✍ 古家あきら | 2026-09-29 更新
フランチャイズ本部を調べる方法 — 会社サイト31,159社で数えたら、加盟店を募集している会社のうち加盟金まで書いていたのは12.9%だった
先に結論です。フランチャイズ本部は、国の許可や登録を受けて名乗るものではありません。建設業許可や宅建業の免許のように、役所の名簿を引けば本部かどうか分かる、という仕組みはないのです。
そのかわり、法律で決まっているのは「契約する前に、本部が加盟希望者へ書面を渡して説明すること」です。中小小売商業振興法第11条がそれで、この書面は一般に「法定開示書面」と呼ばれます。本部の財務諸表、加盟店の店舗数の推移、加盟店との訴訟の件数まで、書くべき項目が施行規則で細かく決まっています。
ですから、フランチャイズ本部を調べる順番は次のようになります。
1. ブランド名ではなく運営会社(本部の法人)を特定する 2. その法人の登記・決算を見る 3. 契約の前に法定開示書面を受け取り、項目を一つずつ確かめる
しょくばログという会社データベースを運営していると、「脱サラしてフランチャイズで開業したいが、本部が信用できるか確かめたい」「転職先が加盟店なのか直営なのか分からない」という相談を受けることがあります。そこで、しょくばログが保存している会社の公式サイトのうち、文字化けが少なく読める31,159社を対象に、フランチャイズについて何を書いているかを数えました。
フランチャイズ本部とは、法律ではどう決まっているか
フランチャイズという言葉そのものは、法律に定義がありません。中小小売商業振興法では、近い仕組みを「連鎖化事業」と呼んでいます。第4条第5項の定義では、主として中小の小売業者に対し、定型的な約款による契約に基づいて継続的に商品を販売し(または販売をあっせんし)、かつ経営の指導を行う事業のことです。
そのうち、約款に次の2つの定めがあるものを「特定連鎖化事業」と呼びます(第11条第1項)。
- 加盟者に、特定の商標・商号その他の表示を使わせること
- 加盟に際して、加盟金・保証金その他の金銭を取ること
看板を使わせて、加盟金を取る。一般にフランチャイズと聞いて思い浮かべる形は、ほぼこれに当てはまります。この特定連鎖化事業を行う者、つまり本部には、契約前の書面交付と説明が義務づけられています。
法定開示書面に書かなければならないこと
法律本体(第11条第1項)が挙げる項目は5つです。
- 加盟に際して取る加盟金・保証金などの金銭
- 加盟者に対する商品の販売条件
- 経営の指導
- 使わせる商標・商号などの表示
- 契約の期間、更新と解除
これに加えて、施行規則第10条がさらに18の項目を定めています。加盟を考える人にとって特に大事なのは次のあたりです。
- 本部の名称・住所・常時使用する従業員数、役員の役職名と氏名
- 資本金と主要株主(10%以上を持つ株主)、他に行っている事業
- 直近3事業年度の貸借対照表と損益計算書
- 直近3事業年度の加盟店の店舗数の推移
- 立地条件が似た加盟店の、直近3事業年度の収支
- 直近5事業年度に、加盟者との間で起こした訴え・起こされた訴えの件数
- 近くに同じような店を本部が出す(出させる)規定があるか
- 契約中・契約後の競業禁止や、情報の口外禁止の規定があるか
- 定期的に取る金銭(いわゆるロイヤリティ)の額や算定方法
店舗数の推移については、施行規則第11条で「各年度末の店舗数」「新しく開いた店舗数」「解除された契約の店舗数」「更新された・されなかった契約の店舗数」まで分けて書くことになっています。増えた数だけでなく、辞めていった数も見られるわけです。
従わない本部はどうなるか
本部がこの書面交付に従っていないと認めるとき、主務大臣は従うよう勧告でき、勧告に従わなければその旨を公表できます(第12条)。
小売業以外はどうなるか
注意したいのは、中小小売商業振興法の連鎖化事業は、定義上「中小の小売業者」を相手にする事業だという点です。外食やサービス業の本部がこの条文の対象になるかは、個別に判断が分かれえます。
一方で、公正取引委員会の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」(最新の改正は令和3年4月28日)は、小売業と外食業だけでなく各種のサービス業にも広がっていることを前提に、加盟者の募集にあたって仕入先、指導の内容、加盟時に取る金銭、ロイヤリティなどの開示が的確に行われることが望ましいとしています。また、予想売上げや予想収益を示す場合にその算定根拠が合理性を欠くときなどは、独占禁止法の「ぎまん的顧客誘引」にあたりうるとしています。
