✍ 古家あきら | 2026-09-29 更新
会社のSDGsへの取り組みを調べる方法 — 会社サイト3万社で「SDGs」を載せているのは17%だった
先に結論です。会社のSDGsへの取り組みは、①公式サイトのSDGsページ、②自治体のSDGs登録・認証制度の名簿、③上場企業なら統合報告書・サステナビリティレポート、の3か所で確認できます。ただし、SDGsは国や自治体の認定制度そのものではなく、会社が自分で「取り組んでいます」と書ける言葉です。書いてあることと実際にやっていることは別物なので、読み方にコツがいります。
しょくばログという会社データベースを運営していると、会社の公式サイトを保存して中身を数える機会がよくあります。今回、読める状態で保存できている会社サイト31,159社を対象に「SDGs」「持続可能な開発目標」という言葉が出てくる会社を数えました。結果は5,293社・17.0%。おおよそ6社に1社です。
この記事では、その数字を業種・規模・地域ごとに分けて見たうえで、転職や取引の前に「SDGsの記載」をどう読めばよいかを整理します。
SDGsの取り組みを調べる3つの場所
1. 会社の公式サイト(まずここ)
多くの会社は「SDGsへの取り組み」「サステナビリティ」「CSR」といったページを作っています。トップページに見当たらなくても、「会社概要」や「企業情報」の下に置かれていることがよくあります。サイト内検索がない場合は、検索エンジンで「会社名 SDGs」と入れると早いです。
見るべきは、どの目標に対して、何を、どれくらいやっているかが書かれているかどうかです。17のアイコンが並んでいるだけのページと、「社用車の○台を電気自動車に切り替えた」のように具体的な行動が書いてあるページとでは、情報の重みがまったく違います。
2. 自治体のSDGs登録・認証制度の名簿
意外と知られていませんが、SDGsには都道府県や市が運営する登録・認証制度があります。内閣府が地方創生の一環として自治体に仕組みづくりを促しているもので、自治体が申請を受け付けて、一定の項目を満たした会社を「登録事業者」「パートナー」「認証企業」として名簿に載せています。
名簿は各自治体のサイトで公開されていることが多く、会社名で探せます。自己申告だけのSDGs宣言よりは、第三者(自治体)の審査を一度通っているぶん確認の材料になります。ただし審査の厳しさは自治体ごとに違い、「実績を評価する認証」もあれば「今後の取り組みを宣言すれば登録できる制度」もあります。名前だけで同列に扱わないようにしてください。
3. 統合報告書・サステナビリティレポート(上場企業など)
上場企業や大手企業は、統合報告書やサステナビリティレポートで数値目標と実績を公開していることがあります。温室効果ガスの排出量、女性管理職比率、離職率などが年ごとに並んでいれば、取り組みが「続いているか」を追えます。中小企業ではほとんど作られていないので、中小企業を調べるときは1と2が中心になります。
うちのデータで見る「SDGsを載せている会社」
ここからは、しょくばログが保存している会社サイトを数えた結果です。数え方は次のとおりです。
- 対象:保存済みの会社サイト32,838社のうち、文字化けが少なく読める31,159社
- 判定:本文に「SDGs」「SDGs」「SDG's」「持続可能な開発目標」のどれかが出てくるか
- 業種・地域・法人の種類は、国税庁の法人番号データと照合(業種は日本標準産業分類の大分類)
- 従業員数は、gBizINFOに登録されている値がある会社のみ
「書いてある」を数えたもので、「実際に取り組んでいる」を測ったものではありません。この前提で読んでください。
全体では17.0%、6社に1社
31,159社のうち、SDGsに触れていたのは5,293社(17.0%)でした。同じ保存データで以前数えた「定年」の記載が8.0%だったので、それと比べると倍以上の会社が書いています。採用や取引で気にされやすい話題として、会社側が積極的に載せていることがうかがえます。
業種別:建設業がトップ、医療・福祉は5.6%
業種ごとの割合(その業種の保存済みサイト300社以上のものに限定)は次のとおりです。
- 建設業:24.6%(3,489社中858社)
- 金融業・保険業:23.1%(507社中117社)
- 製造業:21.4%(6,600社中1,414社)
- 運輸業・郵便業:19.5%(981社中191社)
