✍ 古家あきら | 2026-09-30 更新

美容室の開設届を調べる方法 — 美容所は「許可」ではなく届出と保健所の確認。会社サイトで美容室に触れる484社のうち、確認番号を載せていたのは1社

先に結論です。美容室は法律上「美容所」と呼ばれ、開くときは許可ではなく「開設届」を出し、使い始める前に保健所の検査を受けて「確認」をもらう仕組みです(美容師法11条・12条)。 届け出る先は都道府県知事で、保健所を置いている市と東京23区では市長・区長になります(同法20条)。

調べる方法は、実質2つです。

一方で、お店や会社のサイトを見ても、ほとんど手がかりは出てきません。 しょくばログという会社データベースを運営していると、会社の公式サイトの文章を業種横断で読む機会が多いのですが、31,159社のサイトを数えたところ、「美容室」「ヘアサロン」などに触れていたのは484社。そのうち美容所の確認番号を載せていたのは1社(0.21%)でした。「美容師免許」に触れていた会社は104社(21.5%)あったので、書かれているのは「人の資格」で、「店の届出」はほとんど書かれない、というのが実態です。

美容所の開設届とはどんな制度か

美容師法では、美容を仕事として行う施設を「美容所」と定義しています(2条3項)。街の美容室・美容院・ヘアサロンは、法律上はすべて美容所です。

開設の流れは条文どおりに並べるとこうなります。

ここで押さえておきたいのは、美容所は「許可」を取るものではないという点です。飲食店や旅館のように「許可するかどうか」を行政が判断する仕組みではなく、届け出たうえで、設備が基準に合っているかを検査で確かめる形です。ただ「届出だけで何でも開ける」わけでもなく、確認を受ける前に使うと罰則の対象になります(18条で30万円以下の罰金。法人にも両罰規定があります=19条)。

旅館業のように許可制の業種との違いは、同じシリーズの旅館業許可を調べる方法と見比べるとわかりやすいと思います。許認可全体の探し方は会社の許認可を調べる方法にまとめています。

届け出る先は「都道府県」とは限らない

条文上の届出先は都道府県知事ですが、美容師法20条の読み替え規定で、地域保健法の政令で定める市(保健所を置く市)と特別区(東京23区)では「市長」「区長」になります。

これが調べるときに効いてきます。たとえば静岡県が公開している「美容所台帳」のオープンデータは、静岡市と浜松市の施設を含んでいません。両市は自前で保健所を持っているので、届出の窓口が県ではなく市だからです。東京都が公開している保健所の台帳も、都の保健所が受け持つ多摩地域と島しょ部が中心で、23区の店は各区が持っています。

つまり、調べたい店の所在地がどの保健所の管轄かを先に確かめないと、「一覧に載っていない=届出がない」と誤解しかねません。

管理美容師が要るのは、美容師が常時2人以上いる店

美容師法12条の3では、美容師である従業者が常時2人以上いる美容所には、店ごとに「管理美容師」を置くよう定めています。管理美容師になれるのは、美容師免許を取ってから3年以上美容の仕事をして、都道府県知事が指定した講習会を修了した人です。

1人で営業している小さな店には要りません。求人を見て「管理美容師の資格が取れる」と書いてある店は、少なくとも複数の美容師が働く規模だと読めます。

理容所(床屋)もほぼ同じ仕組み

理容師法にも同じ構造の規定があります。理容所の開設届(11条)、検査と確認を受けてから使うこと(11条の2)、地位の承継(11条の3)、美容師が2人以上なら管理理容師(11条の4)です。調べ方も美容所と同じで、自治体の多くは「理容所・美容所」をまとめて一覧にしています。

理容と美容の店の数や、もうかり方の違いは理髪店と美容室の営業利益率の記事で扱いました。

まつげエクステンションの店も「美容所」

見落とされやすいのが、まつげエクステンションやまつげパーマの店です。厚生労働省は2008年(平成20年3月7日付の通知)で、まつげエクステンションが美容師法の「美容」に当たりうるとして、美容師免許を持つ人が美容所で行うよう周知しています。その後、経済産業省のグレーゾーン解消制度への回答(2017年)でも、まつげエクステンションは美容師法の「美容」に該当すると整理されました。

つまり、まつげの店も、美容室と同じように開設届と保健所の確認が必要な施設です。実際、今回数えた会社サイトの中にも、眉やまつげのサロンで「全店舗、美容所登録済み」と書いている会社が1社ありました。

美容室の開設届を調べる2つの方法

1. 自治体の「美容所一覧」を見る

いくつかの自治体は、届出を受けて確認した美容所の一覧をオープンデータで公開しています。私が実際にページを開いて確かめたのは次のとおりです。

検索で見つかる範囲では、熊本市・松山市・鹿児島市・横浜市なども美容所の一覧や新規届出施設の一覧を出しています。「(市区町村名) 美容所 一覧」で検索すると、たいていは保健所か生活衛生課のページにたどり着きます。

見るときのコツは、営業者の名前が、いまの運営会社の名前とは限らないことです。一覧は届出時点の開設者で載るので、個人名のままだったり、社名変更前の名前だったりします。一覧の営業者欄と会社名が一致しないときは、次の保健所への問い合わせに進んでください。

