが、社名の数え方だけで見えてきます。
しょくばログという会社データベースを運営していると、こうした老舗の倒産で毎回同じ質問を受けます。「データベースで見たら普通に載っていたのに、倒産していたのはなぜか」。今回の会社はその典型なので、数字と一緒に順に書きます。
公表された数字(出典つき)
TSR速報の要点です。
- (株)馬上かまぼこ店(亘理郡亘理町逢隈鹿島字西鹿島62)は2026年9月8日、仙台地裁へ破産を申請。負債総額は債権者約200名に対して約6億円
- 1912年、水産物加工を目的に創業した老舗。細工かまぼこが主力だったが、法人化以降は笹かまぼこ商品へシフトし、直営店舗を積極展開
- 1991年5月に現在地へ本社・工場「笹かまの郷」を新設。1992年6月期にピークの売上高約9億円
- 以降は市況低迷で低調。近時は関連会社の合併など組織改編で立て直しを図ったが、同業他社との競争激化、ロシア・ウクライナ情勢を起因とした水産物の仕入コスト上昇が重く、2025年6月期は売上高4億730万円、6,077万円の赤字で債務超過が拡大
- 法人設立1980年7月、資本金9,800万円、法人番号1370801000581
出典:東京商工リサーチ TSR速報「(株)馬上かまぼこ店」(2026年9月8日)
ピークの売上高が34年前の1992年で、直近はその半分以下。原料の仕入コストを価格に転嫁しきれない構図は、価格転嫁できない業種で書いた条件がそのまま当てはまります。
破産を申請した会社は、法人データベースではまだ「生きている」
まずいちばん大事な点です。9月11日時点で、しょくばログの株式会社馬上かまぼこ店のページを見ても、登記閉鎖の表示は出ません。国税庁の法人番号公表情報では、閉鎖の記録が付くのは破産手続が終わって登記が閉鎖されたときで、破産を「申請した」段階では何も変わらないからです。破産手続は債権者約200名への配当まで進めるので、閉鎖の記録が付くのは早くても何カ月も先になります。
つまり「法人番号があり、閉鎖されていない」は「営業している」の証明ではありません。この差は倒産統計に映らない会社の終わりと会社の実在・倒産の確認方法で繰り返し書いてきましたが、老舗ほど「登記は綺麗なまま倒産している」期間が長くなりがちです。倒産の有無を知りたいなら、登記ではなく信用調査会社の速報や官報を見るしかありません。
関連会社の合併は、登記に痕跡が残っていた
TSR速報が触れている「関連会社の合併など組織改編」は、しょくばログの記録で裏が取れました。同じ亘理町に株式会社馬上資産管理という法人があり、2023年12月4日に「合併による解散等」で登記が閉鎖されています(馬上資産管理のページ)。資産管理会社を本体に吸収したと読むのが自然で、立て直しの一手が2年前に打たれていたことが、外からでも分かる形で残っていました。
社名の一部が共通する法人を同じ市区町村で探すだけで、こうした関連会社はかなり拾えます。探し方はグループ会社・親会社の調べ方に、合併で消えた法人が記録上どう扱われるかは買収された会社は登記から消えるのかにまとめてあります。
社名に「かまぼこ・蒲鉾」を持つ法人464件の中身
ここからが、しょくばログにしか出せない数字です。社名に「かまぼこ」「蒲鉾」「カマボコ」のいずれかを含む法人を全国で数えました。かまぼこを作っていても社名に入れていない会社は拾えず、逆に協同組合なども混ざる、社名一致の数え方です。
- 該当法人:464件(うち登記閉鎖済み92件、19.8%。全法人は13.2%)
- 有限会社:242件(52.2%)、閉鎖43件(17.8%)
- 株式会社:153件(33.0%)、閉鎖36件(23.5%。全国の株式会社は13.9%)
- 協同組合などその他の法人:38件、閉鎖11件
- 合資会社:21件、合名会社:7件
- 合同会社:3件(0.6%)。全法人では合同会社が7.8%を占めるので、10分の1以下
株式会社の閉鎖率23.5%は全国平均の1.7倍です。一方で有限会社が過半数、合同会社がほぼゼロという構成は、「昔からある家業が多く、新しく起業する人がいない」業種の形そのものです。有限会社の見方は老舗と新興の見分け方に書いた通りで、いま有限会社を名乗っている時点で最低20年は続いている会社です。
閉じ方は「清算の結了」が84%、登記官による整理は少ない
閉鎖92件の理由を、全国と並べます。
- 清算の結了等:かまぼこ77件(83.7%)/全国64.5%
- 登記官による閉鎖(長期間動きがなく法務局が整理):かまぼこ14件(15.2%)/全国27.5%
- 合併による解散等:かまぼこ1件/全国7.8%
