✍ 古家あきら | 2026-09-24 更新
副業できる会社の調べ方 — 会社サイト32,889社で「副業」に触れているのは2.6%だった
先に結論です。副業できる会社かどうかは、会社サイトの「福利厚生」「制度」「よくある質問」「募集要項」の欄に「副業可」「副業・兼業制度あり」「副業は許可制」といった言葉があるかで分かります。 ただし、そう書いている会社はかなり少数派です。
しょくばログという全国の会社データベースを運営していて、会社サイト(主に採用ページ)のテキストを保存しています。今日数えた時点で32,889社分あり、その中で「副業」「兼業」「複業」「パラレルワーク」のどれかが出てくる会社は852社、2.6%でした。さらに「認める」「条件付きで認める」「禁止」のどれかをはっきり書いている会社に絞ると358社、1.1%です。
つまり、会社サイトを見ても100社に99社は副業の可否が分からない。そして、書いてある358社のうち339社(94.7%)は「認める」側で、「禁止」と書いている会社は19社(5.3%)しかありません。書くのは「アピールになる会社」が中心で、禁止している会社はわざわざ書かない、という偏りがあります。だから「書いていない=禁止」とも「書いていない=自由」とも読めません。
この記事では、①国が副業・兼業をどう扱っているか(厚生労働省ガイドライン)、②会社サイト32,889社で見えた書き方の傾向、③書いていない会社で副業の可否を確かめる手順、④「副業OK」と書いてあっても確認したいこと、の順に整理します。
国は「原則、副業・兼業を認める方向」と言っている
最初に前提です。副業・兼業を認めるかどうかは、法律で一律に決まっているわけではなく、会社ごとの就業規則で決まります。ただ、国の考え方ははっきりしています。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(平成30年1月策定、令和2年9月・令和4年7月改定)は、企業の対応について次のように書いています。
- 裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当
- 副業・兼業を禁止、または一律許可制にしている企業は、自社の業務に支障があるかを精査し、そうした事情がなければ認める方向で検討することが求められる
会社が副業を制限してよい場面として、ガイドラインは裁判例の考え方を4つ挙げています。
- 労務提供上の支障がある場合(働きすぎで本業に差し支える等)
- 業務上の秘密が漏洩する場合
- 競業により自社の利益が害される場合
- 自社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
また、厚生労働省は平成30年1月にモデル就業規則を改定し、それまであった「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除して、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という規定に置き換えています。
令和4年7月から「副業を認めているかを公表すること」が望ましいとされた
調べる側にとって大事なのが、令和4年7月の改定です。ガイドラインに次の一文が加わりました。
「副業・兼業を許容しているか否か、また条件付許容の場合はその条件について、自社のホームページ等において公表することが望ましい」
「望ましい」なので義務ではありません。それでも国が「会社サイトに書いてほしい」と言っている項目なので、本来は会社サイトを見れば分かるはずの情報です。では実際にどれくらいの会社が書いているのか、というのが次の集計です。
会社サイト32,889社を数えたら「副業」に触れる会社は2.6%だった
しょくばログが保存している会社サイトのテキスト32,889社分を対象に、語の出現を数えました(2026年9月24日集計)。
- 「副業」「兼業」「複業」「パラレルワーク」のどれかが出てくる:852社(2.6%)
- うち「副業」:756社/「兼業」:168社
- 認める・条件付きで認める・禁止のどれかをはっきり書いている:358社(1.1%)
- 認める側(「副業可」「副業OK」「副業・兼業制度」「副業は許可制」など):339社(94.7%)
- 禁止側(「副業禁止」「副業不可」「原則副業NG」「副業は認めておりません」など):19社(5.3%)
- 認める側のうち、許可制・届出制・事前申請などの条件を書いている:35社(358社の9.8%)
- 「副業はできますか?」のようなよくある質問形式で答えている:45社
852社と358社の差(約500社)は、ニュースやコラムで副業に触れているだけ、社員インタビューで「前職で副業をしていた」と書いているだけ、アルバイト募集で「副業・Wワークの方も歓迎」と書いているだけ、といったケースです。語が出てくることと、社員に副業を認めていることは別なので、記事内の数字は「語が出てくる会社」と「可否をはっきり書いている会社」を分けています。
