✍ 古家あきら | 2026-09-29 更新
会津産ピーナッツのAPJ(福島・喜多方)が破産。設立6年、売上は7,900万円超から3,700万円弱へ。しょくばログDBで見る社名に「ピーナッツ・落花生」を持つ法人88社と、農業の法人の閉鎖率15.1%
先に結論です。APJは、地元の豆菓子店の落花生事業を切り出して2020年に生まれた、設立6年の会社でした。設立当初から赤字が続き、小売部門を手放して製造に絞っても立て直せず、2026年9月に破産手続きに入りました。 千葉県が国内産の約8割を占める作物で、福島・会津を新しい産地として育てようとした事業です。取引先や応募を考えていた人に伝えたいのは、「新しい会社」「地域のプロジェクト」という印象と、会社の体力は別に確かめる必要があるということです。
出典:喜多方市でピーナッツ製造 APJが事業停止 負債総額は1億8,190万円 福島(TUFテレビユー福島/Yahoo!ニュース)
出典:喜多方のピーナッツ製造業APJが事業停止(福島民友新聞、2026年9月26日)
出典:【倒産企業続報・福島】APJが破産開始決定 会津産ピーナッツ、負債約1.82億円(JC-NET、2026年9月29日)
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、地方の会社の倒産が報じられたあと、その社名や旧社名で検索する人が増えます。商品を仕入れていた店、落花生を納めていた農家、出資した人。ここでは、報道で確認できる事実と、公的な資料、しょくばログの台帳から数えられる数字だけを並べます。個別の会社の良し悪しを言う記事ではありません。
何が起きたのか(報道で確認できる事実)
- 会社:APJ株式会社(福島県喜多方市)
- 設立:2020年。豆菓子販売などを手がける「おくや」の落花生事業を独立させる形で、株式会社オクヤピーナッツジャパンとして設立
- 2023年5月:APJに商号を変更
- 事業:会津産ピーナッツの生産・加工。地元農家との契約栽培など
- 売上高:2023年4月期は7,900万円超(ピーク)→ 2024年4月期は7,485万円 → 2025年4月期は3,700万円弱
- 2024年4月1日:小売事業を譲渡し、製造を主軸にする
- 2026年9月16日:福島地裁会津若松支部から破産手続き開始決定
- 負債総額:約1億8,190万円(東京商工リサーチ郡山支店の調べとして報道)
苦しくなった理由として、報道は「設立当初から赤字決算が続いた」「小売部門を手放したあとも業況が改善せず、資金繰りが限界に達した」と伝えています。また、2024年には落花生の仕入れ資金として「福島県 会津ピーナッツファンド」を組成し、127人から計900万円を集めていたとも報じられています。
出典:【福島】APJが事業停止 会津産ピーナッツ製造、売上7900万円超から3700万円弱へ(JC-NET)
国内産の約8割が千葉県という作物
千葉県の公式サイトは、落花生について「国内産の約8割が千葉県で生産されている」と説明しています。同じページでは、国内で出回る落花生の約9割が輸入品だとも書かれています。
つまり、国産の落花生は市場のごく一部で、その大半を千葉県が占めています。福島・会津でブランドを立ち上げるのは、輸入品とも、知名度の高い千葉産とも比べられる中で、値段に見合う理由を買う人に伝え続ける仕事です。売上が一時は7,900万円を超えていたことは、その取り組みが一定の支持を集めていたことを示しています。それでも、仕入れ・加工の費用をまかなう規模には届かなかった、というのが報道から読める流れです。
しょくばログの台帳で見えること
台帳ではまだ「閉鎖」ではない
しょくばログの台帳(国税庁の法人番号データがもと)では、APJ株式会社(法人番号 1380001030899)は喜多方市の所在地で登録されたまま、閉鎖の日付は入っていません。破産手続きが始まっても、登記が閉じるのは手続きが終わってからです。取引先が今どうなっているかの確かめ方は、会社が実在するか・倒産していないか確認する方法の記事にまとめています。
また、分社のもとになった株式会社おくやも、同じ喜多方市の別の所在地で台帳に載っており、閉鎖の日付はありません。報道も、破産したのはAPJだと伝えています。名前が似ている会社どうしを混同しないことが大切です。
社名に「ピーナッツ・ピーナツ・落花生」を含む法人は88社
台帳で社名に「ピーナッツ」「ピーナツ」「落花生」のいずれかを含む法人を数えると、88社ありました。
