✍ 古家あきら | 2026-09-28 更新

協同組合とは何か・会社との違い — 全国4万2,389の組合を数えたら、半分は「協同組合〇〇」という名前だった

協同組合とは、組合員が出資し合い、組合員自身のために事業をする法人です。 株式会社が「株主に利益を返す」ために事業をするのに対し、協同組合は「組合員どうしの相互扶助」を目的にします。中小企業等協同組合法5条は、組合の要件として「組合員の相互扶助を目的とすること」「議決権は出資口数にかかわらず平等であること」をはっきり書いています。

つまり違いは3つに集約できます。目的(株主の利益か、組合員の相互扶助か)、議決権(持ち株数に比例か、1人1票か)、配当(出資額に応じてか、事業を使った分量に応じてか)です。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「応募先が『〇〇協同組合』なんだけど、これは会社なの?」「取引先が組合だった。何に気をつければいい?」という相談を受けます。そこで、国税庁の法人番号データで、名前に「協同組合」などを含む活動中の法人を数え直しました。 結論を先に書くと、

という結果でした。以下、制度の違いから順に説明します。

協同組合とは:条文で見る「会社との違い」

協同組合という言葉は1つの法律の名前ではありません。農協なら農業協同組合法、生協なら消費生活協同組合法、漁協なら水産業協同組合法というように、種類ごとに根拠になる法律が別々にあります。中小企業の組合は中小企業等協同組合法、協業組合は中小企業団体の組織に関する法律、森林組合は森林組合法、商店街振興組合は商店街振興組合法です。

ここでは、中小企業どうしが作る組合を定めた中小企業等協同組合法を例に、株式会社との違いを見ます。

目的:株主のためではなく、組合員のため

中小企業等協同組合法5条1項1号は、組合の要件として「組合員の相互扶助を目的とすること」を挙げています。さらに同条2項は、組合は事業によって組合員に直接奉仕することを目的とし、特定の組合員の利益のみを目的として事業を行ってはならないと定めています。

株式会社は、出資者(株主)に利益を返すことを前提にした仕組みです。協同組合は、出資者(組合員)が組合の事業を使うことで得をする仕組みです。たとえば建設会社が集まった組合なら、資材の共同購入で仕入れ値を下げる、共同で仕事を受注する、といった形で組合員に還元します。

議決権:1人1票

株式会社では、株主総会の議決権は原則として持ち株数に比例します(会社法308条1項)。たくさん出資した人ほど強い発言力を持ちます。

協同組合は違います。中小企業等協同組合法5条1項3号は「組合員の議決権及び選挙権は、出資口数にかかわらず、平等であること」と定めています。大きな会社も小さな会社も、組合員としては1票ずつです。

配当:出資額ではなく「利用した分量」

中小企業等協同組合法59条2項は、剰余金の配当を「組合員が組合の事業を利用した分量に応じ、又は年一割を超えない範囲内において払込済出資額に応じて」行うと定めています。出資額に応じた配当には上限があるわけです。

加入・脱退が自由

同法5条1項2号は「組合員が任意に加入し、又は脱退することができること」も要件にしています。株式会社の株は売らなければ手放せませんが、組合は脱退という形で抜けられます。

種類:中小企業等協同組合法の組合は5つ

同法3条が定める組合は、事業協同組合・事業協同小組合・信用協同組合・協同組合連合会・企業組合の5つです。このうち 企業組合 は、個人が集まって1つの事業体として働く形で、同法59条3項で配当のルールも他と分けられています。

名前のルール:「事業協同組合」は名前に「事業」を入れなくていい

データを見る前に、名前についての条文を1つ押さえておくと、組合の見分け方が一気に楽になります。

中小企業等協同組合法6条1項は、組合が名前に入れなければならない文字を決めています。

ポイントは、事業協同組合は「事業協同組合」と名乗る必要はなく、「協同組合」の文字さえあればいいことです。だから世の中には「協同組合〇〇」という名前の組合が大量にあります。また、信用協同組合は「信用組合」と名乗れるので、名前に「協同組合」が入らないことがあります。

