✍ 古家あきら | 2026-09-29 更新
建築士事務所登録を調べる方法 — 会社サイト31,159社で数えたら、登録番号まで書いているのは言及した会社の43.9%だった
先に結論です。建築士事務所の登録は、都道府県知事が備える「登録簿」で確かめられます。建築士法第23条の9で、都道府県知事は登録簿を一般の閲覧に供さなければならないと決まっています。つまり、誰でも見てよい情報です。
もう一つ大事なのは、建築士事務所の登録と建設業許可は別の制度だということです。建設業許可は工事を請け負うための許可で、建築士事務所の登録は設計や工事監理などを報酬を得て請け負うための登録です。家を建てる、店舗を改装するといった場面で「設計もやります」という会社に出会ったら、建設業許可とは別に、この登録があるかを見る必要があります。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「工務店に設計も頼みたいが、資格のある会社か確かめたい」「転職先の設計部門がちゃんとした事務所か知りたい」という声をときどき聞きます。そこで、しょくばログが保存している会社の公式サイトのうち、文字化けが少なく読める31,159社を対象に、「建築士事務所」について書いている会社を数えました。
- 「建築士事務所」に触れている会社は681社(2.2%)
- そのうち一級建築士事務所と書いているのが81.2%、二級建築士事務所が7.0%。木造建築士事務所は0社
- 登録番号(「第〇号」)まで書いている会社は43.9%。残りの半分強は、事務所の種類だけを書いて番号を載せていない
- 建設業許可もあわせて書いている会社が52.4%。宅地建物取引業(宅建業)を書いている会社も37.7%あった
- 業種別では、不動産業8.9%・建設業8.3%・学術研究/専門技術サービス業(建築設計業を含む)6.0%。製造業は1.0%
以下、制度のしくみと調べる場所を順に説明してから、数えた結果を詳しく見ていきます。
建築士事務所登録とはどんな制度か
建築士法第23条は、一級建築士・二級建築士・木造建築士、またはこれらの建築士を使う者が、他人から頼まれて報酬を得て設計や工事監理などを業として行うときは、「一級建築士事務所、二級建築士事務所又は木造建築士事務所を定めて」都道府県知事の登録を受けなければならない、と定めています。
ポイントを整理するとこうなります。
- 登録先は事務所の所在地の都道府県知事。国ではありません(第23条の2)
- 登録の有効期間は5年。続けるなら更新が要ります(第23条第2項・第3項)
- 区分は3つ:一級建築士事務所、二級建築士事務所、木造建築士事務所
- 登録を受けずに設計等を業として行うことは禁止されています(第23条の10)
対象になる「設計等」には、設計と工事監理のほか、建築工事契約に関する事務、建築工事の指導監督、建築物の調査・鑑定、建築に関する法令・条例に基づく手続の代理まで含まれます。建築確認の申請を代わりに出す仕事も、ここに入ります。
建築士という個人の資格と、建築士事務所という事務所の登録も別物です。社員に一級建築士がいても、会社として事務所の登録がなければ、報酬を得て設計を請け負うことはできません。逆に、事務所には必ず「管理建築士」という専任の建築士を置くことになっています(第24条)。
建設業許可との違い
ここがいちばん混同されやすいところです。
- 建設業許可:建設業法にもとづく許可。工事を請け負うためのもの。国土交通大臣または都道府県知事が出す
- 建築士事務所登録:建築士法にもとづく登録。設計・工事監理などを請け負うためのもの。都道府県知事が登録する
工務店やハウスメーカーのように「設計から施工まで」を引き受ける会社は、両方を持っていることがよくあります。今回の集計でも、「建築士事務所」に触れている681社のうち52.4%が、建設業許可についても書いていました。
反対側から見ると、会社サイトで建設業許可に触れていた1,796社のうち、建築士事務所にも触れていたのは357社(19.9%)でした。建設業許可を持つ会社の多くは、設計の登録についてはサイトに書いていないということです。書いていないから登録がないとは限りませんが、設計まで頼むつもりなら、別に確かめる価値があります。
建設業許可そのものの調べ方は会社の許認可を調べる方法に、許可がなくても受けられる工事の範囲はリフォーム会社に建設業許可がないのは普通かにまとめています。
建築士事務所登録を調べる3つの場所
