✍ 古家あきら | 2026-10-01 更新
小型包装機「Pキューブ」のHYC(愛知・あま市に工場)が破産開始決定、負債約1億1200万円。包装機を使う食品工場が確かめたいことと、社名に「包装」が入る782法人(DB実測)
先に結論です。食品や菓子の包装に使う小型の包装機を作っていた株式会社HYC(本店・名古屋市中村区、工場・愛知県あま市)が、2026年9月24日に名古屋地裁から破産手続きの開始決定を受けました。 負債は約1億1200万円と報じられています。報道によると、主力は極超小型の横ピロー包装機「Pキューブ」シリーズで、包装を自動にする設備を200台超、製造・販売してきました。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「機械を作った会社が止まったとき、その機械を使っている現場はどうなるのか」という問いによく行き当たります。包装機は、買ったあとも部品の交換や調整を続けながら何年も使う設備です。売った会社がなくなっても、機械は工場に残ります。この記事では、報道で確かめられる事実を押さえたうえで、使っている側・取引先・働いていた人が何を確かめればよいかを書きます。個別の会社を責める記事ではありません。
出典:【倒産】資材価格の高騰 ナフサ不足で受注は見送りに… 食材や菓子の包装機械製造会社が破産 負債は約1億1200万円に(CBCテレビ・2026年9月30日)
出典:【愛知】包装機「Pキューブ」のHYCが破産 製造200台超、負債約1.12億円(JC-NET・2026年9月30日)
出典:あま市の包装機械製造HYC、破産手続開始 負債1億1200万円(中日BIZナビ)
何が起きたのか(報道で確認できる事実)
報道で確認できるのは次のとおりです。
- 会社:株式会社HYC。本店は名古屋市中村区、オフィスと工場は愛知県あま市
- 事業:食材・菓子・医薬部外品向けの小型横ピロー包装機、タグ自動取り付け機、横型チャック袋包装機の設計・製造
- 沿革:2003年3月に創業、2016年3月に法人化
- 手続き:2026年9月24日、名古屋地裁から破産手続きの開始決定
- 負債:約1億1200万円
- 売上:2026年2月期に約1億3700万円
- 事業の停止:2026年5月11日までに事業を止めた。5月下旬には新製品「デスクトップPキューブ250」を出す予定だった
- 経緯:もともと収益力が弱く、内部留保が積み上がっていなかった。コロナ禍の融資の返済負担が重く、資材価格の上昇を販売価格に転嫁できなかった。さらに中東情勢の悪化によるナフサ不足で受注が見送られ、先行きが見通せなくなった
新製品の発売を目前にして事業を止めた、という点が印象に残ります。売上に近い額の負債を抱えた状態で、受注の見送りが重なると、小さな会社には持ちこたえる余力がなかったと読めます。
しょくばログの台帳では、この会社(法人番号9180001122560)は2026年10月1日時点で登記が「活動中」のまま載っています。破産の開始決定が出ても、手続きが終わるまで登記は閉じません。登記が活動中であることは、営業していることの証明にはなりません。 この点は倒産統計に映らない会社の終わり方でも書きました。本店と同じ住所に登記されている法人は、この会社1社だけでした。
台帳で数えた、社名に「包装」が入る法人
しょくばログの台帳(国税庁の法人番号データ、全国575万件)で、社名に「包装」が入る法人を数えました。社名で拾っているので、包装機のメーカーだけでなく、包装資材の販売や包装作業の請負も含む概数です。
- 社名に「包装」が入る法人:782(うち活動中640、閉鎖142)
- 閉鎖率:18.2%(台帳全体の閉鎖率は13.3%)
- 株式会社:429法人のうち閉鎖78(18.2%)
- 有限会社:312法人のうち閉鎖59(18.9%)
- 活動中の多い都道府県:東京都105、大阪府88、愛知県41、静岡県38、埼玉県36
- 閉鎖の理由:清算の結了など99、登記官による閉鎖28、合併14
- 愛知県:56法人のうち閉鎖15、閉鎖率26.8%
同じように数えると、社名に「パッケージ」が入る法人は954で閉鎖率16.4%、「梱包」が入る法人は1412で閉鎖率14.1%でした。どれも台帳全体より高めです。包装の仕事は、つくる側(食品・菓子のメーカー)の注文に左右されやすく、材料の値段が上がっても価格に乗せにくい立場にあることが、比率にも表れているのかもしれません。価格転嫁の難しさは価格転嫁ができない業種でも取り上げました。
