✍ 古家あきら | 2026-09-28 更新
十日町のワイヤーハーネス加工「ケー・エヌ・ディ」が破産。売上は15年で約6割減っていた。しょくばログDBで見る「ハーネス」法人252社
先に結論です。取引先が少数に固定された小さな下請け工場は、仕事が安定している間は強いのですが、発注が減ったときやコストが上がったときに、打てる手がほとんどありません。 新潟県十日町市でワイヤーハーネスの製造や通信ケーブルの加工を手がけてきた有限会社ケー・エヌ・ディは、2026年9月11日に新潟地裁長岡支部から破産手続きの開始決定を受けました。負債は約9,700万円です。売上高は15年でおよそ6割減っていました。
出典:[倒産情報]通信ケーブル加工のケー・エヌ・ディ(十日町市)が破産開始決定、負債総額は約9700万円(新潟日報、2026年9月24日)
出典:【倒産】ワイヤーハーネスで長く築いた実績もコスト負担が重くのしかかり約9700万円の負債『ケー・エヌ・ディ』新潟県十日町市(BSN新潟放送/Yahoo!ニュース、2026年9月25日)
出典:ワイヤーハーネス製造 下条3のケー・エヌ・ディが破産 負債額は約9700万円(十日町タウン情報、2026年9月25日)
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、倒産の報道が出た数日後に、その会社のページがよく見られるようになります。取引先の担当者、働いていた人、近所の人。今回のような従業員数の少ない地方の工場では、報道そのものが短く、分かることも限られます。ここでは、報道で確認できる事実と、しょくばログの台帳から数えられる数字だけを並べます。
何が起きたのか(報道で確認できる事実)
従業員数や主な取引先の名前は、どの報道にも書かれていないため、ここでも書きません。
- 会社:有限会社ケー・エヌ・ディ(新潟県十日町市下条)
- 設立:1997年4月
- 事業:自動車・船舶・産業機械向けのワイヤーハーネス(配線をまとめた部品)の製造、通信ケーブルの加工
- 売上高:2010年10月期 約1億100万円 → 2025年10月期 約4,000万円
- 負債:約9,700万円
- 2026年9月11日:新潟地裁長岡支部から破産手続きの開始決定
苦しくなった理由として、報道は次の点を挙げています。
- 同業他社との競合が続いた
- 得意先が固定化していた
- 小さな会社で人手が足りなかった
- 近年はコストの負担が重くなった
- 資金繰りに余裕がなく、先の見通しも立たなくなった
新潟日報は、長年の実績で一定の受注基盤を築いてきたとも伝えています。仕事がなかった会社ではありません。仕事はあったが、増やす手段と、値段を上げる手段の両方が細っていった、と読むのが報道の範囲では自然です。
「取引先が固定」の強さと弱さ
ワイヤーハーネスの組み立ては、図面どおりに電線を切り、端子をつけ、束ねていく仕事です。自動車や機械のメーカーから一次・二次の部品会社を経て、地方の小さな工場に作業が回ってくる形がよく見られます。
この形には、はっきりした強みがあります。決まった相手から決まった量の仕事が来るので、営業をしなくても工場が回ります。一方で、弱みもはっきりしています。
1. 発注量を自分で決められない。 出し手の生産が減れば、こちらの売上もそのまま減ります 2. 値上げを言い出しにくい。 相手が少ないほど「断られたら困る」という気持ちが強くなります 3. 新しい取引先を探す人がいない。 小さな工場では、社長や数人の社員が現場に入っているので、営業に割く時間が残りません
今回の報道にある「得意先の固定化」と「マンパワー不足」は、この2と3にそのまま重なります。
値上げはどこまで通っているのか
中小企業庁が2026年6月26日に公表した調査(2026年3月の「価格交渉促進月間」のフォローアップ調査)では、次の結果が出ています。
- 直近6か月で価格交渉が行われた割合:90.7%
- コスト上昇分のうち価格に転嫁できた割合(価格転嫁率):54.2%
- 「全く転嫁できなかった」「むしろ下がった」の割合:16.0%
出典:価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査結果(中小企業庁、2026年6月26日)
交渉の場は9割の会社で持たれるようになりましたが、上がったコストのうち価格に乗せられたのは半分ほどで、6社に1社近くは1円も乗せられていません。調査の中でも、転嫁できる会社とできない会社の二極化が続いていると書かれています。どの調査を使うかで数字は変わり、民間調査ではもっと低い値も出ています。その違いは価格転嫁率と「値上げできない会社」を整理した記事で書いています。
