✍ 古家あきら | 2026-09-22 更新
理髪店の営業利益率4.2%、美容室は1.6%(帝国データバンク)— 店の数は理容所107,995・美容所277,752で「減る理容・増える美容」なのに、もうかるのは理容側。登記データで見ると社名に「理容・理髪・バーバー」を含む法人は1,032件で67%が有限会社、美容系2,537法人は77%が有限会社だった
先に結論です。帝国データバンクの分析(2026年9月19日配信)によると、2025年度決算(2025年4月〜2026年3月期)の営業利益率は、理髪店が平均約4.2%、美容室が平均約1.6%。理髪店のほうが2倍超もうかっています。 一方で店の数は逆に動いていて、厚生労働省の令和6年度衛生行政報告例では理容所が107,995施設(前年度比2,302施設・2.1%減)、美容所が277,752施設(3,682施設・1.3%増)。「増えている側が薄利、減っている側が高利益」というねじれが起きています。うちの会社データベースで社名から拾うと、理容・理髪・バーバーを含む法人は全国1,032件、美容室・美容院・ヘアサロン等を含む法人は2,537件。どちらも閉鎖率は21〜22%で全法人平均(13.2%)を大きく上回り、そして有限会社の比率が理容系66.8%・美容系76.5%と、全法人平均(28.9%)の2倍以上でした。
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「店が増えている業種=元気な業種」と読んでしまいがちな自分に何度も気づきます。今回の帝国データバンクの数字は、その読み方が単純すぎることを示す好例でした。一次資料の数字を並べたうえで、登記データから見える「業界の年齢」まで整理します。
一次資料で確認できること — 理髪店4.2%、美容室1.6%(帝国データバンク・2026年9月19日)
まず利益率の数字は、帝国データバンクの分析記事から引用します。
出典:https://news.yahoo.co.jp/articles/5be54801813a2aba66e995fdc81974dd7e60fc12 (帝国データバンク・2026年9月19日配信・「理髪店vs美容室『もうかる』のはどっち?『1000円カット』驚きの高利益率、美容室よりもうかる訳」。帝国ニュース日刊版「なるほど!の向こう側」を再編集したもの)
| 項目 | 理髪店 | 美容室 | |---|---|---| | 営業利益率(2025年度決算平均) | 約4.2% | 約1.6% | | 2020年度(コロナ禍)の営業損益 | 黒字水準を維持 | 平均4.2%の営業赤字 | | 全国店舗数(記事内の言及) | — | 約27万店 |
利益率は上下計10%を除いた刈り込み平均で算出されています。記事の要点は、客単価が1万円を超えることも珍しくない美容室より、「1000円カット」に代表される低単価・短時間の理髪店のほうが利益率が高く、その差はコロナ禍の2020年度に開いたまま、2023年度以降も縮まっていないということです。
店の数は「理容が減り、美容が増える」— 厚生労働省の衛生行政報告例
次に店舗数です。こちらは厚生労働省の公式統計で押さえます。
出典:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/24/dl/kekka3.pdf (厚生労働省・令和6年度衛生行政報告例の概況・「3 生活衛生関係」表4)
| 年度末 | 理容所 | 美容所 | |---|---|---| | 令和2(2020)年度 | 115,456 | 257,890 | | 令和3(2021)年度 | 114,403 | 264,223 | | 令和4(2022)年度 | 112,468 | 269,889 | | 令和5(2023)年度 | 110,297 | 274,070 | | 令和6(2024)年度 | 107,995(前年度比△2,302・△2.1%) | 277,752(同+3,682・+1.3%) |
4年間で理容所は7,461施設減り、美容所は19,862施設増えました。同じ資料には、理容所と美容所を重複して開設している施設が381件(前年度比11.1%増)とあり、理容師・美容師の両方の免許を活かした店が増えていることも読み取れます。
倒産件数も美容室側が目立ちます。帝国データバンクの「美容室」の倒産動向(2025年)では、2025年の美容室倒産は235件で過去最多(2024年は215件)。倒産した企業の9割超が資本金1,000万円未満、設立10年未満が49.0%で過去最高、人手不足が理由の倒産が11件で2013年以降最多でした。
出典:https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260106-beauty25y/ (帝国データバンク・2026年1月6日・「美容室」の倒産動向(2025年))
つまり、美容室は「店が増え続け、倒産も増え続け、利益率は1.6%」。理髪店は「店が減り続けているが、残った店の利益率は4.2%」。店舗数の増減と、1店あたりの稼ぐ力は別物です。
しょくばログのデータで見る — 理容系1,032法人・美容系2,537法人、7割が有限会社
ここからがうちの持ち場です。国税庁法人番号公表サイト由来の5,791,529法人から、社名に業種を示す語を含む法人を数えました。
