✍ 古家あきら | 2026-09-28 更新
宗教法人を調べる方法 — 名前に「宗教法人」とは付かず、法人番号の種別にも区分がない。登記データから推定した16万8,069法人で分かること・分からないこと
宗教法人を調べるときの入口は3つです。① 国税庁の法人番号公表サイトで「名称・所在地・法人番号」を確かめる、② 法務局で登記事項証明書を取って「代表者・目的・属する宗派(包括団体)」を読む、③ 所轄庁(都道府県知事か文部科学大臣)に当たる。 ただし、財産目録や役員名簿といった内部の書類は、信者など正当な利益のある利害関係人にしか閲覧が認められておらず、外の人が見られる範囲は会社よりずっと狭い、というのが先に知っておきたい前提です。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「お寺や神社も法人番号があるのに、なぜ宗教法人で絞り込めないのか」と聞かれることがあります。理由は単純で、国税庁の法人番号データには宗教法人という区分がないからです。そこで今回は、登記の名称から宗教法人を推定して数え、文化庁の統計と突き合わせました。そのうえで、外から何が確かめられて、何が確かめられないのかを整理します。
なお、この記事は法人としての制度と調べ方だけを扱います。信仰や教えの中身には触れません。
宗教法人はデータ上どう見えるか — 区分がなく、名前にも付かない
国税庁が公表している法人番号データでは、法人の種類がコードで分かれています。株式会社は「301」、有限会社は「302」、合同会社は「305」という具合です。ところが宗教法人には専用のコードがありません。一般社団法人やNPO法人、協同組合などと一緒に、「399=その他の設立登記法人」にまとめて入っています(法人の種類の全体像は法人の種類一覧にまとめています)。
もう一つ厄介なのが名前です。株式会社は名前に「株式会社」を入れる義務がありますが、宗教法人の登記上の名称には、普通「宗教法人」と付きません。うちのDBで見ても、東京都台東区の「浅草寺」、渋谷区の「明治神宮」は、どちらも名称がそのまま登録されています。
実際に名称が「宗教法人」で始まる法人は、うちのDBで活動中5,687件しかありませんでした。宗教法人全体の数から見ると、ごく一部です。
つまり、種別コードでも、名前の頭でも、宗教法人だけを抜き出すことはできません。 これがデータで宗教法人を調べるときの、いちばん最初の壁です。
名前から推定すると16万8,069法人 — 文化庁の統計の約94%
そこで、うちのDB(国税庁の法人番号データ、2026年9月時点)の「399」から、他の法人格を示す語(株式会社・一般社団法人・学校法人・組合など)を含まず、名称の末尾が「神社」「寺」「教会」などで終わるものを宗教法人と推定して数えました。名称が「宗教法人」で始まるものも加えています。
結果は次のとおりです。
- 推定した宗教法人(累計):172,121件
- うち活動中:168,069件
- 閉鎖済み:4,052件(閉鎖率2.4%)
答え合わせに、文化庁が毎年公表している宗教統計調査を見ます。令和7年12月公表の結果では、2024年12月31日時点の宗教法人数は178,537法人でした(前年の178,921法人から384法人の減少)。うちの推定16万8,069は、その約94%にあたります。
残りの約6%は、名称が「〇〇会」「〇〇院」のように宗教法人と見分けにくいもの(病院などと区別するため、あえて外しています)や、末尾が一般的でないものだと考えられます。逆に、推定の中に宗教法人でないものが紛れている可能性もあります。あくまで名前からの推定で、概数として読んでください。
ちなみに、活動中の全法人498万8,967件に対して、推定宗教法人は3.4%です。法人番号を持つ法人のおよそ30に1つが、お寺・神社・教会ということになります。
系統別の内訳(名称の末尾で分類・活動中)
- 寺院系(末尾が寺・院・庵・坊・堂など):74,870件
- 神社系(末尾が神社・神宮・大社・稲荷・八幡宮など):72,579件
- 教会系(末尾が教会など。キリスト教のほか、「〇〇分教会」のように教会を名乗る他の系統も含む):19,539件
- 教団・本部系(末尾が教団・教など):438件
- その他(名称が「宗教法人」で始まり、上の分類に入らないもの):643件
