✍ 古家あきら | 2026-10-01 更新
長野・松本の基板実装会社エス・ビー製作所が破産、負債約1億円。副業の中古車販売でも本業を補えず。しょくばログDBで見る長野県の社名に「電子」を持つ法人214社、閉鎖率28.5%・有限会社58.8%
先に結論です。長野県松本市で電子機器・プリント基板の実装と組立を手がけていたエス・ビー製作所が、2026年9月15日に長野地裁松本支部から破産手続きの開始決定を受けました。 負債は約1億円です。2025年4月ごろには事業を止めていました。
しょくばログという会社データベースを運営していると、町の製造業の倒産には「本業が細り、別の商売で埋めようとして、埋めきれなかった」という形がよく見られます。今回もその形に近い例です。この記事では、報道で確かめられる事実を押さえたうえで、台帳から見える長野県の電子関連の会社の姿と、取引先や働く人が確かめたいことを書きます。個別の会社を責める記事ではありません。
出典:長野・松本市の電子機器やプリント基板の実装・組立業者が破産手続き開始決定(NBS長野放送・2026年9月29日、帝国データバンク調べ)
何が起きたのか(報道で確認できる事実)
帝国データバンクの調べとして報じられた内容を並べます。
- 1986年8月設立。本店は長野県松本市
- 電子機器メーカー向けに、電子基板へのはんだ付けや、電子機器の組立・検査を請け負っていた
- 2004年7月期には年売上高約1億2,000万円を計上していた
- その後は競合の激化や得意先の生産調整で売上が低迷し、不採算の受注もあった
- もともと薄かった利益は、材料費の値上がりでさらに苦しくなった
- 2021年度から中古自動車の販売を始めて利益の底上げを狙ったが、本業を補うまでには至らなかった
- 2025年4月ごろに事業を停止し、2026年9月15日に破産手続きの開始決定を受けた。負債は約1億円
事業を止めてから破産の決定まで、およそ1年5か月あいています。外から見ると「いつの間にか動いていない会社」だった期間がそれだけあった、ということです。
しょくばログの台帳で見えること
ここからは、国税庁の法人番号データをもとにしたしょくばログの台帳で見た数字です(2026年10月1日時点)。
本体は台帳ではまだ「活動中」
松本市に本店を置く有限会社エス・ビー製作所は、台帳では閉鎖の登記がなく「活動中」の表示です。破産の開始決定が出ても、会社の登記が閉じるのは手続きが終わってからです。事業を止めた日、破産が決まった日、台帳で閉鎖と出る日は、それぞれ別です。この時差は破産決定でも閉鎖と出ない理由で詳しく見ました。
なお台帳には、大阪府堺市に本店を置く「有限会社エスビー製作所」という、よく似た名前の別の法人も載っています。表記が少し違うだけで法人番号は別です。取引先を確かめるときは、社名ではなく法人番号と本店の住所で見るのが確実です。調べ方は法人番号の調べ方にまとめています。
長野県で社名に「電子」を持つ法人は214社、閉鎖率28.5%
基板の実装や組立の会社は、社名に業種が出ないことも多いので、ここでは目安として社名に「電子」を含む法人を数えました。名前からの推定なので、電子機器と関係の薄い法人が混じり、逆に今回の会社のように「製作所」と名乗る会社は入っていません。概数として見てください。
- 長野県の累計:214社
- 活動中:153社
- 閉鎖:61社(閉鎖率28.5%)
- 全国で社名に「電子」を含む法人は5,981社、閉鎖率21.8%
- 台帳全体の閉鎖率は13.3%
長野県の電子関連は、全国の電子関連よりも、台帳全体よりも閉鎖率が高めでした。閉鎖61社の内訳は、清算の結了などが38社、登記官による閉鎖(長く登記の動きがない会社の整理)が20社、合併が3社です。
長野市・佐久市・飯田市に広く散らばる
活動中153社の本店を市ごとに見ると、長野市25社、佐久市13社、飯田市11社、小諸市9社、伊那市8社、塩尻市7社と続き、松本市は6社でした。1か所に固まるのではなく、県内の各地に分かれています。
