✍ 古家あきら | 2026-09-30 更新

外資系企業の見分け方 — 「外国会社」の登記と日本法人は別物。法人種別「外国会社等」19,777件のうち47.6%は国内住所なし、「ジャパン」を名乗る会社のサイトで外資系と書いていたのは3.8%だった

先に結論です。外資系かどうかは、社名や法人の種類では決まりません。確かめる先は「親会社・株主が誰か」です。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「この会社、外資系ですか?」という問い合わせが時々届きます。答えは多くの場合「データベースの法人の種類だけでは分かりません」になります。この記事では、その理由と、代わりに何を見ればいいかを、実際のデータを数えた結果と一緒にまとめます。

外資系企業には3つの形がある

「外資系企業」という言葉に、法律上の定義はありません。一般には、外国の会社が経営を握っている会社を指します。日本での形は、大きく3つに分かれます。

1. 外国会社(日本支店・日本における代表者を登記したもの)

外国の法律で設立された会社そのものが、日本で商売をする形です。 会社法第2条第2号は、外国会社を「外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体であって、会社と同種のもの又は会社に類似するもの」と定めています。

外国会社が日本で取引を続けるときのルールは、会社法の第817条以降にあります。

「〇〇 インク 日本支店」「〇〇 リミテッド」のように、外国の会社名がそのまま登記されるのがこの形です。

2. 日本法人(日本で設立した株式会社・合同会社)

外国の親会社が出資して、日本の会社法で新しく会社を作る形です。 外資系として名前が知られている会社の多くはこちらです。

この形の会社は、法人の種類としては「株式会社」「合同会社」で、日本の会社と区別がありません。国税庁の法人番号データにも、登記簿の法人の種類にも、「外資」という印は付きません。ここが「法人の種類では外資か分からない」理由です。

合同会社を選ぶ外資系が多い理由は、合同会社に就職しても大丈夫かで書いたとおり、株主総会や取締役会といった機関を置かなくてよく、親会社が意思決定を通しやすいためだと言われます。

3. 駐在員事務所

市場調査や情報収集だけを行い、営業活動はしない拠点です。 外国会社の登記をしないまま日本で取引を続けることは第818条で禁じられているため、駐在員事務所は売り買いの当事者にはなりません。取引の相手先として出てくるのは、1か2の形です。

なお、日本に本店を置いたり、日本での事業を主な目的にしたりする外国会社は、日本で取引を続けることができません(第821条、いわゆる擬似外国会社)。日本で本格的に事業をするなら、2の日本法人を作るのが普通、ということになります。

「外国会社等」を国税庁の法人データで数えた

国税庁の法人番号データには、法人の種類ごとのコードがあり、「外国会社等」は独立した種別になっています。しょくばログのデータベース(国税庁の公表データをもとにしたもの)で数えました。

「外国会社等」は19,777件。株式会社の0.8%にも満たない

閉鎖の記録がない「外国会社等」は19,777件でした。閉鎖の記録がない株式会社は2,513,796件、合同会社は412,442件なので、株式会社と比べても1%に届きません。

閉鎖の記録があるのは61件(全19,838件の0.31%)だけでした。株式会社では全件の約13.9%に閉鎖の記録があるので、桁が違います。ただし、これは外国会社が潰れにくいという意味ではなく、撤退しても閉鎖として記録に表れにくいものと考えたほうが自然です。「閉鎖の記録がない=今も日本で営業している」とは読まないでください。

47.6%は国内の住所が登録されていない

19,777件のうち9,414件(47.6%)は、都道府県の欄が空でした。 つまり国内の所在地が登録されていません。

国税庁の説明では、法人番号は登記した法人だけでなく、「所定の税法上の届出書を提出することとされている」法人などにも指定されます(国税庁 法人番号公表サイトの「法人番号の指定対象」の説明)。国内住所のない外国の法人が半数近くを占めているのは、日本で登記はしていないが、税務の届出のために番号を持っている法人が多く含まれているためと考えられます。実際、社名を見ると、米国の専門職法人を表す「PC」で終わる名前だけで66件ありました。

「法人番号がある外国の会社=日本支店を登記している会社」ではない、ということです。取引で外国会社の日本支店を確かめたいときは、法人番号の有無ではなく、法務局の登記事項証明書で「日本における代表者」と営業所が登記されているかを見ます。

住所がある分は東京、なかでも千代田区に集中

国内住所がある10,363件の内訳は、次のとおりです。

千代田区の2,838件のうち、1,965件は同じ1棟のビルを所在地にしていました。 外国の法人は、日本での手続きを税理士事務所などに任せることが多く、その代理人の事務所の住所がそのまま載っているものと考えられます。同じ住所に何百社も並んでいても、それだけで怪しい会社とは言えない典型例です。同じ住所の会社の見方は幽霊会社の見分け方でも書いています。

意外だったのは千葉県で、山武市351件・八街市244件・東金市149件と、県の東部に集まっていました。社名には「MOTORS」「AUTO」「TRADING」「ENTERPRISES」と並んで、「LANKA」(スリランカ)や、南アジアの非公開会社によく付く「PVT」を含むものが目立ちます。神奈川県も厚木市155件・綾瀬市64件と内陸に寄っていて、社名の傾向は千葉と似ていました。外資系というと都心の大きなオフィスを思い浮かべますが、「外国会社等」の中身は、自動車の売買などを営む小さな事業者まで含めた幅の広いものです。