- 卸売業・小売業:17.5%(1,504社中263社)
- 情報通信業:15.2%(2,103社中320社)
- 不動産業・物品賃貸業:14.7%(503社中74社)
- 宿泊業・飲食サービス業:14.6%(807社中118社)
- 学術研究・専門・技術サービス業:13.4%(1,406社中189社)
- 生活関連サービス業・娯楽業:10.3%(468社中48社)
- 医療・福祉:5.6%(3,296社中186社)
建設業と医療・福祉では4倍以上の開きがあります。建設業が高い理由として考えられるのは、公共工事の入札で自治体のSDGs登録・認証が評価される例があることです。たとえば福岡県は、建設工事などの競争入札参加資格審査の「地域貢献活動評価項目」に、福岡県SDGs登録制度への登録を入れています(福岡県庁サイトで公表)。すべての自治体がそうではありませんが、取引上のメリットがはっきりしている業種ほど、サイトに載せる動機が強くなります。
一方、医療・福祉が低いからといって、社会的な取り組みをしていないわけではありません。福祉はそもそも事業そのものが社会課題の解決なので、あえて「SDGs」という言葉を使わない事業者が多いと読むのが自然です。言葉の有無と取り組みの有無を混同しないことが大事です。
規模別:従業員50人を超えると割合が上がる
従業員数が分かる会社で分けると、次のようになりました。
- 1〜9人:13.7%(6,308社中864社)
- 10〜49人:15.6%(9,750社中1,524社)
- 50〜99人:19.8%(3,559社中704社)
- 100〜299人:19.0%(8,142社中1,544社)
- 300人以上:20.9%(6,911社中1,445社)
小さい会社ほど低いものの、差は思ったほど大きくありません。300人以上でも約5社に1社で、大企業だから必ず載せているわけではない、というのが実態です。逆に10人未満の会社でも7社に1社は載せています。
法人の種類別:株式会社18.9%、有限会社8.0%
- 株式会社:18.9%(25,823社中4,877社)
- 有限会社(特例有限会社):8.0%(1,128社中90社)
- 社団・財団・医療法人などその他の法人:7.6%(3,873社中295社)
有限会社は2006年以降新しく作れない法人格なので、古くから続く小さな会社が中心です。サイト自体も更新が止まっていることが多く、新しい言葉が載りにくいと考えられます。
地域別:上位は新潟・岐阜・熊本、下位は千葉・京都
都道府県別(保存済みサイト300社以上の都道府県に限定)では、割合の高い順に次のとおりでした。
- 新潟県:25.0%(743社中186社)
- 岐阜県:24.8%(661社中164社)
- 熊本県:24.6%(390社中96社)
- 愛知県:23.5%(2,311社中544社)
- 岡山県:21.6%(703社中152社)
低いほうは、千葉県11.1%(849社中94社)、京都府11.1%(875社中97社)、北海道13.8%、兵庫県13.8%、東京都14.1%でした。東京都は保存数が最多の8,192社ですが、割合では全国平均を下回っています。
自治体の「SDGs登録」を載せている会社は1割
SDGsに触れている5,293社のうち、「SDGs」の近くに「登録」「認証」「認定」「パートナー」が並んでいる会社は554社(10.5%)でした。中身を見ると、ほとんどが自治体の登録・認証制度です。多く出てきた名称は次のとおりです。
- 熊本県SDGs登録:39社
- 埼玉県SDGsパートナー:30社
- みなとSDGsパートナー:18社
- かながわSDGsパートナー:18社
- おきなわSDGsパートナー:17社
- とちぎSDGs推進企業:17社
- 愛知県SDGs登録:16社
- ぎふSDGs推進パートナー:16社
地域差がいちばん出たのが熊本県です。熊本県でSDGsに触れている96社のうち47社(49.0%)が、登録・認証などの語を併記していました。東京都は1,159社中47社(4.1%)、大阪府は520社中22社(4.2%)なので、10倍以上の差です。県の制度が地元企業に浸透していて、「登録されたこと」をサイトに書く文化ができていると読めます。
調べる側から見ると、自治体の登録名が書いてある会社は、その自治体の名簿で裏を取れるということです。自己申告だけの記載より、一段確かめやすい材料になります。
