✍ 古家あきら | 2026-10-01 更新
1912年創業のお茶の老舗「志鎌園」(山形)が事業停止、自己破産申請へ。年商は7億円超から約1億5,000万円に。しょくばログDBで見る社名にお茶の言葉を持つ法人1,666社、閉鎖率17.5%
先に結論です。山形市のお茶の卸・小売の老舗、株式会社志鎌園と系列の株式会社長寿園本舗が2026年9月30日に事業を停止し、自己破産申請の準備に入ったと報じられました。 負債は2社合わせて約4億8,700万円です。1912年(大正元年)創業の会社で、1990年代には年商7億円を超えていましたが、2026年3月期は約1億5,000万円まで落ちていました。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「長く続いた会社ほど、止まる前の兆しが外から見えにくい」と感じることがよくあります。この記事では、報道で確かめられる事実を押さえたうえで、台帳から見えるお茶の業界の姿と、取引先や働く人が確かめたいことを書きます。個別の会社を責める記事ではありません。
出典:【倒産情報】山形の有名老舗のお茶販売会社が破産 負債は5億円近くにのぼるか(テレビユー山形・2026年10月1日)
出典:【山形】お茶の老舗・志鎌園が自己破産申請へ 負債総額は系列会社と合わせて4億8700万円(YTS山形テレビ・2026年10月1日)
出典:志鎌園(山形)、自己破産申請へ お茶の老舗、負債4億2200万円(山形新聞・2026年10月1日)
何が起きたのか(報道で確認できる事実)
報道(情報元は東京商工リサーチ山形支店)で確かめられることを並べます。
- 株式会社志鎌園は1912年(大正元年)創業。お茶の卸・小売と、健康茶の販売を手がけてきた
- 1990年代の最盛期には年商7億円を超えていた
- 2000年代以降は、流通の形が多様になったことや量販店などとの競合で、採算の取れない状態が続いた
- 主な納め先だった葬儀場・セレモニーホールへの納入も減った
- 2026年3月期の売上は約1億5,000万円
- 9月30日に事業を停止。系列の長寿園本舗も同じ措置をとった
- 負債は志鎌園が約4億2,200万円、長寿園本舗が約6,500万円、合わせて約4億8,700万円
最盛期からの売上は、ざっと5分の1ほどです。一気に落ちたのではなく、20年以上かけて少しずつ縮んできた形だと読めます。
しょくばログの台帳で見えること
ここからは、国税庁の法人番号データをもとにしたしょくばログの台帳で見た数字です(2026年10月1日時点)。
2社とも、台帳ではまだ「活動中」
志鎌園も長寿園本舗も、台帳では閉鎖の登記はなく「活動中」の表示です。事業を止めても、破産の手続きが進んで登記に反映されるまでは、法人番号の情報は変わりません。「法人番号で調べて活動中だったから大丈夫」とは言えないということです。このずれは倒産統計に映らない会社の終わりでも書きました。
もうひとつ、登記の本店は志鎌園が山形市八日町、長寿園本舗が山形市流通センターです。報道で所在地とされているのは流通センターでした。登記の本店と、実際に仕事をしている場所が違うことはよくあります。取引先として確かめるときは、両方を見ておくと迷いません。
社名にお茶の言葉を持つ法人は1,666社、閉鎖率17.5%
社名に「製茶」「茶舗」「銘茶」「茶園」「お茶」「茶業」「茶販」「茶房」のどれかを含む法人(「喫茶」を含むものは除く)を数えると、累計1,666社でした。名前からの推定なので、お茶と関係のない会社が少し混じり、逆に社名にこれらの言葉がないお茶屋さん(志鎌園もそうです)は入っていません。概数として見てください。
- 活動中:1,375社
- 閉鎖:291社(閉鎖率17.5%)
- 台帳全体の閉鎖率は13.3%なので、それより高めです
閉鎖291社の内訳は、清算の結了などが215社、登記官による閉鎖(長く登記の動きがない会社の整理)が61社、合併が14社、その他が1社でした。
静岡と鹿児島で4割近く、山形は7社
活動中1,375社の本店を都道府県別に見ると、静岡県が291社(21.2%)、鹿児島県が223社(16.2%)で、この2県だけで4割近くになります。続いて東京都124社、京都府91社、福岡県78社です。産地に会社が集まる形がはっきり出ています。
一方、山形県は累計7社、うち活動中は4社でした。産地ではない土地のお茶屋さんは、仕入れて売る商いが中心になります。流通の形が変わると、その変化をまともに受けやすい立場だといえます。
有限会社が41.7%。古い会社が多い業界
活動中1,375社のうち、有限会社が573社(41.7%)で、株式会社の564社(41.0%)を上回りました。台帳全体の活動中の法人では有限会社は28.6%です。有限会社は2006年から新しく作れなくなったので、有限会社の多さは、昔からある会社の多さを表します。長く続く店が多い一方で、新しく入ってくる会社は少ない業界だと読めます。老舗をどう見るかは老舗企業の見方にもまとめています。
取引先や働く人が確かめたいこと
1. 売上の推移を、長い目で見る
今回の会社は、最盛期から20年以上かけて売上が5分の1ほどになっていました。1年ごとの変化は小さくても、長く並べると流れが見えます。決算や信用調査の数字は、直近1年だけでなく5年、10年の幅で見るのが大切です。見方は取引先の信用の調べ方が参考になります。
2. 主な納め先がどこか
今回は葬儀場への納入が減ったことも響きました。売上が特定の納め先に寄っている会社は、その先の変化をそのまま受けます。取引先の主な納め先や業界を知っておくと、影響の大きさを考えやすくなります。
3. 系列会社の状況
今回は系列の長寿園本舗も同時に事業を止めています。取引先が系列会社を持っている場合は、そちらの法人番号や登記も控えておくと、何かあったときにすぐ確かめられます。調べ方は法人番号の調べ方にあります。
4. 破産の知らせが届いたら
破産の申し立てがされると、破産管財人から案内が来ます。破産・民事再生などの手続きの違いは倒産の種類の違いで、取引先が今も動いているかの確かめ方は会社の実在と倒産の確かめ方で整理しています。
よくある質問
志鎌園はもう破産したのですか?
報道では、9月30日に事業を停止し、自己破産の申請の準備に入ったとされています。裁判所から破産手続きの開始が決まったかどうかは、今後の報道や官報で確かめてください。
台帳で「活動中」なのに、なぜ事業停止なのですか?
法人番号の情報は登記をもとにしているので、事業を止めた日にはすぐ変わりません。破産の手続きが進み、登記に反映されるまで時間がかかります。
お茶の業界の会社は危ないということですか?
そうは言えません。今回の数字は社名からの推定で、閉鎖率は台帳全体より高めでも、8割以上は活動中です。個々の会社の状態は、その会社の情報で確かめる必要があります。
長く続いている会社なら安心ではないのですか?
長く続いていることは信用の材料のひとつですが、それだけで今の状態はわかりません。今回のように、最盛期から少しずつ売上が縮んでいる場合もあります。
まとめ
1912年創業のお茶の老舗、志鎌園と系列の長寿園本舗が事業を停止し、自己破産申請の準備に入りました。年商は1990年代の7億円超から約1億5,000万円まで、20年以上かけて縮んでいました。しょくばログの台帳では、社名にお茶の言葉を持つ法人は1,666社、閉鎖率17.5%、有限会社が41.7%と、古い会社の多い業界です。取引先の状態は、法人番号の「活動中」だけで判断せず、売上の長い流れや納め先、系列会社まで含めて見ておくと安心です。