社名の表記は8割がアルファベット入り

19,777件の社名を見ると、16,131件(81.6%)にアルファベットが含まれていました。 カタカナだけの社名は1,705件(8.6%)です。

社名の後ろに付く「LTD」「INC」「GMBH」は、日本の「株式会社」「有限会社」に当たる、その国の会社の種類です。外国の会社名がそのまま登記されているのが「外国会社等」の特徴で、日本法人(「〇〇ジャパン株式会社」など)とはここで見分けられます。

「ジャパン」を名乗る会社は外資系なのか

次に、2の日本法人のほうを見ます。外資系の日本法人には「〇〇ジャパン」という社名が多い印象がありますが、逆に「ジャパン」を名乗る会社は外資系なのでしょうか。

「ジャパン」を含む株式会社・合同会社は28,438社

閉鎖の記録がない株式会社・合同会社のうち、社名に「ジャパン」を含むのは28,438社(株式会社25,555社・合同会社2,883社)でした。

都心への集まり方は確かに強く、外資系の日本法人が一定数含まれていることはうかがえます。一方で、合同会社の割合は全体より低く、「ジャパン=外資系の合同会社」という図式は数字の上では見えませんでした。2万8千社の大半は、日本の事業者が自分で「ジャパン」と名付けた会社だと考えるほうが自然です。

サイトで「外資系」と書いていたのは11社(3.8%)

しょくばログでは、会社の公式サイトの採用ページなどを読み取って保存しています。文字化けなく読めた31,159社のうち、社名に「ジャパン」を含む会社は290社ありました。

外資系の会社がいちいち「外資系です」と書くとは限らないので、実際の割合はもう少し高いはずです。それでも、「ジャパン」という社名だけで外資系と決めるのは無理があることは、この数字から言えます。

会社サイト全体でも「外資系」はほとんど出てこない

31,159社全体では、「外資系」という言葉が出てくる会社は279社(0.90%)でした。そのうち49社は「外資系出身」「外資系での経験」のように、社員や経営者の経歴として使っている文脈で、自社を外資系と説明しているとは限りません。「外資系企業です」「〇〇の日本法人です」のように、はっきり自社のことと読める書き方をしていたのは20社だけでした。

会社のサイトに外資系と書いていないことは、外資系でない証拠にはなりません。 サイトの言葉ではなく、次の章の方法で親会社・株主を確かめてください。

外資系かどうかを確かめる4つの方法

1. 会社のサイトの「会社概要」で株主・親会社を見る

いちばん手軽なのは、会社概要に「株主」「親会社」「資本構成」の欄があるかを見ることです。外資系の日本法人は、「株主:〇〇 Inc.(100%)」のように親会社を書いていることがあります。グループ会社の調べ方は親会社・グループ会社の調べ方にまとめています。

2. 合同会社なら登記簿の「代表社員」を見る

合同会社は、登記簿を見ると出資者が分かります。 会社法第914条で、合同会社は「業務を執行する社員」と「代表する社員」の氏名または名称を登記します。代表社員が法人のときは、その職務を行う人の氏名・住所も登記されます。

外資系の合同会社では、代表社員に外国の親会社の名前が載っていることがよくあります。株式会社の登記簿には株主が載らないので、この確かめ方は合同会社ならではです。登記簿の取り方は会社の登記簿は誰でも見られるを見てください。

3. 上場会社なら有価証券報告書の「大株主の状況」を見る

上場している会社は、有価証券報告書に大株主の上位が載ります。外国の会社が過半を持っていれば、外資系と判断できます。上場していない会社の株主の調べ方は、非上場会社の株主の調べ方で扱っています。

4. 外国会社として取引するなら、登記事項証明書を取る

相手が「〇〇 Inc. 日本支店」のように外国会社そのものの場合は、法務局で外国会社の登記事項証明書を取ります。設立の準拠法、日本における代表者の氏名・住所、日本の営業所が載っています。登記がなければ、第818条により日本で取引を続けることはできません。

この集計の方法と限界

よくある質問

外資系企業と外国会社は同じですか?

同じではありません。外国会社は、外国の法律で設立された会社そのもので、日本で取引を続けるには外国会社の登記が要ります(会社法第817条・第818条・第933条)。外資系企業は、外国の資本が経営を握っている会社の通称で、多くは日本で設立された株式会社や合同会社です。

法人番号や法人の種類から、外資系かどうか分かりますか?

日本法人の場合は分かりません。外資系の日本法人も、法人の種類は「株式会社」「合同会社」で、日本の会社と区別されません。法人の種類が「外国会社等」なら外国の法律で設立された法人ですが、しょくばログの集計ではその47.6%は国内の住所が登録されておらず、日本支店を登記しているとも限りません。

「〇〇ジャパン」という社名なら外資系ですか?

社名だけでは判断できません。社名に「ジャパン」を含む株式会社・合同会社は28,438社あり、サイトを読めた290社のうち「外資系」と書いていたのは11社(3.8%)でした。親会社や株主を、会社概要・登記簿(合同会社の場合)・有価証券報告書で確かめるのが確実です。

外資系の日本法人に合同会社が多いのはなぜですか?

合同会社は株主総会や取締役会を置く必要がなく、出資者である親会社が意思決定を通しやすいためと言われます。ただ、しょくばログの集計では「ジャパン」を含む会社の合同会社の割合は10.1%で、株式会社・合同会社全体(14.1%)より低く、社名と会社の種類の組み合わせで外資系と決めることもできません。

駐在員事務所とは取引できますか?

駐在員事務所は、市場調査や連絡などの準備的な活動をする拠点で、日本で取引を続けることはできません。契約や請求の相手になるのは、外国会社の登記をした日本支店か、日本で設立された日本法人です。相手の名義がどちらなのかを、契約の前に確かめてください。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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