✍ 古家あきら | 2026-09-15 更新
同業他社・競合会社を調べる方法 — 同じ市区町村・同じ業種の会社を全部並べると、応募先の「同業」は中央値で268社あった
先に結論です。同業他社・競合会社を調べるには、「同じ市区町村」と「同じ業種」の2条件で会社を全部並べるのがいちばん確実です。 業界地図や転職サイトの「競合企業」欄は大手しか載っていないので、応募先や取引先が中小企業なら、地域と業種で機械的に並べたほうが漏れなく出ます。
しょくばログという全国の会社データベースを運営していて、この「並べる」作業を毎日サーバーにやらせているのですが、数えてみると、ある会社と同じ市区町村・同じ業種の会社は中央値で268社ありました。つまり「うちの町のライバルは3〜4社」と思っている会社でも、登記上の同業は数百社いるのが普通です。この記事では、①同業他社を並べる4つの無料の方法、②並べたあとに何を横に置いて比べるか、③転職の企業研究とB2B営業でのそれぞれの使い方、④うちのデータで見た「同業の多さ」の実態、の順で書きます。
「競合会社を調べる」は、実は「一覧を作る」作業
競合や同業他社を調べたい場面は大きく2つあります。転職や就活で「応募先と同じ業界の他の会社も見ておきたい」場面と、営業や取引で「相手の競合はどこか」「相手の競合=自社の見込み客はどこか」を洗う場面です。どちらも、最初にやることは同じで、条件に合う会社を全部並べた一覧を作ることです。
ここで多くの人がつまずくのは、「競合」を業界地図や口コミサイトの「競合企業」欄で探そうとすることです。それらは上場企業や有名企業を中心に編集されたもので、地方の建設会社や町のIT会社のライバルは載っていません。会社の順位や規模感を知りたいときの考え方は会社の業界順位を調べる方法に書きましたが、順位を知るのと一覧を作るのは別の作業です。この記事は「一覧を作る」ほうです。
一覧を作る条件は、原則として地域(市区町村)× 業種(日本標準産業分類の大分類)の2つです。業種の共通言語である日本標準産業分類(JSIC)の読み方は会社の業種を調べる方法にまとめてあります。競合の範囲が全国(ネット通販やソフトウェアなど)の会社は地域の条件を外し、逆に商圏が徒歩圏(飲食・理美容・クリニック)なら市区町村よりさらに細かく町名で見る、という調整をします。
同業他社を並べる4つの無料の方法
1. しょくばログの「都道府県 × 市区町村 × 業種」ハブで一覧にする
うちのサイトには、活動中の会社4,988,967社を都道府県・市区町村・業種で絞り込むページがあります。たとえば石川県金沢市の建設の会社を開くと、その条件に当てはまる会社が法人番号順に並びます(画面には先頭300社を表示し、それ以上は会社名検索で絞り込む作りです)。東京都港区のコンサル・専門サービスなら6,677社、金沢市の建設なら1,284社、長野県松本市の小売・卸売なら653社、という具合に、条件を変えるだけで「その町のその業種の会社」が全部出ます。
土台は国税庁の法人番号公表データなので、求人を出していない会社も、Webサイトが無い会社も、登記があれば全部入っているのが強みです。求人サイトや口コミサイトの「競合企業」欄と違って、載る・載らないの編集が入りません。
ただし弱点も正直に書いておきます。法人番号のデータには業種の項目が無いため、うちでは会社名のキーワードとgBizINFOの事業概要から業種を推定しています。業種が付けられているのは1,735,402社、活動中の34.8%で、残りの65.2%は「分類不能」のままです。「株式会社山田商事」のような社名からは業種を機械的に決められないためです。さらに推定にはミスもあり、たとえば金沢市の建設1,284社のうち288社は社名に「組合」を含む協同組合や管理組合で、社名の「組」を建設会社の名残と誤って読んだものです(この記事を書いていて気づいたので、修正の作業に回しています)。ハブに出てくる社数は「その業種と推定できた会社の数」であって「その業種の会社の全数」ではない、と読んでください。
2. gBizINFO(経済産業省)で条件検索する
経済産業省のgBizINFOは、法人番号をキーに事業概要・従業員数・資本金・設立年月日などを持つ公的データベースで、法人名だけでなく所在地や業種などの条件でも検索できます。うちのデータベースの業種推定にも、このgBizINFOの事業概要を使っています。公的なデータで一覧を作りたいときの一手目です。
