✍ 古家あきら | 2026-09-28 更新
「グループ」を名乗る会社の実態 — 全国1万2,211社を数えたら、同じ住所に"兄弟会社"が見つかるのは7.5%だけ。ホールディングスは34.2%だった
先に結論です。社名に「グループ」と付いていても、その会社が実際に複数の会社を束ねているとは限りません。 会社法には「グループ」という言葉の定義がなく、商号(会社の正式な名前)に入れるのに資格も審査も要りません。1社だけで営業している会社が「〇〇グループ株式会社」を名乗っても、登記上は何の問題もないのです。しょくばログの会社データベースで商号に「グループ」を含む活動中の法人を数えると12,211社。このうち介護の「グループホーム」などを除いた11,666社について、同じ所在地に同じ呼び名を持つ別の法人が登記されているかを調べると、見つかったのは7.5%でした。同じ計算を「ホールディングス」でやると34.2%です。「グループ」は、束ねる実体がなくても名乗れる、軽い言葉だということが数字に出ています。
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「応募しようとしている会社が〇〇グループという名前なのですが、どのくらい大きな会社なんでしょうか」という質問をときどき受けます。ホールディングスについてはホールディングスとは何をする会社かで数えましたが、「グループ」はそれとは性格の違う名前です。この記事では、まず「グループ」を名乗ることのルールを条文で確認し、次にうちの台帳で「グループ」を名乗る会社の数・種類・地域・規模・閉じ方を数え、最後に社名の「グループ」を読むときの確かめ方を整理します。
「グループ」は法律上の言葉ではない — 条文で確認できること
会社の名前のルールは会社法第6条にあります。第1項は「会社は、その名称を商号とする」、第2項は株式会社・合名会社・合資会社・合同会社という種類の文字を商号に入れなければならない、第3項は他の種類の会社と誤認されるおそれのある文字を使ってはならない、という内容です。決められているのは「会社の種類を正しく名乗ること」で、それ以外の部分に何を入れるかは自由です。
制限として残っているのは主に2つです。
- 会社法第8条:不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称や商号を使ってはならない
- 商業登記法第27条:他人が既に登記した商号と同一で、かつ本店の所在場所も同一の場合は登記できない
どちらも「他の会社になりすます」「同じ場所に同じ名前を重ねる」ことを止める規定で、「グループ」という語そのものを縛るものではありません。対照的なのが銀行です。銀行法第6条第2項は「銀行でない者は、その名称又は商号中に銀行であることを示す文字を使用してはならない」と定めており、業法で名乗りが守られている言葉もあります。「グループ」にはそうした規定がありません。
では会社法は会社どうしのつながりをどう呼んでいるかというと、第2条第3号の「子会社」、第4号の「親会社」、そして第362条第4項第6号に出てくる「当該株式会社及びその子会社から成る企業集団」という言い方です。法律上のつながりは議決権の過半数を持っているか、経営を支配しているかで決まり、社名に「グループ」と入っているかどうかは関係ありません。商号の自由が広がった経緯(2006年の会社法施行で類似商号の規制が大きく緩んだこと)は、社名に「日本」「全国」を含む会社は大企業のサインかで詳しく書いています。
「グループ」を名乗る会社は12,211社 — ホールディングスの6割ほど
うちの台帳(国税庁の法人番号公表データが元)で、活動中の法人4,988,967件のうち、商号に「グループ」(全角英字の「GROUP」「Group」を含む)を持つものを数えました。
- 「グループ」を含む活動中の法人:12,211件(全体の0.24%)
- 参考:「ホールディングス」を含む活動中の法人:20,125件
「グループ」は思ったより少なく、ホールディングスの6割ほどです。ただし、この12,211件には会社を束ねるという意味ではない「グループ」も混ざっています。
- グループホーム(認知症の人や障害のある人が少人数で暮らす住まい)を名前に含む法人:145件
- 「グループ」と「ホールディングス」の両方を含む法人(〇〇グループホールディングス等):398件
- グループウェア(ソフトウェアの種類):2件