| 区分 | 抽出条件(社名) | 法人数 | うち閉鎖登記 | 閉鎖率 | 株式会社 | 有限会社 | 合同会社 | |---|---|---|---|---|---|---|---| | 理容系 | 理容/理髪/バーバー/BARBER | 1,032 | 219 | 21.2% | 99(9.6%) | 689(66.8%) | 14(1.4%) | | 美容系 | 美容室/美容院/ヘアサロン/ヘアーサロン/HAIR | 2,537 | 555 | 21.9% | 406(16.0%) | 1,941(76.5%) | 91(3.6%) | | 全法人 | — | 5,791,529 | 762,832 | 13.2% | 2,920,971(50.4%) | 1,675,486(28.9%) | 451,017(7.8%) |
(しょくばログ調べ・国税庁法人番号公表サイト由来データ。社名に業種語を含まない法人は拾えないため、いずれも下限の数字です。「美容」だけで引くと美容外科・美容医療の法人も混ざるので、店舗を示す語に限定しました)
3つのことが読み取れます。
1. 店の数に対して法人はごくわずか。 理容所107,995施設に対し、社名に理容系の語を含む法人は1,032件。美容所277,752施設に対して2,537件。社名で拾えない法人を考慮しても、理美容業のほとんどが個人事業として営まれていることが分かります。求人票や取引先の書類で「株式会社」「有限会社」と付いている理美容店は、それだけで業界の中では少数派です。
2. 有限会社の比率が異常に高い。 全法人では28.9%の有限会社が、理容系では66.8%、美容系では76.5%を占めます。有限会社は2006年5月の会社法施行以降は新しく作れないので、「有限会社の理容室・美容室」は少なくとも20年以上前に法人化した店です。法人の形が、そのまま業界の年齢を映しています。逆に「HAIR」を社名に含む法人(241件)は株式会社が147件・合同会社が54件で有限会社は31件と、新しい世代の店ほど株式会社か合同会社で作られています。
3. 閉鎖率は全法人平均の1.6倍。 理容系21.2%・美容系21.9%。閉鎖の理由は「清算の結了等」が理容系148件・美容系446件で大半を占め、合併による閉鎖はそれぞれ2件・3件しかありません。廃業するときは「畳む」のであって、「他社に吸収される」業界ではないということです。
都道府県別では、理容系は東京都228・神奈川県119・北海道94・愛知県47・埼玉県41・千葉県40、美容系は東京都355・北海道185・神奈川県179・愛知県154・埼玉県116・千葉県115でした。北海道が両方で上位に入るのは、うちのデータで他業種を見ていてもあまりない並びです。
なお、これらの法人のうち従業員数が公的データ(gBizINFO)で分かるのは理容系6件・美容系73件だけです。「店が何人でやっているか」は、登記からも公的データからもほぼ見えません。
中小事業者と応募者のための3つの学び
個社を評価する話ではなく、一般化できるところだけ書きます。
単価の高さと利益率は別。 客単価1万円の美容室より、低単価の理髪店のほうが利益率が高い。1人あたりの施術時間、席の回転、スタッフの教育コスト、材料費まで含めた「1席あたりの粗利」で見ないと、店の強さは分かりません。これは理美容に限らず、飲食でもサービス業でも同じです。
業界が伸びていることと、その店が安全なことは別。 美容所は毎年増えていますが、倒産も毎年最多を更新しています。設立10年未満の倒産が49.0%というのは、増えている分だけ若い店が淘汰されていることを意味します。応募先や取引先が若い法人なら、設立したばかりの会社は大丈夫かで書いた見方が使えます。
法人の形を見る。 有限会社なら20年以上前に法人化した店、合同会社や株式会社で法人番号が新しければここ数年の店。社名と法人種別だけで、業歴の「桁」は推定できます。業種そのものの調べ方は会社の業種の調べ方、規模の当たりの付け方は会社の規模の調べ方にまとめています。人手不足が理由の倒産が最多になった業界なので、人手不足倒産の見分け方も併せて読んでください。
FAQ
理髪店と美容室で、なぜ利益率にこれだけ差が出るのですか?
帝国データバンクの記事は、低単価・短時間で回転を上げるビジネスモデル(1000円カットに代表される理髪店)のほうが、客単価が高くても1人あたりの施術時間が長く人件費・材料費・テナント料がかさむ美容室より利益が残りやすい、と説明しています。差が開いたのは2020年度で、美容室が平均4.2%の営業赤字だった年に理髪店は黒字を保ち、その後も差は縮まっていません。
美容室の倒産はどのくらい増えているのですか?
帝国データバンクの集計で2025年は235件と過去最多(2024年215件)。倒産した企業の9割超が資本金1,000万円未満、設立10年未満が49.0%です。倒産の種類(破産・民事再生など)の違いは倒産の種類の違いで整理しています。
理容室・美容室が「有限会社」だと古い店という理解でいいですか?
有限会社は2006年5月の会社法施行以降は新設できないため、少なくとも20年以上前に法人化した店です。うちのデータでは理容系法人の66.8%、美容系法人の76.5%が有限会社で、全法人平均28.9%の2倍以上。逆に株式会社や合同会社で法人番号が新しければ、ここ数年で法人化した店だと推定できます。
しょくばログで理容室・美容室を探せますか?
社名で検索できます。ただし社名に「理容」「美容室」などを含まない法人は業種を判別できないことが多く、今回の1,032件・2,537件も社名ベースの下限値です。従業員数がgBizINFOで分かる法人は理容系6件・美容系73件にとどまるため、店の人数は求人票や店舗のサイトで確認してください。
---
数字はすべて帝国データバンク・厚生労働省の一次資料と、しょくばログのデータベース(国税庁法人番号公表サイト由来)から引用しました。個社の経営状態についての評価は含んでいません。