✍ 古家あきら | 2026-08-31 更新
マッサージ・整体の倒産が過去最多 — 施術所14.5万に対し「会社」は1,082社という業界構造
2026年8月31日、東京商工リサーチが「マッサージ業界」の倒産集計を公表しました。2026年1-7月の倒産は68件で前年同期比7.9%増、同期間として過去15年で最多。倒産した会社の94.1%が資本金1,000万円未満、95.5%が負債1億円未満で、主因の88.2%が「販売不振」でした(出典:東京商工リサーチ「『マッサージ業界』の倒産増加」2026年8月31日)。
先に結論から。この業界で「会社を調べて安全確認する」というやり方は、そもそも半分しか機能しません。全国の施術所14万5,280か所に対し、社名に整体・マッサージ・鍼灸・接骨/整骨を掲げる"会社法人"は当社データベース上で1,082社しかない。つまり大半は個人開業で、登記情報として調べられる相手ではないからです。
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、この種のニュースが出るたびに「その会社、うちのDBに載っているか」を確認します。今回はほとんど載っていませんでした。その理由と、代わりに何を見ればいいかを書きます。
ニュースの中身:小さい会社が、売上不振で退場している
同社の集計で「マッサージ業界」に含まれるのは接骨院・鍼灸院を含む施術業全般で、市場は国家資格が必要な医業類似行為(あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復)と、民間資格や無資格でも開業できるリラクゼーションの2つに大別されています。押さえるべきは3点です。
- 68件・前年同期比7.9%増・過去15年で最多(2026年1-7月)
- 資本金1,000万円未満が94.1%、負債1億円未満が95.5% — 倒産しているのは「小さい事業者」
- 人手不足倒産が7件(前年同期はゼロ)で過去最多
最後の1つが今回いちばん重い変化です。従来この業界の倒産は「客が来ない」で説明できましたが、施術者を確保できずに畳むケースが統計に出る規模で発生し始めたことになります。見分け方は人手不足倒産の兆候の見分け方へ。
会社データベース側から見ると、この業界は「登記に出てこない」
ここからが、うちのデータでしか言えない部分です。厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(2025年7月29日公表・2024年末現在)による施術所数は次のとおり。
- あん摩、マッサージ及び指圧を行う施術所:17,531か所(前回比 -486か所、-2.7%)
- はり及びきゅうを行う施術所:35,494か所(+1,604か所、+4.7%)
- あん摩、マッサージ及び指圧、はり並びにきゅうを行う施術所:38,595か所(+221か所、+0.6%)
- その他の施術所:2,736か所
- 柔道整復の施術所:50,924か所(+8か所、0.0%)
合計14万5,280か所。就業者もあん摩マッサージ指圧師119,703人、はり師136,736人、きゅう師134,730人、柔道整復師78,666人と、いずれも前回(2022年)から増加しています(出典:厚生労働省・令和6年衛生行政報告例)。
一方、しょくばログのDBで現存する会社法人(株式会社・有限会社・合同会社など)のうち、社名に「整体」「マッサージ」「鍼灸」「接骨」「整骨」「リラクゼーション」「指圧」「あん摩」「柔道整復」「ほぐし」を含むものを数えると1,082社。登記が閉鎖済みのものが別に213社あります。
施術所14万5,280か所に対して、会社法人1,082社。約134分の1です。
数え方の限界を先に書いておきます
この1,082社は下限の目安です。「株式会社◯◯ケア」のように社名から業種が読み取れない会社は拾えず、逆に無関係の会社が混ざる可能性もゼロではありません。それでも桁は動かず、担い手の圧倒的多数が法人ではなく個人事業として開業しているという結論は変わりません。
もう一つの発見:この業界の法人は「古い」
1,082社の内訳を法人種別で見ると、はっきり偏りが出ました。
- 有限会社:491社(45.4%)
- 株式会社:408社(37.7%)
- 合同会社:160社
- 合資会社19社/合名会社4社
比較のため、当社DBに現存する会社法人4,422,900社の全体平均は有限会社32.2%・株式会社56.8%。この業界は有限会社の比率が全体の約1.4倍、株式会社は逆に大きく低い。
有限会社は2006年の会社法施行以降、新規に作れません。つまり「昔からある事業者が法人として残る一方、新規参入者は法人化せず個人開業している」。低価格店が増えても法人の数としては現れない——ニュースが指摘する「低価格店の台頭」と、DB側の構造は矛盾なくつながります。