1. 都道府県・指定事務所登録機関の登録簿(公式の確認先)
建築士法第23条の9により、都道府県知事は次の書類を一般の閲覧に供さなければなりません。
- 登録簿
- 建築士事務所が毎年出す「設計等の業務に関する報告書」
- その他、国土交通省令で定める書類
登録簿には、事務所の名称と所在地、一級・二級・木造の別、開設者の名前(法人なら役員の名前も)、登録年月日、登録番号などが載ります(第23条の2・第23条の3)。
また、都道府県知事は「指定事務所登録機関」を指定して、登録の事務や登録簿の閲覧の事務を任せることができます(第26条の3)。そのため、都道府県によっては、県庁ではなく指定事務所登録機関が閲覧の窓口になっています。どこが窓口かは都道府県で違うので、「(都道府県名) 建築士事務所 登録 閲覧」で検索し、県の建築指導の担当ページか、指定事務所登録機関のページを探すのが近道です。インターネットで登録事務所を検索できるようにしているところもあります。
見落としやすいのが、登録先は事務所の所在地の都道府県だという点です。本社が東京でも、設計の事務所を大阪に置いていれば大阪府の登録です。会社の本店所在地と事務所の所在地がずれていないか、先に確かめておきましょう。
2. 事務所に掲げてある標識
建築士事務所の開設者は、事務所の「公衆の見やすい場所」に標識を掲げなければなりません(第24条の5)。打ち合わせで事務所を訪ねたときに、入口や受付まわりを見てみてください。事務所の区分や登録番号、管理建築士の名前などが書かれています。
3. 事務所に備え置かれた書類(依頼する人なら見られる)
建築士事務所の開設者は、次のような書類を事務所に備え置き、設計等を委託しようとする人の求めに応じて閲覧させなければなりません(第24条の6)。
- 事務所の業務の実績を書いた書類
- 事務所に属する建築士の氏名と業務の実績を書いた書類
- 設計等で損害が出たときの賠償に備えた保険などの内容を書いた書類(加入している場合)
「実績を見せてください」「どの建築士が担当しますか」と聞くのは、失礼な質問ではありません。法律で見せることになっている書類です。
会社サイト31,159社で数えた結果
ここからは、しょくばログが保存している会社の公式サイトを数えた結果です。対象は、保存している会社サイトのうち文字化けが少なく読める31,159社。サイト全体のテキストに「建築士事務所」という語が出てくるかで数えています。
触れている会社は2.2%、うち一級が8割
「建築士事務所」に触れていた会社は681社で、全体の2.2%でした。区分の内訳は次のとおりです(1社で複数に当てはまることがあります)。
- 一級建築士事務所:553社(81.2%)
- 二級建築士事務所:48社(7.0%)
- 木造建築士事務所:0社
- 区分の書かれていない言及:83社(12.2%)
区分のない言及には、「建築士事務所協会の会員です」のように、団体名の一部として出てくるものも含まれます。
登録番号まで書いているのは43.9%
「建築士事務所」の語から60字以内に「第〇号」という番号が続いている会社を数えると、299社(43.9%)でした。「知事登録」という言葉が近くにある会社は240社(35.2%)です。
言いかえると、建築士事務所だと書いている会社の半分強は、登録番号を載せていません。会社概要の許認可欄に「一級建築士事務所」とだけ書いてあるパターンです。番号がないことがすぐ問題になるわけではありませんが、公式の登録簿で照らし合わせるには、事務所の名称と所在地、できれば番号が要ります。番号が見当たらなければ、問い合わせのときに聞いてしまうのがいちばん早いです。
なお、事務所を管理する専任の建築士である「管理建築士」の名前にまで触れている会社は15社(2.2%)でした。
業種別:不動産業と建設業で8%台
業種(日本標準産業分類の大分類)ごとに、その業種の会社のうち何%が「建築士事務所」に触れているかを出しました(対象100社以上の業種)。
- 不動産業、物品賃貸業:8.9%(503社中45社)
- 建設業:8.3%(3,489社中291社)
- 学術研究、専門・技術サービス業:6.0%(1,406社中84社)
- 製造業:1.0%(6,600社中63社)
建築設計業は「学術研究、専門・技術サービス業」に分類されます。設計専業の会社が多いはずのこの業種より、建設業や不動産業のほうが高く出ました。建売住宅や注文住宅を手がける不動産会社・工務店が、会社概要に「一級建築士事務所」と並べて書くことが多いためだと考えています。宅地建物取引業をあわせて書いている会社が37.7%あったのも、この見方と合います。
