✍ 古家あきら | 2026-09-07 更新

障害者雇用率が未達成の会社は公表される? — 制度の実際と、外から確認できる範囲

先に結論です。障害者の法定雇用率が未達成でも、それだけで社名が公表されることはありません。 未達成の企業は令和7年時点で65,033社ありますが、企業名公表に至るのは年に数社です。公表は「未達成への罰」ではなく、ハローワークの計画命令と勧告と特別指導を数年かけて受けてもなお改善しなかった会社に対する、最後の段階の措置だからです。

そしてもうひとつ。そもそも雇用義務がかかる会社は、日本の会社全体のごく一部です。 令和8年7月から対象は「常用労働者37.5人以上」に広がりましたが、それでも厚生労働省が報告を求めた企業は120,467社(令和7年・当時は40.0人以上)。うちのデータベースに載っている活動中の法人4,988,967社と並べると、ざっと2.4%です。「うちの会社は障害者雇用の話が出てこない」のは、多くの場合サボっているのではなく、対象外だからです。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「応募先が障害者雇用に取り組んでいるか調べたい」「取引先が公表されていないか確認したい」というご相談をいただきます。ただ、この分野は制度の名前と実際の運用のあいだに、かなり距離があります。今日はそこを、厚生労働省の一次資料と、うちの手元のデータの両方で埋めていきます。

令和8年7月から、法定雇用率は2.7%になりました

まず現在地の確認です。民間企業の法定雇用率は段階的に引き上げられてきました。厚生労働省のリーフレット(LL080401障01)にある通りです。

つまりこの2026年7月に、対象になる会社の線が40.0人から37.5人へ下がったばかりです。国や地方公共団体の法定雇用率も同じ令和8年7月1日から3.0%に、都道府県等の教育委員会は2.9%になりました。

ここで引っかかりやすいのが「常用労働者」の数え方です。週の所定労働時間が30時間以上の労働者が1人、週20時間以上30時間未満の短時間労働者は原則0.5人として数えます。だから「うちは正社員35人、パート10人だから45人で対象」とは限りません。パートの所定労働時間しだいで、対象になったりならなかったりします。従業員数そのものの調べ方は会社の従業員数を無料で調べる4つの方法にまとめました。

障害者側のカウントにも特例があります。令和5年4月以降、週20時間以上30時間未満の精神障害者は、当分の間、雇入れからの期間に関係なく1カウント。令和6年4月以降は、週10時間以上20時間未満の精神障害者・重度身体障害者・重度知的障害者も0.5カウントで算入できるようになりました。「短時間なら雇用率に関係ない」というのは、もう古い理解です。

あわせて、令和7年4月には除外率が各業種で一律10ポイント引き下げられ、それまで除外率10%以下だった業種は除外率制度の対象から外れました。除外率は、障害者の就業が一般的に難しいとされる業種について、雇用義務の算定基礎となる労働者数を減らす仕組みです。建設業・鉄鋼業・道路貨物運送業・郵便業は10%、港湾運送業・警備業は15%、鉄道業・医療業・高等教育機関などは20%といった具合に、業種ごとに残っています。同じ従業員数でも、業種によって義務の重さが違うということです。

対象になる会社は、全体の2.4%しかない

ここからは、うちのデータベースで数えた話です。

しょくばログは全国の登記法人を持っていて、活動中の法人は4,988,967社です。このうち従業員数が分かるのは144,755社(gBizINFO由来のデータで、行政と関わりのある企業に偏っています。この偏りは後述します)。

その144,755社を、今の対象ライン37.5人で割ってみました。

この母集団は「大きい会社に寄っている」にもかかわらず、それでも半分以上(50.7%)が30人未満でした。母集団の偏りを外して日本の会社全体で考えれば、対象になる会社の割合はもっと下がります。

実際、厚生労働省が令和7年に報告を求めた民間企業は120,467社でした(当時の対象は40.0人以上)。うちの活動中法人4,988,967社と並べると約2.4%です。企業と法人という単位の違いや報告漏れがあるので厳密な比率ではありませんが、桁の感覚としては動きません。日本の会社の圧倒的多数は、そもそも障害者雇用率の義務がかかっていないのです。

もうひとつ、今年だけの話として面白い数字が出ました。従業員38〜39人の会社は1,228社(0.8%)。この帯は、令和8年7月の線引き変更で新たに義務の対象になった会社です。母集団のなかでは1%に満たない狭い帯ですが、当事者にとっては「去年まで関係なかった制度が、今年から自社の話になった」という大きな変化になります。中小の線引きが業種で変わる話は中小企業の定義は「資本金または従業員数」に書きました。

