✍ 古家あきら | 2026-09-20 更新

アウトドア・レジャー関連248社の売上が初めて1兆円超え、でも減益が4割・休廃業と倒産は過去10年で最多 — 「伸びている業界の二極化」を、社名に「アウトドア」を持つ137法人・「釣具」271法人の登記データで読む

先に結論です。東京商工リサーチ(TSR)が9月18日に公表した「アウトドア・レジャー関連」248社の2025年度決算調査では、売上高合計が1兆193億円(前年度比5.6%増)と初めて1兆円を超え、利益合計も497億円(同25.1%増)と過去5年で最高でした。それでも減益企業は108社(43.5%)と4割を超え、2025年の休廃業・解散35件と倒産8件を合わせた43件は過去10年で最多。売上高100億円以上の大手15社(全体の6.0%)だけで売上の72.6%を占める、という構図です。「市場が伸びている」と「その業界の会社が安全」はまったく別の話で、うちの登記データで見ても、社名に「釣具」を持つ271法人の閉鎖率は20.3%と、全法人平均13.2%の1.5倍にのぼります。

出典:「アウトドア・レジャー関連」 売上が1兆円突破 タウンユース定着で市場円熟も、経営が二極化(東京商工リサーチ TSRデータインサイト・2026年9月18日)

しょくばログという会社データベースを運営していると、「業界の売上が伸びている=その業界の会社に入れば安心/取引すれば安心」という短絡を、応募者にも取引先にもよく見ます。今回のTSRの調査は、その短絡がなぜ危ないかを1本の調査の中で数字で示している珍しい例です。売上1兆円突破と倒産過去最多が同じ年に同時に起きています。以前「伸びている業界」を選んでも安全ではない、という記事で同じ話を一般論として書きましたが、今回は実名の調査と、うちの登記データで裏を取ります。

公表された事実 — 売上1兆円突破・利益25%増と、減益4割・淘汰過去最多が同居している

TSRの調査対象は、同社のデータベース(約440万社)から扱い品名・営業種目に「アウトドア」「レジャー」関連を含む企業のうち、2025年度(2025年4月〜2026年3月期)まで5期連続で業績が判明した248社です。公表された数字をそのまま並べます。

TSRの説明で肝になるのは、二極化の中身です。コロナ禍のキャンプブームは落ち着いたものの、高機能ウェアやギアを普段の服装に取り入れる「タウンユース」市場として定着し、猛暑対策・防寒対策の機能性商品が売上を押し上げた。一方で他業種からの新規参入と、小規模・個人で企画製作する「ガレージブランド」の台頭で競争が激化。大手は価格改定と高付加価値商品で採算を改善したが、資金力とブランド力に乏しい中小・零細は価格転嫁できず「利益なき成長」をたどっている、という整理です。

数字を組み合わせると、増収企業は約半数なのに減益企業が4割超、つまり「売れているのに儲からない」会社がかなりの数いることになります。

登記データで見る「アウトドア」137法人・「キャンプ」309法人 — 閉鎖率は全体並み、ただし4割が東京

TSRの248社は「業績が5期連続で判明している」規模の会社が中心です。うちのデータベースは国税庁の法人番号公表データが土台なので、逆に業績が公表されない小さな法人まで入ります。社名にキーワードを含む法人を数えました(2026年9月時点・国税庁法人番号公表データに基づくしょくばログ集計)。

閉鎖率だけ見ると、「アウトドア」「キャンプ」を名乗る法人は全体平均と大差ありません。TSRの「休廃業・解散が過去最多」という話と矛盾するように見えますが、これは母集団の違いです。うちの数字は「これまでに登記されたすべての法人の、ある時点での断面」なので、直近1〜2年の増減はほとんど動きません(うちの閉鎖データは休眠会社の一斉整理で年によって跳ねるため、年次推移には使わず断面の比率だけを見ています)。TSRの数字は「今年何件消えたか」というフローです。断面では平均並み、フローでは過去最多。この2つは両立します。

法人種別と地域には、この業界の特徴がはっきり出ます。

「キャンプ」は注意が要ります。東京都120法人のうち渋谷区20・港区19・千代田区11と都心に集中しており、これはIT・広告・ブートキャンプ型の研修事業など、野外のキャンプとは関係ない社名がかなり混ざっているからです。社名は業種の代理指標としては粗く、「アウトドア」のほうがまだ純度が高い。一方で、群馬県の9法人のうち5法人が利根郡みなかみ町(ラフティングやキャニオニングのガイド会社が集まる地域)で、いずれも現存です。