文化庁の統計でも、都道府県知事が所轄する宗教法人のうち神道系が83,928、仏教系が76,172で、この2つが大半を占めます。名称ベースの推定でも、同じ傾向が出ています。
同じ名前が何千とある — 名前では1つに絞れない
宗教法人を調べるときに、会社以上に注意したいのが同名の多さです。活動中の推定宗教法人で、同じ名前が多い順に並べると次のようになりました。
- 八幡神社:4,735件
- 稲荷神社:2,601件
- 熊野神社:2,076件
- 諏訪神社:1,831件
- 白山神社:1,555件
同じ名前の法人が2件以上ある名称は11,029種類あり、それに当てはまる法人は合計11万8,607件でした。推定宗教法人の7割以上が、どこかに同じ名前の法人を持っている計算です。
会社でも同名は珍しくありませんが、ここまでの規模はありません。宗教法人を特定するときは、名前だけでなく所在地と法人番号をセットで確かめてください。法人番号の引き方は法人番号の調べ方で説明しています。
調べ方1:法人番号公表サイトで「実在」と「所在地」を確かめる
最初の一歩は、国税庁の法人番号公表サイトです。名称と所在地で検索すれば、法人番号・所在地・名称の変更履歴・閉鎖の有無が分かります。
ここで分かるのは「その名前・その住所の法人が登記上存在するか」までです。宗教法人かどうか、どの宗派に属するか、代表者が誰かは載っていません。種別も「その他の設立登記法人」と表示されるだけです。
しょくばログの会社ページも同じ法人番号データを元にしているので、ここまでの情報は同じように確認できます。
調べ方2:登記事項証明書で「代表者」「目的」「包括団体」を読む
もう一段踏み込むなら、法務局の登記事項証明書です。宗教法人は設立時に登記が必要で、宗教法人法52条には、登記しなければならない事項として次のものが挙がっています。
- 目的(公益事業などを行う場合は、その事業の種類も)
- 名称
- 事務所の所在場所
- その宗教法人を包括する宗教団体がある場合は、その名称
- 基本財産がある場合は、その総額
- 代表権を持つ人の氏名・住所・資格
- 公告の方法 など
特に役立つのが「包括する宗教団体」の欄です。神社・寺院・教会の多くは、教派や宗派などの本部(包括宗教法人)の下にあり、登記を見ればどこに属しているかが分かります。文化庁の統計でも、単位宗教法人178,150のうち170,736が被包括、つまり何らかの本部に属しています。
宗教法人の登記には、宗教法人法65条で商業登記法の規定が準用されていて、登記事項証明書は会社と同じように法務局で請求できます。取り方は会社の登記簿は誰でも見られるで解説しています。代表者の読み方は会社の代表者を調べる方法と共通です。
調べ方3:所轄庁を知る — 都道府県か、文部科学大臣か
宗教法人は、所轄庁の「認証」を受けて設立されます(宗教法人法12条・14条)。所轄庁は原則として主たる事務所がある都道府県の知事ですが、次のような場合は文部科学大臣になります(同法5条)。
- 他の都道府県にも境内建物を持っている
- 他の都道府県にある宗教法人を包括している(宗派・教団の本部など)
文化庁の統計では、文部科学大臣所轄は1,170法人、都道府県知事所轄は177,367法人です。大多数は都道府県が窓口になります。
文化庁の『宗教年鑑』には、文部科学大臣所轄の宗教法人の一覧が載っています。都道府県知事所轄の法人について知りたいときは、その都道府県の宗教法人担当部署に問い合わせるのが確実です。
外から見られない書類がある — 会社との大きな違い
宗教法人法25条は、宗教法人に財産目録・収支計算書を作ること、事務所に規則・役員名簿・財産目録などの書類を備えることを義務づけています。毎会計年度の終わりから4か月以内に、その写しを所轄庁へ出すことも求めています。
ただし、閲覧できる人は限られています。条文上、閲覧を請求できるのは「信者その他の利害関係人」で、閲覧について正当な利益があり、不当な目的でない人です。誰でも見られるわけではありません。
株式会社なら決算公告があり、NPO法人なら事業報告書を誰でも閲覧できます(違いはNPO法人と一般社団法人の違いで比べています)。宗教法人は、登記で分かること以上の中身は、外からはほとんど見えない、と考えておくのが現実的です。
閉じ方は「合併」が7割 — 会社とまったく違う