注意点は、gBizINFOの従業員数や設立年は各省庁の届出(補助金・許認可・調達など)から集まったもので、全社に付いているわけではないことです。うちのデータベースでgBizINFO由来の従業員数が取れている会社は活動中4,988,967社のうち144,755社、設立年月日は63,765社でした。一覧を作る用途には向くが、一覧の全社を比べる用途には数字が足りない、という前提で使います。
3. 経済センサスで「その町にその業種が何社あるか」の公式値を見る
総務省の経済センサス-活動調査(直近は令和3年)は、産業(大分類)別×市区町村別の事業所数を公表しています(e-Statから表をダウンロードできます)。ここで分かるのは会社名ではなく「数」です。「松本市の製造業の事業所は何か所か」という分母を公式に押さえたいとき、あるいは自分が作った一覧の網羅率を確かめたいときに使います。事業所単位(支店・工場を1つずつ数える)なので、法人単位のうちの数字とは一致しません。
4. ハローワーク・求人サイトで「今、同じ職種を募集している会社」を並べる
ハローワークインターネットサービスや求人サイトは、就業場所と職種で絞り込めるので、「今この町でこの職種を募集している会社」の一覧になります。転職の企業研究では、登記上の同業(方法1〜3)より、募集中の同業(方法4)のほうが応募先の直接の比較相手になります。逆に言うと、求人が出ている会社は同業のごく一部です。うちのデータベースで金沢市の建設1,284社のうち、会社サイトかIndeedで求人を確認できている会社は10社でした(うちの収集が全求人を網羅していないので下限の数字ですが、桁感は伝わると思います)。
並べたあとに横に置く3つの数字 — 従業員数・設立年・資本金
一覧ができたら、次は比べる作業です。中小企業の同業比較で、外から無料で取れて、かつ意味がある数字は3つに絞れます。
- 従業員数 … 会社の規模の最初の目安。調べ方は会社の従業員数を無料で調べる4つの方法。金沢市の建設で従業員数が取れている176社を並べると、中央値は17人、100人以上は27社でした。同じ「金沢市の建設会社」でも、17人の会社と600人超の会社(最大は623人)では、仕事の内容も転職後の景色もまったく違います。
- 設立年 … 老舗か新興か。調べ方は会社の設立年月日を調べる方法。業種ごとの「何年で老舗と呼べるか」の感覚は老舗・中堅・新興の目安にあります。
- 資本金 … 会社の「器」の大きさ。調べ方は会社の資本金を無料で調べる方法。資本金は登記事項なので、従業員数と違って全社について確実に取れます。
この3つを横に並べると、一覧のなかで応募先や取引先が「どの位置にいる会社か」が見えます。売上高まで比べたいときは会社の売上高を調べる方法のとおり、非上場の中小企業では原則として公表値が無いので、従業員数からの推定になります。
法人種別も一緒に見ると、一覧の「中身」が分かる
一覧を作ると、株式会社以外がかなり混ざっていることに気づきます。金沢市の建設1,284社の内訳は、株式会社614社、有限会社333社、その他の法人(協同組合・管理組合など)293社、合同会社14社でした。有限会社は2006年以降新設できないので、有限会社が多い一覧は「古い会社が多い町」でもあります。法人種別の読み方は法人の種類一覧と見分け方に書きました。
転職の企業研究では「同じ町の同業を3社」でいい
転職や就活で同業他社を調べる目的は、応募先を相対的に見ることです。全部を読む必要はありません。うちがすすめている手順は次のとおりです。
- 手順1:応募先の会社ページから「同じ市区町村の同業」の一覧を開く(うちのサイトなら会社ページの下に、同じ都道府県・同じ業種の一覧へのリンクがあります)
- 手順2:一覧から、従業員数が応募先より大きい会社を1社、同じくらいの会社を1社、小さい会社を1社選ぶ
- 手順3:その3社の求人票と会社サイトを、応募先と同じ項目(給与・休日・仕事内容・勤務地)で見比べる
3社で足りる理由は、比較の目的が「応募先の条件がその町のその業種で普通なのか、良いのか、悪いのか」を知ることだからです。面接で「同業のA社やB社と比べて御社は〜」と言えるレベルの材料は、3社で十分にそろいます。企業研究全体の流れは転職の企業研究のやり方、求人票の読み方は求人票の見方にまとめてあります。