「釣具」271法人は有限会社が74%・閉鎖率20.3% — 老舗小売の層が薄くなっている

TSRの調査対象は「グッズ・ギア」を手がける企業が中心なので、同じアウトドアでも物販側を見るために、社名に「釣具」を含む法人も数えました。ここが今回いちばん差が出た数字です。

有限会社は2006年の会社法施行以降は新設できないので、「有限会社が74%」は「その社名の会社の多くが2006年以前からある老舗」であることをほぼ意味します(法人種別の読み方は法人の種類一覧にまとめてあります)。つまり「釣具」を名乗る法人の多くは町の釣具店で、その2割がすでに閉鎖している。TSRが指摘する「新規参入とガレージブランドの台頭で競争が激化し、価格転嫁できない中小・零細が淘汰される」という構図は、市場全体の売上が伸びる裏で、こうした老舗の物販層から先に効いていると読むのが自然です。

応募者・取引先が「伸びている業界の会社」を見るときの3つの目印

TSRの調査から引ける教訓を、個社の話ではなく見分け方に落とします。

1. 「業界の売上」と「その会社の利益」を分けて聞く。 248社の売上は伸びましたが、減益が43.5%、赤字が30.2%です。求人票や会社案内に「市場は拡大中」と書いてあっても、その会社が黒字かどうかは別の情報です。上場していない会社でも、官報の決算公告や取引先の信用を無料で調べる方法で最低限は当たれます 2. 売上規模の層を確認する。 100億円以上の15社で売上の72.6%を占める一方、1億円未満が66社(26.6%)あります。同じ「アウトドア業界」でも、大手と1億円未満の会社では価格転嫁の力がまるで違うというのがTSRの結論そのものです。従業員数や資本金は会社の従業員数を調べる方法、資本金が少ない会社は危ないのかで書いた手順で外から確認できます 3. 社名のキーワードだけで業種を決めつけない。 「キャンプ」を名乗る東京都心の法人の多くは野外事業ではありません。法人番号で会社が実在するか確認したうえで、事業内容は会社のサイトや登記の目的欄で確かめてください

よくある質問

TSRの「アウトドア・レジャー関連248社」と、しょくばログの「社名にアウトドアを含む137法人」は同じものですか

違います。TSRは扱い品名・営業種目で抽出し、5期連続で業績が判明した企業に絞っています。うちは国税庁の法人番号公表データで社名にキーワードを含む法人を数えただけなので、業績が公表されない小さな法人や、アウトドア事業をしていない同名の法人も含みます。母集団が違うので、両方の数字を「同じ業界の別の断面」として読んでください。

閉鎖率13.9%は高いのですか

全法人平均の13.2%とほぼ同じで、高いとは言えません。ただしこれは「これまで登記された法人全体のうち、いま閉鎖されているものの割合」であって、TSRの「2025年に43件が消えた」というフローとは意味が違います。断面では平均並み、フローでは過去最多、という両方が成り立ちます。

「釣具」の閉鎖率20.3%は、釣具店が危ないという意味ですか

個々の店の話ではなく、社名に「釣具」を含む法人群のうち2割が登記を閉鎖している、という事実です。有限会社が74%を占めることから老舗の小売が多い層で、閉鎖の大半は清算結了(自主的な廃業)です。「危ない」というより「世代交代や廃業で層が薄くなっている」と読むのが妥当です。

「市場が伸びている業界」を応募先や取引先として選ぶとき、何を見ればいいですか

その会社の損益(黒字か、増益か)と、売上規模の層(大手か1億円未満か)の2つです。今回の調査では、増収企業が約半数いるのに減益企業が4割を超えました。「売れているのに儲かっていない」会社が多い業界では、業界の追い風より個社の利益を見るほうが確実です。

まとめ

出典:「アウトドア・レジャー関連」 売上が1兆円突破 タウンユース定着で市場円熟も、経営が二極化(東京商工リサーチ TSRデータインサイト・2026年9月18日) 出典:しょくばログ集計(国税庁法人番号公表データに基づく・2026年9月時点)

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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