業種の分類の考え方は会社の業種を調べる方法に書きました。
従業員規模別:50〜99人がいちばん高い
- 1〜9人:1.8%
- 10〜49人:2.4%
- 50〜99人:3.3%
- 100〜299人:2.2%
- 300人以上:1.4%
50〜99人がいちばん高く、300人以上ではかえって低くなりました。大きい会社ほど事業が多岐にわたり、会社サイトのトップに設計の登録を書かないことが影響しているのかもしれません。
法人種別・都道府県別
株式会社では2.6%(25,823社中669社)、有限会社では0.6%(1,128社中7社)でした。法人の種類ごとの違いは法人の種類一覧を参照してください。
都道府県別(対象300社以上)では、滋賀県4.3%・山形県4.2%・新潟県4.0%が高く、京都府0.7%・三重県0.4%が低めでした。ただし県ごとの該当社数は数社〜数十社と少なく、しょくばログがどの会社のサイトを保存しているかの偏りも効くので、県の差は参考程度に見てください。
この集計の限界
- 対象はしょくばログが保存している会社サイトで、全国の会社を無作為に選んだものではありません
- 個人で開設している設計事務所は、法人番号がないため対象に入っていません
- 「サイトに書いていない」は「登録がない」ではありません。登録の有無は、必ず登録簿で確かめてください
- 集計に使ったのは語の出現で、文脈までは読んでいません。個社名は出していません
依頼・転職の前にどう使うか
設計を頼むとき、または設計と施工をまとめて頼むときは、次の順番で見ると抜けがありません。
1. 会社サイトの会社概要・許認可欄で、建築士事務所の区分と登録番号を見る 2. 都道府県(または指定事務所登録機関)の登録簿で、名称・所在地・登録番号が一致するか確かめる 3. 工事も頼むなら、建設業許可も別に確かめる 4. 打ち合わせで、担当する建築士と事務所の実績の書類を見せてもらう
番号の照合で名前や住所が食い違っていたら、事務所が移転したのか、別会社の登録なのかを確かめましょう。会社そのものが実在して事業を続けているかは、新規取引先の確認事項と取引先の信用を調べる方法の手順が使えます。サイトの許認可欄は更新が止まっていることもあるので、ホームページの更新が止まっている会社は大丈夫かもあわせて見ておくと安心です。
転職で設計部門を志望する場合も、確かめる場所は同じです。一級か二級か、管理建築士が誰かは、担当できる建物の範囲や、入社後に資格を生かせるかに関わります。面接で「建築士事務所の区分と、所属する建築士の人数」を聞いてみるとよいと思います。
よくある質問
建築士事務所登録は誰でも調べられますか?
調べられます。建築士法第23条の9で、都道府県知事は登録簿を一般の閲覧に供さなければならないと決まっています。窓口は都道府県か、都道府県が指定した指定事務所登録機関です。閲覧の方法(窓口・インターネット)は都道府県ごとに違うので、該当する県のページで確認してください。
建設業許可があれば、設計も頼めますか?
別の制度なので、建設業許可だけでは足りません。報酬を得て設計や工事監理を請け負うには、建築士事務所の登録が必要です(建築士法第23条・第23条の10)。今回の集計でも、建設業許可に触れていた会社のうち建築士事務所にも触れていたのは19.9%でした。設計まで頼むなら、登録を別に確かめてください。
登録の有効期限はありますか?
あります。登録の有効期間は登録の日から5年で、続けるには更新の登録が必要です(建築士法第23条第2項・第3項)。古いパンフレットやサイトに載っている番号は、更新前のものかもしれません。
一級建築士事務所と二級建築士事務所は何が違いますか?
事務所を管理する専任の建築士(管理建築士)が一級建築士か二級建築士か、という区分です(建築士法第24条)。一級建築士と二級建築士では設計できる建物の規模や構造の範囲が違うので、事務所として引き受けられる仕事の範囲にも関わります。大きな建物や特殊な構造の建物を頼むなら、一級建築士事務所かどうかを確かめてください。
会社サイトに登録番号が書いていないのは怪しいですか?
それだけで怪しいとは言えません。今回の集計では、建築士事務所に触れている会社の半分強(56.1%)が番号を載せていませんでした。書き方の習慣の問題であることが多いと思います。気になるときは番号を直接たずね、登録簿で照らし合わせれば確実です。