未達成でまず起きるのは、公表ではなく「お金」

「未達成だとどうなるのか」の答えは、公表よりずっと前に来ます。障害者雇用納付金です。

常用労働者の総数が100人を超える事業主で法定雇用率が未達成の場合、不足数1人あたり月額50,000円を納付します(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構=JEED)。逆に法定雇用率を上回って雇用している事業主には調整金が支給されます。障害者を雇うために作業施設や設備の改善が必要になることを前提に、義務を果たしている会社とそうでない会社の経済的な負担の不公平をならす仕組みです。罰金ではなく調整金の財源、という建て付けになっています。

金額の感覚をつかんでおくと、5人不足なら月25万円、年間300万円です。100人以下の会社には納付金の義務がありません。ここも「対象だけど納付金はかからない」というグレーゾーンがあって、制度の話がややこしくなる一因です。

なお令和8年度分の納付金は、令和8年6月以前は2.5%、令和8年7月以降は2.7%で算定することになっています(申告期間は令和9年4月1日から5月17日)。年度の途中で率が変わったので、この1年だけ計算が二段構えです。

企業名公表までには、これだけの段階がある

では公表はどこで出てくるのか。障害者雇用促進法が定める順番はこうです。

大事なのは、ここに「未達成なら即公表」という段が一つも無いことです。 公表は、報告→命令→勧告→特別指導という数年がかりの過程の、いちばん最後にあります。

どれくらいの年数がかかるのか。三重労働局が平成27年3月31日に公表した事案の経過が、労働局の発表資料に段階ごとの日付つきで載っていました。

命令から公表まで、4年4ヶ月です。 しかもこの会社は、指導を通じて雇用障害者数が3人から8人へと一定の改善はしていました。それでも実雇用率1.02%で不足7人という水準が続いたため、公表に至っています。「一切改善しなかった会社だけが公表される」というより、改善のペースが行政の求める水準に届かない状態が何年も続いた会社が公表される、という運用です。

未達成65,033社に対し、公表は年に数社

数字を並べると、この制度の実像がはっきりします。

令和7年の「障害者雇用状況の集計結果」(令和7年12月19日公表・基準日は令和7年6月1日)によると、民間企業の状況はこうでした。

一方、企業名公表について確認できた直近の実施は、令和5年3月29日の計5社(うち再公表3社、新規2社)でした。

未達成65,033社に対して、公表は5社。 割合にすると0.008%です。この落差が、「未達成だと公表される」という理解が実態からずれてしまう理由です。公表は制度の入口ではなく、非常に細い出口にあります。

未達成企業の中身を見ると、その理由もわかります。

未達成企業の3分の2近くが、あと1人(または0.5人)で達成する会社です。40人規模の会社なら法定雇用率2.7%で必要なのは1人。その1人を採用できていない、という状態が「未達成」の最大のかたまりです。ここに行政指導の網をかけたら対象が万単位になってしまうので、命令の発出基準は「不足数が5人以上」「不足数10人以上」といった規模で線が引かれています。未達成であることと、行政指導の対象になることは、まったく別のレイヤーの話なのです。

会社の規模と業種で、達成率はここまで違う

同じ集計結果には、規模別の内訳も出ています。実雇用率(雇用している障害者の割合)と、法定雇用率達成企業の割合です。

実雇用率は会社が大きくなるほどきれいに上がります(1.94%→2.69%)。当時の法定雇用率2.5%を実雇用率で上回っているのは1,000人以上の規模だけです。

ところが達成企業の割合のほうは、規模と素直には比例しません。300〜500人未満が40.3%で全区分の最低になっています。これは分母の作りを考えると理解できます。規模が小さい会社は必要人数が1人や2人なので、1人採用すれば達成側に移ります。規模が大きくなると必要人数が10人、20人と増え、達成のハードルが上がる。その一方で1,000人以上の大企業は、特例子会社の設置など専門的な体制を組める。その谷間が300〜500人あたりに来ている、という読み方ができます。

ちなみに特例子会社(親会社の実雇用率に算入できる、障害者雇用に特別の配慮をした子会社)は令和7年6月1日時点で631社、そこで働く障害者は53,710.5人でした。

産業別で、当時の法定雇用率2.5%を実雇用率で上回っていたのは次の4業種だけです。

医療・福祉が突出しているのは、業務の性質と、そもそも障害のある人が働く場を運営している法人が多く含まれるためでしょう。ただし前述のとおり医療業には20%の除外率が設定されており、業種ごとの数字は除外率の影響を受けている点は差し引いて読む必要があります。