B2Bの営業・取引では「相手の競合=自社の見込み客」
法人営業や仕入れ先探しで同業他社を調べる目的は、転職とは逆で、一覧を「全部」使うことです。
- 相手の競合を知る:商談相手の市区町村×業種の一覧が、そのまま相手の競合リストです。相手の会社がその中で何番目の規模か(従業員数順)を把握しておくと、提案の粒度が合います。
- 見込み客を洗う:すでに取引がある会社と同じ市区町村×業種の一覧は、「同じ課題を持っている可能性が高い会社」のリストです。取引先を1社増やすたびに、その同業一覧が次の見込み客になります。
- 与信の前段:新しい取引先の同業を並べ、資本金や設立年でその会社が「同業の中で普通の会社か」を見ておくと、信用調査に進むかどうかの判断が早くなります。取引先の調べ方の全体像は会社の取引先を調べる方法と新規取引先の確認事項にあります。
このとき注意したいのは、一覧の会社が全部「営業中」とは限らないことです。登記が残っていても実態が無い会社は一定数あり、見分け方は幽霊会社の見分け方に書きました。営業リストにする前に、電話番号かWebサイトの有無で一度ふるいにかけるのをおすすめします。
うちのデータで見た「同業の多さ」 — 中央値268社、100社以上が73.9%
ここからは、この記事のために数えたデータです。しょくばログの活動中4,988,967社のうち、業種が付いていて市区町村も取れている1,735,402社について、「自分と同じ市区町村・同じ業種(大分類)の会社が何社あるか」を1社ずつ数えました。市区町村は1,921(政令指定都市は区単位)、市区町村×業種の組み合わせは27,489通りでした。
同業(自分を除く)の社数で会社を分けると、次のようになりました。
- 同業が0社(その町でその業種は自分だけ):3,084社、0.2%
- 1〜9社:46,141社、2.7%
- 10〜49社:206,379社、11.9%
- 50〜99社:197,469社、11.4%
- 100〜499社:722,336社、41.6%
- 500社以上:559,993社、32.3%
中央値は268社、平均は588.9社です。同じ町に同業が100社以上ある会社が全体の73.9%、つまり4社に3社です。「うちの町のライバルは数社」という感覚と、登記上の同業の数は、ここまで違います。
業種別に中央値を見ると、差がはっきり出ます。
- 小売・卸売(I):中央値467社
- 製造業(E):395社
- コンサル・専門サービス(L):380社
- 建設(D):363社
- IT・通信(G):289社
- 不動産(K):188社
- その他サービス(R):127社
- 医療・福祉(P):118社
- 運輸・物流(H):87社
- 金融・保険(J):76社
- 飲食・宿泊(M):72社
- 生活サービス・娯楽(N):48社
- 教育(O):46社
- 農業・林業(A):26社
- 漁業(B):25社
- 電気・ガス・水道(F):11社
小売・卸売・製造・建設・専門サービスは、どの町にも数百社の同業がいる業種です。逆に運輸・金融・飲食・教育は、同じ町の同業が数十社の規模になります。飲食が少なく見えるのは、個人経営の店が法人番号を持たない(=うちのデータに入らない)ためで、実際の競合の数はもっと多い点に注意してください。
もう1つ、一覧の「大きさ」の分布も出しておきます。市区町村×業種の27,489通りのうち、会社が3社以上ある組み合わせは22,360通り、100社以上は4,017通り、1,000社以上は174通りでした。最大は東京都港区のコンサル・専門サービス6,677社で、上位10組み合わせはすべて東京23区です。
- 東京都港区 × コンサル・専門サービス:6,677社
- 東京都千代田区 × コンサル・専門サービス:5,392社
- 東京都港区 × IT・通信:5,292社
- 東京都中央区 × コンサル・専門サービス:4,473社
- 東京都渋谷区 × コンサル・専門サービス:4,299社
- 東京都新宿区 × コンサル・専門サービス:4,057社
- 東京都千代田区 × IT・通信:3,935社
- 東京都中央区 × IT・通信:3,534社
- 東京都大田区 × 製造業:3,521社
- 東京都中央区 × 小売・卸売:3,507社