逆に同条2項は、この法律や他の特別な法律で作られた組合以外が、名前に「事業協同組合」「企業組合」などの文字を使うことを禁じています。名前に「協同組合」がある法人は、原則として何らかの協同組合法に基づく組合だと考えてよいわけです。

データで見る協同組合:活動中は4万2,389

ここからは、国税庁の法人番号データ(活動中の法人4,988,967件)で数えた結果です。

最初に1つ注意があります。法人番号の「法人の種類」には、協同組合という区分がありません。 株式会社・有限会社・合同会社などは種類で数えられますが、協同組合はほぼすべて「その他の設立登記法人」に入っています。名前に「協同組合」を含む活動中の法人35,006のうち、34,965がこの区分でした。「その他の設立登記法人」は活動中519,553あり、その 6.73% が名前に協同組合を含む法人です。

そこで今回は、名前に含まれる文字で分類しました。以下の分類は名前からの推定です。

種類別の数(活動中)

いちばん多いのは、種類名を含まない「協同組合〇〇」型でした。先ほどの6条のとおり、事業協同組合は「協同組合」の文字だけで名乗れるため、この21,361の多くは事業協同組合だと考えられます(ただし名前だけでは断定できません)。はっきり「事業協同組合」と名乗る6,070と合わせると、中小企業の組合らしき法人が27,431、全体の約65%を占めます。

なお「信用協同組合」と名乗る活動中の法人は1つだけでした。一方、名前に「信用組合」を含む法人は174あります。信用協同組合はほぼすべて「信用組合」の名前を使っている、ということです。

農業協同組合は3,272ありますが、これは名前に「農業協同組合」を含む法人の数で、地域の総合農協だけでなく酪農・果樹などの専門農協も含みます。登記上まだ閉鎖されていない数なので、実際に事業をしている農協の数とは別物として見てください。

閉鎖率は株式会社より高い。ただし中身が違う

閉鎖済みも含めて数えると、名前に協同組合などを含む法人は55,089、そのうち閉鎖済みは12,700、閉鎖率は 23.1% でした。同じデータで株式会社の閉鎖率は13.9%、合同会社は8.6%です。

種類別の閉鎖率は次のとおりです。

ただし、閉鎖率が高い=経営が悪い、ではありません。閉鎖の理由を見ると、種類によってまったく違うからです。

漁協や農協は、地域の組合どうしが合併して大きくなる形で数が減ってきました。一方、事業協同組合や企業組合は合併ではなく、解散して清算を終えるか、登記官に閉鎖されるかで消えています。登記官による閉鎖は、解散したあと清算の手続きが登記されないまま長い期間が過ぎた法人などを、登記官が職権で閉じるものです。

合併で大きくなってきた漁協・農協と違い、中小企業の組合は「合併せずに、解散して消える」のが基本の形だと読めます。

地域:事業協同組合は都市部、農協は山梨が最多

「協同組合〇〇」型と事業協同組合を合わせた活動中の数は、東京都2,350、大阪府1,585、北海道1,476、愛知県1,361、福岡県1,239、神奈川県957の順でした。会社の数が多い都市部に多いのは自然な結果です。

名前に「農業協同組合」を含む活動中の法人は、山梨県403、北海道252、秋田県234、宮城県228、福島県174の順でした。山梨が北海道を上回るのは意外ですが、地区ごとの小さな農協や専門農協が登記上多く残っていることが理由として考えられます。これは事業をしている農協の数ではなく、あくまで登記上の数です。

名前から見える業種:建設・木材・生コン

事業協同組合系(27,431)の名前に含まれる言葉を数えると、多い順に次のようになりました。

建設・管工事・生コン・木材といった、中小の事業者が多く、共同受注や共同購入が効きやすい業種が目立ちます。組合は外国人技能実習の受け入れでも大きな役割を持っています。登録支援機関・監理団体を調べる方法で監理団体の名簿を数えたときは、監理団体の96.5%が協同組合でした。