なお、この32,889社は「会社サイトを持ち、しょくばログがテキストを保存できた会社」で、全国の会社全体の縮図ではありません。サイトを持たない小さな会社は入っていない点に注意してください。
求人ページがある会社でも3.7%
保存テキストに「募集要項」「応募資格」「仕事内容」「雇用形態」のどれかがある会社(=採用情報を載せている会社)は16,310社(49.6%)でした。
- 採用情報あり16,310社のうち、副業・兼業に触れる会社:608社(3.7%)
- 採用情報なし16,579社のうち、副業・兼業に触れる会社:244社(1.5%)
採用情報を載せている会社に絞っても、副業に触れるのは27社に1社程度です。ガイドラインの「公表が望ましい」は、少なくとも会社サイトの上ではまだ広がっていないと言えます。
業種で見ると、専門サービス・金融・情報通信が高く、製造・建設・運輸が低い
業種別に「副業・兼業に触れる会社」の割合を出すと、差がはっきり出ます(カッコ内は保存テキストのある会社数)。
- 学術研究・専門技術サービス(1,485社):4.8%
- 金融・保険(564社):4.1%
- 教育・学習支援(346社):3.8%
- 情報通信(2,237社):3.7%
- 宿泊・飲食サービス(855社):3.4%
- 医療・福祉(3,473社):2.2%
- 卸売・小売(1,569社):1.5%
- 製造(6,905社):1.3%
- 建設(3,606社):1.2%
- 運輸・郵便(1,033社):1.2%
「副業可」「副業OK」「副業制度あり」のように認める書き方に限ると、情報通信1.5%、宿泊・飲食1.4%、専門サービス1.2%、医療・福祉1.0%に対し、製造0.5%、建設0.5%、運輸0.6%でした。
情報通信や専門サービスは、在宅でできる仕事が多く、副業をエンジニアやデザイナーの採用アピールに使う会社が目立ちます。保存テキストでも「リモートワーク可」「副業OK」「フレックスタイム」が福利厚生欄に並んでいるパターンが典型でした。一方、製造・建設・運輸は、シフトや現場の安全管理、長時間労働の管理がからむため、会社サイトで副業に触れる会社が少ない傾向です。
宿泊・飲食が高めなのは、アルバイト募集で「副業・Wワークの方も歓迎」と書く会社が多いためで、正社員の副業を認める話とは別のケースも混じっています。
会社の種類でも差がある
- 株式会社(27,131社):触れる2.7%/認める書き方1.1%
- 合同会社(306社):触れる5.9%/認める書き方2.6%
- 有限会社(1,177社):触れる1.0%/認める書き方0.3%
合同会社は数が少ないものの、比較的新しいIT・コンサル系の会社が多く、副業に触れる割合が株式会社の2倍ありました。反対に有限会社(2006年以降は新設できない、古くからある会社)は低めです。会社の種類ごとの特徴は法人の種類一覧と合同会社に就職して大丈夫かで詳しく書いています。
書いていない会社で副業の可否を確かめる手順
100社に99社は会社サイトに書いていないので、多くの場合は自分で確かめることになります。次の順番がおすすめです。
1. 会社サイトの「福利厚生」「よくある質問」をまず見る
書いている会社の多くは、福利厚生・社内制度の一覧か、採用ページの「よくある質問」に載せています。保存テキストでも「副業可(要申請)」「副業許可制」「副業は可能ですか? 相談の上、可能です。」といった書き方が典型でした。福利厚生欄の読み方は会社の福利厚生を無料で調べる方法にまとめています。
2. 求人サイトの「こだわり条件」を確かめる
大手の求人サイトには「副業OK」のような検索条件があります。これは会社や媒体側が付けるタグなので、会社サイトには書いていなくても付いていることがあります。ただしタグは求人ごとに付けられるもので、正社員の制度として認めているのか、その求人(アルバイト等)で掛け持ちを歓迎しているだけなのかは本文で確かめてください。求人票の読み方全般は求人票の見方を参考にしてください。
3. 面接で「就業規則の副業の条文」を聞く
一番確実なのは、面接や内定後の面談で「副業・兼業について就業規則にどう定められていますか」と聞くことです。就業規則は、入社後なら社員に周知する義務がありますが(労働基準法106条)、応募者に見せる義務はありません。だからこそ、「許可制か届出制か」「禁止される副業の範囲(同業・競合など)」「申請の窓口」を具体的に聞くと、制度として回っている会社かどうかが分かります。聞くときの言い方の工夫は面接前5分でできる会社研究チェックリストでも触れています。
4. 内定後は書面で確認する