推定宗教法人のうち閉鎖済みの4,052件を、国税庁データの閉鎖事由で分けると次のとおりでした。
- 合併:2,883件(71.2%)
- 清算の結了等:1,048件(25.9%)
- 登記官による閉鎖:121件(3.0%)
全法人で見ると、閉鎖事由のうち合併は7.8%(76万2,256件中5万9,597件)しかありません。宗教法人は、なくなるときの7割が合併という、会社とはまったく違う閉じ方をしています。後継者のいない神社やお寺を、近くの法人がまとめて引き受ける形だと考えられます。
閉鎖率も2.4%と、全法人の13.3%に比べてかなり低い水準です。もっとも文化庁の統計では毎年数百法人ずつ減っているので、「減っていない」わけではありません。
合併で閉鎖した法人は、法人番号のページでは「閉鎖」と表示されます。合併と法人番号の関係は合併・買収で法人番号はどうなるかで説明しています。
どこに多いか — 兵庫・愛知・福岡が上位
活動中の推定宗教法人を都道府県別に数えると、上位は次のとおりでした。
- 兵庫県:8,390件(5.0%)
- 愛知県:7,143件(4.3%)
- 福岡県:6,476件(3.9%)
- 千葉県:6,338件(3.8%)
- 新潟県:6,295件(3.7%)
東京都は5,664件で8位です。会社の数では東京が突出していますが、宗教法人は全国に広く散らばっています。逆に少ないのは沖縄県(210件)、宮崎県(1,187件)、鳥取県(1,430件)でした。
宗教法人を調べる前のチェックリスト
- 名前だけで検索しない。所在地と法人番号をセットで確かめる
- 法人番号公表サイトで、閉鎖していないか・名前や住所が変わっていないかを見る
- 登記事項証明書で、代表者・目的・包括団体(宗派など)を読む
- 所轄庁が都道府県か文部科学大臣かを確かめ、問い合わせ先を決める
- 財産や役員の詳細は、外からは原則見られないものと考える
許認可の有無を確認したいときの考え方は会社の許認可を調べる方法、非営利法人全般の調べ方は非営利法人の倒産・経営状態を調べる方法も参考にしてください。
よくある質問
宗教法人かどうかは、法人番号だけで判定できますか?
できません。法人番号データでは宗教法人は「その他の設立登記法人」に含まれ、一般社団法人や協同組合などと区別されていません。名前に「宗教法人」と付かないのが普通なので、確実に知るには登記事項証明書や所轄庁で確認します。
宗教法人の代表者は調べられますか?
調べられます。代表権を持つ人の氏名・住所・資格は登記事項(宗教法人法52条)なので、法務局で登記事項証明書を取れば分かります。
宗教法人の財務状況は見られますか?
外部の人は原則見られません。財産目録や収支計算書の閲覧を請求できるのは、信者その他の利害関係人で、正当な利益があり不当な目的でない人に限られています(宗教法人法25条)。
宗教法人は全国にいくつありますか?
文化庁の宗教統計調査によると、2024年12月31日時点で178,537法人です。しょくばログのDBで名称から推定した活動中の数は168,069件で、その約94%にあたります。
同じ名前の神社がたくさんあるのはなぜですか?
八幡神社・稲荷神社のように、同じ神様をまつる神社が全国各地にあり、それぞれが別の法人になっているためです。うちのDBでは「八幡神社」だけで4,735件ありました。調べるときは必ず所在地と法人番号で特定してください。
まとめ
宗教法人は、法人番号の種別にも名前にも「宗教法人」が出てこないため、データで探すと見落としやすい法人です。名称から推定すると活動中は約16万8,000件で、文化庁の統計(17万8,537法人)の9割強にあたります。
調べるときは、法人番号公表サイトで実在と所在地を確かめ、登記事項証明書で代表者と包括団体を読み、必要なら所轄庁に当たる、の3段階です。一方で、財産や役員の詳しい書類は信者など利害関係人にしか開かれていません。分かるのは「登記に載っていること」まで、という線引きを先に持っておくと、調べる手間を無駄にせずに済みます。
※DBの数値は、国税庁の法人番号データ(2026年9月時点)から名称で推定したものです。集計スクリプトは `scripts/analyze_shukyo_hojin.py`。宗教法人数は文化庁「令和7年の宗教統計調査の結果」(令和7年12月公表、2024年12月31日現在)、条文は宗教法人法(e-Gov法令検索)によります。