- 閉鎖済み:14社(15.9%)。台帳全体の閉鎖率は13.2%
- まだ閉鎖していない74社のうち、千葉県が21社でいちばん多い(閉鎖済みを含めると25社)
- 福島県に本店がある会社は0社
- 「落花生」を社名に含む法人だけに絞ると15社で、うち5社は閉鎖済み
「ピーナッツ」は愛称やスタジオ名にも使われるので、88社がすべて落花生の会社ではありません。それでも、落花生の産地として知られる千葉県に社名の集まりがはっきり出ています。APJは社名に「ピーナッツ」を含まない会社名に変えていたので、この88社には入っていません。社名が変わった会社の追い方は、会社の旧社名の調べ方の記事に書いています。
農業に分類した法人は2万7,166社、閉鎖率15.1%
しょくばログが社名などから推定している業種分類で、農業(日本標準産業分類の大分類A)に振り分けた法人は2万7,166社です(推定の分類なので、実際の業種とずれる会社もあります)。
- 閉鎖済み:4,112社(15.1%)。台帳全体の13.2%より少し高い
- 会社の種類で見ると、株式会社8,768社、農事組合法人などを含む「その他の法人」8,323社、有限会社7,920社
- 「その他の法人」は閉鎖率が24.5%と高く、合同会社(1,245社)は5.7%と低い
- 福島県に限ると792社で、閉鎖率は17.8%
合同会社の閉鎖率が低いのは、比較的新しい会社が多く、まだ年数がたっていないためと考えられます。数字は「その業種が危ない」という意味ではなく、登記の上でどれだけの会社が閉じてきたかを表すものです。コメ農家の撤退と、農業の会社が記録に残りにくい理由は、コメ農家の撤退と農業法人の記事で、新しい技術で売上を伸ばした農業の会社の破産例は、高糖度トマトの須藤物産の破産を扱った記事で整理しています。
地域の新しい食品会社と取引・応募する人が確かめておきたいこと
- 設立年と、もとの会社との関係:分社や事業譲渡で生まれた会社は、親の会社と名前や所在地が近いことがあります。契約書の会社名と法人番号を必ず照合する。調べ方は法人番号の調べ方の記事にあります
- 赤字が何期続いているか:設立から赤字が続くこと自体は珍しくありませんが、何期続いているかは確かめたい点です。業種ごとの傾向は3期連続赤字が多い業種の記事にまとめています
- 部門の譲渡や撤退の動き:小売をやめる、店を閉じるといった動きは、事業の絞り込みのサインでもあります
- 新しい取引先の基本確認:新規取引先で確認しておくことの記事も参考にしてください
よくある質問
「オクヤピーナッツジャパン」と取引していました。今回の会社ですか?
報道では、APJ株式会社は2023年5月にオクヤピーナッツジャパンから商号を変えた会社です。社名が変わっても法人番号は変わりません。請求書などに法人番号があれば、APJの番号(1380001030899)と照合してください。
「おくや」も破産したのですか?
報道で破産手続き開始決定が伝えられているのはAPJ株式会社です。しょくばログの台帳では、株式会社おくやに閉鎖の日付は入っていません。取引がある場合は、それぞれの会社に直接確認してください。
ファンドで出資していました。どうなりますか?
破産手続きでは、裁判所が選んだ破産管財人が財産を集めて債権者に分けます。出資した資金の扱いは契約の内容によって変わるので、ファンドの運営会社や管財人からの通知を確認してください。手続きの種類の違いは倒産の種類(破産・民事再生・会社更生・特別清算)の違いの記事にまとめています。
社名に「ピーナッツ」が入った会社は危ないということですか?
違います。88社の閉鎖率15.9%は、登記の上で閉じた会社の割合で、今ある会社の経営状態を表すものではありません。個々の会社は、決算や取引の実績で判断してください。
まとめ
APJは、地元の豆菓子店から落花生事業を切り出し、会津を新しい産地として育てようとした会社でした。ファンドで127人から資金を集めるなど応援も得ていましたが、赤字が続き、設立6年で破産手続きに入りました。国内産の約8割を千葉県が占め、市場の約9割が輸入品という作物で、新しい産地のブランドを採算に乗せるのは簡単ではありません。
しょくばログの台帳では、社名に「ピーナッツ・落花生」を持つ法人は88社、農業に分類した法人の閉鎖率は15.1%でした。地域の新しい会社と付き合うときは、「応援したい」気持ちとは別に、法人番号・設立年・決算の推移を確かめておくことをおすすめします。