しょくばログの台帳で見えること
会社は台帳上まだ「閉鎖」になっていない
しょくばログの台帳(国税庁の法人番号公表データ)で確かめると、有限会社ケー・エヌ・ディは十日町市下条3丁目に本店があり、登記はまだ閉じていません。同じ「ケー・エヌ・ディ」を社名に含む法人は、全国でこの1社だけでした。
破産の開始決定が出ても、登記が閉じるのは手続きの終わりです。台帳の表示が変わるまでには時間がかかります。破産決定が出た4社を国税庁のサイトで引いた記事では、4社とも「閉鎖」になっていなかった例を書いています。取引先が今どうなっているかを確かめるときは、台帳の表示だけで判断しないでください。確かめ方は会社が実在するか確認する方法の記事にまとめています。
社名に「ハーネス」を含む法人252社
ケー・エヌ・ディ自身の社名には「ハーネス」は入っていません。それでも、この仕事をしている会社の輪郭を見るために、全国の台帳で社名に「ハーネス」を含む法人を数えました。ワイヤーハーネス以外の意味で「ハーネス」を使う会社も少し含まれます。
- 法人数:252社
- 登記を閉じている法人:52社(20.6%。全法人では13.2%)
- 有限会社:130社(51.6%)。うち閉鎖は26社(20.0%)
- 株式会社:111社。うち閉鎖は24社(21.6%)
- 都道府県別の上位:東京都22社、愛知県19社、岡山県18社、大分県12社、神奈川県10社
- 新潟県:8社。うち十日町市に2社(どちらも今回の報道の会社とは別の会社です)
半分以上が有限会社という数字は、2006年より前にできた古い会社が多いことを示しています。有限会社は2006年以降は新しくつくれない会社の形だからです。閉鎖率も全法人の平均を大きく上回っています。自動車産業のある愛知県だけでなく、岡山県や大分県に多いのは、部品の組み立てが地方の工場に分散してきたことの表れと考えられます。
十日町市の法人1,891社
十日町市に本店がある法人は、台帳上1,891社でした。
- 登記を閉じている法人:322社(17.0%)
- 株式会社690社のうち閉鎖124社(18.0%)
- 有限会社583社のうち閉鎖135社(23.2%)
市内の法人の約3割が有限会社で、その閉鎖率は株式会社より高くなっています。小さな町の古い会社が少しずつ減っていく様子が、数字にも出ています。
よくある質問
ケー・エヌ・ディという名前の会社と取引があります。今回の会社ですか?
今回の報道の会社は、新潟県十日町市下条に本店がある有限会社ケー・エヌ・ディです。しょくばログの台帳では同じ社名を含む法人はこの1社だけでしたが、請求書や契約書の所在地、または13桁の法人番号で照合するのが確実です。調べ方は法人番号の調べ方の記事にあります。
破産した会社に売掛金が残っています。どうすればいいですか?
破産手続きでは、裁判所が選んだ破産管財人が会社の財産を管理します。通常は管財人から債権者に通知が届き、そこに書かれた方法で債権を届け出ます。通知が来ない場合は、裁判所(今回は新潟地裁長岡支部)に事件番号や管財人を問い合わせられます。細かな手続きは弁護士に相談してください。
取引先が固定されている会社は危ないのですか?
それだけで危ないとは言えません。安定した取引先があることは強みでもあります。気をつけたいのは、取引先が固定されたまま売上が長く減り続けている場合と、値上げの交渉ができていない場合です。今回の会社は、その両方が重なっていました。
しょくばログで「閉鎖」と表示されるのはいつですか?
しょくばログは国税庁の法人番号公表データをもとにしており、登記が閉じたあとに表示が変わります。破産の開始決定から登記の閉鎖までは、通常しばらく時間がかかります。
まとめ
- 十日町市のワイヤーハーネス加工会社、有限会社ケー・エヌ・ディが9月11日に破産手続きの開始決定を受けた(負債約9,700万円)
- 売上高は2010年10月期の約1億100万円から2025年10月期の約4,000万円へ、15年で約6割減
- 報道が挙げた理由は、競合、得意先の固定化、人手不足、コストの負担
- 中小企業庁の調査では、上がったコストのうち価格に乗せられたのは54.2%。16.0%の会社は全く乗せられていない
- 社名に「ハーネス」を含む法人は全国252社、閉鎖率20.6%で全法人の13.2%を上回り、半分以上が有限会社
取引先や勤め先の会社の今を確かめたいときは、しょくばログで社名か法人番号を検索してみてください。所在地、法人番号、登記の状態を一画面で確認できます。