業種を問わず、「契約前に書面で開示を求める」のは加盟希望者として当然の要求だと考えてよいでしょう。
フランチャイズ本部を調べる4つの手順
1. ブランド名ではなく運営会社を特定する
看板に出ている名前は、たいてい本部の会社名とは違います。店名やブランド名は登記されないので、まずは公式サイトの「会社概要」「運営会社」の欄から法人名を拾い、法人番号で同じ会社かを確かめます。やり方は店名・サイト名から運営会社を調べる方法にまとめています。
ちなみに、しょくばログのデータベース(国税庁の法人番号データ約579万件)で、商号に「フランチャイズ」を含む法人は81しかありません。本部の多くは、社名にフランチャイズとは入れていないということです。
2. 登記と決算を見る
運営会社が分かったら、登記簿で設立日・役員・本店所在地の変更履歴を、官報や自社サイトで決算公告を確かめます。登記簿は誰でも取れます(会社の登記簿は誰でも見られる)。決算公告を出していない会社の読み方は決算公告を出していない会社は違法かを参照してください。
法定開示書面には直近3期分の財務諸表が入るので、契約前には必ず中身を見られます。登記と決算公告は、その書面を受け取る前から自分で当たれる下調べという位置づけです。
3. 法定開示書面を受け取り、3つの数字を見る
書面を受け取ったら、少なくとも次の3つは必ず読みます。
- 店舗数の推移:新規出店だけ増えて、解除された契約も多いなら、入れ替わりが激しいということです
- 訴訟の件数:加盟者との訴えが続いていないか
- 類似立地の加盟店の収支:説明会で聞いた売上見込みと大きく違わないか
4. 必要な許認可は加盟店側でも取る
飲食店なら営業許可、中古品を扱うなら古物商許可など、業種ごとの許認可は、本部ではなく店を営む加盟者側が取るのが基本です。本部が許認可を持っていても、加盟店の営業が許されるわけではありません。業種別の確認先は会社の許認可を調べる方法にまとめています。
会社サイト31,159社で数えた結果
しょくばログが保存している会社公式サイトのうち、読める31,159社を対象に、「フランチャイズ」「FC加盟」「フランチャイジー」などの語を含む会社を数えました。さらに、「加盟店募集」「オーナー募集」「FC本部」など加盟者を募る側の語があるものを「本部側の書き方」、「フランチャイズ加盟店」「FC店」など加盟している側の語があるものを「加盟店側の書き方」として分けています。集計スクリプトは scripts/analyze_franchise_hp_cache.py です。
フランチャイズに触れている会社は1.8%
- フランチャイズに触れている会社:566社(1.8%)
- そのうち本部側の書き方:225社(言及の39.8%)
- 加盟店側の書き方:111社(19.6%)
- 両方の書き方がある:66社(11.7%)
- どちらの語もない:296社(52.3%)
「どちらの語もない」が半分を超えるのは、「フランチャイズ事業を展開」「フランチャイズ契約」のように、本部か加盟店かを読み取れない書き方が多いからです。サイトを見ただけでは立場がはっきりしない会社のほうが多い、というのが実態でした。
本部側225社のうち、加盟金を書いていたのは12.9%
加盟者を募る側の書き方をしている225社が、お金や規模について何を書いているかを数えました。
- 加盟金に触れている:29社(12.9%)
- ロイヤリティに触れている:25社(11.1%)
- 加盟金とロイヤリティの両方:20社(8.9%)
- 店舗数を数字で書いている:30社(13.3%)
- 業界団体(日本フランチャイズチェーン協会)に触れている:7社(3.1%)
- 「法定開示書面」「情報開示書面」に触れている:0社
加盟店を募集しているのに、加盟金もロイヤリティも書いていない会社が9割近くあります。これは違法という意味ではありません。法律が求めているのは契約前の書面交付で、サイトに載せることまでは求めていないからです。ただ、加盟を考える側からすると、サイトの段階では条件がほとんど見えない、ということになります。資料請求や説明会で書面を求めるのが前提だと考えておくべきでしょう。
法定開示書面に触れていた会社がゼロだったのも印象的でした。制度そのものが、加盟を募る側のサイトでほとんど語られていないのです。
業種別:宿泊・飲食サービス業が11.4%で突出
読めるサイトが300社以上ある業種で、フランチャイズに触れている割合(かっこ内は本部側の書き方の割合)です。業種は日本標準産業分類(JSIC)の大分類です。
- 宿泊業、飲食サービス業:11.4%(4.6%)
- 不動産業、物品賃貸業:5.8%(2.2%)
- 生活関連サービス業、娯楽業:5.8%(1.9%)