「同業が500社以上」の層559,993社のうち、東京都の会社が233,288社(41.7%)を占めます。反対に、業種が付いた会社が100社に満たない市区町村が1,921のうち389あり、こうした町では業種で絞る前の「その町の会社全部」が、そのまま競合の一覧になります。
条件を都道府県に広げると桁が変わります。同じ都道府県・同じ業種の会社は中央値で5,769社で、市区町村の268社の20倍を超えます。都道府県×業種の一覧は「数える」用途、市区町村×業種の一覧は「読む」用途、と使い分けるのが現実的です。地方の会社にとっての「同業一覧」は数十〜数百社、東京の会社にとっては数千社、というのが実態で、東京の会社が競合を調べるときは市区町村よりさらに細かい条件(町名・従業員数の帯)を足さないと一覧が使い物になりません。
この数字の読み方の注意
- 業種は大分類(20種)です。「建設」の中には総合工事も電気工事も塗装も入っているので、大分類で同業といっても直接の競合とは限りません。直接の競合を絞るには、一覧の中から会社サイトの事業内容で中分類まで落とす作業が要ります(会社の事業内容を調べる方法)。
- 業種が付いていない65.2%の会社は、この集計に入っていません。実際の同業はこの数字より多いと考えてください。
- 前述のとおり、社名からの推定ミス(「組合」が建設に入る等)が含まれます。傾向を読む用途には使えますが、個々の社数を厳密な値として引用するのは避けてください。
よくある質問
同業他社が多い業種・地域は、転職に不利ですか
一概には言えません。同業が多い町は、その業種の仕事が多く転職先の選択肢も多い町です。一方で1社あたりの競争は激しくなります。転職の判断材料としては「同業の数」より、応募先が同業の一覧の中でどの規模・どの設立年の位置にいるかのほうが役に立ちます。
競合会社を無料で調べられるサービスはありますか
会社名の一覧を無料で作るなら、しょくばログの市区町村×業種ハブ、gBizINFOの条件検索、ハローワークインターネットサービスの就業場所×職種検索の3つが候補です。数だけなら経済センサス(e-Stat)が公式値です。有料の企業データベースは、この一覧に売上高や取引先の情報が付いてくるものと考えると分かりやすいです。
上場企業の競合はどう調べますか
上場企業なら、有価証券報告書の「事業の状況」に競争環境の記載があり、証券会社や業界団体のレポートで競合が名指しされています。この記事の「地域×業種で並べる」方法は、そうした資料が無い非上場の中小企業向けです。上場しているかどうかの確認は会社が上場しているか確認する方法へ。
同じ業種なのに、しょくばログの一覧に応募先が出てきません
その会社の業種が推定できていない(分類不能のまま)可能性が高いです。うちのデータで業種が付いているのは活動中の34.8%なので、出てこない会社のほうが多いのが現状です。会社名で検索すれば会社ページ自体は出ます。会社ページの「お問い合わせ」から業種の情報を送ってもらえれば、確認のうえ反映します。
市区町村ではなく、もっと広い範囲や狭い範囲で競合を見たいときは
商圏が県全体の会社(卸売・建設の元請け・BtoBのサービス)は、都道府県×業種で並べます。商圏が徒歩圏の会社(飲食・理美容・クリニック)は、市区町村では広すぎるので、一覧を作ったあとに住所の町名で絞ります。うちのハブは都道府県・市区町村・業種の3条件までなので、町名の絞り込みは一覧を見ながら手作業になります。
まとめ
同業他社・競合会社を調べる作業は、「同じ市区町村」と「同じ業種」の2条件で会社を全部並べることから始まります。並べる道具は、しょくばログの地域×業種ハブ、gBizINFO、経済センサス、ハローワークの4つで、どれも無料です。並べたあとは従業員数・設立年・資本金の3つを横に置いて比べ、転職なら3社を選んで読み込み、B2Bなら一覧を丸ごと見込み客リストにします。
そして数えてみると、同じ町の同業は中央値で268社、4社に3社は100社以上の同業に囲まれています。「競合は数社」という感覚は、たいてい「知っている競合」の数です。一覧を作ると、知らなかった同業のほうが多い、というのが運営していて毎回思うことです。
(数字は2026年9月15日時点のしょくばログのデータベース(国税庁法人番号公表データ+gBizINFO)から集計。活動中=登記閉鎖されておらず国税庁の検索対象除外でない法人。業種は会社名とgBizINFO事業概要からの推定を含みます。)