所在地は東京都232社、大阪府100社、神奈川県99社、北海道62社、千葉県59社、福岡県51社の順でした。
では、応募前・利用前に何を見るか
「会社を調べる」が効きにくいなら、確認先を変えるしかありません。順番はこうです。
1. 相手が法人か個人事業かを確定する。 「株式会社」「合同会社」の表記があれば実在と登記の状態を確認。個人事業なら登記情報は存在しないので、ここで方針を切り替えます(個人事業主か法人かを見分ける方法)。
2. 資格の要否を、看板の言葉で判別する。 「あん摩」「マッサージ」「指圧」「はり」「きゅう」「接骨」「整骨」は国家資格が必要な領域、「整体」「リラクゼーション」「もみほぐし」は不要です。同じ料金表に両方が並ぶ場合は、どの施術を誰が担当するのかを確認するのが実務的(会社の許認可・資格を調べる方法)。
3. 施術所は保健所に届け出がある。 国家資格が必要な施術所は開設の届出が要り、14万5,280か所という数字もこの届出をもとに集計されています。「届出をしている施術所か」は、法人登記より確かな確認軸になります。
4. 法人が相手なら、資本金と規模も見る。 倒産の94.1%が資本金1,000万円未満という事実は、裏返せば資本金が退場リスクの粗いフィルタとして機能するということです(会社の資本金の調べ方)。
よくある質問
検索しても会社情報が出てこない整体院は、怪しいということですか?
いいえ、この業界ではむしろ普通です。 施術所14万5,280か所に対し会社法人が1,082社という構造なので、「出てこない=個人事業」であるケースが大多数です。判断材料は登記ではなく、資格・届出・実店舗の実在に移してください。検索しても出てこない会社の調べ方も合わせてどうぞ。
「整体師」は国家資格ではないのですか?
はい、整体師・リラクゼーションセラピストは国家資格ではありません。国家資格はあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師(あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律)と柔道整復師(柔道整復師法)です。民間資格が無意味という意味ではありませんが、制度上の位置づけが違うことは知っておいて損はありません。
倒産件数68件は多いのですか、少ないのですか?
絶対値は多くありませんが、同期間の過去15年で最多という「向き」が重要です。母数の施術所が14万か所規模ある以上、倒産として統計に出るのは法人化している一部だけ。廃業の多くは倒産という形をとりません(倒産統計に映らない会社の終わり方)。
人手不足倒産7件は、応募する側から見ると悪い話ですか?
両面あります。 施術者が足りていない=採用されやすい局面である一方、人が足りないまま回している職場は、入った後の負荷が高い可能性があります。求人が長期間・高頻度で出ている場合は、その理由を面接で確認してください。
この記事の数字は、どこまで自社データですか?
倒産件数・構成比は東京商工リサーチ、施術所数・就業者数は厚生労働省の公表値です。会社法人1,082社・法人種別の内訳・都道府県分布・全体平均との比較は、しょくばログのデータベースからの集計(社名キーワードによる抽出のため下限の目安)です。数字の出どころは分けて書くようにしています。
まとめ
マッサージ・整体業界の倒産が過去最多というニュースは、「小さい事業者が、客の減少と施術者不足の両方で退場し始めた」という話です。
そして会社データベース側から見ると、この業界は登記情報で確認できる相手が全体のごく一部しかいない構造をしています。施術所14万5,280か所に対し会社法人1,082社、しかもその45.4%は新規には作れない有限会社。新しく入ってくる担い手は、法人という形を取っていない。
だから確認手順を、法人登記から資格・届出・実店舗へ寄せる。これが今回のニュースから引ける、いちばん実用的な結論です。
---
出典
- 東京商工リサーチ「『マッサージ業界』の倒産増加 〜1-7月は過去最多、低価格台頭と施術者確保〜」2026年8月31日 https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1203181_1527.html
- 厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」2025年7月29日公表・2024年末現在 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/24/dl/gaikyo.pdf
- しょくばログ・データベース(国税庁法人番号公表データを基に自社集計、2026年8月31日時点)
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の事業者の評価ではありません。個別の判断は複数のソースで裏取りしてください。