- 卸売業、小売業:2.3%(0.9%)
- 分類不能の産業:2.2%(1.0%)
- 学術研究、専門・技術サービス業:2.1%(0.6%)
- 運輸業、郵便業:1.3%(0.4%)
- 金融業、保険業:1.2%(0.4%)
- 建設業:0.9%(0.4%)
- 情報通信業:0.9%(0.2%)
- 医療、福祉:0.9%(0.5%)
- 製造業:0.7%(0.2%)
飲食が他を大きく引き離しています。法律の直接の対象である小売(卸売業、小売業)は2.3%にとどまりました。フランチャイズの話題が多いのは、法律が想定した小売よりも、飲食・不動産・生活関連サービスの側だということが分かります。
本部側の書き方をしている225社を業種別に並べると、分類不能の産業が37.3%、宿泊・飲食サービス業が16.4%、製造業が7.1%、医療・福祉と建設業がそれぞれ6.7%、卸売・小売業が6.2%でした。分類不能が多いのは、国税庁の法人番号データには業種の項目がなく、しょくばログの側で業種を割り当てきれていない会社が含まれるためです。
従業員規模・法人種別・都道府県
従業員規模別に見ると、フランチャイズに触れている割合は1〜9人で2.0%、10〜49人で1.6%、50〜99人で1.9%、100〜299人で1.5%、300人以上で2.5%でした。本部側の書き方に限ると0.6%〜0.9%で、規模による大きな差はありません。小さな会社でも本部を名乗って加盟者を募っている、ということです。
法人種別では株式会社が2.0%(25,823社中527社)、有限会社が1.7%(1,128社中19社)。都道府県別(読めるサイトが300社以上)では広島県2.6%、東京都2.4%、神奈川県2.4%が高く、岩手県0.3%、富山県0.7%が低めでした。
この集計の限界
- 対象はしょくばログが保存できた会社サイトだけで、日本の会社全体の縮図ではありません
- 語の有無で数えているので、「フランチャイズ」を別の意味(スポーツの本拠地など)で使っているサイトも含まれえます
- 本部・加盟店の区分は書き方からの推定で、実際の契約関係を確かめたものではありません
- 保存した時点のサイトの内容で、今の掲載とは違う場合があります
加盟・転職の前にどう使うか
加盟を考えている人は、サイトの条件表示が少ないのは普通だと割り切ったうえで、早い段階で法定開示書面を求めてください。書面を出し渋る、口頭の売上見込みだけで話を進めようとする本部は、それ自体が判断材料になります。あわせて運営会社の登記と決算を確かめ、新規取引先の確認事項の項目も当てておくと安心です。
転職を考えている人は、応募先の店が直営か加盟店かを確かめましょう。加盟店なら、雇い主は本部ではなく、その店を経営する別の会社や個人です。給与や休日を決めるのも、その加盟店の経営者です。求人に出ているブランド名だけで判断せず、雇用契約の相手の法人名を確認してください。
よくある質問
フランチャイズ本部の一覧はどこで見られますか?
国が本部を登録する制度はないので、役所が作った網羅的な一覧はありません。業界団体の日本フランチャイズチェーン協会が統計調査を公表しているほか、加盟募集の情報サイトが本部を集めていますが、そこに載っていない本部もあります。気になる本部があれば、ブランド名から運営会社を特定し、法人番号で確かめるのが確実です。
法定開示書面は必ずもらえますか?
中小小売商業振興法の特定連鎖化事業(商標を使わせ、加盟金などを取る小売業の連鎖化事業)なら、本部には契約前に書面を渡して説明する義務があります(第11条)。小売業以外の本部でも、公正取引委員会は加盟者募集にあたって的確な開示が望ましいとしています。業種にかかわらず、契約前に書面で求めてかまいません。
サイトに加盟金やロイヤリティが書いていない本部は怪しいですか?
それだけでは怪しいとは言えません。今回の集計でも、加盟店を募る側の書き方をしている会社のうち、加盟金を書いていたのは12.9%でした。書いていないのが多数派です。判断材料になるのは、サイトの記載より、法定開示書面をきちんと出すかどうかです。
本部の会社が倒産したら、加盟店はどうなりますか?
契約の内容や倒産手続きの種類によって変わるため、一概には言えません。だからこそ、契約前に本部の直近3期の財務諸表と、店舗数の推移(特に解除された契約の数)を書面で確かめておくことが大切です。
フランチャイズ店の求人に応募するとき、何を確かめればよいですか?
雇用契約の相手が本部なのか、加盟店を経営する会社なのかを確かめてください。求人票の「会社名」欄がブランド名になっている場合は、面接で運営会社の正式な法人名を聞くと確実です。