「書いてある」と「やっている」を見分けるポイント
SDGs宣言は自己表明
SDGsに触れている会社のうち、「SDGs宣言」という言葉を使っている会社は622社(11.8%)でした。宣言は会社が自分で出すもので、誰かが審査したものではありません。宣言文があること自体は悪いことではありませんが、それだけで取り組みの中身は判断できません。
具体的な行動と数字があるか
見るべきは次の3点です。
1. 何をやったかが書いてあるか(例:「LED照明に切り替えた」「育児休業の取得実績がある」) 2. 期間や数字があるか(いつから、何件、何割) 3. 更新されているか(数年前の宣言で止まっていないか)
3つ目は見落としがちです。サイトの更新が止まっている会社の見分け方はホームページの更新が止まっている会社は大丈夫かにまとめています。
環境系なら、脱炭素やISO14001と一緒に書いているか
SDGsに触れている会社の14.3%(757社)は、「脱炭素」「カーボンニュートラル」「CO2削減」「温室効果ガス」のどれかも書いていました。サイト全体では5.3%なので、SDGsを載せる会社は環境の話題も一緒に書く傾向があります。
また、SDGsに触れている会社の10.6%(559社)は環境マネジメントの国際規格ISO14001にも触れていました(サイト全体では5.3%)。ISOは外部の審査機関による認証なので、環境面の取り組みを確かめたいときは、SDGsの記載よりISOの認証のほうが確かな根拠になります。調べ方は会社のISO認証取得を調べる方法で解説しています。
公的な認定マークと切り分ける
働きやすさに関する取り組みなら、くるみん(子育てサポート)やえるぼし(女性活躍)、ユースエール(若者の採用・育成)のような国の認定制度があります。これらは基準を満たさないと取れません。SDGsの「働きがいも経済成長も」のアイコンを載せている会社を見かけたら、あわせて国の認定を持っているかを確認すると判断がしやすくなります。認定の種類は企業の認定マーク一覧で整理しています。
転職・取引の前にどう使うか
転職先を調べるときは、SDGsのページを「会社が何を大事にしていると言っているか」を知る材料として読むのがよいと思います。面接で「サイトに○○の取り組みが載っていましたが、現場ではどう関わっていますか」と聞けば、実態に近い話が出てきやすくなります。会社研究の全体の流れは転職前の企業研究のやり方を参考にしてください。
取引先を調べるときは、SDGsの記載そのものより、自治体の登録名簿や認証の有無など、第三者が確認したものを優先してください。そもそもその会社が実在し、どんな事業をしているかを確かめる手順は会社の業種を調べる方法や会社のドメインで実在を確認する方法が役に立ちます。
よくある質問
SDGsに取り組んでいる企業の一覧はどこで見られますか?
全国をまとめた公式の一覧はありません。自治体のSDGs登録・認証制度に参加している会社であれば、各都道府県・市のサイトで名簿が公開されていることが多いので、会社の所在地の自治体名と「SDGs 登録 事業者」で検索してみてください。
会社のサイトにSDGsのアイコンが載っていれば、取り組んでいると考えてよいですか?
アイコンを載せるのに審査はありません。どの目標に対して何をしているか、具体的な行動や数字が書かれているかを確認してください。アイコンだけで説明がない場合は、面接や商談で直接聞くのが確実です。
SDGsを載せていない会社は、社会的な取り組みに消極的ですか?
そうとは限りません。今回の集計でも医療・福祉は5.6%と低い一方、事業そのものが社会課題に関わっています。言葉として「SDGs」を使うかどうかは、業種や会社の発信スタイルの違いも大きく影響します。
自治体のSDGs登録と、SDGs宣言は何が違いますか?
SDGs宣言は会社が自分で出す表明です。自治体の登録・認証は、自治体が申請を受けて一定の項目を確認したうえで名簿に載せるものです。ただし審査の内容は自治体ごとに違うため、制度の要件を一度確認しておくと安心です。
中小企業のSDGsの取り組みを調べるコツはありますか?
中小企業は統合報告書を作っていないことが多いので、公式サイトの「会社概要」「お知らせ」「採用情報」を見てください。自治体の登録を受けたことはお知らせ欄に書かれていることがよくあります。今回の集計では、従業員10人未満の会社でも13.7%がSDGsに触れていました。