全国では閉鎖の4分の1以上が「放置されて整理された」会社なのに対し、かまぼこ店は8割以上が自分で清算を終えて閉じています。工場や店舗という実物の資産を持つ業種は、畳むときも手続きを踏まざるを得ない、と読めます。逆に言えば、かまぼこ店で「登記官による閉鎖」が付いている会社は、実体の消え方が普通ではなかった可能性が高い。閉鎖理由の読み方は会社が解散・休眠しているか調べる方法にあります。
宮城は全国6位の25件、閉じた4件はすべて「清算の結了」
都道府県別に多い順で見ると、意外にも東北ではなく西日本が上位です。
- 愛媛県:38件(閉鎖6件)
- 福岡県:38件(閉鎖2件)
- 長崎県:31件(閉鎖8件)
- 大阪府:27件(閉鎖9件)
- 熊本県:27件(閉鎖5件)
- 宮城県:25件(閉鎖4件)
- 徳島県:24件(閉鎖4件)
- 北海道:20件(閉鎖5件)
笹かまぼこの本場である宮城県は6位で、464件のうち5.4%。その25件のうち閉鎖済みは4件で、塩竈市に3件、大崎市に1件、いずれも「清算の結了」でした。残る21件は現存で、塩竈市・石巻市・仙台市に固まっています。亘理町の法人は全部で817件、閉鎖108件(13.2%)と、町としては全国平均どおりです。
老舗の取引先・応募先を確かめる4ステップ
今回の会社に当てはめながら、外から無料でできる手順にします。
1. 法人番号で会社ページを引き、閉鎖の有無を見る。閉鎖されていなければ「少なくとも登記上は存在する」ところまでは分かる。倒産の有無はここでは分からない 2. 同じ市区町村で、社名の一部が共通する法人を探す。資産管理会社・販売会社・旧社名の法人が見つかれば、閉鎖日と理由を見る。今回の「馬上資産管理・2023年12月・合併」がこれに当たる 3. 「創業年」と「設立年」を分けて読む。創業1912年でも、法人としての設立は1980年。法人番号のデータに設立年は載っていないので、会社案内の創業年を法人の歴史と取り違えない。設立年の確かめ方は会社の設立年の調べ方に 4. 資本金が1億円以下かを見る。資本金9,800万円は、税制上「中小企業」として扱われる1億円以下の上限ぎりぎりです。老舗で規模のある会社が1億円以下に設定しているのは珍しくなく、規模の判断には従業員数や売上を別に当てる必要があります(中小企業の定義)
これで倒産そのものを事前に当てることはできません。ただ、「登記が綺麗でも倒産していることがある」「関連会社の合併は立て直しのサイン」「創業年と設立年は別」の3点を押さえておくだけで、老舗の看板だけで安心する失敗はかなり減らせます。
よくある質問
破産申請した会社は、法人番号のデータからいつ消えますか
破産手続が終結し、裁判所の嘱託で登記が閉鎖されたときに「閉鎖」の記録が付きます。申請から終結までは通常数カ月以上かかり、債権者数が多いほど長引きます。その間、法人番号のデータ上は何も変わりません。
社名に「かまぼこ」が入っていない老舗は、どう探せばいいですか
有名なかまぼこメーカーには「◯◯水産」「◯◯食品」「◯◯本舗」など、社名に商品名を持たない会社が多くあります。社名検索で見つからないときは、商品パッケージの製造者欄に書かれた正式社名と所在地で引き直してください。社名一致の数え方では拾えない範囲があることは、この記事の数字にも当てはまります。
有限会社が多い業種は、危ない業種ということですか
逆です。有限会社は2006年以降つくれないので、有限会社の割合が高い業種は「古い会社が生き残っている」業種です。今回の464件でも、有限会社の閉鎖率17.8%は株式会社の23.5%より低く、閉じているのはむしろ株式会社側に偏っていました。
一つの会社の倒産を、業界全体の話に広げていいのですか
広げすぎは禁物です。この記事で示したのは「社名にかまぼこを持つ法人の閉鎖率が全国より高い」という断面の事実であって、個社の倒産理由をそこから説明することはできません。個社の事情はTSR速報が書いている通り、原料高と競争激化と売上の長期低迷の重なりです。
まとめ
- 2026年9月8日、1912年創業の(株)馬上かまぼこ店が破産申請。負債約6億円、ピーク売上約9億円(1992年)に対し直近は4億730万円
- 社名に「かまぼこ・蒲鉾」を持つ法人は全国464件、閉鎖率19.8%で全国平均(13.2%)の1.5倍。株式会社に限れば23.5%
- 有限会社が52.2%、合同会社は3件。新規参入のほぼない老舗業種
- 閉じ方は「清算の結了」が83.7%で、放置整理型の閉鎖は全国より少ない
- 破産申請した会社も、登記が閉鎖されるまで法人データベース上は「存在」のまま。関連会社「馬上資産管理」の合併(2023年12月)は登記に残っていた
老舗の取引先・応募先は、しょくばログの会社検索で法人番号から会社ページを引き、同じ町の関連法人と閉鎖理由まで見る。倒産の有無は登記では分からないので、そこだけは信用調査会社の速報か官報で補ってください。