外から確認できること・できないこと

ここが実務でいちばん知りたいところだと思います。特定の1社の障害者雇用率を、外から確認する方法は基本的にありません。

障害者雇用状況報告はハローワークに提出されますが、個社の実雇用率が公表される仕組みにはなっていません。公表されるのは集計値と、法第47条に基づく企業名公表だけです。登記にも載りませんし、法人番号公表サイトにもありません。

外から届く範囲は、この4つです。

逆に言うと、「あの会社は障害者雇用をやっていない」と外から断定することはできません。データが公開されていないので、断定材料がそもそも存在しないのです。この記事を、特定企業を叩く材料には使わないでください。

応募先・取引先を見るときの現実的な手順

以上をふまえると、外からできることは絞られます。

まず、対象企業かどうかを見る。 常用労働者37.5人未満なら、そもそも義務がありません。従業員数の調べ方は会社の規模の調べ方へ。ここを飛ばして「障害者雇用の記載がない」と評価すると、対象外の会社を不当に低く見ることになります。

次に、会社の開示を見る。 採用サイト・CSRページ・有価証券報告書に記載があるか。あれば、基準日と算定方法まで書いてあるかを見ます。書いてあるほど、社内で数字を管理している可能性が高い。

そして、開示されていないことを悪材料にしない。 開示は義務ではありません。特に中小企業では、達成していても書いていない会社が普通にあります。

当事者として働く場を探しているなら、外から数字を追うより直接聞くほうが早い。 ハローワークには障害者専門の窓口があり、地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターに相談できます。応募前に確認したい配慮事項は、これらの窓口を通したほうが具体的な話になります。会社の労働環境そのものを見る手順は面接前5分でできる会社研究チェックリスト、待遇面の読み方は会社の福利厚生を無料で調べる方法にまとめてあります。

よくある質問

法定雇用率が未達成だと罰則はありますか?

罰金や刑事罰はありません。常用労働者100人超の事業主には、不足1人あたり月額50,000円の障害者雇用納付金の納付義務があります。これは罰金ではなく、障害者を雇用している事業主への調整金や助成金の財源になるものです。100人以下の事業主には納付金の義務もありません。そのうえで、改善が長期間見られない場合に企業名公表(法第47条)という段階があります。

自分の勤め先や応募先の障害者雇用率を調べられますか?

個社の実雇用率は公表されていません。障害者雇用状況報告はハローワークに提出されますが、集計値として公表されるだけで、会社ごとの数字は出ません。外から届くのは、企業名公表のリスト、上場企業の任意開示、会社自身の採用サイトやCSRページでの公表、もにす認定などの認定マークの4つに限られます。

企業名公表のリストに載っていない会社は、法定雇用率を達成していますか?

いいえ、そうは言えません。令和7年の未達成企業は65,033社ありますが、企業名公表に至るのは年に数社です。公表は、雇入れ計画作成命令・適正実施勧告・特別指導という数年がかりの段階を経てなお改善が見られない場合の措置なので、未達成企業の圧倒的多数は公表されません。公表リストは「達成しているかどうか」の判定には使えません。

従業員が40人ちょうどの会社は対象ですか?

令和8年7月からの基準は常用労働者37.5人以上なので、40人なら対象です。ただし「常用労働者」は週の所定労働時間が30時間以上の人を1人、週20時間以上30時間未満の短時間労働者を原則0.5人として数えます。正社員とパートの内訳によって、頭数40人でも常用労働者数が37.5人に届かないことがあります。また業種によっては除外率が適用され、算定基礎となる労働者数が減ります。

未達成の会社は障害者雇用に消極的ということですか?

そう決めつけるのは危険だと思っています。令和7年の未達成企業65,033社のうち、不足数が0.5人または1人だけの企業が64.0%を占めています。40人規模の会社なら必要人数は1人で、その1人の採用が決まらないと未達成のままです。採用の努力をしていても、地域の求職者の状況や職務の切り出しの難しさで結果が出ないことはあります。数字だけでは、取り組みの有無までは分かりません。

障害者雇用率のデータはいつ更新されますか?

厚生労働省の「障害者雇用状況の集計結果」は毎年6月1日を基準日として集計され、その年の12月に公表されるのが通例です。令和7年分は令和7年12月19日に公表されました。なお令和8年6月1日時点の報告では、法定雇用率2.5%での不足の有無を確認することになっています(2.7%の適用は令和8年7月から)。

まとめ

数字の出典は、厚生労働省「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」(令和7年12月19日公表)、厚生労働省リーフレット「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」(LL080401障01)、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金制度の概要」、三重労働局の報道発表資料(平成27年3月31日)です。しょくばログのデータは2026年9月7日時点の集計で、従業員数のデータはgBizINFO由来のため行政と関わりのある企業に偏っています。母集団の性質はそのつど明記するようにしています。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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