✍ 古家あきら | 2026-09-27 更新
工事写真「蔵衛門」のルクレが10月15日に東証グロース上場へ — 買い切りからサブスクに切り替えた2期は赤字だった。「赤字=危ない」と読まないための決算の見方と、建設業22万社のうち従業員数が外から分かるのは6.0%(DB実測)
先に結論です。決算に赤字の年があっても、それが「売り方を変えた年」なら、会社が傾いているとは限りません。見るべきは赤字の理由と、その後に「毎月入ってくる売上」が増えているかどうかです。 工事写真の整理ソフト「蔵衛門(くらえもん)」の株式会社ルクレは、2022年9月期と2023年9月期に経常損失を出しました。上場申請書類には、その理由を「買い切り型から、契約期間にわたって売上高を計上するサブスクリプション型へ移行したこと」と書いています。その後の2025年9月期は売上高約29.2億円、経常利益約3.4億円まで戻しています。
出典:新規上場会社概要 株式会社ルクレ(日本取引所グループ・2026年9月8日)
出典:新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)株式会社ルクレ(日本取引所グループ)
出典:東京証券取引所グロース市場への新規上場承認に関するお知らせ(株式会社ルクレ/PR TIMES)
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「この会社、数年前に赤字だったけど大丈夫?」という見方をされる場面によく出会います。取引先を選ぶ建設会社の方も、応募を考えている方も同じです。上場する会社は決算を5年分さかのぼって公開するので、「赤字の年の読み方」を練習するにはちょうどいい教材になります。
何が公表されたのか
日本取引所グループの「新規上場会社概要」と、上場申請書類(Ⅰの部)に書かれている事実です。
- 会社名は株式会社ルクレ。本店は東京都港区北青山一丁目2番3号、設立は1995年9月20日
- 上場予定日は2026年10月15日、市場は東証グロース、証券コードは648A。上場承認は2026年9月8日
- 事業は、工事現場の写真を撮って整理し、関係者と共有する「蔵衛門」シリーズが柱。ほかに保育園・幼稚園の写真販売や、車の整備記録のサービスもある
- 資本金は3,000万円。公募は新株の発行ではなく自己株式の処分50万株で、ほかに売出しが284万株
- 仮条件は9月28日、ブックビルディング期間は9月29日から10月2日、公開価格は10月5日に決まる予定
沿革によると、1995年に富士通の社内ベンチャー制度で「株式会社トリワークス」として設立され、2009年に富士通との資本関係を解消、2011年に今の社名へ変えています。社名が変わった会社を調べるときの注意点は昔の社名から今の会社を探す方法にまとめています。
5年分の決算を並べると、赤字は2期だけ
Ⅰの部の「主要な経営指標等の推移」から、売上高と経常利益(マイナスは経常損失)を抜き出しました。
- 2021年9月期:売上高 約18.4億円/経常利益 約1.9億円
- 2022年9月期:売上高 約15.8億円/経常損失 約2.4億円
- 2023年9月期:売上高 約16.5億円/経常損失 約1.3億円
- 2024年9月期:売上高 約22.2億円/経常利益 約0.8億円
- 2025年9月期:売上高 約29.2億円/経常利益 約3.4億円
2022年9月期は売上が前の期より約14%減り、赤字に転じています。書類はこれを「ライセンス販売形式を買い切り型からサブスクリプション型へ移行したことによる」と説明しています。
なぜ売り方を変えると赤字になるのか。買い切りのソフトは、売れた日に代金をまとめて売上にできます。月額課金に切り替えると、同じお客さんからの代金が何年かに分けて入ってくるので、切り替えた直後は売上が小さく見えます。一方で、開発や営業の費用はすぐに出ていきます。そのずれが、この2期の赤字として表に出た形です。
赤字のあとに「毎月入る売上」が増えているか
売り方の切り替えが成功したかどうかは、その後に継続課金の売上が積み上がっているかで分かります。書類には次の指標が載っています(2024年9月期→2025年9月期)。
- ARR(継続課金の月の売上を12倍した年換算):約7.1億円 → 約10.7億円
- 全社の売上に占める継続課金の割合:24.7% → 30.8%
- 有料の利用ID数:62,923 → 95,157
- 有料プランの契約会社数:7,574社 → 10,763社
- 企業単位プランの月次解約率(直近12か月平均):0.12% → 0.16%
- 営業利益率:3.5% → 11.2%
契約会社数は1年で約4割増え、解約率は月0.1%台です。現金及び現金同等物も2025年9月期末で約11.1億円あり、2024年9月期末の約5.4億円から約2倍になっています。赤字の2期のあとに、こうした数字が続いているかどうかが読みどころです。ただし、これは上場時点の書類に書かれた過去の数字で、この先を約束するものではありません。