グループホームは福祉サービスの名前で、会社の束ねとは関係ありません。「グループホールディングス」はホールディングス側の記事で扱ったので、以下の集計ではこれらを除いた11,666件を「グループ」を名乗る会社として見ていきます。
名前の付き方は、8,498件(72.8%)が法人格を除いた商号の末尾に「グループ」を置く形でした。「株式会社〇〇グループ」「〇〇グループ株式会社」がほとんどということです。また、3,361件は英字の「GROUP」表記だけで、カタカナの「グループ」を使っていません。
法人種別 — 株式会社64.3%、有限会社は全体の半分以下
- 株式会社:「グループ」を名乗る会社 64.3%(7,506件)/活動中の全法人 50.4%
- 有限会社:「グループ」を名乗る会社 13.4%(1,561件)/活動中の全法人 28.6%
- 合同会社:「グループ」を名乗る会社 12.1%(1,417件)/活動中の全法人 8.3%
- その他の設立登記法人(一般社団法人など):「グループ」を名乗る会社 6.7%(784件)/活動中の全法人 10.4%
- 外国会社等:「グループ」を名乗る会社 1.5%(176件)/活動中の全法人 0.4%
有限会社の割合が全体の半分以下で、合同会社が多めです。有限会社は2006年以降新しく作れないので、有限会社が少ないのは「グループ」を名乗る会社に比較的新しい会社が多いことを示唆します。外国会社等も176件と全体の比率の約4倍あり、海外企業の日本支店が本国の「Group」の名前のまま登記しているケースが含まれます。法人の種類ごとの違いは法人の種類一覧にまとめています。
都道府県 — 東京都に31.8%
- 東京都:件数 3,715件/「グループ」の中の割合 31.8%/全法人の中の割合 23.0%
- 大阪府:件数 1,142件/「グループ」の中の割合 9.8%/全法人の中の割合 8.4%
- 神奈川県:件数 666件/「グループ」の中の割合 5.7%/全法人の中の割合 6.5%
- 愛知県:件数 576件/「グループ」の中の割合 4.9%/全法人の中の割合 4.8%
- 福岡県:件数 541件/「グループ」の中の割合 4.6%/全法人の中の割合 3.9%
東京都への集中は全体より約9ポイント強く、大阪府・福岡県もやや多めです。ホールディングス(東京都33.9%)とほぼ同じ傾向でした。
同じ住所に"兄弟会社"がある「グループ」は7.5% — ホールディングスは34.2%
ここが今回いちばん確かめたかったところです。本当に複数の会社を束ねているなら、同じ呼び名の関連会社が登記されているはずです。たとえば「株式会社さくらグループ」なら「さくら不動産株式会社」「株式会社さくら建設」のような会社です。
最初に、「〇〇グループ」の〇〇と同じ名前の会社が全国のどこかにあるかを数えると、11,383件中6,194件(54.4%)で見つかりました。ただし、これは当てになりません。「さくら」「アース」のような呼び名は、無関係な会社が全国にいくらでもあるからです。
そこで条件を厳しくして、同じ所在地(都道府県・市区町村・番地まで一致)に、同じ呼び名を含む別の活動中法人があるかを数えました。グループ会社は本社と同じビルに登記されていることが多いので、これなら偶然の一致はかなり減ります。
- 照合できた「グループ」を名乗る会社:11,309件
- 同じ所在地に、何らかの別法人がある:4,986件(44.1%)
- 同じ所在地に、同じ呼び名を含む別法人がある:846件(7.5%)
- そのうち兄弟会社が1社:562件/2〜4社:234件/5社以上:50件
同じ計算を、「グループ」を含まない「ホールディングス」(照合できた19,342件)でやると、6,621件(34.2%)で同じ所在地に同じ呼び名の別法人が見つかりました。ホールディングスは4社に1社以上で"兄弟会社"が同じ住所にいるのに、「グループ」は13社に1社程度です。
もちろん、関連会社が別の住所に本店を置いていれば、この方法では見つかりません。7.5%は「グループ会社がある割合」の下限の目安にすぎません。それでも、ホールディングスとの差の大きさから、「グループ」は束ねている実体がなくても名乗られている名前だと読むのが自然です。実際には、社名に「グループ」と入れる理由として「将来グループ化したい」「チームで動く会社だと伝えたい」「響きが大きく見える」といった動機も考えられますが、登記からは動機までは分かりません。
規模 — 上場は130社(1.1%)、従業員の中央値は37人