口頭で「副業はOKですよ」と言われても、就業規則に禁止規定が残っていれば、入社後に問題になることがあります。内定後、就業規則の該当箇所を見せてもらう、または労働条件の説明の場で書面・メールで確認しておくと安心です。
「副業OK」と書いてあっても確認したい3点
認める側の会社でも、条件の付け方はさまざまです。保存テキストで条件を書いていた35社には、次のような書き方がありました。
- 許可制・事前申請制:「副業可(要事前申請、社内規定あり)」「副業許可申請制度」「入社後申請必須」
- 範囲の制限:「本業に支障が出ない範囲で」「同業他社との兼業は不可」
- 雇用形態による違い:「原則として雇用契約を結ぶ副業はできませんが、社内規程の定めにより可能な場合もあります」
ここから、入社前に確かめたいのは次の3点です。
- 許可制か届出制か:許可制なら会社の判断で断られることもあります。ガイドラインは「一律許可制」を見直す方向を示していますが、禁止ではありません。
- 雇用される副業か、業務委託・個人事業か:ガイドラインでは、副業先でも雇われて働く場合、労働時間は本業と通算されます。そのため「雇用型の副業は不可、業務委託なら可」という会社があります。自分がやりたい副業がどちらに当たるかを確認してください。
- 競業の範囲:「同業他社」の範囲が広いと、実質的に経験を活かせる副業がほぼできないこともあります。
残業が多い会社では、副業の時間そのものが取れないこともあります。残業時間の調べ方は応募先の残業時間・有給消化率を外から調べる方法を参考にしてください。
よくある質問
会社サイトに副業の記載がなければ、副業は禁止されていると考えるべきですか
いいえ、そうとは限りません。しょくばログの集計では、可否をはっきり書いている会社は358社(1.1%)だけで、書いていない会社が圧倒的多数です。そして書いている会社の94.7%は「認める」側でした。禁止している会社はわざわざ書かないことが多いので、書いていない会社は「分からない」と考え、面接で就業規則の定めを確認するのが確実です。
就業規則で副業が禁止されていたら、副業をすると必ず処分されますか
就業規則の定めや副業の内容、本業への影響によって判断されます。厚生労働省のガイドラインは、裁判例では労働時間以外の時間の使い方は基本的に労働者の自由で、制限できるのは労務提供上の支障・秘密の漏洩・競業・信用を損なう場合などだと整理しています。ただ、個別の処分が有効かどうかは事情次第なので、禁止規定のある会社で副業を考えるなら、まず会社に相談するのが安全です。
「副業OK」の求人に応募すれば、入社後すぐに副業できますか
会社によります。保存テキストでも「入社後申請必須」「要事前申請」と書く会社がありました。許可制の会社では、申請して承認されるまで副業を始められません。試用期間中は認めない会社もあるので、入社前に「いつから・何の手続きで」始められるかを確認してください。
副業を認めている会社は、業種によって違いますか
違いがあります。会社サイト32,889社の集計では、副業・兼業に触れる会社の割合は、学術研究・専門技術サービス4.8%、情報通信3.7%に対し、製造1.3%、建設1.2%、運輸・郵便1.2%でした。在宅でできる仕事が多い業種ほど、採用アピールとして副業を書く傾向があります。
会社に副業をしていることは知られますか
副業で所得が増えると住民税の額が変わるため、住民税を給与から天引き(特別徴収)している場合に会社が気づくきっかけになることがある、とよく言われます。ただ、そもそも許可制・届出制の会社では申請が前提なので、隠すことを考えるより、制度に沿って申請できる会社を選ぶほうが安心して続けられます。
まとめ
- 副業の可否は会社ごとの就業規則で決まる。厚生労働省のガイドラインは「原則、副業・兼業を認める方向」とし、令和4年7月からは可否と条件を自社のホームページ等で公表することが望ましいとしている
- それでも、会社サイト32,889社のうち副業・兼業に触れる会社は2.6%、可否をはっきり書いている会社は1.1%だけ
- 書いている会社の94.7%は「認める」側。禁止の会社は書かないことが多いので、「書いていない=禁止」とは読めない
- 業種では専門サービス・金融・情報通信が高く、製造・建設・運輸が低い。合同会社は株式会社の約2倍
- 書いていない会社は、福利厚生欄→求人サイトのタグ→面接で就業規則の条文→内定後に書面、の順で確かめる。「許可制か届出制か」「雇用型か業務委託か」「競業の範囲」の3点は、副業OKの会社でも必ず聞いておきたい
会社選びの全体の流れは転職の企業研究のやり方にまとめています。
出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月8日改定版)/厚生労働省「副業・兼業」ページ(モデル就業規則の改定経緯)/しょくばログ保存の会社サイトテキスト32,889社(2026年9月24日集計・語の出現による集計で、制度の有無や内容を保証するものではありません)