全国で見ても、活動中の電子関連の法人で長野県は153社あり、福島県と並んで6番目に多い県でした。東京都・神奈川県・大阪府・埼玉県・愛知県という大都市圏のすぐ後に、地方の県として入っているのは目を引きます。
有限会社が6割近い
長野県の活動中153社のうち、有限会社が90社(58.8%)、株式会社が60社(39.2%)でした。全国の電子関連では有限会社は42.8%、台帳全体の活動中の法人では28.9%です。有限会社は2006年から新しく作れなくなったので、昔からある小さな町工場が多いと読めます。今回の会社も有限会社でした。町工場の倒産については大田区の町工場の破産でも書いています。
取引先や働く人が確かめたいこと
1. 得意先の生産調整は、下請けに先に響く
今回の報道では、得意先の生産調整が売上の低迷につながったとされています。基板の実装や組立は、メーカーから仕事を受ける立場です。メーカーが生産を絞ると、その波は下請けに先に、強く出ます。取引先を見るときは、その会社が誰から仕事を受けているか、得意先が偏っていないかも合わせて見ておくと安心です。見方は取引先の信用の調べ方が参考になります。
2. 本業と関係の薄い新しい商売は、見方を変えるサイン
この会社は2021年度から中古自動車の販売を始めていました。新しい事業そのものは悪いことではありません。ただ、本業と関係の薄い分野に急に手を広げるときは、本業の苦しさを埋めようとしている場合もあります。取引先の事業内容が変わったと気づいたら、変えた理由に目を向けてみてください。中古車販売の業界の様子は中古車販売の破産と台帳でまとめました。
3. 「動いていない」ことは、登記より先に起きる
事業を止めてから破産の決定まで約1年5か月ありました。その間も台帳の上では「活動中」です。取引先が今も動いているかは、登記だけでなく、電話がつながるか、ホームページや求人が更新されているかでも確かめるのが確実です。確かめ方は会社の実在と倒産の確かめ方にあります。
4. 破産と民事再生は、残る・残らないが違う
破産は会社をたたむ手続きで、民事再生のように営業を続けながら立て直すものではありません。未払いの代金などは、破産管財人のもとで決められた順番に沿って扱われます。違いは倒産の種類の違いで整理しています。
よくある質問
破産したのに、台帳で「活動中」と出るのはなぜですか?
破産の開始決定が出ても、会社の登記はすぐには閉じません。財産の整理が終わり、手続きが終わってから閉鎖の登記がされるので、それまでは「活動中」のままです。
長野県の電子関連の会社は危ないということですか?
そうは言えません。今回の数字は社名からの推定で、閉鎖率は全国より高めでも、7割以上は活動中です。個々の会社の状態は、その会社の情報で確かめる必要があります。
似た名前の会社と間違えないためには?
社名の表記は「エス・ビー」と「エスビー」のように少しの違いしかないことがあります。法人番号と本店の住所をセットで確かめると、取り違えを防げます。
町工場に就職を考えるとき、何を見ればよいですか?
得意先が1社に偏っていないか、設備や仕事の中身が今も更新されているか、求人の内容が具体的かを見るのがおすすめです。面接で「主な取引先はどこですか」と聞くのも自然な確かめ方です。
まとめ
長野県松本市で基板の実装と組立を手がけていたエス・ビー製作所が、2026年9月15日に破産手続きの開始決定を受けました。負債は約1億円で、得意先の生産調整や材料費の値上がりで苦しくなり、中古自動車の販売でも本業を補えず、2025年4月ごろに事業を止めていました。しょくばログの台帳では、長野県で社名に「電子」を持つ法人は214社、閉鎖率28.5%、活動中のうち有限会社が58.8%と、小さな町工場の多い姿が見えます。取引先の状態は、登記の「活動中」だけで判断せず、得意先の偏りや、事業の中身の変わり方まで見ておくと安心です。