「〇〇グループ」と聞くと大手企業を思い浮かべる人もいると思います。うちの台帳はEDINET(金融庁の開示システム)の提出者一覧を法人番号で突き合わせており、証券コードがある会社を上場会社として数えられます。
- 上場している「グループ」を名乗る会社:130社(11,666社の1.1%)
- 「グループホールディングス」も含めると155社
上場している中には、ソフトバンクグループ株式会社、株式会社三井住友フィナンシャルグループ、日清オイリオグループ株式会社、株式会社岡三証券グループなどが並びます。「フィナンシャルグループ」を名乗る会社は61社ありました。ただ、上場は全体のわずか1.1%で、残りの98.9%は非上場です。
従業員数は、gBizINFO(経済産業省の法人情報サイト)に記載がある578社で見ました。
- 0〜4人:「グループ」を名乗る会社(578社) 10.7%/株式会社全体(112,163社) 12.0%
- 5〜9人:「グループ」を名乗る会社(578社) 12.1%/株式会社全体(112,163社) 13.0%
- 10〜49人:「グループ」を名乗る会社(578社) 32.2%/株式会社全体(112,163社) 34.2%
- 50〜99人:「グループ」を名乗る会社(578社) 11.9%/株式会社全体(112,163社) 10.1%
- 100〜299人:「グループ」を名乗る会社(578社) 17.8%/株式会社全体(112,163社) 18.9%
- 300〜999人:「グループ」を名乗る会社(578社) 9.2%/株式会社全体(112,163社) 8.5%
- 1,000人以上:「グループ」を名乗る会社(578社) 6.1%/株式会社全体(112,163社) 3.4%
中央値は「グループ」を名乗る会社が37人、株式会社全体が31人でした。1,000人以上の割合は1.8倍ありますが、分布全体はほとんど変わりません。従業員10人未満の会社が22.8%含まれています。gBizINFOに従業員数が載っているのは、補助金の申請や調達など国とのやり取りがある会社に偏るので、実際の小規模な会社はもっと多いと考えたほうが安全です。従業員数の調べ方と、単体・グループ全体の数字の違いは会社の従業員数を無料で調べる4つの方法に書いています。
閉じ方 — 「合併」で消える割合が全体の約1.8倍
活動を終えた(登記が閉鎖された)「グループ」を名乗る会社は1,319件で、閉鎖済みを含めた中での閉鎖率は10.2%でした。全法人の13.3%より低めです。閉鎖事由の内訳は次のとおりです。
- 清算の結了等:「グループ」を名乗る会社 60.5%/全法人 64.5%
- 登記官による閉鎖(長く登記がない休眠会社など):「グループ」を名乗る会社 24.6%/全法人 27.5%
- 合併による解散等:「グループ」を名乗る会社 13.9%/全法人 7.8%
- その他の清算の結了等:「グループ」を名乗る会社 1.1%/全法人 0.2%
「合併」で消える割合が全体の約1.8倍です。合併は倒産ではなく、会社どうしを1つにまとめる組織再編です。実際にグループ会社を持つ「グループ」は、再編の過程で吸収されて名前が消えることがある、ということが数字に表れています。裏返すと、「〇〇グループ」の登記が閉鎖されていても、それだけで「潰れた」とは言えません。閉じ方の見分け方は会社の登記簿は誰でも見られるも参考にしてください。
社名の「グループ」を読むときの確かめ方
応募先や取引先の名前に「グループ」が入っているとき、うちの運営経験から、次の順番で確かめると迷いにくいと思います。
1. 公式サイトに「グループ会社一覧」「関連会社」があるか見る。実際に束ねている会社なら、会社名・所在地・事業内容を並べていることがほとんどです。名前だけあって一覧がなければ、1社で営業している可能性を考えます 2. 一覧にある会社を法人番号で1社ずつ引く。しょくばログや国税庁の法人番号公表サイトで、実在していて閉鎖されていないか、所在地がどこかを確認します。同じ住所に並んでいれば、少なくとも登記上のつながりは見えます 3. 資本関係は登記では分からないと割り切る。親会社・子会社の関係(議決権の過半数を持つか)は登記事項に載りません。上場会社なら有価証券報告書の「関係会社の状況」、非上場なら面接や商談で直接聞くのが確実です。詳しい手順は会社の親会社・グループ会社を調べる方法にまとめています 4. 応募するなら「採用するのはどの法人か」を確かめる。求人票の会社名が「〇〇グループ」でも、雇用契約を結ぶのは別の子会社、ということがあります。労働条件通知書に書かれた法人名と、法人番号を照らし合わせておくと安心です