「従業員47名」と「114人」、どちらが正しいのか
しょくばログのDBで株式会社ルクレ(法人番号6011001037859)を見ると、gBizINFO由来の従業員数は「114人」です。一方、Ⅰの部の「従業員の状況」では、2026年7月31日時点で従業員47名、臨時従業員68名とあります。47名に68名を足すと115名で、近い値になります。
どちらかが間違っているとは限りません。「従業員数」は、正社員だけを数えるか、契約社員やアルバイトを含めるかで大きく変わります。 gBizINFOの114人がどの数え方かは、公表資料からは分かりません。求人を見るときは「正社員何名・パート何名」まで分けて書かれているかを確かめるのが確実です。従業員数で会社に課される義務が変わる点は従業員数の「節目」で会社に何が起きるかで扱っています。
なお、同じ東京都内には、渋谷区恵比寿西に本店を置く別の「株式会社ルクレ」(法人番号2011001052498)も登記されています。上場する会社とは本店所在地も法人番号も違います。調べるときは社名ではなく法人番号で確かめてください。方法は法人番号の調べ方にあります。
建設業22万社のうち、従業員数が外から分かるのは6.0%
蔵衛門のお客さんの中心は建設会社です。しょくばログの台帳で、閉鎖の登記がなく、業種を「建設業」と判定できた法人は221,179社ありました(業種はしょくばログの推定分類で、判定できていない法人は含みません)。
- 公的データ(gBizINFO)で従業員数が分かる:13,324社(6.0%)
- そのうち従業員50人未満:10,801社(81.1%)
- そのうち従業員10人未満:4,542社(34.1%)
- そのうち従業員100人以上:1,526社(11.5%)
建設業の9割以上は、従業員数すら外から確認できません。上場会社のように5年分の決算が公開されるのは、ごく一部です。上場しない会社の状態を外から確かめる方法は工務店の経営状態の調べ方と会社が上場しているかの確認方法にまとめています。上場で初めて見えるようになる数字の話はKOMPEITOの上場の記事でも取り上げました。
取引先・応募者が決算の赤字を見るときの3つの確認
1. 赤字の理由が書かれているか。 上場会社なら有価証券報告書に、非上場でも決算公告の注記や会社の説明に理由が出ていることがあります。「売り方を変えた」「大型の投資をした」など、理由がはっきりしている赤字と、理由の説明がない赤字は分けて考えます。 2. 赤字のあとに何が増えたか。 売上だけでなく、契約数・継続課金・現金の残高が増えているかを見ます。 3. 一時の数字でなく、数年分を並べる。 1年だけ見ると判断を誤ります。できれば3〜5年分を並べます。
よくある質問
ルクレはいつ、どの市場に上場するのですか?
2026年10月15日に東証グロース市場へ上場する予定です。証券コードは648Aで、上場承認は2026年9月8日です(日本取引所グループの新規上場会社概要より)。
過去に赤字の年がある会社は避けたほうがいいですか?
一律に避ける必要はありません。ルクレのように、売り方を買い切りから月額課金に変えた年は、会計上いったん売上が小さく見えて赤字になることがあります。赤字の理由と、その後に継続的な売上や現金が増えているかを確かめてください。
従業員数が資料によって違うのはなぜですか?
正社員だけを数えるか、契約社員やアルバイトなどの臨時従業員を含めるかで変わるためです。ルクレの上場書類では従業員47名、臨時従業員68名と分けて書かれています。
同じ社名の会社がある場合、どう見分けますか?
法人番号と本店所在地で見分けます。上場するルクレは法人番号6011001037859、本店は港区北青山です。渋谷区恵比寿西にも同名の会社がありますが、別の法人です。
まとめ
- ルクレは2026年10月15日に東証グロースへ上場予定。1995年設立、2011年に今の社名へ変更
- 2022年・2023年9月期の赤字は、買い切りから月額課金への切り替えによると書類に明記されている
- その後、継続課金の年換算売上は約10.7億円、契約会社数は10,763社まで増えている
- 「従業員数」は数え方で変わる。求人では正社員とそれ以外を分けて確認する
- 建設業に分類される現存法人221,179社のうち、従業員数が公的データで分かるのは6.0%
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数字は、日本取引所グループが公開している新規上場会社概要と上場申請書類(Ⅰの部)、株式会社ルクレの発表、および国税庁法人番号公表サイト・gBizINFO由来のしょくばログ会社データベース(2026年9月27日時点)から取りました。公開価格や上場後の株価は、日本取引所グループや会社のIRサイトで最新の情報を確認してください。本記事は投資を勧めるものではありません。