✍ 古家あきら | 2026-09-30 更新
OKIの「セカンドキャリア支援」に668人が応募、特別退職金は約100億円。55歳以上が一斉に動く10月末、受け入れる側の中小企業は採用ページに何を書いているか(公式サイト3.1万社を実測:50代・60代の記載は5.0%)
先に結論です。電機・情報通信の大手、沖電気工業(OKI)が募った「セカンドキャリア支援制度特別措置」に、グループ全体で668人が応募しました。対象は55歳以上・勤続10年以上の人で、全員が2026年10月31日に退職する予定です。 会社は特別退職金として総額100億円程度を見込んでいます。
この施策は「希望退職」という言葉を使っていません。ただ、通常の退職金に特別加算金を上乗せして、社外に移る人を募るという仕組みは、一般に早期退職・希望退職と呼ばれるものと同じです。名前で探すと見落とす、という点がまず一つめの学びです。
二つめは受け入れる側の話です。経験を積んだ50代・60代の人がまとまって転職市場に出てきます。しょくばログが保存している会社公式サイト3万1,159社の採用系ページを数えると、「シニア歓迎」「年齢不問」「50代・60代」といった言葉が一つでも出てくる会社は1,557社、5.0%でした。多くの中小企業は、この年代を採りたいと思っていても、採用ページにはそう書いていない可能性があります。
出典:「セカンドキャリア支援制度特別措置」の結果及び特別損失の計上に関するお知らせ(沖電気工業、2026年9月29日)
出典:「セカンドキャリア支援制度特別措置」の実施に関するお知らせ(沖電気工業、2026年7月15日)
出典:OKIのセカンドキャリア支援に668名が応募、全従業員5%超(不景気.com)
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、大手の人員施策が発表された直後に、その会社のグループ会社や取引先の名前で検索する人が増えます。今回は「制度の名前の読み方」と「50代の人材を迎える中小企業の側で何ができるか」の二つに絞って書きます。
何が発表されたのか(会社の開示で確認できる事実)
2026年9月29日の開示と、7月15日の実施発表で確認できる内容です。
- 会社:沖電気工業株式会社(東京都港区、東証プライム、法人番号 7010401006126)
- 対象:沖電気工業とグループ会社に所属し、2026年10月31日時点で満55歳以上かつ勤続10年以上の正社員と、定年後に再雇用された人
- 募集人数:特に定めない(上限なし)
- 募集期間:2026年8月17日〜9月25日
- 応募人数:連結合計668人(うち沖電気工業単独369人)
- 退職日:2026年10月31日
- 支援内容:通常の退職金に「特別加算金」を上乗せ。希望者には再就職支援サービスを提供
- 業績への影響:特別退職金の総額は100億円程度の見込みで、2027年3月期第2四半期に特別損失として計上する予定。通期の業績予想は修正しない
不景気.comは、668人が連結従業員1万1,956人の5%超にあたると報じています。単純に割ると約5.6%です。また、特別退職金100億円を668人で割ると1人あたり約1,500万円になりますが、これは平均の目安にすぎず、個々の支給額は勤続年数や年齢で変わります。
実施の理由として会社は、同社の「経営計画2031」のもとで、AI・DXの進展に伴う業務や役割の変化、成長領域への人材の移し替え、事業戦略に合わせた人材配置の最適化を挙げています。業績の悪化を理由にした施策とは説明していません。
「セカンドキャリア支援」は希望退職と何が違うのか
制度の名前は会社ごとに違います。「セカンドキャリア支援」「ネクストキャリア支援」「転進支援」「早期退職優遇」など、呼び方はさまざまです。見るべきなのは名前ではなく、次の3点です。
- 退職金の上乗せがあるか:あれば、会社が費用をかけて人数を減らしたい、または入れ替えたい施策です
- 募集期間と退職日が決まっているか:常設の制度ではなく、期間を区切った「特別措置」かどうか
- 募集人数の上限があるか:OKIは上限を定めていません。上限がない募集では、応募が多いほど費用も増えます
上場企業は、こうした施策を決めた時点で開示する必要があります。非上場の会社には一覧がありません。この違いは希望退職を募る会社はその後どうなるかで詳しく書いています。9月には介護のサンウェルズでも、枠の約2倍の応募が出た例がありました(サンウェルズの希望退職の読み方)。OKIの例は、黒字の会社が中長期の人材配置のために行う施策である点で、性格が違います。
しょくばログの台帳とサイト保存データで見えること
ここからは、国税庁の法人番号データをもとにした台帳と、しょくばログが保存している会社公式サイトのテキストで数えた数字です。
「沖電気」を社名に含む法人は活動中7件。グループとは限らない
