✍ 古家あきら | 2026-09-15 更新
警備会社が9月の最初の2日間で3社破産、設立53年・従業員約140人の老舗も — 警察庁の最新統計では警備員の47.3%が60歳以上、業者の90.3%が100人未満。社名に「警備」を持つ法人3,828件は、登記から業種がほぼ読めなかった
先に結論です。2026年9月1日に千葉地裁松戸支部が株式会社SSコミュニティー(千葉県柏市・2003年設立)に、9月2日に東京地裁が近代総合株式会社(東京都中央区・1972年設立)と都市基盤交通警備保障合同会社(東京都豊島区)に、それぞれ破産手続き開始決定を出しました。3社とも交通誘導や施設・イベント警備を手がける警備会社で、近代総合は公開情報で従業員約140人とされていました。負債額はいずれも公表されていません。
出典:【東京】1972年設立の警備会社「近代総合」が破産(JC-NET・裁判所の公告にもとづく倒産情報・2026年9月14日) 出典:【千葉】警備会社「SSコミュニティー」が破産(JC-NET・2026年9月14日) 出典:【東京】都市基盤交通警備保障(同)/破産手続き開始決定(JC-NET・2026年9月14日) 出典:令和7年における警備業の概況(警察庁・2026年7月公表・PDF)
しょくばログという会社データベースを運営していると、「警備の求人に応募するのだけど、この会社は大丈夫か」という相談が意外に多く届きます。警備は求人の数が多く、未経験で入りやすく、60代以上の応募者も多い仕事です。だからこそ、勤め先が突然なくなる打撃は他の業種より重い。今回は、破産した3社の登記上の姿と、警察庁が7月に公表したばかりの最新統計を並べて、「警備会社の中身は外からどこまで読めるか」を数えます。
公表された事実
裁判所の公告をもとにした倒産情報から、3社の要点をまとめます。
- 近代総合株式会社(東京都中央区日本橋箱崎町):1972年11月設立。東京23区と近郊で交通誘導などの警備業務を展開。公開情報では資本金1,000万円・従業員約140人。2026年9月2日、東京地裁が破産手続き開始決定。債権届出期限は9月30日、財産状況報告集会は12月17日
- 株式会社SSコミュニティー(千葉県柏市):2003年2月設立。イベント警備・施設警備・交通誘導警備を手がけ、東京・立川に支社。従業員は求人サイトで180人、社会保険の公的記録では38人と、資料によって開きがある。2026年9月1日、千葉地裁松戸支部が破産手続き開始決定。債権届出期限は10月2日
- 都市基盤交通警備保障合同会社(東京都豊島区池袋):交通誘導警備。2026年9月2日、東京地裁が破産手続き開始決定。債権届出期限は9月30日
3社に共通するのは、負債額も倒産の理由も公表されていないことです。帝国データバンクや東京商工リサーチの速報に載る大型倒産と違い、警備会社の倒産の多くは、こうして裁判所の公告だけが残る「小口倒産」として処理されます。
警察庁の最新統計で見る警備業の「かたち」
警察庁は毎年、警備業法にもとづく認定を受けた業者の統計を公表しています。2026年7月に出た令和7年(2025年)12月末の数字です。
- 警備業者数は10,949業者(前年比+138、+1.3%)
- 警備員数は596,985人(前年比+9,137人、+1.5%)。常用が545,879人、臨時が51,106人(8.6%)。女性は45,304人(7.6%)
- 年齢構成:30歳未満10.9%、30代8.9%、40代13.1%、50代19.8%、60〜64歳12.6%、65〜69歳13.1%、70歳以上21.6%。60歳以上を足すと47.3%(282,509人)で、警備員の2人に1人は60歳以上
- 在職年数:1年未満18.3%、1〜3年21.4%、3〜10年31.2%、10年以上29.1%。5人に1人は入って1年未満
- 業者の規模:警備員100人未満の業者が9,885業者で全体の90.3%。5人以下が2,912業者(26.6%)、10〜19人が2,131業者(19.5%)
- 営業所:主たる営業所1か所だけの業者が9,219業者(84.2%)
- 業務区分:2号(交通誘導・雑踏)を扱う業者が8,768業者(80.1%)、1号(施設)が6,975業者(63.7%)
つまり警備業は、業者数も警備員数も増え続けているのに、1業者あたりは小さく、働き手は高齢で、入れ替わりが速い業界です。今回の3社のうち、近代総合の「約140人」は業者全体の上位1割に入る規模で、都市基盤交通警備保障は「1営業所・少人数・交通誘導」という、業者の8割を占める典型的な形でした。
社名に「警備」を持つ法人3,828件は、登記から業種が読めなかった
しょくばログが持つ全国579万1,529件の法人データ(国税庁の法人番号公表サイトの全件・2026年6月取り込み)で、社名に「警備」を含む法人を数えました。
- 3,828件。うち登記が閉鎖されているのは542件で、閉鎖率は14.2%(全法人の平均13.2%より1ポイント高い)
- 法人種別は株式会社2,502件、有限会社1,075件、合同会社91件、その他160件
- 閉じ方は「登記官による閉鎖」278件、「清算の結了等」225件、「合併による解散等」39件
- 都道府県別では東京都459件(閉鎖率15.7%)、大阪府405件(同22.0%)、北海道233件(同13.3%)、兵庫県207件(同19.3%)、神奈川県196件(同19.9%)。大阪府の閉鎖率は東京の1.4倍