協同組合を外から調べるときのポイント

1. 名前で種類の見当をつける

名前に「協同組合」「企業組合」「協業組合」「森林組合」などがあれば、会社ではなく組合です。「〇〇協同組合」「協同組合〇〇」なら、多くは中小企業の事業協同組合です。名前だけで法人の種類がどこまで分かるかは、法人の種類一覧にまとめています。

2. 所管の役所を確認する

協同組合は、種類ごとに監督する役所が違います。事業協同組合なら業種を所管する省庁や都道府県、農協は農林水産省・都道府県、生協は厚生労働省・都道府県というように、種類で窓口が分かれます。各地の中小企業団体中央会も、中小企業の組合の相談窓口になっています。

3. 組合員が誰かを確認する

協同組合の実態は、組合員(加入している会社)で決まります。ホームページで組合員名簿を公開している組合も多いので、どんな会社が集まっているかを見るのが近道です。

4. 「組合=安心」でも「組合=怪しい」でもない

協同組合は法律で要件が決まった法人ですが、それだけで経営が安定しているとは言えません。先ほどのとおり、活動が止まって登記官に閉鎖される組合も少なくありません。取引の前には、会社と同じように実在と活動状況を確かめてください。手順は会社が解散・休眠しているか調べる方法が参考になります。

一般社団法人と混同されることもありますが、一般社団法人は一般社団・財団法人法に基づき、目的の制限がゆるい別の制度です。違いは一般社団法人は怪しいのかで説明しています。

協同組合に就職・転職するときに見ておきたいこと

協同組合で働く場合、雇われるのは組合という法人です。労働基準法などの労働法は、会社で働く場合と同じように適用されます。

ただし、組合の事務局は職員数が少ないことが多く、仕事の中身は組合員(会社)へのサービスや共同事業の運営になります。求人を見るときは、組合の事業が何か(共同受注・共同購入・検査・研修など)と、組合員が何社くらいいるかを確認すると、職場の姿がつかみやすくなります。

組合も会社と同じように倒産することがあります。たとえば協業組合の破産事例は、福島の「250円弁当」アルタの破産で取り上げました。

よくある質問

協同組合は会社ですか?

会社ではありません。会社法でいう会社は、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の4種類です。協同組合は、それぞれの協同組合法に基づいて作られる別の種類の法人です。法人番号も付いていて、取引や雇用の相手としては会社と同じように扱われます。

協同組合は利益を出してはいけないのですか?

利益を出すこと自体は禁じられていません。ただし事業の目的は組合員の相互扶助で、剰余金の配当は主に組合の事業を利用した分量に応じて行い、出資額に応じた配当には上限があります(中小企業等協同組合法5条1項4号・59条2項)。

協同組合の議決権は本当に1人1票ですか?

中小企業等協同組合法5条1項3号は、組合員の議決権と選挙権は出資口数にかかわらず平等であると定めています。出資を多くしても票は増えません。この点が株式会社との大きな違いです。

「協同組合〇〇」と「〇〇事業協同組合」は何が違うのですか?

多くの場合、どちらも事業協同組合です。中小企業等協同組合法6条は、事業協同組合が名前に「協同組合」の文字を使うことを求めているだけで、「事業」の文字までは求めていません。名前の付け方の違いと考えてください。

信用組合と信用金庫は同じですか?

別の制度です。信用組合は中小企業等協同組合法に基づく信用協同組合で、名前に「信用協同組合」か「信用組合」を使います(同法6条1項2号)。信用金庫は信用金庫法に基づく別の法人です。

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データの出典と集計方法:国税庁 法人番号公表サイトの全件データをもとに、しょくばログが2026年9月28日に集計。活動中=登記記録の閉鎖日がない法人(重複・対象外データを除く4,988,967件)。組合の種類は法人名に含まれる文字からの推定で、「連合会」→「農業協同組合」→「漁業協同組合」…の優先順で1つに分類。閉鎖事由は国税庁データの「登記記録の閉鎖等の事由」コード。条文は e-Gov法令検索の中小企業等協同組合法(昭和24年法律第181号)・会社法(平成17年法律第86号)で確認。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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