2. 所在地を管轄する保健所に問い合わせる

一覧を公開していない自治体も多いので、確実なのは保健所に聞くことです。電話で「(住所)の美容所について、開設の確認を受けているか知りたい」と聞けば、生活衛生の担当につないでもらえます。どこまで答えてくれるかは自治体によって違うので、答えてもらえなかったとしても「届出がない」という意味ではありません。

先ほどの「どの保健所の管轄か」はここで効きます。東京23区なら各区の保健所、保健所を置く市(政令指定都市や中核市など)ならその市、それ以外は都道府県の保健所です。

店舗名から運営会社を突き止めるには

美容室は「店の名前」と「運営会社の名前」が違うことがよくあります。店名から運営会社をたどる手順は店名・サイト名から運営会社を調べる方法に書いたとおりで、サイトの会社概要・特定商取引法の表記・予約サイトの店舗情報を順に見ていくのが近道です。会社名がわかれば、法人番号で登記上の所在地や商号の変更履歴まで確かめられます。

会社サイトで数えたら、美容所の確認番号を載せていたのは1社

ここからは、しょくばログが持っている会社の公式サイトの文章(31,159社分。文字化けしているページは除外)を使って数えた結果です。

美容室・ヘアサロンに触れていたのは484社

「美容室」「美容院」「ヘアサロン」「hair salon」のいずれかがサイトに出てくる会社は484社(全体の1.55%)でした。この中には美容室そのものを運営する会社だけでなく、美容室向けに商品を卸す会社や、テナントとして美容室が入っている商業施設の運営会社なども混ざっています。

産業分類で見ると、美容業を含む「生活関連サービス業、娯楽業」に分類される会社が123社、「分類不能」とされた会社が183社でした。法人の種類は株式会社378社、有限会社69社、合同会社7社、その他30社です。

「美容師免許」は104社、「確認番号」は1社

484社のサイトで、何が書かれていたかを数えるとこうなりました。

「開設届」という言葉が出てくる会社も2社ありましたが、中身を読むとどちらも税務の「給与支払事務所等の開設届」の話で、美容所とは関係ありませんでした。美容所の開設届そのものに触れている美容室のサイトは、実質ゼロです。

産業分類が「生活関連サービス業、娯楽業」の123社に絞っても、美容師免許に触れていたのは43社(35.0%)、美容所や開設届に触れていたのは0社でした。

確認番号を載せていた1社は、店舗情報の中に「保健所確認証」「美容所確認番号」という見出しを立てて番号を書いていました。利用する側から見ると、これがいちばん親切な書き方だと思います。

なぜサイトに書かれないのか

理由ははっきりしていて、美容師法には、ウェブサイトに届出や確認の番号を載せる義務がないからです。条文で定められているのは届出・検査・衛生措置・管理美容師までで、表示の義務はありません。

義務がないものは、よほど意識して情報を出している会社でないと書きません。

逆に言うと、サイトに確認番号が書いていないことを理由に、その美容室を疑う必要はありません。 484社中1社しか書いていないのですから、書いていないのが普通です。

取引や応募の前に確かめる順番

美容室へ転職する人、美容室と取引を始める会社、店舗物件を貸すオーナーなど、立場によって確かめたいことは違いますが、順番はおおむね同じです。

転職を考えている人なら、面接で「保健所の確認を受けた店舗ですか」「管理美容師は誰ですか」と聞いても失礼にはなりません。美容師が2人以上いる店なら管理美容師がいるはずなので、答えがすぐ返ってくるかどうかも一つの判断材料になります。

この集計の方法と限界

数字は「会社のサイトにどれだけ書かれているか」の目安で、「届出をしている会社の割合」ではありません。

よくある質問

美容室を開くのに許可は要りますか?

許可ではなく、開設届と保健所の検査・確認です(美容師法11条・12条)。開設届を出したあと、構造設備が基準に合っていると確認を受けるまでは店を使えません。確認を受けずに使うと30万円以下の罰金の対象になります(18条)。

美容所の一覧は全国まとめて検索できますか?

全国を一括で検索できる公的なデータベースは、私が調べた範囲では見当たりませんでした。届出先が都道府県・保健所を置く市・特別区に分かれているので、一覧も自治体ごとです。京都市・静岡県・熊本市などはオープンデータで公開していますが、公開していない自治体は保健所に問い合わせることになります。

美容室を会社に引き継いだとき、開設届は出し直しですか?

営業の譲渡、相続、合併や会社分割で美容所を引き継いだ場合は、開設者の地位を承継したことを、証明する書面を添えて届け出ます(美容師法12条の2)。個人事業から自分の会社に移すケースが承継の届出で足りるのか、新しい開設届が要るのかは、手続きに入る前に管轄の保健所に確認してください。

まつげエクステンションの店にも開設届は必要ですか?

必要です。厚生労働省は2008年の通知で、まつげエクステンションを美容師免許を持つ人が美容所で行うよう周知しており、経済産業省のグレーゾーン解消制度の回答(2017年)でも美容師法の「美容」に該当すると整理されています。施術する人に美容師免許が、店に美容所の届出と確認が要ります。

サイトに確認番号が書いていない美容室は、届出をしていないのですか?

そうとは限りません。美容師法にはサイトへの表示義務がなく、しょくばログで数えた484社でも、確認番号を載せていたのは1社だけでした。気になるときは、自治体の美容所一覧を見るか、管轄の保健所に問い合わせてください。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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