ここで気づくのは、警察庁の10,949業者に対して、社名で拾えるのは稼働中3,286件と3分の1にも届かないことです。近代総合とSSコミュニティーは社名に「警備」がなく、しょくばログの登記データでは業種が「分類不能」でした。社名に「警備」を持つ稼働中の法人でも、登記情報から業種を推定すると97.4%(3,201件)が「分類不能」になります。登記簿は会社の目的を書きますが、国税庁の公表データには業種がありません。「警備会社かどうか」すら、登記の公開データだけでは判別できないのが実態です。警備業者であることを公的に証明するのは、都道府県公安委員会の認定番号のほうです。
「健康経営優良法人2026」の認定を受けたまま破産した
もうひとつ、しょくばログのデータで引っかかった点があります。SSコミュニティーは、経済産業省と日本健康会議が2026年に認定した「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門)」の一覧に載っていました。認定は2026年3月、破産決定は9月です。
健康経営優良法人の中小規模法人部門は、2026年に約2万3,000法人が認定されています。社名に「警備」を持つ法人で認定を受けているのは37社。認定は「従業員の健康管理に取り組んでいるか」を申告で審査する制度で、財務の健全性は見ていません。福利厚生や認定マークの読み方は会社の福利厚生を無料で調べる方法と企業の認定マークの意味にまとめましたが、今回の件はその注意書きの実例になりました。認定マークは「良い会社の証明」ではなく「その項目に取り組んだ証明」です。
警備の求人に応募する前に見る4つの点
警備会社の倒産は、負債額も理由も出ないまま処理されることが多い。だから応募者は、倒産の「予兆」ではなく「構造」を見るしかありません。
1. 公安委員会の認定番号を求人票や会社サイトで確認する:警備業は認定がないと営業できません。番号と有効期限(5年ごとの更新)が書いてあれば、少なくとも正規の警備業者です 2. 従業員数の出どころを見比べる:SSコミュニティーは求人サイトで180人、社会保険の記録では38人でした。常用の警備員と、登録だけの警備員は別物です。会社の従業員数を無料で調べる4つの方法で、資料ごとの数え方の違いを説明しています 3. 社名だけで安心しない:「警備保障」と名乗る法人は2,254件あり、うち345件が閉鎖済みです。名前に「保障」とあっても、何かが保障されるわけではありません 4. 法人番号で登記の状態と本店の履歴を引く:稼働中か、本店を転々としていないか。手順は会社が実在するか確認する方法に、本店移転と倒産が重なった例はHatch Outの破産と本店移転の履歴に書きました
人手不足を理由にした倒産が過去最多ペースで増えていることは人手不足倒産の見分け方で扱いましたが、警備業はその最前線です。東京商工リサーチによると2026年1月の「保安の職業」の有効求人倍率は6.59倍で、全職業平均1.18倍の5倍を超えます(出典:中小業者の淘汰が加速、警備業の「今」(東京商工リサーチ・2026年4月))。そのうえ警備員の半分が60歳以上。人が採れないから仕事を受けられず、仕事を受けられないから人を雇えないという循環に、小さな業者ほど入りやすい構造があります。
よくある質問
破産した3社は、しょくばログではどう表示されていますか
3社とも、2026年6月時点の登記データでは「稼働中」です。破産手続き開始決定は、法人番号公表サイトの登記閉鎖には直ちに反映されません。裁判所の手続きが終わって清算が結了した時点で、初めて「閉鎖」になります。倒産のニュースとデータベースの表示には、数か月から1年以上のずれが出ます。
警備会社かどうかは、登記を見れば分かりますか
登記簿の「目的」欄には「警備業」と書かれていることが多いのですが、国税庁の公表データには目的も業種も含まれません。社名に「警備」がない警備会社も多く(今回の3社のうち2社がそうでした)、確実なのは都道府県公安委員会の認定番号です。
警備員の47.3%が60歳以上というのは、他の業種と比べて多いのですか
警察庁の統計では70歳以上だけで21.6%です。全産業の就業者で70歳以上は1割に届かないので、警備は突出して高齢の職場です。ただし、これは「高齢でも働ける仕事」として社会で機能している面もあり、それ自体が悪いわけではありません。問題は、それだけ高齢の働き手に依存した業者が、採用が止まった瞬間に事業を続けられなくなる点です。
認定マークを持っている会社が倒産するのは、よくあることですか
しょくばログの認定データは2026年の認定分を6月に取り込んだばかりで、認定後に倒産した件数はまだ数えられていません。ただ、健康経営優良法人の審査は財務を見ないので、認定と倒産が両立するのは制度上おかしなことではありません。認定マークは「何に取り組んだか」を読むもので、「潰れないか」を読むものではないと考えてください。
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関連する会社データ:しょくばログでは法人番号や社名から、登記の状態・本店所在地・閉鎖の有無を無料で確認できます。今回の3社の法人番号は、近代総合が3010001144965、SSコミュニティーが2040001067702、都市基盤交通警備保障が7013303006152です。