社名に「沖電気」を含む法人は、台帳上で累計9件、活動中は7件でした。沖電気工業そのもののほか、健康保険組合、労働組合、特約店・販売店の持株会が並びます。一方で「有限会社沖電気工業」「沖電気株式会社」「沖電気通信合同会社」のように、名前は似ていても、台帳の情報だけでは同社グループかどうか判断できない法人もあります。
グループ会社の多くは「OKI○○」のように英字の社名を使っているため、「沖電気」で検索しても出てきません。反対に、似た名前だからといってグループ会社とは限りません。転職先や取引先の会社が本当にそのグループかは、親会社の開示資料にある子会社一覧と、法人番号で照らし合わせるのが確実です。グループを名乗る会社の実態については「グループ」を名乗る会社の調べ方にまとめています。
採用ページで50代・60代に触れている会社は5.0%
しょくばログが保存している会社公式サイト(採用系のページを中心とした3万2,838社分)のうち、文字化けのない3万1,159社を対象に、次の言葉が出てくるかを数えました。1社で複数に当てはまることがあります。
- 「中途採用」「キャリア採用」:1万667社(34.2%)
- 「経験者優遇」「経験者歓迎」:1,939社(6.2%)
- 「50代」「60代」:1,068社(3.4%)
- 「年齢不問」:395社(1.3%)
- 「シニア歓迎」「シニア活躍」など:137社(0.4%)
- 「セカンドキャリア」:82社(0.3%)
- 「定年後の方」「定年退職された方」など:21社(0.1%)
「50代」「60代」「年齢不問」「シニア」「セカンドキャリア」「定年後」のどれか一つでも出てくる会社は1,557社、5.0%でした。なお「50代」は「20代〜50代の社員が活躍中」のような年齢構成の説明でも出てくるので、この数字は「50代以上を歓迎すると書いている会社の数」ではなく、「この年代に何らかの形で触れている会社の数」の上限に近いものです。
業種(日本標準産業分類の大分類、対象300社以上の業種)で見ると、割合が高いのは生活関連サービス業・娯楽業の9.4%、運輸業・郵便業の8.3%、医療・福祉の6.7%でした。低いのは製造業の3.3%、卸売業・小売業の3.7%です。OKIのような電機・通信の技術者が移りやすいと考えられる製造業で、採用ページがこの年代に触れている割合がいちばん低い、という結果になりました。
定年の書き方については、同じ保存データで会社の定年を調べる方法でも数えています。定年に触れている会社は8.0%でした。
働く人・受け入れる会社が確かめておきたいこと
- 応募した人:再就職支援サービスの内容と期限を確認しておきましょう。転職先の候補は、求人票だけでなく会社のサイトや登記情報でも確かめると安心です。見方は求人票の見方にまとめています
- グループ会社や取引先で働く人:自社が対象の「グループ会社」に入っているかは、会社からの説明で確認してください。社名の似た別法人の情報と混同しないよう注意が必要です
- 50代の経験者を採りたい中小企業:採りたいなら、採用ページにそう書くことです。「年齢不問」の一言より、「50代・60代の方が活躍中」「定年後の再雇用あり」「〇〇の経験を活かせる」のように、具体的に書くほうが伝わります。定年や再雇用の制度も、あるなら書いておくと、この年代の人が安心して応募できます
よくある質問
セカンドキャリア支援に応募すると、失業保険は会社都合になりますか?
会社が退職を募り、それに応じて辞めた場合、雇用保険では会社都合に近い扱いになることがあります。ただし、制度の内容や離職票の記載で判断が変わるため、実際にはハローワークで確認してください。
668人という数字は多いのですか?
不景気.comの報道によれば、連結従業員の5%超にあたります。対象は55歳以上・勤続10年以上に限られているので、対象者の中で見た割合はもっと高いと考えられますが、会社は対象者の総数を公表していません。
OKIのグループ会社かどうかは、どうやって確かめればよいですか?
親会社の有価証券報告書や統合報告書に、主要な子会社の一覧が載っています。その社名と、相手の会社の法人番号・本店所在地を照らし合わせるのが確実です。社名に「沖電気」が入っていても、グループとは限りません。
中小企業が50代の経験者を採るとき、何から始めればよいですか?
まず採用ページと求人票に、その年代を歓迎していることと、定年・再雇用の制度をはっきり書くことです。しょくばログの保存データでは、この年代に触れている会社は5.0%にとどまっており、書くだけでも目に留まりやすくなります。
まとめ
OKIの「セカンドキャリア支援制度特別措置」には、55歳以上・勤続10年以上を対象に668人が応募し、10月31日に退職する予定です。名前は違っても、退職金を上乗せして社外への転身を募る仕組みは早期退職と同じなので、名前ではなく中身で読むことが大切です。受け入れる側の中小企業にとっては、経験のある人材に出会える機会でもあります。ただ、採用ページでこの年代に触れている会社は、実測で5.0%でした。しょくばログでは、今後も会社のサイトや法人番号データの更新にあわせて、数字を見直していきます。