「グループ」と付いていないのに大きなグループの一員、という会社もたくさんあります。社名は入口にすぎず、判断の材料は登記・開示資料・本人たちの説明のほうにある、というのが今回数えてみての実感です。
よくある質問
1社しかないのに「グループ」を名乗っても問題ないのですか
登記上は問題ありません。会社法第6条が求めているのは「株式会社」「合同会社」など会社の種類を正しく入れることで、「グループ」という語には資格の要件がありません。ただし、有名な会社と誤認させる目的で似た名前を使うことは会社法第8条で禁じられており、不正競争防止法の問題にもなりえます。
「グループ」と「ホールディングス」は何が違うのですか
どちらも法律上の定義がある言葉ではありませんが、ホールディングスは「他の会社の株式を持つことでグループを束ねる会社(持株会社)」という意味で使われることがほとんどです。うちの台帳でも、同じ所在地に同じ呼び名の別法人がある割合はホールディングスが34.2%、「グループ」が7.5%で、ホールディングスのほうが実際に会社を束ねている割合がはっきり高い結果でした。
「グループホーム」という名前の法人は会社のグループなのですか
違います。グループホームは、認知症の人や障害のある人が少人数で共同生活を送る住まいのことで、介護・障害福祉のサービスの名前です。うちの台帳では、商号にグループホームを含む活動中の法人が145件あり、今回の集計からは除いています。
「〇〇グループ」の登記が閉鎖されていたら、倒産したということですか
そうとは限りません。「グループ」を名乗る会社が閉鎖された理由のうち13.9%は合併で、全法人平均の7.8%より多くなっています。合併は会社を1つにまとめる手続きで、事業は合併先の会社で続いていることがあります。閉鎖事由が「合併による解散等」か「清算の結了等」かを見ると、閉じ方の違いが分かります。
求人票の会社名が「〇〇グループ」のとき、何を確認すればよいですか
実際に雇用契約を結ぶ法人名を確認してください。グループ名で募集していても、雇用主は子会社や別の法人ということがあります。労働条件通知書・雇用契約書に書かれた法人名を法人番号で引き、所在地や設立年、閉鎖されていないかを確かめておくと、入社後の「思っていた会社と違う」を減らせます。
まとめ
- 「グループ」は会社法に定義のない言葉で、商号に入れるのに資格も審査も要らない(会社法6条・8条、商業登記法27条)。法律上のつながりは「子会社」「親会社」「企業集団」という言い方で、議決権や経営の支配で決まる
- 活動中4,988,967法人のうち、商号に「グループ」を含むのは12,211件(0.24%)。グループホーム145件・グループホールディングス398件などを除くと11,666件
- 株式会社が64.3%、有限会社は13.4%(全体28.6%)、東京都に31.8%(全体23.0%)
- 同じ所在地に同じ呼び名の別法人がある割合は「グループ」7.5%、ホールディングス34.2%。「グループ」は束ねる実体がなくても名乗られている
- 上場は130社(1.1%)、従業員数の中央値は37人(株式会社全体31人)で、10人未満も22.8%
- 閉鎖事由の「合併」は13.9%で全法人平均7.8%の約1.8倍。閉鎖=倒産ではない
しょくばログでは全国約499万社の会社情報を無料で公開しています。社名に「グループ」と付いた会社を見かけたら、会社名で検索して、法人番号・所在地・同じ住所に並ぶ会社を確かめてみてください。
参照した一次資料
- 会社法(平成十七年法律第八十六号)第2条第3号・第4号、第6条、第8条、第362条第4項第6号(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 ・法令APIで条文を取得)
- 商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第27条(e-Gov法令検索)
- 銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第6条(e-Gov法令検索)
- 自社データベース(国税庁 法人番号公表データ由来のしょくばログDB/gBizINFO由来の従業員数/EDINET提出者一覧の証券コード)2026年9月28日集計。集計スクリプト:`scripts/analyze_group_shamei.py`