なお、登記の閉鎖は、休眠会社の一斉整理などで数が大きく動くことがあります。ここで使っているのは「今の時点で何割が閉じているか」という比率だけで、年ごとの増減の比較には使っていません。
包装機を使っている工場・取引先が確かめたいこと
1. 使っている機械の型式と、消耗部品を洗い出す
まず、自社のラインにHYCの機械が入っているかを確かめます。本体の銘板で型式と製造番号を控え、ヒーターやカッター、ベルトなど、よく交換する部品が何かを整理します。予備の部品が手元にあるなら、次の手配が決まるまで大事に使ってください。
2. 修理・調整の窓口を見直す
包装機は、フィルムや包む物が変わるたびに調整が要る機械です。メーカーに修理や調整を頼んでいた場合、その窓口は止まっている可能性があります。販売店や商社を通して買っていたなら、まず販売店に相談するのが早道です。同じ形式の機械を扱える会社や、代わりの機械を紹介してもらえることがあります。
3. フィルムなど資材の調達も同時に点検する
今回の報道では、ナフサ不足が受注の見送りにつながったとされています。ナフサは包装フィルムなどの原料になるものです。機械の手配だけでなく、使っているフィルムの仕入れ先が安定しているかも、この機会に確かめておくと安心です。
4. 代金の支払い・受け取りが残っている場合
この会社に部品や材料を納めていて代金を受け取っていない会社や、前払いで機械を注文していた会社は、「破産債権」の届出の対象になりえます。通常は裁判所や破産管財人から通知が届くので、届いた書類の期限を必ず確認してください。手続きの種類ごとの違いは破産・民事再生・会社更生・特別清算の違いにまとめています。
働いていた人が確かめたいこと
給料や退職金が支払われていない場合、国の「未払賃金立替払制度」の対象になることがあります。窓口は労働基準監督署です。雇用保険の手続きのために、離職票が届いているかどうかも確認しておきましょう。次の職場を探すときは、応募先の会社が実在し、倒産していないかを確かめておくと安心です。やり方は会社が実在するか・倒産していないかの確認方法に書きました。
コロナ融資の返済が、数年たって重くなる
今回の報道でも、コロナ禍の融資の返済負担が理由の一つに挙がっています。借りた当時は助かった資金も、返済が始まると毎月の重荷になります。そこに材料の値上がりや受注の減少が重なると、手元の資金が一気に細ります。コロナ関連の破たんの数え方と読み方はコロナ破たん累計と「分母」の話で書きました。取引先の状態を普段から確かめる方法は取引先の信用の調べ方にまとめています。
よくある質問
HYCの包装機は、そのまま使い続けてよいですか?
機械そのものが急に使えなくなるわけではありません。ただ、メーカーの修理や部品の供給が受けられなくなる可能性があるので、消耗部品の予備の確保と、代わりに見てもらえる会社の目星を早めにつけておくと安心です。
名古屋市中村区の本店と、あま市の工場は別の会社ですか?
報道では、本店が名古屋市中村区、オフィスと工場があま市とされています。しょくばログの台帳でも、本店は名古屋市中村区で登記されています。同じ会社の本店と拠点であり、別会社だとする情報は報道にありません。
似た名前の会社とは関係がありますか?
「HYC」という名前の会社はほかの地域にもあります。社名が似ているだけで関係があると決めつけないでください。 どの会社と取引しているかは、法人番号で確かめるのが確実です。やり方は法人番号の調べ方にあります。
登記が「活動中」なら、会社は動いていると考えてよいですか?
いいえ。破産の手続き中でも、手続きが終わるまで登記は閉じないため、台帳上は「活動中」のまま見えます。最新の状況は、報道や官報、取引先からの連絡で確かめてください。
まとめ
- 小型包装機「Pキューブ」のHYCが2026年9月24日に破産手続きの開始決定を受けた。負債は約1億1200万円、2026年5月までに事業を止めていた
- 理由として、コロナ禍の融資の返済負担、資材高を価格に転嫁できなかったこと、ナフサ不足による受注の見送りが報じられている
- 社名に「包装」が入る法人は全国782、閉鎖率は18.2%で、台帳全体(13.3%)より高い。愛知県では26.8%
- 包装機を使う側は、型式と消耗部品の洗い出し、修理窓口の見直し、フィルムの調達の点検を早めに
しょくばログでは、会社名や法人番号から、登記の状態や所在地を無料で調べられます。取引先や応募先を確かめるときに使ってください。